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文化祭5

 安藤くんは、ボソッと言った。

「あんまり複雑なデザインは嫌だな」

 安藤くんは、本当にいつもモノを持ち歩いていなかった。学校に来る時も、基本カバンは持ち歩かない。財布もなんだかとっても薄い財布に、スマートフォンだけ持ち歩いているらしい。

 体育があるときは、ジャージをトートバックに入れて持って来るだけらしい。とにかくカバンが嫌いとのことだった。

 このまま行くと安藤くんは「野菜は、直持ちで帰ってもらおう」と言い出しかねなかったが、そこは制止した。彼はいいアイデアだと思っていたようだが、そのミニマムなシンプルさはデザインに生かすことお願いした。

 僕らは、アイデアを得るためスーパーなどの野菜売り場に足を運んだ。その後、数カ所まわったが、足がクタクタとなたため、近くのファミレスに避難した。

 野菜を売り場を見学して思ったのが「顔の見える生産者」だった。最近の野菜はとにかく「○○さんが作りました」とラベルや野菜を包むラップにシールが貼ってあったり記載されているものが多かった。

 野菜を作っている人の顔が見えることによって野菜の売り上げは上がるらしい。上がった実績があったからきっと貼ってあるのだと僕は思った。

 また、地産地消という響きの良い言葉を目にした。読んで字のごとくではあるが、その地域で生産されたものをその地域で消費する。現代社会においては、意外と農業地域と都会地域といったように活動地域が分断されている。東京の渋谷のど真ん中で、地産地消などはおこなえはしない(まぁ、男女の関係ならば地産地消はありえるのかもしれないが)。

 幸いにして、南商業のある地区は、ちょっと足を伸ばせば畑がある場所に行ける。マンゴーからジャガイモまでの農作物を確保することは流石に困難ではあるが、これらの畑で採れた野菜を売れば「地産地消」が実現できるのではないかと、橋本は言った。そして、僕らが売るのは近くの鎌倉で採れた野菜を売ることに決定したのだった。

 問題は、デザインだった。さすがに僕らは生産者ではないので、顔写真をシールにして貼るのは「完全な詐欺行為」になってしまう(橋本を写真部の一眼レフで撮ってもらって、シールで貼れば売れるかもしれないが)。ここで、絵が得意な佐々木さんがおもむろにスケッチブックを取り出して書き始めた。

「スケッチブックなんて持ってるんだ」

「いつも持ってる。アイデアが思いついて、具体化したくなったら描きたいので」

 僕にはよく分からない発想であったが、彼女としては理想のキャラクターが生まれたら描きたいらしい。でも、なにも思いついてない状態で絵は描かない。彼女いわく「アイデアは繊細」とのことだ。

 ほぼほぼ物販のアイデアが出尽くし、終盤ではあったが、今回のチームメイトは簿記部のみんなと違ってとても個性的な人が集まったのだと僕は気がついた。一つ間違えば危ないかもしれなかった。

 彼女がスケッチブックに描いたのは、Mだった。きっと、南商業の「み」のローマ字の頭文字をとってものだと思う。でも、そのMは単なるMではなかった。少し立体的に見えるように描いてあるが、とてもシンプルだった。学校の1年生イメージカラーのピンクを何種類かの色合いで明暗をくっきりさせていた。

「これは、素晴らしいな」

 と安藤くんは唸った。

「大人っぽい」と橋本が言えば、「なんか強い」と抽象的な表現を進は使った。

 ぼくらの物販のロゴが一瞬で完成した。でも、佐々木さんに聞くと「実は、前から考えてた」とアイデアはあったようだった。でも、決めてにかけていたが、安藤くんのシンプルさや、地産地消など、いろいろなストーリーを組み合わせた結果の結論らしかった。ただただ絵を描いただけではなく、その後ろの背景を説明する彼女を見て「この人は、漫画研究部なのか」と驚いた表情をしてしまたった。彼女は、驚いた僕の表情を見て、漫画のキャラクターがするような驚き方で返してきた。やはり、漫画研究部だったようだ。


 翌日。先生に頼んで、鎌倉野菜で、ラッピングにこのロゴをシールで貼りたいとお願いした。先生は「お前たちが作ったのか」と驚いたように始め聞いてきたが、答えも聞かずに「いいじゃん」と言ってくれた。野菜の手配とシール作成の手配は先生がやってくれるとのことだった。シールの材質については、佐々木さんにお任せすることになった。きっと、彼女のセンスならば、アッと言わせるものができると僕らは思ったのだった。

 僕と進と橋本は、佐々木さんと安藤くんに言った。

「ここからは、簿記部の仕事ですな。ビシッと利益が出るように、損益分岐点等々色々考えてきます」

 かっこよく決まったと、僕はドヤ顔をするものの、安藤くんと佐々木さんは何を言っているのかわからなかったらしく、ポカーンとしていた。僕らが学んでいる損益分岐点は簿記2級からしか出てこない。彼らが授業で聞けるのは2年生からであった。

 人にわかりやすく説明できることも、立派な才能だということ痛感したのだった。



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