正しく
この回から、ゲームが始まります。
提示されるルールは単純ですが、逃げ道はありません。
スピーカーから流れるノイズが、耳に残る。
???「ようこそ。」
機械的な声。
感情のない、冷たい音。
誰も動けない。
さっきまでのざわつきが嘘みたいに、空気が固まっている。
???「これより、ゲームを開始します。」
つばさ「……ゲーム?」
苛立ち混じりの声。
だが、その言葉に答えるように――
部屋の中央に、音もなく“それ”が現れた。
鍵がかかった七つの箱。
それぞれに、名前が書かれている。
自分の名前。
見間違いじゃない。
吉野「、、、なんだよこれ」
声が震える。
???「この部屋にいる七名には、それぞれ“秘密”があります。」
一瞬、息が止まる。
???「皆さんはすでに、その内容を理解しているはずです。」
沈黙。
誰も否定しない。
できるはずがない。
さっき見せられた“あれ”が、頭から離れない。
???「ルールは単純です。」
スピーカーの声は、淡々と続く。
???「自分の秘密を、この場で“正しく”自白してください。」
“正しく”
その一言が、妙に引っかかる。
ゆうや「……は?」
ゆうやが低く笑う。
ゆうや「ふざけんなよ。そんな――」
言いかけて、言葉が止まる。
???「全員が自白すれば、解放されます。」
めい「、、、逆に言えば?」
???「一人でも自白しなければ、解放されることはありません。」
空気が、凍る。
つばさ「いや、意味わかんねぇって」
苛立ちが滲む。
つばさ「そんなの、誰が言うんだよ」
その通りだった。
言えるはずがない。
???「なお、“正しくない自白”は無効とします。」
ゆうや「、、、正しくって、なんだよ」
誰に向けたわけでもない、低い声。
答えは返ってこない。
その代わりに――
ピロン。
ひめかのスマホが鳴る。
???「虚偽、または不完全な内容は、すべて判定されます。」
吉野「……判定って、誰が」
問いは、最後まで言えなかった。
ピロン。
また、ひめかのスマホが鳴る。
???「ヒントは、随時送られます。」
スピーカーが続ける。
???「時間が経つごとに、より正確な情報が開示されます。」
???「隠し続けることは、不可能です。」
誰かが、息を呑んだ。
逃げ道が、ない。
???「では、始めてください。」
その一言で、全てが変わった。
沈黙。
誰も口を開かない。
当然だ。
言えば終わる。
言わなければ――どうなるか分からない。
その時。
ひめか「……ねぇ」
全員の視線が向く。
ひめかはスマホを見たまま、震えていた。
ひめか「これ……ほんとに……」
声が途切れる。
そして、ゆっくり顔を上げた。
その表情を見て、誰もが理解する。
――これは、冗談じゃない。
読んでいただきありがとうございます。
“正しく”とは何か。
そして、沈黙は本当に安全なのか。
次回、最初の変化が訪れます。




