こうみえて尽くし系です
シャワーを済ませたメイにふかふかではないバスタオルと白シャツとドライヤーを渡し、今度は俺のシャワータイムである。
普段当たり前に使っている手狭なシャワールームなんだが、いつもとなんか匂いが違うし、メイが使ったあとだと思うと少し緊張して……いやなんでだよ俺の家だぞ。ああもうさっさと済ませよう。
とか思ってお湯を出したところでいきなり扉がガラッと開いた。
「うおっ!? な、なんだよ!」
そこに、俺のTシャツを一枚着ただけのメイがそこにいた。
まるでワンピースみたいになっているTシャツがぶかぶかなせいで胸の谷間が見えていたり、下はスカートも穿いていないから白い脚がむき出しになってしまっている。さすがにこの不意打ちには驚いてしまった。
メイは目を細めてニマニマ笑う。
「んふっ。お背中流してあげよっか~?」
「いいって! つか堂々と開けんなよっ!」
「アハハだから冗談だってばー。ねー意外と冷蔵庫いろいろ入ってるね。アイス食べていい? あたしさポルム好きなんだー♪」
「好きにしろ! そんではよ閉めろ!」
「てんきゅー♪」
それだけ言って扉を閉めるメイ。なんだよ今のやりとり。同棲中の彼女かよ。いや同棲中の彼女なんていたことねぇけど。
「……最近のJKってのはこんなグイグイくんのか……?」
一人で悶々としたものを抱えながら、俺は出来る限り熱めのシャワーを浴びまくった。
サッパリしたところでシャワールーム内で着替えを済ませた俺は、そこを出た瞬間に驚いた。
目の前のミニキッチンで、髪を後ろにまとめたポニーテールなメイがエプロン姿でなにやら料理らしきことをしていたからだ。
メイが「おっ」とこちらを振り返り、菜箸を持ち上げながら言う。
「サッパリした~? エプロンとかいろいろ借りてるよー。てかなにこのエプロンカワイんだけど」
「……え? あ、ああ。実家にあったのを適当に持ってきたもんだから」
「ふーんそなんだ。そんでもってほい。お味見」
「は?」
「ふー、ふー。ハイあーん」
スプーンに載せられたイイ匂いの煮物を近づけてくるメイ。
俺が戸惑いながらも口を開けると、すぐにスプーンが突っ込まれた。
鶏肉、じゃがいも、にんじん、それにしらたき。それぞれしっかり味が染みていてバランスよく口内調和する。見事な肉じゃがだった。ていうかさっき普通にふーふーしてたよねこの子。
「どう? にんじん固くない?」
「……いや。ちょうどいい、と思う」
「そっかー、へへよかった。んじゃそっちでもちょっと待っててー」
「お、おう……」
ふんふーんとご機嫌な様子で料理を続けるメイをよそ目に、俺は居間の方へ向かう。
すると、テーブルの上にペットボトルのコーラと氷の入ったグラスが用意されていた。ていうかテーブルも布巾で磨かれて綺麗になってるし、部屋の中も洗濯物がまとめられてたりとちょっと整理されている。マジかよ至れり尽くせりっていうか俺がいつも風呂上がりのコーラタイムしてること完全にバレてるじゃねぇか。
「おい、メイ?」
「気が利くでしょー? こうみえてけっこー尽くすタイプですからー♪」
「そ、そうですか……」
「あー、そーそーおにーさんさー。ホントはお酒弱いっしょ?」
「は?」
コーラを注いでたところでメイが頭を後ろに傾けるような形でこちらを向き、ポニーテールがひらりと揺れた。
「やー、だってこの部屋あんまり片付いてないしゴミ袋とかも残ってんのにさ、お酒の空き缶とか空き瓶はぜんぜんないじゃん? 代わりにコーラばっかり。てゆーか冷蔵庫の中みればだいたいどーゆー人かわかんじゃん。飲めないクセにかっこつけるとこが男ってバカだよねー。コーラ飲んで待ってなー」
「お、おう……」
「でも調理器具とか食材は結構まともなのあったから、実家から送られてきてるとかそういうカンジ? もったいないからちゃんと使いなよ~。あ、ご飯は冷凍のがあったから今日はそれね。あと期限切れの納豆とか調味料あったから捨てなー」
「お、おう……」
なんかもうひたすら同じ生返事しか出来ずに呆然とする俺。
……こいつ、今さっき初めてうちに来たんだよな?
いや馴染み方普通じゃねぇだろ。同棲中の彼女かよ。なんで当たり前のように夕食作ってくれてんの? 最近のJKの距離感どうなってんだよバグってんだろ。これもこいつの自然体な性格がなせるもんなんだろうか。営業職とかやったら案外成功するんじゃないのか?
なんてことを考えたり、とにかくメイのことが気になってテレビにもあんまり集中出来ず、たまにコーラを飲んで気を紛らわせて、グラスの氷がカランと音を立ててだいぶ小さくなってきた頃にメイの料理が完成した。




