文化祭6〜野菜を用意する人〜
人は、ブランドが好きである。
ブランドという目に見えないものを人は好んで買う。
通常のお給料では買えないものを買ってアピールをする。高校生なのに、7万や8万もする高級な長財布を買う若者は、間接的に「俺はすごい」とモノを使って自分の価値を周りにアピールする。
悪いことではない。これが、人間である。背伸びをしたがるのだ。いくら「体ひとつで自分をアピールしろ」と押し迫ったところでそれは、ほとんどの人間には無理である。できるとしたらそれは、プロの漫才しか、なんか特異な人である。
僕らはそういった「人間の本性」的なものを勉強していた。難しい話は置いておいて(こういうのは、僕ではなく鮎川あたりがすればよい)、いよいよぼくらの文化祭が始まった。よく、「祭りは準備をしているのが楽しい」というが、準備は本当に楽しかった。
野菜は当日買うとして、野菜の売り方や陳列の仕方。パッケージングは、シールのみならず、野菜を入れて渡すビニール袋にまで及んだ。先生に頼み込んで、野菜を三千円以上買ってくれたお客さんに対してあげる限定トートバックを3枚用意した。これは、安藤くんがデザインしたいと言ったので、僕らは了承した。彼が描く絵はとっても可愛かった。猫が南商業の「M」を持っているデザインだった。彼は、音楽の才能だけではなく、絵の才能もあったようだった。羨ましい限りである。
ぼくらのテントのイメージは、ヨーロッパの屋台である。ヨーロッパの市場で野菜を売っているお店の画像をどこからともなく誰かが持ってきて、「こんな感じでいきたい!」とプレゼンを行った。それはとてもすばらいいアイデアだったので、拒否する人はいなかった。さらに、テントで流すBGMも、どこからともなくやってきた誰かがプレゼンをして、ケルト音楽を流すことに決まった。ケルト音楽ってなんだよって思ったが、原曲を聞かせてもらって「涼しげな感じがする」良い音楽だった。よくわからない日本の流行のポップスを用いるよりもはるかに良いことは間違いなかった。
100円ショップで買ってきた、プラスチックの容器に茶色髪を巻いて、白いペンでレンガのような絵を描いたものをたくさん用意した。
「高校生でも結構できることはあるんだね」
と橋本は感慨深そうにいった。
「そうだね。高校生は、自由だ。大人たちはみんな最近の若い子はと言って僕らを糾弾するけどそれは、たんなる嫉妬かもしれない。僕らは自由だ。なんだってできる。でもいつかは道を選ばなければならない」
安藤くんは低い声でゆっくりといった。なんだか歌詞をそのまま言葉に発しているような言葉だったので、僕は「なんか深いね」といった。彼は、少し照れて頭を掻いてた。
「いらっしゃいませ」
お客さん第一号が僕らの前にやってきた。




