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半強制結婚宣言っ!~女々しき王子と花屋の少女~  作者: 歌月碧威
第二章 新婚旅行と奪われたキス
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新婚旅行計画

月日が経つのはあっという間だ。

私と旦那様が出会って結婚したのが、チューリップやカーネーションが店先に並ぶ季節の頃。あれからもう半年が経過。

偽装結婚の目的の一つであった孤児院の寄付金は、旦那様がこちらの言い値の倍にしてくれていた。

そのおかげで建物の補修だけでなく新しい井戸も掘る事ができ、生活もより快適になり万々歳。

だけれども院長からお礼と結婚の御祝いの手紙が届いた時は、心がちょっと痛んだ。


偽装結婚でも真実の愛になればと思うけれども、旦那様は元婚約者の事を寝言で愛してるというぐらいにまだ想っているし。

お互い本当の夫婦になりましたというのは、どうやら私達には遠い物みたい。

だからこのまま共同生活者として暮らしていくのかなぁって思っていたんだけれども、

ちょっと最近風向きが変わってきたみたい――


「新婚旅行?」

「うん」

兄さんは伝票を整理している手を休め、こちらへと視線を向けてきた。

それ受け止めながら私は手にしていたマグカップをテーブルへと置くと、兄さんが座っている席の反対側へと腰を落とした。


ここは一階奥にある事務室。

伝票整理や配達の確認作業等の事務作業は、ここで行う。

あとは休憩とか昼も。

ここにいるとお客さんの声に気づかない時があるけれども、店先にはお客さんが来た時に気づくように呼び鈴が置いてあり、それを鳴らして貰っている。


「屋敷での生活も落ち着いてきたし、羽伸ばしに行きませんか? って。旦那様の研究所では、結婚して一年以内なら新婚旅行長期休暇があるんみたいなの」

「あぁ、そう言えばヒスイ達まだ行ってなかったな。いいぞ、行ってこい。店の事は気にするな」

「それがさ、旅行先が結構遠いの。行先が水上楽園だからさ……」

水上楽園・ニイゲルは、国を四つぐらい跨ぎ、そこから船で行く島国だ。

そこで来月行われる水の女神のお祭りがあるんだけれども、ライト様が「行きませんか?」っておっしゃってくれたんだ。

馬車だと時間がかかるから、汽車で。


「おー、いいな。土産よろしく」

「でも、大丈夫? アリーさんだって実家の手伝いがあるでしょ?」

「気にするな。俺一人でもなんとかなるだろ」

「兄さんならそう言うと思ったわ。それでね、屋敷のメイド達が店の手伝いをしてくれるって言っているの。勿論、兄さんさえ良ければの話だけれども」

最初に旅行の話を聞いた時に私は店の事を考えて断ったんだけれども、メイドのランさん達が手伝うって申し出てくれたの。

アイリスさんは私に付いて来てくれる。ニイゲルとは言語が違うので、通訳件お世話係としてだ。


「メイドって……あぁ、ランさん達か。なら重い物でも大丈夫そうだな」

兄さんはカップを持ちながら呟いた。

私に会うために屋敷に何度か訪れている間に仲良くなったらしく、メイド達とも仲が良い。

筋肉という共通点があるためだろうか?


「配達の予約見てからだな。ランさん達に手伝いお願いするよ。だから気にせず行って来い」

「いいの?」

「あぁ」

「ありがとう! お土産買ってくるね!」

私は立ち上がると兄さんの方へと周り、嬉しさのあまり抱きついた。


実はちょっと行きたかったんだよね。

私、旅行なんてしたことなかったから。しかも異国!

旦那様に誘って頂いた時、本当は天にも昇る気持ちで今みたいに抱きつきたかったんだけれども、店の事が頭を過ぎっちゃって……

だって海上花火見れるし、汽車乗れるって言うんだもん。


「いつ行くんだ?」

「ちょうど来月。水の女神様のお祭りがあるんだって。二週間の旅」

「二週間で足りるのか? ニイゲルって結構遠いぞ」

「それが汽車で行くんだって! といっても、さすがに海の上は汽車は無理だけれども、その付近までね。凄いよね。汽車の中に食堂とかお部屋とかもあって寝泊まり出来るみたい」

「あぁ、寝台汽車か。それなら行けるな」

「うん。でも、いいのかな? 旅費とか全額旦那様に支払って貰うなんて」

汽車はまだ私達庶民が乗れるような物ではない。

燃料価格等の問題で、乗車料が高値。

そのため乗車するのは、貴族や王族、それから儲かっている商人だけ。

その上宿泊するホテル代等も全てになると、金額が目が飛び出るぐらいになってしまう。


「ライト様が良いって言っているんだろ? なら甘えればいい」

「……うん」

旦那様も屋敷のお金自由に使っていいって言ってくれているんだけれども……

服とかも生活用品も全て旦那様の支払いになるように組まれているしあまり使うものがない。


――何かお礼をしたいなぁ。いつもの感謝を込めてというか。ライト様の誕生日プレゼントとか、ちょっと高めの買おうかな。全額お返し出来る額には到底出来ないけれど。


生活費は全て旦那様が面倒見てくれているから、私の稼いだお金は全て自分元へと入ってくる。

それを孤児院の仕送りにしたり、貯金したりしていた。

なのでなんとか旦那様でも使えそうな良い品物が買えそう!


