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お持ち帰りの女子高校生

 それから二人で海を上がると、まずは公園内のトイレで簡単に服をしぼった。冬だったらホントにヤバかっただろうが、夜になってもそこそこ高い気温のおかげで寒さはあまり感じない。といっても、早めに帰ったほうがいいだろう。


 先に荷物を置いたベンチで待っていると、トイレからメイが出てきてこっちに駆け寄る。


「おにーさんおまたせー!」

「おー。ほらよ」

「わっ!」


 俺が放ったスポーツドリンクのペットボトルを両手でナイスキャッチするメイ。驚いたようにまばたきをしていた。


「泳いだあとはやっぱこれだろ?」

「へへ、わかってるぅ」


 メイはすぐにドリンクに口を付けると、美味しそうに「ぷはぁ!」と飲んだ。


「あー、それからこれも」

「ん?」


 ベンチから立った俺は、スーツのジャケットをメイの肩に乗せた。


「おにーさん?」

「それは濡れてねぇからとりあえず家まで着とけよ。さすがにそのまま帰すわけにはいけねぇし。ま、ちと汗くさいかもしれんがそれは我慢してくれ」

「……クンクン。うん、ホントにちょっと汗くさい」

「嗅ぐなよ! んじゃな。今日は巻き込んですまんかった。別にそれ返さなくていいから」


 メイに背を向けて帰ろうとしたとき――後ろから「くちゅん!」と可愛らしい声がした。

 振り返る。

 メイは俺のジャケットを羽織ったまま、ちょっと小刻みに震えていた。


「え、えーとさ。おにーさんの家ってこっから近かったりする?」

「……歩いて3分」

「じゃあ決まり! お風呂っていうかとりまシャワーだけ貸して! マジ風邪ひいちゃ――くちゅんっ!!」

「オイオイ……マジかよ……」


 こうして俺は、マジで風邪引く3分前のJKと共に小走りで家に帰るハメになるのだった。



 ──俺の家は、あの海浜公園の近くにある家賃3万円台の2階建てボロアパートで、当然風呂などないものの、大家さんの厚意で全室新しめのシャワールームだけは完備されている。

 帰るなりメイはそのシャワールームに飛び込み、そこから『いきかえる~~~!』の声が聞こえてきた。やめろお隣さんたちに聞こえるだろ。


「はぁ……なんで俺はいきなりJKをお持ち帰りしてんだ……」


 適当に着替えてからテレビをつけてくつろぎだす俺。

 チラ、とシャワーの水音が聞こえる方を見る。

 この狭い部屋には脱衣所なんてないもんだから、ミニキッチン前の洗濯カゴにはメイの制服や下着が脱ぎ捨てられたままで、俺が片付けるわけにもいかず、つい視界に入って気になってしまう。さっき透けて見えたあのピンクブラはずいぶんカップでかそうだな……ってJK相手に何を考えてんだ俺は!


 なんていう邪念を振り払っていたら突然シャワールームの扉が開き、中からメイがひょこっと顔だけを出した。慌ててすぐにテレビの方へ視線を戻す俺。


「ねーおにーさーん。カノジョさんのシャンプーとかリンスとかないのー?」

「ね、ねぇよ! つーか彼女なんていねぇし」

「えーマジ? ふむふむ。よく見れば部屋の中にもそういう形跡まったくないし……ひょっとしておにーさん、ドーテー?」

「だったら悪いか!」

「いや別にー? んー、まぁ帰ってからちゃんと洗えばいいや。それよりおにーさんは一緒に入らなくていいのー?」

「はぁ!?」


 思わずそちらを向いてしまう俺。

 メイはニンマリと小悪魔めいた表情で微笑する。


「あー、やっぱり意識してるんだぁ? ま、こんな一人暮らしの男の家にキラキラな美少女すぎちゃうJKがきちゃったらねぇ。どうする? せっかくのチャンスだし入っとく?」


 ニマニマ笑顔を崩さない余裕なメイの鎖骨の辺りまで見えた素肌にちょっとばかりドキッとしたが、それよりも年下にからかわれる屈辱の方が強かった。


「入るかっての! いいからさっさと済ませろよっ」

「ハーイ。なんだ、着替えにも手を出してないとこみるとけっこー紳士じゃん。こっそり下着をクンクンしたいかなーって思ってそこ置いといたのに」

「するわけねぇだろがい! つか家主になんちゅーキケンな罠はっとんじゃお前は!」

「アハハハ冗談じゃん! あっ、出たらTシャツ1枚なんでもいいから貸してね。あとタオル、ふかふかのがいいな」

「は!?」

「乾燥機とかないしさー。またすぐ制服着るわけにもいかないっしょ。じゃ、よろしくね~」


 メイは笑顔でひらひら手を振ってシャワールームに戻り、バタンと扉を閉める。


「…………無地のやつでいいよな……?」


 言われたとおりに適当なTシャツを見繕う俺。残念ながらふかふかのタオルなんてもんはない。


 テレビから流れてくるバラエティ番組の声は、シャワールームから聞こえる水音と鼻歌まじりのご機嫌な声によってまったく耳に入らなかった。

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