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好感度が見えても上手くいくとは限らない  作者: かませ犬


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11.最悪の想定と約束

 なんやかんやあって貞操を守り抜いた俺の目の前で、(あすな)が正座をしている。


 先日の飛鳥と違うのは、正座している明日菜から反省の色がまるで見えないところだろう。あたしは悪くないと、不満そうな顔が言外に告げている。


「兄妹は結婚できない」


「もう一度」


「兄妹は結婚できない!」


 昨日の今日で、別の妹に同じ事を言わせる事になるとは流石に想像していなかった。


「って、んな事分かってるよ」


「そうだな。分かってるから、たちが悪いんだ」


 明日菜は最初から兄妹であるから結婚は出来ないと分かっていた。父親が違っても母親は同じだからな。


「さっきも言ったろ。あたしの目的は結婚じゃねーよ。体の関係を持って兄貴を逃げ出せなくする事だ」


「それがたちが悪いんだって」


 なんだったらお兄ちゃんと結婚するーって言われた方がまだ可愛げがあった。逃げ道を塞ぐ為に女の部分を手段として使うとか、中学生がしていい発想ではない。


 というより、大前提として近親相姦はNGだ。ただ、面倒なのは行為自体を止める抑止力がない点だ。近親婚は許されていないが、合意があれば行為を行っても罰せられる事はない。


 今回の場合は当然ではあるが、俺に合意がないので届出を出せば⋯⋯。けど、そこまではいってないんだよな。


 明日菜の事は妹として好きだし、犯罪者として捕まえたいという想いは一切ない。だから対応に困る。


「明日菜は、俺に家を出ていって欲しくないのか?」


「⋯⋯⋯⋯」


「そんなに俺の事が好きなのか?」


「はぁ!?そんな訳ないだろ!気持ち悪い想像するんじゃねーよ!兄貴を逃がさない為に仕方なくだ!」


 言い訳がまるで機能していない事に気付いてくれ。


 それと、漫画やゲームみたいに顔を赤くするなんて、分かりやすい変化はないがいつにも増して早口だぞ。


「そういう事にしておくよ」


 これ以上追求しても明日菜の機嫌が悪くなるだけだ。


「とにかく、今みたいに襲ってくるのは止めてくれ。俺は明日菜の事を妹として好きだけど、妹を抱きたいなんて思った事はない」


「⋯⋯あたしはあるのに、兄貴はねーのかよ」


「今のは聞かなかった事にする」


「あっそ⋯⋯」


 妹からの好感度が高いのは兄として嬉しい限りだが、超えてはいけない一線は弁えているつもりだ。


 ギャルゲーとかラブコメの妹キャラは好きだけど、現実にまで性癖を反映する事はない。妹二人の胸がたとえデカくても俺は誘惑には乗らない。男ではなく俺は二人の兄だ。


 悪いが二人の想いには応えるつもりない。親父に顔向けできなくなるしな。


「兄として妹の不安をそのままにしておくつもりはないから、ちゃんと言っておくよ。これから働く事になるけど、まだ家を出る気はない」


()()()


「この先どうなるか分からないからな。断言はできない。けど、少なくとも明日菜と飛鳥の二人が大きくなるまではこの家にいるよ」


「⋯⋯本当だな」


 少なくとも自分の意思でこの家を出ることはない。いくら母さんが嫌いとはいえ大事な妹を残して、逃げ出すような事はしたくないからな。


「約束する。指切りするか?」


「子供じゃないんだから、する訳ねーだろ!」


「それもそうだな」


 小さな頃はよく指切りげんまんをして約束をしたものだが、中学生になると流石にやらないか。その代わりにスマホを俺に向け、さっきの言葉をもう一度言えと明日菜に言われた。


