第十三話 ブレるキャラ作り(1)
『細かいことは気にしないでください。自然体のほうがアナタの持ち味が出ますから』
邪神が提案する設定を聞いて、それから用意してもらった衣装と小道具を身に付けて、ニイは墓穴を掘っていた。
ニイの墓穴。
ニイはケイに戻る。
魔王ケイ(若葉マーク)の誕生。
墓穴を掘り終わって、ニイの纏っていた襤褸布を放り込んだところで、勇者がやって来た。
『インナーバイザーを降ろし忘れてますよ』
ケイは慌ててヘルメットの側頭部のツマミを押し下げた。
邪神が用意してくれたのはフルフェイスのヘルメットと革ツナギ。
車もバイクもない世界でレーサーみたいな格好。
もう日は沈んで暗いのに、スモークシールドを降ろしちゃったから、よく見えない。
革ツナギは、ちょっと変。
一枚ものじゃなくて、沢山の革を寄せ集めて縫い合わせた拵え。
耐久性は低そう。
そして貧乏っちい。
『我慢ですよ。聞かれたことに答えるだけ。自分から喋ると襤褸が出ますからね』
邪神の声は自分だけに聞こえるみたいだ。
近づいて来る勇者の表情は暗くて分からない。
見えたら怖いだろうけど、見えないのは、もっと怖いなと思った。
「……ニイ……なのか?」
感情表現の豊かな勇者にしては平板な声だった。
「違う。ぼ……俺はケイ。魔王ケイ」
勇者は何も言わない。
息が苦しいのかなと思った。
半径10kmばかり、邪神が死の大地に変えてくれた。
あふれ出る瘴気。
長く居させちゃいけないと思った。
我慢しろって言われたけど、守れない。
「ニイは死んだ。
俺はケイ。
魔王教習所の同期生。
加護を付け忘れられた愚図で鈍間なゴミカスだけが入れる教習所。
当たり前のことが出来ない。
まともな奴から見れば、怠けてるか、ふざけてるとしか思われない。
救いようのない底辺が集まる教習所。
だから家族だった。
俺とニイは兄弟だった。
ある日、ニイが言った。
勇者を元の世界へ帰してあげたい。
馬鹿で可哀そうなニイ。
仮免許の魔王を殺しても、勇者は帰れない。
そんなことも分からない馬鹿で可哀そうなニイ。
大事な俺の兄弟。
今日はニイの命日。
だから今日はお帰り。
明日から殺し合い。
それがニイの望み。
大切な兄弟の願い。
オマエに向ける俺の殺意。
オマエも俺を殺していい」
『もしかしてフリースタイルのつもりですか? もうちょっとオラついてみましょう』




