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魔王教習所【毎日1話投稿、全24話完結済】  作者: 隣之 芝生


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第二話 ケイ改めニイ

 ケイ・サトロと書いた地面を手のひらで擦って消して、ニイ・ミソジと書いた。

 これからはニイと名乗って、フルネームは言わないようにしようと思った。

 でも、名前を聞いてくれる人なんて居ないよなと思って、悲しくなった。


『心配しなくても大丈夫ですよ。我が校に居る間は安心保険パックが付いています』


 保険が付いているのなら大丈夫かなと思いかけて、何が大丈夫なのか分からなかった。

 叩かれて怪我とかしたら治療費が出るのかな。

 自分が死んだら保険金の受け取り人は家族になるのかな。

 追い出されてしまったけれど、それでも15歳になるまで養ってくれたのだから、恩返しになるのかな。

 毎日、罵倒されて、物置に押し込められて御飯もちょっとしか食べさせてもらえなかったし、なんだかモヤモヤする。

 あの穀潰しも役に立つことがあったのだと笑顔で保険金を受け取る家族の姿を思い浮かべた。


『安心保険パックが付いている教習生が実習中に討伐された場合、大爆発します。半径10kmぐらい焼野原になって、その後100年ぐらい、ペンペン草も生えない瘴気あふれる死の大地になります。授業料も免除ですよ』


 そこまでは望んでないので困ってしまった。

 自分が爆発するのは構わないし、悪意を向けてくる奴らを巻き添えにするのも悪くないと思う。

 でも、無関係のお人好しも、きっと居ると思うし、そんな人にまで迷惑をかけるのは良くない。

 それから、胸の中のモヤモヤが消えて無くなっていて、家族が保険金を受け取るのではないと分かったからだと気付いた。


『適正テストは合格です。魔王の仮免許を交付します』


 そんなんで良いの? 

 いや、魔王の坂道発進とか縦列駐車と言われても困るのだけど、もう路上教習に出ていいっていうのは安全配慮に欠けるんじゃないのって思いかけて、魔王だから良いのかと納得した。

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