エッチな自撮りをミスるJK
『今度友達とプール行く予定でさー、去年の水着を引っ張り出してみたんだけどやっぱ小さくって。ほらメイちゃんまだまだ成長期だし? 腰回りはともかく、胸がキツイんだよねー』
「おお、そ、そうなんか」
『でっ! ここは思いきっておニューの買うべきかなって! でねでねっ、参考がてらおにーさんはどういう水着好きかなーって思ってさ! アレどうどう? ってか写真見た?』
「あ、ああ、そういうことか。一応見たけど俺の意見なんて参考にならんだろ。好きなの着ろ好きなの。 てかいきなりあんなの送ってくんなよ!」
『アハハハ! おにーさんにはちょっと刺激が強かったかな~? これくらいの自撮り、今時の子ならみんな彼氏に送ってるよ~? もっとエロいのもね~?』
いつもの小悪魔モードでからかうような声に、電波の向こうでメイがどんな顔をしているのか容易に想像が出来て「ぐぬぬ……!」とうなる俺。そもそもメイそのものが気になって水着のデザインとかまったく目に入ってなかった。つか今時の子マジかよ! あれよりエロいの送ってんの!? いいとこのお嬢様が何やってんだ! 風紀はどうなってんだよ風紀は!
するとメイはひとしきり笑ったあとで言った。
『ねっ、メイちゃんのキュートでセクシーな水着姿みたら元気出たでしょ?』
「……は? な、なんだよ。ひょっとしてアレ、俺のためだったのか?」
『当たり前じゃん。男の人はエッチなの見ると元気でるんでしょ? おにーさん真面目だからさー。仕事辞めたばっかでやっぱちょい引きずるじゃん? ま、少しくらいサービスしてあげてもいっかなって。それにほら、模様替えとか忙しくしてたら落ち込む時間もないじゃん』
「……メイ、もしかして、そのためにあんなこと言い出したのか?」
スマホの向こうから、またメイの『えへへ』という声が聞こえた。今度はちょっと照れくさそうに。
『でも別にそれだけじゃないよ。やっぱ片付けとかお掃除はちゃんとしとくべきだと思ったし。実際やってよかったっしょ?』
「それはそうだが……だからってお前なぁ。けどま、わざわざありがとな」
『えっへへ。それじゃ今日は特別に、メイちゃんがもぉっと元気になれる魔法かけちゃおっかなー?』
「魔法? なんだよそれ」
『あのね、もしもイイお仕事見つかったらさっ』
と、そこでメイの声がひそひそと小さくなり――
『ご褒美に……もっとエッチなの送ってあげる♥』
ささやくような甘いつぶやきに、ドッキンと心臓が跳ねる俺。
すると電話の向こうでメイがケラケラ笑い出した。
『なんちゃってー♪ ウソに決まってんじゃーん! あーおにーさんゼッタイ想像したでしょ! あれよりエッチなのってもうハダカじゃんハダカ! あたしみたいな純真無垢で優しい天使みたいなJK相手に何期待してんのドスケベー!』
「は、はっ、はあぁぁぁ!? お、お前なぁ!」
『アハハハハ! はぁ~今日も楽しくおにーさんをからかったことだしもう寝まーす♪ 夜更かしはお肌に悪いですし!』
「さっさと寝ろ!!」
『ぷぷっ照れてる照れてる♪ まっ妄想の中でなら別になにしてもらってもいいから安心していーよ♪』
「なんもしないわ! いいから寝ろじゃあな!」
『アハハハ! ま、おにーさんならきっとだいじょぶだって。自信持ってこ! じゃねおやすみー』
「えっ、あ、お、おうっ。おやすみ!」
そうしてメイとの慌ただしい通話は終わり、スマホの画面に目を戻す。メイから最後におやすみスタンプが送られてきた。
結局のところ──メイが言いたかったのは、最後のあの言葉だったんだろう。
「ったく、JKが大人相手に気ぃ使うなっての…………ん?」
そこでもう一度メイの自撮り水着写真をマジマジと見つめる俺。
さっきはいきなり電話が来て気付かなかったが……。
ずり落ちないように胸と水着を支えてる腕の隙間。それに親指のところ。
白いビキニの影からわずかに見えてるこの薄桃色のものは――ま、まさか!?
「って消えたぁっ!?」
そこでいきなり画面からメイの写真がパッと消えてしまう。メッセージに送信取消のログが残っていた。
すると再びメイからの着信。驚きすぎて手元から落としたスマホを拾い、応答する。
『おにーさんっ! さ、さっきの写真消したからね! 保存とかしてないよね!? ねっ!?』
「は、はぁっ!? し、してないけど!?」
『あっ、そ、それならいいの! えっと、ととっ、とにかくおにーさんにはちょっと過激すぎて眠れなくなっちゃうかもって思って! だ、だから消しました! 気にしないでいいから! それじゃねおやすみ-!!』
それだけ言って通話は切れる。
メイのヤツ、珍しくめちゃくちゃ焦ってたな……。
「それにわざわざ保存の確認してきたってことは……さっきのって……やっぱ……!?」
俺はもう二度と見られない記憶の中だけに存在する先ほどの自撮り写真を思い出し、メッセージログに残された送信取消の文字列を見つめて。
「…………保存しときゃよかったかぁぁぁ……!」
思わず固く手を握る。
正直そのときは面接のことなどさっぱり忘れていたのだった。




