第七話 どうすんの、これ
『路上教習3コマ目は緊急時対応です』
邪神が何か言っているのだけど、ニイの頭にはさっぱり入ってこなかった。
這うようにしてドブ川の岸辺に帰って来て、寝転がって、もう息をするのもメンドクサイ。
『発煙筒を焚いて、三角板を表示するのです』
汚物とヘドロに塗れて、少し気力が回復したニイは変だなと思った。
今まで悪質運転の課題ばかりだったのに、高速道路で故障した時の適切な対応が課題だなんて。
それに、この世界に高速道路なんて有るのか?
『魔王だから平常運転でやるのです』
目の前に発煙筒と三角表示板が現れた。
迷惑な話だと思った。
でも、これぐらいなら寝転がったまま出来そうだ。
発煙筒なんて使ったことがないし、ちょっと興味が出て来た。
『発煙筒のラベルに使い方が書いてありますよ』
ニイは感心した。
ボタンみたいなものが付いていて、押したら煙が出るものなのだろうと思っていたのだけれど、筒から中身を引っ張り出して、マッチみたいに擦って火を点けるらしい。
赤色の火が噴き出して、煙がモクモク出て来た。
三角表示板を盾みたいに構えて、発煙筒を剣みたいに振ったら、ちょっとカコイイかも。
元気が出て来たニイは立ち上がって、発煙筒を強く握ってみた。
赤色の火が強く噴き出して、ビームサーベルみたいになるんじゃないかと期待したのだけれど、煙がモクモク出るだけだった。
『発煙筒ですからね』
がっかりしたニイは、三角表示板を置いて寝転がった。
発煙筒の煙は空に昇っていかず、周囲に立ち込めて、見通しが悪くなった。
危ない。
迷惑。
『魔王城を覆い隠す霧のようなものです。攻め寄せて来る者の方位感覚を狂わせ、背筋の凍るような恐怖を与えます』
やっぱり、カッコイイかも。
ニイは起き上がった。
『仮免許の魔王ですから、夏場にはヒンヤリして気持ちいいぐらいの霧ですけど』
ニイは寝転がった。
もう、起きないぞと思った。
『おやおや、魔王城の霧にまかれて迷い込んだ子どもが居るようですよ』
これも緊急時対応の課題なのかな。
嫌だなあとニイは思った。
子ども相手でも負ける自信がある。
どうすんの、これ。




