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第30話_表彰式です

-- 20160723 18:53追記 --

本当は予約投稿するつもりでしたが間違えて即投稿してしまいました。

削除するのもアレなので今日の分の投稿はこの話、ということでお願いします。

【それでは表彰式に移りたいと思います。上位入賞の選手の方は舞台に・・・舞台跡地に集合してください】


シュウとフィアが握手を交わしていると司会者の声が響いてきた。

途中で言い方を変えたのはシュウのせいで舞台が最早舞台とは言えない状況を晒しているためだろう。

これには会場中全員が苦笑いである。

さすがのシュウも悪いことをしたなぁ、と思いつつ舞台跡地中心あたりで手を地面につけた。

そのまま魔力を流すと舞台の破片を巻き込みつつ地面が盛り上がり始めた。

その光景に会場中が息を呑む。

シュウはだいたい元通りの大きさ程度で地面を盛り上げ表面を平らにならしていく。

ついでに元の舞台よりも固く仕上げて完了である。

表彰式を行うには殺風景、というかあまりにボロボロだった舞台だが元通り以上の出来栄えとなった。


【・・・えー、シュウ選手が舞台を直して?作って?くれましたので予定通り舞台に集合してください】

【ワハハハ。さすが小僧じゃ。あれほどの戦いを見せてくれた上にこんな芸当までやりおるとはのう】


「さすがシュウですね」

「綺麗な舞台が完成ですねぇ」

「やりおるわい」


会場中がポカンとする中反応する者は反応しているが、出来ないものは出来ていない。

シュウはそんな会場を見渡しながら、


(歓声を上げたり静かになったり忙しいなぁ)


などと思いつつ、自分のせいであることなどまるで気にした様子がないのであった。


◇◆◇


【それでは改めまして、表彰式を始めさせていただきます。表彰は上位3名の選手に獣王様自ら賞品を渡していただきます】


ようやく会場中の雰囲気が元に戻ったところで表彰式が開始された。

舞台上には司会者と3人の選手、そして獣王のみが上がっている。

本来であれば国の王が1人で人前に、それも武器を持つ者の前に出てくるなどありえないが、獣王がむしろ1人の方が強いし、仮にシュウが相手では護衛が何人いようと意味はないためという意味もある。

更には獣王が事前にシュウやフィアとの面識があり、人となりをある程度把握できているためむしろ舞台上の方がどこにいるよりも安心出来るという面もある。

その獣王はシュウに対して賞賛半分、呆れ半分といった表情を浮かべつつ話しかけてきた。


「はぁ、元から強い強いとは思ってたけど予想の遥か上をいったわねぇ」

「どうも」

「ちょっと強すぎて賭けの方が盛り上がらなかったけどね」

「そういえばそんなのありましたね。獣王様は賭けられていたのですか?」

「勿論アナタに賭けていたわ。全然儲からなかったけどね」


一応聞いてみたらある意味予想通りの回答が返ってきた。

一国の王が賭けなどに参加するな、と言いたいところだがこの獣王であれば納得できる。

とりあえず損はさせなかったようなので良しとしよう。


「そっちのフィアちゃん?だっけ。怪我はもういいのかしら?」

「あ、それほどじゃなかったんで大丈夫っす」


シュウの回復魔法に関してはあまり宣伝しないほうがいいので言葉を濁しておく。

それならば試合終了後全員が見ている間で治療するな、という話だがさすがに放っておくには少々傷がすぎる状態だったため、あまり目立たないように魔法を掛けていたのだ。

しかしそれを素直には言えないための措置である。


「・・・んー、まぁいいわ。元気ならそれはそれで」


獣王は何かに気づいたような表情を浮かべたがすぐに元の表情に戻った。

シュウは気づかれたかなぁ、と思いつつも特に表情を変えることはなかった。

恐らく獣王は何か気づいてもそれがシュウの不利益に繋がるのであれば黙っていてくれるつもりなのだろう。

おとなしくそれに従うことにする。


「さ、そろそろ長い話も終わるでしょ。さっさと賞品をあげちゃうわね」


そう、この会話は司会者がこれまでの戦いを振り返りつつ観客を煽っている最中に行われていたのだ。

本来それをおとなく聞いていなければならないはずの出場選手が会話をしているなど言語道断だが相手が獣王では司会者もスルーせざるを得ず、丁度一通りの話が終わったあたりでシュウたちも会話を切り上げたのだ。


