十五話
15・ニアサイド③
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この街一番の商会の名は〈カセッグ商会〉と言う。
取り扱う商品は日用品が主だがそれ以外も充実しているらしい。
場所は大通りにある一番立地の良い場所だ。
建物はすぐに見つかった。
周りの建物よりも一段と大きく格式があった。
何でも先先代の手腕が凄まじく中堅だった商会を一代で街一番にまで伸し上げたらしい。
その子供の先代や現在の商会長先先代には及ばないが敏腕らしくこの街一番の地位を確固たる物にしている。
さてそんな商会にこれから挨拶に行くのにこの冒険者姿では侮られると思いデウスは一旦服飾店に行き装備(服装)を整える事にした。
上等な仕立ての服を三人分購入し着替えて今度こそ商会に商談をしに向かった。
店内は落ち着いた雰囲気だ。
まだ年若い店員に「すまない。アポや紹介状などはないのだが商会長に取り次いで貰えないか?ある品を紹介したいのだが?」と伝えると
「少々お待ち下さい。上司に確認を取って来ます」と礼儀正しくお辞儀して店員は奥へと向かった。
暫くすると店員が上司と思わしき中年の男性を連れて来た。
「当商会の番頭を務めております。クレークと申します」と丁寧に挨拶をして来た。
「御丁寧にありがとうございます。私はしがない冒険者をやっております。デウスと言うものです。急な事にも関わらず申し訳ありませ」
「いえいえ。構いませんとも……それで商品を紹介して下さるとか?」と目が細められた。
「はい。ですがその前に此処では何ですので周りに見られない静かな場所がよろしいかと?」と微笑む。
「おお!これは失礼しました。では此方にお越し下さい」とクレークに案内されて応接間に通される。
応接間は下品になり過ぎず。かと言って質素なわけでもなく調和の取れた素晴らしい配置をされている。
クレークに促されるままソファに座る。
「では、改めまして私が当カセッグ商会番頭を務めさせて頂いています。クレークです以後良しなに」
「冒険者のデウスと言います。左側がガアード。右側がソーリャです」と丁寧に返す。
「それで……何やら私共に紹介したい品があるとか?」
「ええ。此方何ですが……」
とデウスは懐からある物を出しテーブルの上に置く。
出した物は香辛料だ。
この時代香辛料は同じくgの金と同等の価値があった。
その中でも今回は胡椒、唐辛子に塩を出した。
クレークはデウスに許可を貰い一つまみずつ味見する。
すると「素晴らしい」と呟き少々お待ちください。と言い部屋を出た。
数分後恰幅の言い一人の中年男性が現れた。
「お待たせしましたな。当商会の会長を務めております。フックラと申します」と挨拶をして来た。
此方も立ち上がり先程クレークにした時よりも丁寧に挨拶を返す。
「今回当商会に香辛料をお持ち頂けたとか?」と言いフックラはテーブルの上にある布に包まれた香辛料を見る。
その後フックラも試食し今後定期的に卸す契約を結んだ。
専属契約にしなかったのは他の店にも卸すつもりだからだ。
払う金額に対してその分分け隔てなく売るつもりだ。
それにデウスは彼らに監視を付けといた。
もしも良からぬことや余計な事をしようものなら人知れず消えてもらい、此方の手駒と入れ替わってもらう。
今回見本として持って来た胡椒を10g塩を10g唐辛子10gをそれぞれ金貨10枚で売り合計金貨30枚を手に入れた。
さて香辛料は全てカセッグ商会に渡してないので補充しにダンジョンに戻る事にした。
勿論尾行がないか最新の注意を払ってだ。
そうして尾行がない事を確認しながら一直線にダンジョンには行かず念の為に迂回をして全く別の場所に行き、周りに人が居ない事を確認してから転移魔法を使いダンジョンの入り口に戻った。
戻るとデウスからイニティウムに姿を戻し、イニティウムが居ない間ダンジョンを任せている守護者達のリーダーを務めるモンスターに話を聞く。
「ファティマ何か変わりは無いか?」
「はっ!何も問題は御座いません。イニティウム様。現在予定通りに境界線の向こう側の地図を策定中で御座います。それと一つ報告が御座います」
ファティマは黒曜石のような髪に真っ黒な鳥のような羽を背中の腰部分から生やし側頭部には羊の様な角がある。
そして異性だけでなく同性をも魅力する美貌の持ち主だ。
プロポーションは完璧に保たれておりその姿を見たら他のどんな美人と呼ばれる女性達も形無しだ。
そんはファティマの種族は悪魔族でありその中でも王の名を冠するデーモンクイーンだ。
「ん?何だ?」
「はっ!実はこの国ミディア王国の王都に向けて現在シュルベール王国に召喚された勇者と呼ばれる者達の内5名ほどが派遣されているとのことです」
イニティウムは隠密に長けるモンスターをミディア王国中に放ち情報の収集を行い諜報網も構築中だ。
ミディア王国の諜報網が完成次第他国にも根を下ろす予定だ。
そして今回運良く早期に自信と同じく召喚されたと思わしき勇者なる存在を感知出来た。
ふむ。勇者の強さがどの程度かわからぬし下手に周りを探っている事が露見したら面倒だな。
だが敵対するとしてもいや多分するだろうな。
そのうち例の【試練】とやらが発動して否が応でも此方の存在は露見する可能性が高いな。
「ファティマよ。精鋭を送りどんな些細な事でも良い。勇者達の情報を最優先で集めさせよ!」
「はっ!畏まりました。直ちに選抜して向かわせます」
ファティマは一礼して執務室から出て行く。
それを確認してからイニティウムはウィンドウ(ダンジョンを操作する機能の事)を開いた。
そこで購入を選択してその中から香辛料を選び胡椒、唐辛子、塩を30kgずつ購入した。
その後提出されたダンジョンについてや地図の策定状況が書かれた報告書を一通り見てから再びデウスになりニアサイドに戻る。
戻るとそろそろ太陽も沈んで来たので〈安らぎ亭〉に戻り1日を終えた。
To be continued......