 ボイスレコーダーで言質を取る気満々で笑ってしまったが、それで明日菜が納得するなら良いだろう。


「俺は出る気はないよ。妹たちが大きくなってこの家を出るまでは」


「あたしがずっとこの家にいたら、兄貴もいるのか?」


「出来れば勘弁してくれ」


 明日菜はともかく、飛鳥は本当にそうなりそうで怖い。その時は俺から離れるのが最善な気がするな。


「分かった。ひとまず納得する」


「ありがとう。ただ、絶対じゃないんだよなー」


「なんで?」


「この家の持ち主は俺じゃないからな。母さんに出ていけって言われたら俺は出ていくしかない」


 俺がこれまで引きこもりとして生活出来たのは運が良かったとも言える。母さんがその気になれば俺なんか簡単に追い出す事ができる。


 その場合はその場合で、児童虐待だったりで事が大きくなるし、俺も生きるために祖父母に助けを求める。


 死にはしなかっただろうけど、両親が離婚した時と同程度くらいの大きな騒ぎになっていた可能性が高い。


 そういえば、児童虐待防止法の対象になるのは確か18歳未満だったよな?18歳になったらもう大人だから関係ないって、母さんが俺を追い出す可能性がここにきて浮上してきた。


 普通の家庭ならそうはならない。けど、母さんはやる気がするな。俺が嫌っているように、母さんも俺の事を嫌っている。


 となると、今日の出会いは本当に幸運だったな。まだ働いてもいないから何とも言えないが、引きこもりのまま家を追い出されるのと、就職先がある状態で家を追い出されるのでは天地ほど状況が違う。


 お金を貯めて、最悪にも備えるようにしよう。


「クソババアが兄貴を追い出す?」


「ないとは言えないだろ?」


「ろくに家に帰って来ない癖に一丁前に家長気取りかよ」


 静かに明日菜が怒っている。気持ちは分からない事もない。


 母さんは家に帰ってくる事は殆どない。昨日みたいに忘れ物を取りにきたり、男との約束がない時に不機嫌そうに帰ってくるくらいだ。


 離婚した以上、母さんの男女関係にどうこう言うつもりはないが⋯⋯妹たちの事を思うと悪影響でしかないから止めて欲しい。


 まだ、男を家に連れ込んでいないだけマシと、言えるか。


 ───けど、俺が家を追い出されたら?


 今はないだけだ。この先ないとも言えない。


 想像もしたくないが、母さんが男を連れ込んで⋯⋯妹たちが毒牙にかかるなんて事は?


 考えすぎかもしれない。


 けど、現実に俺が考えていた以上の事が起きていた。


 親父が家にいない今、妹たちを万が一が起きた時、護れるのは俺だけだ。妹を護るのが、兄の役目だよな?


 アニメや漫画に、心を奮い立たせる名言があった。後で読み返そう。主人公みたいにはなれないだろうけど、かっこいい兄にはなりたいからな。


「俺は来年で18歳だし、大人としても扱われる年齢だ。学校に通っていないならとっくに働いていてもおかしくない」


「だから、兄貴は働く事を決めたのか?」


「さっきも言ったけど人との巡り合わせだな。働かないといけないとは思っていたけど、こんなに急な予定ではなかったよ」


「そっか」


 親父に会う目標を掲げ、社会復帰の第一歩の散歩からここまで進展するのは俺も予想外だった。けど、俺にとってはそれが良かったんだと思う。


 引きこもりとして生活が長いと、どうしても自分に甘くなる。辛くなったら直ぐに逃げてしまう。


 自分を変えるには激的な方がいい。それで折れたなら、どの道に俺は同じ道を辿るだけだ。


「心配かけてごめんな。けど、俺は急に明日菜の前からいなくなったりしないから安心してくれ。約束する」


「分かった。けど、もしその約束を破ってあたしの前からいなくなったら⋯⋯」


「いなくなったら?」


 気になるところで言葉を止めて、明日菜が立ち上がったので聞き返すと何も言わずに俺に近寄ってくる。


 首に腕を回して、力で強引に俺を引き寄せた明日菜が俺の耳元で囁く。


「見つけ出して、必ず殺すから」

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