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半強制結婚宣言っ!~女々しき王子と花屋の少女~  作者: 歌月碧威
第二章 新婚旅行と奪われたキス
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異国の騎士

……もしかして異国の人?


私を庇ってくれている男性を見てなんとなくそう思った。

彼はストーガル語で貴族を戒めているけれども、それには違和感を覚える。

どことなくリズムが違う。

所々に散りばめられたファーナス語に近いそれ。もしかしたら彼の母国語のイントネーションが紛れ込んでいるかもしれない。


そんな事を頭の片隅で思いながら彼の背中を見入っていると、「おい、大丈夫か?」という声が降って来た。

彼は引き締まった腕で、杖の柄を持ちながら体を捻りこちらを振り返っている。


――ナル語だっ! もしかして、西大陸出身の人かな?


やっと彼の顔を見られたのだけれども、やっぱり傭兵等の職業に従事している人なのかもしれない。

それは服装や体つきだけでなく、その顔立ちを見て更に感じた。


深い顔は実に雄々しい。短く刈り上げた髪と同じ漆黒の瞳は、眼光が鋭い。

だけれども、どこか優しさも含んでいた。


腕も体もだが、全体的に造りが大きい。身長なんて旦那様よりも高いし。

年は私よりも、かなり上っぽい。

イレイザ様よりちょっと上か同じ年ぐらいみたいだから25前後ぐらいかな?


彼が纏っている雰囲気は、いくつかの戦火を越えて人生を送ってきましたと語っているかのよう。

そのため、なんだか精神的にも肉体的にも頼りがいがあるように感じてしまった。


「おい?」

私が返事をしなかったためか、その人は再度尋ねてきた。

それに対し慌てて「大丈夫です」と声を発し、すぐに隣にいる少年の様子を窺う。

だが、少年がニイゲル国の子供だったことにはっと気づいた。


――すっかり忘れてしまっていたけれども、言葉が通じないじゃんっ!


そのため身振り手振りのジェスチャーでやりとりをしようと手を上振りあげれば、

「XXXX」と代わりにその青年が少年へと訊いてくれた。

それから二人でいくつか言葉を交わすと、また私達に背を向けてしまう。

そして背に隠れて見えない貴族へ向かって「XXXXX?」と告げ、何か胸元取り出すそぶりを見せる。


それが何か私の方からでは確認出来ない。

でも貴族の斜め後ろに居た従者の顔を真っ青に変えたので、貴族すらも服従させる効力を発揮するものだと思う。


何をみせたのかな? とぼんやりと想像していると、横目に貴族が慌てて走り出し馬車へと逃げ込んでいくのが見えた。そして後を追うようにその従者も。

なんだったのだろうかと首を傾げならそれを注視していたら、「XX!」と突然第三者の声が響き渡る。

それはまたまた異国の言葉だった。


え? とそちらへ視線を向ければ、男性が佇んでいた。

それは純白の騎士だ。

その人は一つに束ねたスモーキークォーツ色の髪を靡かせ、こちらに駆けつける。

それが段々と近づいてきて気づいた。この人が女性だったことに。


先入観で騎士服に身を包んでいたから、てっきり男性だと思っていた。

けれどはっきりとしてくるシルエットは、女性らしいラインがくっきり。

それに化粧もしているみたい。すごく綺麗な人。


身に纏っている衣服が上質なため、どうやらこの庇ってくれた男性の主なのかもしれない。

彼女はこちらにやってくると彼の傍に立ちに二・三語しゃべると、今度は視線をこちらへ。

かと思えば、しゃがみ込んで声をかけてきた。


「XXXX?」

「……XX」

それに対し少年は返事を出来たが、私は「ごめんなさい、言葉……」とつい、

身に馴染んだナル語で申し訳なく告げるだけ。


――……こんなことになるなら、アイリスさんに教えて貰えば良かった。


項垂れる私に、「ねぇ」と聞き慣れたナル語が。

それにゆっくりと顔を上げると、あの純白の騎士の笑顔が迎えてくれた。


「これなら平気かしら? さっき貴方が話した言葉、ナル語だと思ったのだけれども……」

「あっ、はい」

「怪我はない?」

「無いです。ありがとうございます」

「偉いわ、貴方。子供なのに、しっかりと年下の子を守ってあげて。しかも相手は貴族なのに」

「え」

その女性が話しているのは、たしかにナル語。

でもおかしい。上手に翻訳出来ているはずなのに、なんだか私が子供扱いされているように聞こえる。


恐らく純白の騎士は、見た感じは私と同じ年ぐらいのはず。

それともこの女性は私が想像しているよりも、年上なのだろうか。


「……すみません。私、十七です」

と、一応自己申告してみた。


すると、

「えっ!? 同じ年っ!?」

「はぁ!?」

と、その発言は私の前にいる女性だけでなく、庇ってくれたあの青年も驚愕の声を上げてしまう。

しかも二人共何か珍しい物でも見るように、私の事を上から下まで見つめている。


――……やっぱり、下に見られていたんだ。


「嘘だろ。お前、ミリアと同じだと?」

あの青年がしゃがみ込み、純白の騎士と私とを交互に視線を向けている。


なんて失礼な! 助けてくれた恩人だけれどもさ。


でもここで一つわかった事がある。あの騎士様の名前が『ミリア』さんで、やっぱり同じ年だということ。


「私、正真正銘の十七歳です! それより、その少年は大丈夫ですか?」

私は隣にいる少年へと視線を向けた。

むき出しの腕からは、擦りむいたらしく血が滲んで痛々しそう。


「えぇ。一応先ほど話を訊いたら、彼は大丈夫と言っていたわ。でも、病院へ連れて行きます。

本当に酷いわよね。ただ目が合っただけで難癖つけるなんて」

「えっ!? それだけで蹴られていたんですか!?」

「そうみたい。元々あの貴族は悪評ある人物。そんな相手を野放しにしているなんて……

しかし、本当にひやひやものだったわ。また、ア……――」

「おい、ミリア」

騎士の言葉を遮るように、青年が口を挟んだ。


「早く病院へ。俺はこいつと少ししゃべったら宿へ戻る」

「えぇ。そうですね。了解致しました」

その純白の騎士は少年を抱き上げると、軽く会釈しそのまま去ってしまった。

そして残されたのは、私と青年のみ。

なんだろう? 彼の視線が酷く気になる。

じろじろと見られているせいかな?


「なぁ、お前。本当に十七か? 明らかにもっと下だろ」

その問いに「また引きずるの!」と声を荒げようとしたら、代わりに「グーッ」とお腹がなってしまった。さすがにそれには顔から火が出そうになってしまう。


な、なんでこんな時に……


「なんだ、お前腹減っているのか?」

「減ってません」

「いや、空かせているだろ。今の音」

「……」

だって、昼まだ食べてないから。

当初の予定では旦那様とを町散策してそのまま昼食だったのに。


「取りあえず、飯食いに行くか。美味い所あるんだ」

「いいです! 私、その持ち合わせが……」

「んなもん心配するな。奢る。俺も腹減っているからついでだ」

でも、さすがに見ず知らずの人から奢って貰うのはちょっと。

それにどちらかと言えば、こちらが奢らなければならない方だ。助けて貰ったお礼に。


「よし、善は急げだ。行くぞ」

「は? ……って、ええっ!?」

ふわりと体が地面から浮いたかと思えば、丸太のように太い腕に抱き上げられてしまっている所だった。





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