第五話 陽キャのコミュ力は迷惑
「うわ、臭っさ。なんだ、オマエ。臭っさ」
やっぱり、来るんじゃなかったと後悔した。
勇者の冒険は、まだ始まったばかりで王都の近場の魔物を狩ってるから、城門で待っていれば会えるって言われた。
見れば分かるからって送りだされたけど、確かに見てすぐに分かった。
兜から零れ落ちる茶髪と日に焼けた健康的な肌、強い意志に満ち溢れた瞳と颯爽とした立ち姿。
勇者の見本みたいなイケメンに、後は女ばっかりの御一行様。
イケメンは鎧とか兜とか普通なんだけど、他のメンバーは表面積の少ない鎧とか服とか着てて、やたらと胸を強調するデザインになってる。
近くに居るだけで、精神が削られていく一軍女子の排他的なオーラ。
それでもって、遠慮の無い物言い。
もう帰ろうと思った。
「なあ、誰か、コイツにクリーンかけてやってくれよ」
「ええ、やだ。キモい」
待て、待て。
浄化魔法とか消毒魔法みたいなの、かけられたら爆発するかもしれない。
一軍女子達の生ゴミに向けるような視線だけで爆発しそう。
「どうしたんだ。オマエ、顔色悪いな。いや汚いだけか? うん、やっぱり顔色悪いよな。腹でも減ってるのか? これ食うか?」
相変わらず勇者の物言いは酷いんだけど、裏表が無くて感じたことを隠さないだけなのは分かる。
臭い、キモいって一軍女子達が遠巻きに離れてくれたので、やっと喋る気力が出てくる。
「ぼ、僕は魔王。まだ、仮免許だけど魔王だ」
「悪いのは顔色だけじゃなくて頭もか? 病院連れて行ってやりたいけど、この世界には無いからなあ。おい、誰か、コイツにヒールかけてやってくれよ」
「や、やめろ。爆発する。鑑定とかしろ。出来ないのか? 邪神の加護とか、魔王(仮免許)とか表示されてるんじゃないのか。あ、いや、待て。鑑定されただけでも爆発するかもしれない。あー、ステータスオープン……出ない。クッソ恥ずかしい。どうしたら……魔王教習所生徒証!……出た。見ろ、見ろ、これ見ろ」
勇者に生徒証を手渡そうとしたら、パチンと火花が散って触るのは難しそうだったので、目の前に差し出して見せた。
「なんだか良く分かんねーけど、書いてあるな、魔王(仮免許)って。それよりも、ステータスオープンって言ったな。もしかしてオマエも転生者か。地元が一緒の仲間だな」
目の前のイケメンと自分が違う生き物だということが、よく分かった。




