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オリジナルラベルコラボ缶(ランダム全8種 各800円 数量限定当たり付き)

 俺は、自販機に張られた統一ステッカーを示しながら説明を続けた。


『えっとですね、そういうときはここに連絡してみてください』

『? これは?』

『こういう問題が起きたときのためにも、自販機って必ずこういう連絡先が記載されたステッカーが貼られてるんですよ。ほら、電話番号がありますよね? ここに連絡して説明すれば、後日ですけどお金は戻ってきますよ』

『まぁ! そうなのですか?』

『はい。もしなにかあれば俺が代わりますので、一緒にやってみましょう』

『は、はいっ。ありがとうございます!』


 女性はスマホを取り出すと電話を掛け、その場で事情を説明。

 オペレーターとのやりとりは滞りなく終了し、女性はホッとした様子であった。


『とても迅速に対応してくださいましたぁ♪ こんな夜中なのに、やはり日本の自販機メーカーはすごいですね! 私、このZマークの自販機が大好きでして、遊び心のある素敵な商品が多いですよね♪』

『あはは、そう言ってもらえると嬉しいです。実は俺、ついこの間までこのメーカーで働いてたんですよ』

『まぁまぁびっくりです! そうだったのですか!? ──あ、だから先ほどはあのような……?』

『そういうことです。お金が戻ってくるのは当然ですけど、お客さんにはいろいろ手間を掛けさせちゃうんですよね。すみません』

『そんなそんなっ、貴方が謝ることではありませんよ。むしろ、親切に教えていただいてありがとうございました。どうしたものかと不安だったので、とても助かりましたぁ♪』

『それはなによりでした』


 女性は両手を合わせてニコニコと嬉しそうに微笑む。

 力になれたならよかったか……と思ったが、女性が少しだけ寂しそうに自販機へ目を向けたときハッとする。


『あの、そのコラボ缶商品なんですけど、少し離れた自販機にもたぶん置いてあると思うので、よかったらそちらに行ってみてください』

『えっ? そ、そうなのですかっ!?』

『人気だったら売り切れている可能性もありますが……よかったら案内しましょうか? それほど離れてもいませんし、ここから場所を説明するのも難しいので』

『ええと、よ、よろしいのですか? こんな夜中にご迷惑なのでは……?』

『あとは帰るだけだったんで大丈夫ですよ。それに……もう辞めているとはいえ、ウチの商品を好きって言ってくれる人を放っておけないじゃないですか』

『…………Vad fint』


 女性はぼうっとしたようによく分からない言葉をつぶやくと、突然近づいてきて俺の両手を包み込むようにギュッと握った。いきなりで『わっ』と声が出てしまう。


『なんて親切な御方なのでしょう……どうか御礼をさせてくださいっ!』

『え、ええ? いやそんな大したことはっ。それにほら、ま、まだ商品も買えていないですし』

『では私が無事に商品を買えたら御礼をさせてくださいませ!』

『ええっ!? いやでもそのっ、ホントにお礼なんてっ』

『さぁさぁ参りましょう♪ Nu går vi~♪』

『あのっ? え、ええ? えええ~っ?』



 ──ということがあったのだとあれこれかいつまみながら話すと、メイはポカーンとしていた。まぁ当然だよな。


「でまぁ、無事に別の自販機でコラボ缶は買えたんだけどそれがまた面白くってさ。その人、目をキラキラさせて全部買い占めそうな勢いだったんだけど、『他の方のご迷惑になっちゃいますね!』って後ろ髪引かれながらもちゃんと配慮しててさ。んで、どうしてもお礼になにかしたいって言うから俺が困ってたら、仕事を探してるならご紹介できますよって言われて。それがホテルのプール監視員だったんだよ。あの人何者だったんだろうなぁ」

「……ぷっ」

「ん?」

「アハッ、アハハハ! めっちゃおかし! アハハハハハハ!」

「お、おいおい。そこまでおかしかったか?」


 メイはお腹を抑えて笑い出し、笑いすぎて出てきた涙を指で拭いながら言う。


「あーうん、もうめっちゃおかしかったっ。だってそんなことある? はーおもろ! でも安心したっ。そのお仕事真っ白だと思う。ホワイトホワイト! 安心して行ってきなよ。ゼッタイ変な職場じゃないから」

「お、おお? そうか?」

「うん! ま、帰ってきたらどんなカンジだったか教えてよ。つーわけでそろそろ行こっ!」


 そんなわけで2人揃って外へ出ると、思わず目を細めてしまうほど眩しい太陽が輝いている。今日もずいぶん暑くなるだろうことを容易に予期させた。


「アッツ~~~! あっそだ、帰りってどんくらい? 夕方くらいになりそう?」

「ああ、たぶんな」

「わかった! じゃ学校帰りにまたくるね。てか学校もすぐ終わると思うから友達と遊んでこっちってカンジになりそかな~」

「了解。楽しんできな」

「うん! さーてさて、それで晩ご飯のメニューにご希望は?」

「んじゃカツ丼で」

「アハハ! ゲン担ぎってより終わってからのご褒美ってのもいいじゃんね? じゃあ帰りスーパーでお肉買ってくね。お仕事ガンバった後は楽しみに帰ってきな~♪」

「おう。そんじゃ頑張ってくるか」


 不思議なもので、メイとの食事が待ってるというだけで本当にやる気が出てくる。こんな風にポジティブな気持ちで仕事に迎えるのなんて初めてなんじゃないかって気さえした。


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