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招聘

 朝目覚め早々に支度すると、師匠とミルフィに見送られて城へと向かう。


 また豪華な馬車に揺られて景色を眺める。すると前方に城が見えてきた。

 門のところで案内状を差し出すとすぐに中に入れてくれた。


 馬車から降りると騎士らしき甲冑を着た人がこちらですと城の中を先導してくれる。


 豪華な扉の前で立ち止まりここでお待ち下さいと言われる。

 

 俺は部屋の中に入る。

 部屋はどんだけ金がかかってんだってくらい絢爛豪華な作りで、ソファにベット、机などが置かれていた。

 広さは二十畳ほど。

 VIP待遇だなぁとしみじみ思う。


 また、隅にメイドさんが控えており、何かあればなんでも申し付けて下さいとのこと。


 それじゃあということで、とりあえず水を持ってきてもらった。

 喉を潤してベットに横になる。


 王様との謁見は午後からとなっていた。それでも、こんな朝から来たのは礼儀ってやつだ。

 俺はその辺詳しくないが、館の執事のステファンからそう聞いたのでそれにならった。


 それにしても暇だなぁ。

 俺はベットの上でひたすらにゴロゴロし、午前中を過ごした。


 昼になると部屋に料理が運ばれてきた。

 泊まっている館の料理も美味しかったが、城の料理はそれに輪をかけて美味くて高級だった。

 おそらく前世のトリュフとかキャビアが使われていた。

 俺初めて食べたよ。ちょっとクセはあるかなと思ったが美味かった。


 そして、料理を食べ終えゆっくりしていると、部屋に数人のメイドが入ってきた。

 なんだなんだと思っていると、お召し物を選ばせて頂きますとのこと。

 一応王様と会うので、俺が持っている服で一番小綺麗なのを選んできたが、まぁ不相応だよね。


 俺はその後着せ替え人形となり服を取っ替え引っ換えした。

 そして、選ばれた衣装は白のタキシードだった。髪も整髪料で撫で付けオールバックにしてある。


 準備も万端でまたしばらく待つ。

 すると午後三時頃、騎士の人が迎えに来た。

 やっとである。

 俺は緊張しながら、騎士の後をついていくのだった。


 しばし歩くと大きな扉の前に来た。

 先導してくれた騎士が脇によけ、大声で叫ぶ。


「ネロ様をお連れ致しました!」


 そうして扉が両脇に控えていた騎士によって開かれる。


 目の前には赤い絨毯がひかれその絨毯の両脇におそらく貴族と思われる人達が並んでいる。

 そして、絨毯の先には階段が数段ありその少し高くなったところに王様と思われる人が座っていた。その後ろには男性が一人控えていた。宰相だろうか?

 王様の両隣には女性が二人。

 おそらく女王と王女だろう。


 俺はゆっくりと絨毯を歩いていく。そして階段の手前十メートル程で片膝をついて頭を垂れた。

 この辺はまたステファンにきいた。

 上手くやれているかは自信ない。


「表を上げよ」


 渋い声に従い顔を上げる。

 王様はセミロングの金髪に黄色の目、威厳のある風格とまさに王様って感じの人だった。

 王様の後ろに控えている男性は五十代ぐらいの品の良さそうな人だ。

 そして、俺から向かって右の女王らしき女性は赤い髪に碧眼、筋の通った鼻、形のいい唇と絶世の美女だった。俺を見て静かに微笑んでいる。

 最後に向かって左の王女と思しき子は多分俺と同じぐらいの歳で、父親譲りの金髪に母親譲りの碧眼とこれまた可愛らしい子だった。俺を見て何故か少し顔を赤くしていた。


「先の魔物の討伐ご苦労だった」


 俺が王様達を観察していると王様がまた渋い声を出した。声は渋いがまだ三十代かな? そんなに歳はとってないように見える。


「はい、ありがとうございます」


「S級の魔物をわずか八歳で討伐しえるとは、そなたのような国民が育ってくれて嬉しく思うぞ」


「身に余るお言葉でございます」


 俺は恐縮しながら返答した。


「して、そんなそなたには褒美をやらねばなるまい」


 すると王様の後ろに控えていた男性が持っていた紙を顔の前に広げそれを読み上げる。


「先のS級の魔物、巨大蜂を単身討伐しえたとしてネロを騎士爵に叙爵し、報奨金一千万リルを与える。また、リーネット出身であることを鑑み、以降ネロ・リーネットと名乗ることを許可する」


 男性が紙を下ろす。


「そういうことだ。今後もこの国の為励んでほしい」


 叙爵? えっ叙爵って貴族とかになるあれ? え? 俺貴族になったの?

