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好感度が見えても上手くいくとは限らない  作者: かませ犬


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4.質問と叶う筈のない初恋

 俺の中で歳は近いだろうと、勝手に予想していたので正直に言ってびっくりした。けど、友達関係に年齢など関係ないと俺は考えている。


「なるほど⋯⋯」


『びっくりしたよね?』


「確かにしましたけど、それよりも気になる事がありまして」


『なに、かな?』


 猫大福さんにしては珍しく不安そうな声だ。


 その声のせいで、本当に聞いていいのか迷ってしまう。年齢と同じようにセンシティブな話題だと俺は思っている。さて、どうしたものか。


『聞にくい事かな?』


 俺が聞くかどうか迷っていた為、無言の時間が一分ほど続いた。すると、沈黙に耐えきれなかった猫大福さんが、俺の心を読んだように聞いてきた。


 流石に分かりやすかったか。


「正直に言って⋯⋯」


『答えられる範囲で答えるからさ、一応聞いてみてよ』


「いいんですか?」


『うん。その代わり⋯⋯後でボクの質問に答えて貰ってもいいかな?』


 猫大福さんの質問? 何を聞かれるか想像もつかないな。変な事は聞いてこないだろうという信頼はあるけど⋯⋯。


 とにもかくにも、先に猫大福さんが言うように俺の気になる事を聞いてみよう。答えるかどうかの判断は猫大福さんがしてくれるので幾分か気が楽だ。


「それじゃあ、聞きますね」


『どうぞー』


「猫大福さんと俺がゲームで知り合ってから、毎日のように遊んでいるじゃないですか⋯⋯」


『前置きから入る感じね⋯⋯⋯うんうん。ウイングさんと出会ったのは半年前かな? 野良で一緒になって、思ったより意気投合したからランクを一緒に潜るようになったのがきっかけだったね』


 猫大福さんとの出会いに関しては彼女が言ってくれた通りだ。


 『vertex(ヴァーテックス)』という最近は流行っているゲームがある。


 最大60人、3人1組の20チームで戦うオンラインFPSバトルロイヤルゲームで、友達と組んだり見ず知らずの他人と3人1組を作って20チームの頂点であるチャンピオンを目指すというゲーム。


 俺の場合は友達がいないので、見ず知らず他人、通称野良の人とパーティーを組んで遊んでいた。その時、たまたま一緒のパーティーになったのが猫大福さんだ。


 最初の印象は礼儀正しい人。一緒にプレイして騒がしいけど楽しい人って印象に変わったかな?


 その時のマッチングではいい所までいったけどチャンピオンになれずに終わった。正直に言って悔しい思いもあったけど、それ以上に猫大福さんの反応が面白くて⋯⋯久しぶりにゲームを楽しいと感じた。


 それもあって俺から一緒にやりませんかと、お誘いして一緒に遊んでいるうちに別ゲーで遊ぶくらいには仲良くなった。


「あの時、猫大福さんと出会えて良かったです。本当に楽しかった⋯⋯ありがとうございます」


『それはボクのセリフだよ。ウイングさんのお陰でボクも毎日楽しい時間を過ごせているからね!』


「そう言って頂けると嬉しい限りです。それで俺が聞きたい事というのが⋯⋯あのですね。俺たち毎日遊んでいるじゃないですか?」


『そうだねー。ウイングさんと遊ぶのがボクの一日の日課になっているくらいさ!』


 猫大福さんはまるで疑問に思っていない。そのせいで俺の認識がおかしいのかと思い始めた。


「俺も日課にはなってます。で、一緒に遊んでたゲームによっては夜更かししたりして、遊ぶ時間が変わったりするじゃないですか」


『そうだねー。この間なんて13時間ぶっ通しで遊んで、見事に昼夜逆転していたよ。幸い、ボクとウイングさんの睡眠時間は殆ど同じだからね! ボクが起きる時間にはウイングさんが起きているから互いに待たせたりしないからいいね!』


 引きこもりにあるまじき行いかも知れないが、俺はできる限り規則正しい生活を心掛けている。


 その理由については色々とあるが、一番の要因は体調を崩したくないからだな。ただえさえ引きこもりになって家族に迷惑をかけているんだ。風邪を引いて余計な手間を取らせたくない。


 それでも、ゲームに夢中になって猫大福さん言うように昼夜逆転してしまう時はある。それはまぁ、仕方ないと割り切るとして。


 つまるところ、俺と猫大福さんは一日の殆どを一緒にゲームしている。お風呂だったりご飯だったりで、休憩時間を取る事はあるが基本一緒にゲームをしている。


 睡眠時間も別に合わせている訳ではないが、俺が起きる時間帯にはだいたい猫大福さんも起きている。それもあって連絡すると直ぐに返事が返ってくるので、お互いに遊びやすい関係という訳だ。


 ただ、俺の場合は引きこもりである為、学生や社会人のように時間に縛られる事はない。そんな俺に毎日のように付き合える猫大福さんは、どういう人なのだろうか?


