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魔王教習所【毎日1話投稿、全24話完結済】  作者: 隣之 芝生


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第十三話 ブレるキャラ作り(1)

『細かいことは気にしないでください。自然体のほうがアナタの持ち味が出ますから』


 邪神が提案する設定を聞いて、それから用意してもらった衣装と小道具を身に付けて、ニイは墓穴を掘っていた。

 ニイの墓穴。

 ニイはケイに戻る。

 魔王ケイ(若葉マーク)の誕生。

 墓穴を掘り終わって、ニイの纏っていた襤褸布を放り込んだところで、勇者がやって来た。


『インナーバイザーを降ろし忘れてますよ』


 ケイは慌ててヘルメットの側頭部のツマミを押し下げた。

 邪神が用意してくれたのはフルフェイスのヘルメットと革ツナギ。

 車もバイクもない世界でレーサーみたいな格好。

 もう日は沈んで暗いのに、スモークシールドを降ろしちゃったから、よく見えない。


 革ツナギは、ちょっと変。

 一枚ものじゃなくて、沢山の革を寄せ集めて縫い合わせた拵え。

 耐久性は低そう。

 そして貧乏っちい。


『我慢ですよ。聞かれたことに答えるだけ。自分から喋ると襤褸が出ますからね』


 邪神の声は自分だけに聞こえるみたいだ。

 近づいて来る勇者の表情は暗くて分からない。

 見えたら怖いだろうけど、見えないのは、もっと怖いなと思った。


「……ニイ……なのか?」


 感情表現の豊かな勇者にしては平板な声だった。


「違う。ぼ……俺はケイ。魔王ケイ」


 勇者は何も言わない。

 息が苦しいのかなと思った。

 半径10kmばかり、邪神が死の大地に変えてくれた。


 あふれ出る瘴気。

 長く居させちゃいけないと思った。

 我慢しろって言われたけど、守れない。


「ニイは死んだ。

 俺はケイ。

 魔王教習所の同期生。

 加護を付け忘れられた愚図で鈍間なゴミカスだけが入れる教習所。

 当たり前のことが出来ない。

 まともな奴から見れば、怠けてるか、ふざけてるとしか思われない。

 救いようのない底辺が集まる教習所。

 だから家族だった。

 俺とニイは兄弟だった。

 ある日、ニイが言った。

 勇者を元の世界へ帰してあげたい。

 馬鹿で可哀そうなニイ。

 仮免許の魔王を殺しても、勇者は帰れない。

 そんなことも分からない馬鹿で可哀そうなニイ。

 大事な俺の兄弟。

 今日はニイの命日。

 だから今日はお帰り。

 明日から殺し合い。

 それがニイの望み。

 大切な兄弟の願い。

 オマエに向ける俺の殺意。

 オマエも俺を殺していい」


『もしかしてフリースタイルのつもりですか? もうちょっとオラついてみましょう』

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