第十九話 日に焼けた子を探そう
「じゃあね、もう一人居たでしょ。よく日に焼けた、耳のとんがった女の子。あの子にもお詫びしたいから、探してくれるかな?」
「臣一人あらば、大魔王さまの征く手を遮る万難を排して見せますが、思し召しなれば」
そう言って、リリちゃんは無数のコウモリに分裂して四方八方へ飛び立って行った。
『嫉妬心を逆手にとって使嗾するなんて大魔王っぽいですね。痴情のもつれで刺殺されるカウントダウンが倍速です』
相変わらず邪神が何を言っているのか分からないけれど、いくつ心臓をあげたら死ねるか分からないので、刺し殺してもらえるなら手間が省けて良い。
そうだ、リリちゃんは陽の光を浴びると死ぬかもしれない。
夜が明けるまでに、陽当たりの悪い寝床を作ってあげた方がいいかな。
『アナタは何一つマトモに出来ないのだから有能な配下に任せた方がいいと思います』
ぐう。
『なんですか?』
ぐうの音も出なくて悲しかったから、抵抗してみた。
『やれやれですね。ほら、リリちゃんが帰ってきましたよ』
見上げると、コウモリの集団が何かぶら下げて帰って来た。
探して欲しいって言っただけなのに、連れて帰ってくるなんて有能。
とんがり耳の子は目の前にべちゃっと落とされて、コウモリの集団はリリちゃんの姿に戻った。
耳のとがった子は、あー、着替えたり、お風呂に入る暇も無かったみたい。
「取り囲んだら、コイツ、漏らしました。大魔王さまのお役に立つとは思えません。殺してしまいましょう」
バッキバキの目でリリちゃんが言うのだけれど、参ったなあ。
せっかく、さっぱりしたところを、もう一度だったんでしょ。
お詫びも2倍かなあ。
「お代わりして良いからね」
グサっとやって取り出した心臓をとんがり耳の子に差し出したんだけど、プルプル震えて食べてくれそうにない。
どうしよう。
無理に押し込むと、また握り潰しちゃうかもしれないからなあと迷っていたら、リリちゃんの怒りゲージが満タンになっていく気配がしたので、あわてて心臓を小さく引き裂いて、雛鳥に餌付けするみたいに一口ずつ食べさせてあげた。
怒りゲージがMAXになったリリちゃんは高く飛び上がって高速回転しながら、とんがり耳の子に突っ込んで来た。
やっぱりドリルだよね。
でも、とんがり耳の子が地面をトンと叩くと急に太っとい樹が生えて、リリちゃんは大木に突き刺さって止まった。
「我が君。名乗ることをお許しください」
お風呂に入って、着替えてからで良いよと言おうと思って、ギリギリで止めた。
女の子に恥をかかせちゃいけないもんね。
トイレ、まだ作ってないし。
「我が名は「黒き森に暮らす、花の蜜だけを吸って生きる長命の種族でありながら、奸計により誤って肉を食し、禁忌を犯した結果、加護を悪食の女神に書き換えられ、森を追放され、生肉を貪り食う魔物となった長耳族の姫」でございます」
長い。
やっぱり長い。
憶えられない。
あと、早く、さっぱりして欲しい。
「クロちゃんって呼んでいいかな」
「御心のままに」
大木に刺さったままのリリちゃんを引っこ抜きながら言うべきことを考えた。
「リリちゃん、ありがとうね。助かったよ。お手柄第一号」
ギギギとクロちゃんの歯ぎしりする音が聞こえた。
「クロちゃんも凄かったね。これ、もっと出来る?ここら辺、ジャングルみたいにして、大魔王の森っていうか、真っ暗な日の差し込まない樹海を作れるかな?」
「必ずや、ご満足のいただけるものを」
ギギギとリリちゃんが歯ぎしりしている。
「そうすれば、夜が明けてもリリちゃんも安心だもんね」
身体をクネクネさせて喜んでいるリリちゃんを見てクロちゃんが「弱虫。プーッ、クスクス」と笑って見せたので、リリちゃんも鼻をつまんでクロちゃんの下半身を指さしている。
別に臭くないし、むしろ好きな匂いなんだけど、それを言うと、二人とも先を争って漏らしそうな気がしたので我慢した。
『この調子で行きましょうって言っていいのかな。検定印はあげますけど』