【それでは獣王様、よろしくお願いします】

【分かったわ。それじゃあ3位の人からやっちゃおうかしらね。・・・はい、これ。頑張ったわね】


3位の選手に物凄くあっさりと賞品を渡す。

あまりのあっさりさ加減にびっくりしているが観客の誰もが早くフィアやシュウの番にならないかと考えているのは明白でありおとなしく引き下がるしか無かった。

他の2人がすごすぎたとはいえ3位にまでなったのにあんまりな扱いに少しだけ泣きたくなったのはここだけの話である。


さて、次は準優勝のフィアの番である。

彼女はシュウと違い、未だ獣王の前に出ると少しだけ緊張感が出る。

獣王としては別に何かするつもりはないのだが、同じ獣人としての格の違いのようなものを感じてしまわずにはいられないのだ。

まぁ、獣王からしてみればまともに戦えば自分が勝てるかどうか分からないので畏まられても少し居心地が悪い。

この辺は時間が解決してくれるのを待つしかないだろう。


【じゃあ、はい、これ。楽しませてもらったわ。でも・・・そうねぇ。それだけじゃあちょーっと足りないような気がするのよねぇ】


同じくあっさりと賞品を渡すがここで予想外のつぶやきが漏れた。

不思議に思って獣王を見ていると彼は何か閃いたような表情を浮かべ、先ほどとは違いもとに戻すことはなかった。

しかしフィアに対してはそれ以上何も言わず次のシュウを見ていた。

シュウは嫌な予感がしつつも前に出ないわけにはいかず、しょうがなく獣王の前に出た。


【さて、じゃあ優勝したシュウくんにはこれあげちゃうわね】


そう言ってこれまでどおり賞品を渡してくる。

中身が何か不明だがフィアのものよりも少し大きかった。

それはいい。

それだけは終わらせない雰囲気が獣王からは漂ってくる。

ニコリと笑っている獣王に合わせてこちらも笑ってみる。

笑い合っているのだから何を考えているのか知らないが見逃してくれ、という目線を込めて。

だがシュウのそんな願いは通じず、獣王がそのまま口を開く。


【じゃあここからは私個人の話をするわね。皆も知っての通り私は強い人が大好きなの。そして強い人を見つけるのにこの大会は最高。それで優勝するような人とこうやってお話するの。それが何よりも楽しみ】


獣王が観客に向かい話している。

観客も獣王の最後のスピーチは最早慣れたもので何が起こるのか大体分かっている。

これは毎回選手の像を作る時の決まり文句であり、それが始まったということはシュウの像が建つことは確定事項である。

それを予想してしまったシュウはげんなりとしているし、フィアに至ってはニヤニヤとシュウを見ている。

これはシュウをからかうネタが出来たぞ、と。

しかしそんなフィアの考えはもろくも崩れ去ることになる。


【でもね、今回は違うの】


ここで獣王がいつもと違う事を言い始めた。

観客も少し不思議な顔をしている。

今まではここでサラッと像を作ることを宣言し、選手が恭しく受けるか驚くかのどちらかの反応を見せることになる。

それがどうやらいつもとは違うらしい。


【今年はね、素晴らしい戦いを見せてくれたのがもう一人いるじゃない?】


獣王のその発言により観客は何を言わんとしているのか分かった。

それは同時にシュウやフィアにも伝わり、シュウは一転凄くいい笑顔、フィアは絶望が顔に貼り付いた。


【ということで今年はシュウ君とフィアちゃんの2人の像を建てちゃいまーす】


そして獣王がとどめを刺す。

シュウはもう確定だったにしてもフィアを巻き込めたことが嬉しくて仕方がない。

人の不幸を喜ぶなど人格を疑われるがこのくらいであれば問題無いだろう。

というかこれは不幸には入らないのでセーフ、とシュウは自己弁護を完結している。

2人の像が出来ることを宣言され、観客は沸き立っている。

そして舞台上には1人を除き皆いい笑顔で立っている。

1人の絶望等それらがすっかり洗い流してしまっていた。


表彰式の様子でした。

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