第十話 高速教習
『路上教習4コマ目は高速教習ですよ』
やっぱり、高速道路ってあったのか。
それなら、発煙筒や三角板の教習も意味があったよな。
学習能力の無いニイは思った。
『ドーピングして高速化します』
薬物なのか。
違法なんだろうな、魔王だから。
いい夢、見れるのかな。
『ニトロです。エンジンというか、アナタの心臓の限界を超えて燃焼させて、通常の3倍のスピードで動けます』
通常の3倍のスピードと聞いてニイの心はときめいたのだけれど、すぐに諦めた。
学習能力の無いニイにも分かる。
カタツムリが3倍のスピードで動いてもゴキブリにも勝てないだろう。
そして、爆発してしまう。
『1.5倍ぐらいに抑えれば大丈夫だと思いますよ。ポケットに汚物やヘドロを一杯に入れておけば、回復の助けになるでしょう』
ニイの頭の中にレバーのようなイメージが浮かんで来てニトロの添加量を調節できることが分かった。
試しに1.2倍ぐらいに設定して動いてみた。
早くなった……のかな?
意味もなくウロウロして、それから急にむせ込んだ。
鼻血が出た。
『カタツムリやナメクジ以下の粘菌といったところでしょうか』
言われなくても知ってる。
いつもより冴えた頭で思って、それから、おや? と考えた。
ドブ川の岸辺のヘドロと汚物と腐った死体に囲まれて回復しながら、レバーを1.3倍に上げた。
今度は血を吐いた。
吐きながら、ニイは自分の身体に刻み込まれた安心保険パックの内容を確かめた。
『さあ、勇者の所に行って、血を吐いてみせましょう。面白い見世物になりそうです』