「ねぇ、兄さん。アリ君って、いつこの国に来るかな?」

「なんだ? 欲しい物でもあるのか?」

「うん。プレゼント買おうかなって」

アリ君というのは私や兄さんと同施設で育った人物で、今は各地を周り行商人をしている。

そのため珍しいものも扱っているのだ。


「どうだろうな。前回出発してから結構経つから、そろそろ来る頃なんじゃないか?」

「そっか……」

と呟いた時だった。ガランガランと呼び鈴が鳴ったのは。





「あっ! アリ君」

呼び鈴により店先に向かえば、頭に布を巻き背に大きな四角い竹篭を負った青年が佇んでいた。

毬栗のようにトゲトゲとした髪に男らしい顔立ちの褐色の肌を持つ人。

鮮やかな色彩を持つ異国の衣装を纏い、腰には三日月のような剣を下げている。

精悍な顔立ちををした彼はアリ君だった。

噂をすればなんとやらで、本人がやって来たようだ。


――ちょうど良かった! これで旦那様のプレゼントをお願い出来る!


アリ君の顧客は平民から貴族までバラバラ。

そのためいろいろな品物を取り扱っていた。

だからきっとライト様にもぴったりのものがあるかもしれない。


「よう、ヒスイ。あれ? イファンは配達?」

「いや、事務室に居るよ。待っていて」

私はそう告げると、今自分が来た場所を振り返り「兄さん!」と声を掛けた。

するとやや間があったけれども、その扉が開き兄さんが顔を覗かせる。

アリ君の姿を捉えると、その表情は一瞬だけ驚いた様子を見せたがやがて顔を緩めた。


「よう、アリ! 無事だったんだな!」

「当たり前。俺が賊に襲われるような柔な様に見えるか?」

「いや、全然」

兄さんが笑えば、アリ君も笑った。





+

+

+


雨上がって良かったなぁ。

空を見上げれば、どんよりとした重い雲で覆われているけれども雨は降っていない。

地面は濡れているけれども、朝から降っていたから撥水加工されているブーツを履いているので快適。

このまま降りませんようにと祈りながら、私は町のメインストリート沿いを歩いていく。


幸いな事にその後も雨も降らずに二十分後無事帰宅。

玄関を開ければちょうどアイリスさんとばったりと遭遇した。


「あら、奥様お帰りなさいませ」

「ただいま。雨降らなくてラッキーだったよ」

私は笑いながらアイリスさんに告げると、「そうそう」と切り出した。


「兄さんが旅行行っても良いって!」

「まぁ! それはようございましたわね」

「うん。実はね、本当は旅行に行きたかったの。旦那様に汽車のお話を聞いて、乗ってみたかったんだ。

だからすごく嬉しい!」

「旦那様もさぞお喜びになるでしょう。早速お伝えして来ては? チケット予約とかもありますし」

アイリスさんはそう言うと、視線で階段を指した。

それを見て、私は怪訝に思う。

旦那様は私よりも帰宅が遅い。そのため、いつも私の方が早く家に帰っているから。


「もしかして帰って来ているんですか?」

「えぇ。今日は研究発表会だったそうで、そのまま直帰なさいました。ちょうど雨に濡れて、お風呂に入って頂きましたの」

「へー」

雨に濡れたってことは少なくても一時間前には屋敷に帰ってきたんだ。

ならもうお風呂あがっているね。


「じゃあ、早速旦那様にお伝えして来ます」

私は駆け出し階段を昇っていく。

ライト様に一国も早くお伝えするために――




「旦那様」

と叫びながら部屋の扉を開ければ、室内にはその姿が見当たらない。

何処へ行ったのだろうと首を傾げていると、何やら左側から人の気配と物音がした。

そこは部屋の中にまた部屋があった。そこは備え付けの浴槽だ。

どうやらそこから物音が聞こえるという事は、そこにいるみたい。


――えっ。まだ入っているの? でも、そんなにお風呂って長く入るものなのかな? 私、十分か十五分で上がっちゃうよ。もしかして具合悪いのかな……?


「旦那様?」

取っ手を回しドアノブを引けば、むわっと湯気が襲ってきた。

その霧のような向こうに探し人の姿が。


「あ、居た」

なんだ普通にまだ浴槽に入っているじゃん。具合悪いと思っちゃったよ。

ただ長風呂なだけなのか。

白いバスタブに何か入れていてるのか、湯船が真っ白で濁っている。


「え?」

旦那様はこちらを見つめながら、きょとんとした顔をしていた。

私はそんな旦那様より、違うものが釘づけになってしまう。


――あっ、鎖骨。


お湯は濁っているから見えないけれども、ちょうど鎖骨はお湯に沈んでいないのではっきりとこの両目に焼き付けることが可能。

やっぱり旦那様の鎖骨は一番だと思う。


……なんて考えながらじっと見ていたのがマズかったのかもしれない。


キャーという悲鳴と同時に、私にお湯の雨が降り注いで来てしまったのだ。

結局私は濡れてしまい着替えをする羽目になってしまう。






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