第二十話 集団走行
「他にも天然ものの魔王さんが居たら、紹介して欲しいんだけど」
リリちゃんも、クロちゃんも、これ以上、僕の心臓は食べられないっていうので、他に食べたい人を探して、終わりにしたい。
二人とも最初は渋い顔してたけど、クロちゃんが「私の方がお役に立つことを証明してみせますわ」って言って、地面をバチンって叩いたらマメ科の植物みたいなのがニョキニョキ伸びだして、先っぽに飛び乗ったクロちゃんが遠く見えなくなっていった。
それを見たリリちゃんも、コウモリの集団に変形して、どこかへ飛んで行った。
『大丈夫ですか? 人数を増やして複雑になっていくフラグ管理がアナタに出来るとは思えませんが』
終わりが来ても構わないから。
それよりも、聞きたいことがあるの。
『おやおや、二人っきりになったところで、邪神にまで粉をかけるつもりですか』
リリちゃんとクロちゃんが言ってた「復讐の女神」とか「悪食の女神」って何?
善神なの? それとも邪神の仲間なの?
『ポンコツのくせに、やはり妙なところで気が回る人材ですね』
邪神は加護の無い僕に加護をくれた。
僕は魔王(仮免許)になった。
リリちゃんとクロちゃんは加護があったみたいだけど、書き換えられた。
二人は魔王寄りの魔王じゃないものになった。
『「復讐の女神」も「悪食の女神」も善神ですよ。いうなれば善神群は「外資系のハゲタカ企業群」です。宗教の異なる国が戦争をして、負けた国の神が勝った国の神話体系に下級神として取り込まれる――よくある話でしょ。ほどほどで手打ちをした国の神は引き立て役にされて、最後まで抵抗した国の神だった私は邪神として体系から除外されただけです』
じゃあ、邪神は信仰する人も居なくなって寂しい?
苦しい?
僕の心臓を食べたら元気が出る?
『……トラブルが帰って来ましたよ』
クロちゃんはローブをまとった骸骨を、リリちゃんは手足に鱗が生えてる人を連れて帰った。
鱗の人は近くで見たら角と尻尾も生えてた。
どっちも強そうなんだけど、魔王のクロちゃんとリリちゃんに手も足も出ないみたい。
グサっとやって取り出した心臓を食べてもらって、お馴染みの名乗りコーナーが始まった。
「我が名は『宮廷錬金術師士だったけれど、国王毒殺の嫌疑をかけられ、拷問により自白を強要されて断頭台に送られた時、加護を外法の女神に書き換えられて、生命の神秘を冒涜する研究をするようになった不死者』です」
「我が名は『竜の谷に棲んで先祖の墓を守って暮らして来たけれど、不老不死の霊薬となる竜の遺骨を狙う人間達に毒を飲まされ、加護を冥界の女神に書き換えられた屍竜』です」
キュウちゃんとリュウちゃんと呼ぶ了承を得たのだけれど、全員、女の子だった。
骸骨だったキュウちゃんは心臓を噛み噛みしたら、ゾワゾワと肉が盛り上がってきて前髪パッツンの目隠れ女子になった。
陰キャっぽいキュウちゃんでも見た目はアレ。
みんな露出の多い服装で見つめてくる。
落ち着かないから健全な服に着替えてもらった。
さてさて、まだ死にそうにない。
手あたり次第、出会った人に食べてもらおうかな。
『大魔王の心臓を食べるには相応の格が必要ですよ』
やっぱり、邪神に食べてもらうのが一番かな。
『……集団走行(共同危険行為)の検定印をあげます』