 俺と同じ学生じゃないかなと、予想していたが見事にハズれた。猫大福さんは俺よりも一回り以上年上の大人である事が発覚したからな。


 大人⋯⋯という事は親父のような社会人の一人であるという事だ。社会人ともなると毎日のように仕事をしてお金を稼ぐという苦行をこなさないといけない。


 親父が毎日疲れ果てて帰ってきて、大人は大変だなと他人事のように思っていた。引きこもりになってからは余計にだな。


 それでも大人が働くのは生きる為のお金を稼ぐ為だ。お金がないと人は生きていけない。


 今は親父から送られてくる養育費だったり、母さんの稼ぎであったり、祖父母のお小遣いのお陰で生きてはいけてはいるが⋯⋯いずれは俺も働かないといけないと漠然と思っている。


 引きこもりのままではお金は稼げない。生きていけない。将来を考えれば今の生活から脱却しなければならない。


 おっと、話が随分と逸れてしまった。俺が気になる事というのは⋯⋯俺と同じ生活を送っている猫大福さんは、失礼だが俺と同じ引きこもりなんじゃないかという事だ。


 そうじゃないと俺と同じようなゲーム三昧な生活は送れない。ただ、出来れば違って欲しいという思いもある。


 なんというか⋯⋯俺もそうなる未来があるんじゃないかと想像してしまうから。この生活を10年以上続けてたら猫大福さんと同じくらいの年齢に⋯。


 ダメだ。めちゃくちゃ猫大福さんに失礼な事を考えてしまった。反省しよう。


 正直に言って聞にくい。俺が逆の立場ならどうだ?あなたは引きこもりですか?と直接なり遠回しなりで聞かれてどう思う?


 普通にショックだ。事実である分、余計に心にくる。相手がそんな気がなくてもだ。そう考えると非常に聞きにくい事を質問しようとしているな、俺は。


 とはいえ、ここまで丁寧に前置きを言った以上聞かないのもまた不自然だ。ここはもう単刀直入に聞こう!


「俺は、その引きこもりだから大丈夫だけど⋯⋯猫大福さんは大丈夫なんですか?」


『ん?あー、なるほど!ゲームばかりしてるボクが生活出来ているか心配してくれている訳か!それなら大丈夫だよ、ボク不労所得で生活してるから』


「不労所得?」


『そうそう!親が金持ちな上に親バカでねー。毎年ボクの誕生日にマンションとかプレゼントしてくれるんだよ』


 なる、ほど?


『家賃収入で生活している訳なんだけど、ボクの親が用意した管理会社があるからボクは特に何もしなくていいんだ。だからこうしてウイングさんとゲーム出来ている訳さ』


 おっけー、分かった。


 猫大福さんが俺の想像の範囲外の金持ちって訳だ。そんな人を俺と同じ引きこもりなんて扱いしていい訳がない。


 住み世界が違いすぎる。話を聞いていると震えてくるな。


「そうだったんですね⋯⋯」


『だからボクの事は心配しなくて大丈夫さ。君にその気があるなら⋯⋯ボクが、その、養ってあげるよ』


 ん? ボクが、の後が小声過ぎて聞こえなかったな。


「すみません、最後の方が聞き取れなくて⋯⋯」


『ん!あー大丈夫大丈夫!大した事じゃないからさ!聞き流してくれて問題ないよ』


「そうですか」


『そういうこと! さて!これでウイングさんの質問にボクが答えた訳だけど、さっきの話覚えてる?』


 さっきの話というと、質問に答える代わりに猫大福さんが俺に質問するってやつだと思う。


「覚えてますよ。なんでも質問してください」


『よし、じゃあ、聞くよ⋯⋯』


「どうぞ」


 数秒の沈黙の後、深呼吸するような息遣いが耳に入った。


 猫大福さんが緊張している?


『ウイングさんは、さ』


「はい」


『何歳まで⋯⋯恋愛対象に入るかな?』


「はい?」


 思ってた質問と違った。何歳まで恋愛対象に入る? そんな事を聞いてどうするのだろうか?俺に聞くって事は俺に興味があるって事でいいのか?


 いや、流石にそれはないか。


 猫大福さんはお金持ちだし、立派な大人だ!未成年である俺を異性として見ている訳がない!


 となると何を聞きたいのか分からなくなるな。んー、まぁいいか。そこまで深く考えるような内容ではないだろう。


「そうですね⋯⋯俺は、好きになったなら年齢は関係ないって思ってます」


『関係ない!?』


「はい。俺の場合は初恋が散ったばかりだし⋯⋯恋愛なんかはしばらく考える余裕はないけど、年齢で人を選ぶことだけはないですね」


『そっか!そっか!なら良かったよ!うんうん!いいことを聞いた!ありがとう!』


 やたらとテンションが高い⋯⋯。


 猫大福さんが喜ぶような返答をしたのだろうか? まぁいいか。猫大福さんの機嫌も良くなったみたいだし。


「それじゃあ、話題を戻していいですか?」


『ん?話題?』


「はい。さっきの話の続きですけど⋯⋯俺が母さんの不倫相手の子供って発覚したのが原因で両親は別れたんですよ。俺自身もショックだったけど、それ以上に母さんに言われた言葉がずっと腑に落ちなくて」


『ウイングさん⋯⋯話の転換にボクがついていけてないよ⋯⋯気付いてる?』


 あの日までは、俺は母さんの事が家族として好きだった。けど、あの発言で俺の中の何かが壊れた。


「お前のせいで不倫がバレた。お前が生まれてなかったらって⋯⋯不倫しておいてどの口が言ってんだってなりますよ⋯⋯本当に腹が立つ」


『おっけー!ウイングさんの怒りはよく分かった!けどね、申し訳ないんだけど5分だけ時間をちょうだい!浮かれ気分だったボクが聞くには少しばかり話が重いね!うん!理解するからちょっと待ってね』


 猫大福さんの反応から察するに、やはり俺の家族の話は重たいらしい。猫大福さんからしてもこんなヘビーな相談とは思ってなかっただろうな。


 失敗したなと、強く思う。


 さて、どうしようか。


 俺としては失恋話も聞いて貰おうかと考えていた。猫大福さんも俺の恋愛対象とか聞いていたから興味があるんじゃないかなって。けど、さっき反応⋯⋯。


 やめておこう。それに聞いても面白くないだろう。


 俺の初恋の相手である幼なじみが───同性愛者(レズビアン)だったなんて。

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