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第36話 ハルシュタイン家のその後

それから半年後ーーーー


とある教会の廊下にて、デビッドがぼんやりしていると、そこにハイサムが現れた


「…………お、なかなかいいじゃん。その色合い、新鮮でいいぞ」


そう言ってニヤリと笑う


現れたハイサムの服装はいつもの黒い装いとは違い、白を基調とした装いで統一され、金の刺繍が豪勢にあしらわれている。その上にはマントを羽織っており、裏地の紫がいいアクセントになっていた


「アイリスが白で揃えたいと希望を出してな。その通りにした」

「へぇー…………ひゃー。随分と金をかけた装いで。流石は辺境伯様」

「手をかけないと私の着られるものがないんでね」

「そりゃ、無駄にデカいもんなお前は」


デビッドは楽しそうに笑うと、次の瞬間、真面目な顔に変わる


「いや、でも、よかったな。今日この日を迎える前に、アイリス殿の過去を清算し終えて」

「ああ」


短く答えると、ハイサムはあのハルシュタイン家との決別の日のその後を思い出す


あの後、アイリス拉致及び傷害未遂事件を起こしたハルシュタイン家をハイサムは敵対行為とみなし王都へ報告した


その悪質極まりない行為は勿論問題となり、ハルシュタイン子爵は爵位を剥奪され、更には財産や所有していた領地も全て没収となった

そしてそれが決定打になった訳ではないがーーーー様々な事も重なった結果、デニスはバーバラと離縁する事になったのだ

こうしてハルシュタイン家は静かに終わりを迎えていた


「これで地位も財産も失ったハルシュタインは何も出来んでしょう。それに妹の方も社交界を追放されたとの事ですが…………まあ、そもそもあの顔では、もう人前に出ることすら無理だろうなぁ」


そう言ってデビッドは天井を見上げる


劇薬を顔に被ったローザは、その後病院に運ばれ一命を取り留めたが、その代わり酷い火傷の跡が残ったのだ


あの綺麗だった顔は大部分が焼けただれ、完治しても跡が残るだろうといわれる程だった


現在はバーバラと共に彼女の遠縁の親類を頼り、人気の無い田舎町の小さな家でひっそりと暮らしているそうだがーーーーその変わり果てた姿にショックを受けたローザは酷く心を病み、部屋から一歩も出ることなく一日中引きこもっているそうだ


「皮肉なもんだね。かつてその姿から家族によってひた隠しにされていた姉は、宝石の様な美しさを手に入れ、逆に自慢の美しさを誇っていた妹は、その最大の取り柄を失ってしまった。人生何が起こるか分からんもんだねぇ」


そう言ってデビッドは肩をすくめる


「そもそもアイリスを騙し、危害を加えようとしなければ、こんな事にはならなかったのだ。全て身から出た錆だ。ハルシュタインもその妻も娘も、あの社交パーティの時に、私が釘を差した時点で大人しくしてさえすれば、この様な結果にはならなかっただろう」


ハイサムは淡々と正論を述べる


元々ハルシュタイン家の経済状況が良くなかったとはいえ、ローザ程の美貌と名声のある娘なら、待っていればそれなりの良縁に恵まれた筈だ


変により好みせずにいれば、ローザをそこそこの位の高い貴族のもとに嫁がせる事ができ、経済面も解決出来たかもしれない


そこで変な欲を出し、アイリスに執着し、結果破滅の道を選んでしまったのは、他ならぬハルシュタイン一家なのだからーーーーー


そんな事を考えていると、デビッドが小さく笑みを浮かべ、指で指しながらハイサムに伝えた


「さっ。そんな辛気臭い話は止めにして、本日のメインイベントといこうか。主役の花嫁殿がお越しだよ」


その言葉にハイサムが振り返ると、そこには白のドレスに身を包み佇むアイリスがいた



いよいよ待ちに待った2人の結婚式が始まろうとしていた


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