小悪魔JK、お嫁さんプレイをする
──その後、無事支度を調えて気持ちもシャッキリさせたところで部屋に戻る。その頃にはテーブルの上に白米、焼き鮭に目玉焼きとウィンナー、味噌汁、サラダと立派な定食が並んでいた。これには俺くんの目が輝く。
「あーやっときたきた! ほら冷めないうちに食べちゃお。──ん、寝癖もバッチリ直ってんね? あーでももうちょいこっちこうして……」
「え? お、おい? メイ?」
俺の前までパタパタとやってきて、こちらの前髪をつまんで整え直すメイ。直立不動でされるがままになっていると、メイはニッと笑って「よし!」と指でマル印を作った。
「そいやウチってさー、入学とか進学とか、なんか新しいこと始めるときよくおばーちゃんがカツ丼作ってくれたんだよね。ゲン担ぎってヤツ? だから今朝もそうしようかと思ったけど、やっぱ朝からカツはキツイかなぁってことでまぁ今日はこんなカンジで? 今度夜にでも作ったげるから」
「お、おう。そっか。ありがとな」
さっきのことでちょっと顔を合わせるのが気恥ずかしいところはあったが、メイの方は特に気にした様子もなさそうだったので俺も平静を装う。メイのことだから『JKと結婚する妄想しちゃうおにーさんキツ~ぷぷぷっ♪』とからかわれるかと思ったがセーフだぜ。
というわけでテーブルを挟むような形で座り、二人で手を合わせる。
「「いただきます!」」
最近の暑さのせいか昨晩はあまり食欲もなかったし、新しいバイトを控えた朝というデリケートな時間はなおさら食欲がなさそうなもんだが、今朝はずいぶんと箸が進んだ。至って平凡なモーニングメニューであるはずだが、メイが作ってくれたもので、かつメイと一緒だと不思議と食欲がわく。これならカツ丼でもいけたな!
「んふふっ、おにーさん朝からよく食べてくれるじゃん。食欲あるならだいじょぶそうかなー」
「ま、まぁな。てか、昨日からいろいろ気ぃ使わせて悪いな。ほら、あの写真とかのアレ。そういうことだったんだろ?」
「別にそんなつもりないけどねー。──ってかさ」
そこでメイは丁寧に箸を揃えて置くと、バンッとテーブルを叩きぐいっと詰め寄ってきた。
「昨日送った写真っ! ホンっトぉ~~~に保存してないよねっ? ねっ!?」
「おわっ! な、なんだよしてないって言っただろ!」
「あたしの目を見て言って?」
「し、してません!」
「じゃスマホのデータ全部あたしに見せられる!?」
「見せられるに決まって――い、いやちょっとそれは待ってくれ! 絶対に写真は保存してないがだからといって全部見せるのは問題がだな! ほ、ほらプライバシーのアレコレが!」
「ふぅ~~~~~~~~~ん?」
そのままじ~~~~~っと俺の目を凝視してくるメイ。さっきの鏡のときとは比べものにならない迫力につい目をそらしそうになったがそらしたら俺の負けだとんでもない冤罪が生み出されてしまう!
するとメイは小さく息をはいて引き下がり、いつものように笑って言った。
「まーいっか! だっておにーさんこういうウソつけなさそうだし。うん、信じてあげる! ただし! 後から保存したの見つけたら超オシオキだかんねっ!」
「お、おう。わかった」
助かったと胸をなで下ろす俺。
なぜそこまであの写真のことを気に掛けるのか、という疑問を投げたかったがそれは控えておく。だってもし本当にアレがアレなら普通にやぶへびだしな。思い出の中にしまっておこう。実際にスマホには保存してないわけだし、脳内永久保存なら罪ではないはずだ。うん。
ともかくこれで写真の件は安心、と再び朝食に手をつけると――
「じゃおにーさんのこと信じてあげるかわりに、今度新しい水着買いに行くの付き合ってねー」
「なんだそれくらい別にかまわ――って、はぁっ!?」
「今週どこかでいーよね? やっぱアレ小さくて厳しいからさ~。明日はちょいムリかな~じゃ明後日とかでそのへんで! おにーさんも時間空けといてね。近くのアウトレットでもいこ!」
「ちょ、決めるの早くね!?」
「別にそんくらいいいっしょ? それともイヤ? あーあ、16歳のJKと結婚する妄想してるよわよわでカワイソウなおにーさんがいるってクラスのみんなに言いふらしたくなってきちゃったな~?」
とか言いつつ、さっき洗面所で撮られた寝癖状態の俺の写真を見せてくるメイ。
「オイコラバッチリ悪用してるじゃねぇかクソ! 喜んでお供させていただきますッ!!」
「アハハハ物わかりよっ! ハイハイ、早く食べないと遅刻しちゃうよ~」
「くっひどい弱みを握られた……! なぜ俺はあんな妄想を口にッ……!!」
「んふふっ。まぁしょうがないよ。メイちゃんがカワイすぎちゃったせいだもんね? 男の子なら妄想しちゃうのも仕方ないよね~?」
そう言うとメイは俺のウィンナーを箸でつまみ、こちらへ向けて差し出す。
「まっこれくらいはサービスしてあげるから機嫌直してよ。ほらあーんして? ア・ナ・タ♥」
「……!!」
ささやくようなお嫁さんボイスと小悪魔スマイルであーんしてくるメイ。
一瞬ドキッと胸が跳ねた後、無性に恥ずかしくなりつつも従う他なかった俺である。あーん。
「JK奥さんの手料理おいし? よかったね~アナタ♪」
「ぐぬぬ……小悪魔JKめ……美味ぇっす……!」
悔しがりながらもぐもぐする俺を見てケラケラ笑い出すメイ。
というわけで、なぜかメイの水着選びに付き合うことになってしまったのだった──。