 ……嫌だよ。


 俺がなかなか返事をしないので、周りがざわつき始めた。


 まっマズイ! これはイエスと言わなければいけない空気だ。

 もし、断れば面倒なことになる。


「もっ申し訳ありません。あまりにも多大な恩情に言葉を失っておりました。今後も国の為励んでまいります」


 そう言うと王様は満足そうに頷いた。


「以上だ。下がってよいぞ」


 王様が退出の命を出す。


「はい」


 俺は項垂れそうになるのを必死に堪え退出したのだった。


 あてがわれた部屋に戻りベットにダイブする。


 面倒なことになった。まさか、貴族になるなんて。

 でも、確か騎士爵って名誉貴族みたいなもので、特に制約とかはなかったような……ただ、国のものになったのは確かだ。

 だが、待てよ。ここはポジティブに考えよう。

 国のものになったということは、教会も下手に手出し出来なくなったということだ。不当な扱いをすれば国と揉める。それは避けたいだろう。

 なら、これで良かったのではなかろうか。国の庇護下に入ったと思えばいいのだ。ただ、戦争などの場に駆り出されることはあるかもしれない……やっぱり面倒じゃん!

 あーS級冒険者になれるんだからそれで十分だったのにこの仕打ちー! 女神にもう一回会ったら文句言ってやる!


 それから俺は夜の晩餐会まで、前世で読んだラノベを参考に貴族社会について思い出せる限りを思い出していた。

 だが、その辺の難しいところは流し読みしていたため、あまり覚えていないことに絶望したのだった。


 夜の晩餐会。

 絢爛豪華なホールのようなところに着飾った貴族達が集う。

 音楽が演奏され、中央ではダンスが踊られている。

 部屋の端にはこれでもかと豪華な食事の数々。


 俺はその食べ物の前で好きな料理を皿に山盛りに盛り付けていた。


 うっ美味い! 昼食も美味かったがこれは一際だな。

 シェフの気合いを感じる。


 俺がバクバクと飯を食っていると、入り口の方から大声が響く。


「国王陛下と女王殿下、第二王女様のご入場です!」


 扉が開き昼間見た三人が入って来た。 

 三人は奥の方へ歩いて行き、設られた椅子に座った。そこからホールの様子を見ていた。


 しばらくすると、貴族達がポツポツと王様や女王、王女に話しかけていた。


 この場は王様達と貴族達にとって王様達と話せる数少ない機会なのかもなぁ。


 なんとなくそんなことを考えながら、俺は料理と再度向き合った。


 しばらくすると、料理に夢中な俺に後ろから声をかけてくる存在がいた。


 誰だ? と思って振り向くとそこには王女がいた。

 王女はカーテシーをすると俺に言った。


「私と一曲踊って下さいませんか?」


 どうしてこうなった。

 俺は今王女様とダンスをしている。

 ダンスなんかしたことないので、断ろうとしたが、不敬にあたると思いしぶしぶオーケーした。

 てか、この国の王女ってこんなフリーなのか? もっとこう崇拝的な存在で、神聖不可みたいなイメージだった。

 王様達も貴族と普通に話しているし、これがこの国の距離感なのかもなぁとそんな感想を抱く。


「あの……楽しくないですか?」


 俺が考えごとをしていると、王女が上目遣いで問いかけてきた。

 もう少し大人になったら凄まじい破壊力を持ちそうだ。


「いっいえ、楽しいですよ。ただ、ダンスに不慣れなもので王女様にご迷惑をおかけしないかと思いまして」


「そんなことはありません。お上手ですよ」


 それはないだろう。さっきから俺は何度も王女の足を踏みかけてる。

 王女はやさしいんだな。


「なんで僕なんかと踊って下さってるんですか?」


 そのやさしさに甘えてか、俺は不思議に思ったことを聞いていた。


「同じ歳で素晴らしい行いをした人がいると聞いてとても興味が湧いたんです……私とは全然違うので……」


「僕はそんな大層な人間じゃないですよ。それに王女様も素晴らしいじゃないですか?」


「素晴らしい?」


「はい、こんな僕のダンスをやさしくリードして、上手だなんて言ってくれる。僕はその言葉に救われますよ。僕が多くの人を救ったのは事実かもしれません。でも、救うのが沢山の人だろうと一人だろうと救ったことに変わりはありません。僕と王女様は同じ八歳の子供ですよ」


 俺はニッと笑う。


 王女様は顔を赤くして俯いてしまう。


「あの、なら私とお友達になってくれませんか?」


 王女様がか細い声で俺にそう言った。


「こんな僕でよければ」


 それからしばらくは無言が続きダンスは終わった。


 王女は別れ際にまたカーテシーを行った。


「名乗り遅れましたね。私はリーファ・ルクラ・リストリア。どうぞリーファと呼んで下さい」


「じゃあ僕のことはネロと」


「わかりました。ではまた、ネロ様」


「はい、また」


 その後、王女と踊ったあの少年はなんだということになり、例の魔物を討伐したものだと知れると、知らない同い年ぐらいの貴族の女の子が続々とダンスを申し込んできた。


 俺はそれを時間いっぱいまで相手し、晩餐会は終わった。


 帰りの馬車内で改めて思う。

 貴族なんかなりたくなかったよぉ……


 帰ってから師匠とミルフィに騎士になったと言うと大層驚かれた。

 しかし、当たり前だが俺に対して態度が変わることはなく、そのことに安心感を覚えた。


 次の朝、例の豪華な馬車でカサンドラへと帰る。

 二週間の旅路は行きと変わりなく平和に進みカサンドラに戻ってきた。


 一カ月ほどだったが、なんだか久しぶりな気がする。

 俺は懐かしい空気をいっぱいに吸い込み、帰って来たことを実感するのだった。

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