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第33話 終決

突如現れたハイサムとその配下達に、ハルシュタイン家の面々は驚きを隠せないでいた


「どういう事だ、何故お前がこの場に来ている……!」



拘束されながらもデニスが呟くと、ハイサムが睨むようにデニスに視線を向ける


「こんな分かりやすい罠に、私がやすやすとアイリスを送り込む訳が無いだろう。端からお前達を捕らえるつもりでここに乗り込んだのだ」


そう淡々と告げると、デニスは鼻で笑った


「はっ!私は娘の婚約報告でアイリスを呼び寄せただけだ!アイリスに危害を加えようとした証拠など、何処にもないぞ!」


ーーー証拠など何もない

高を括っていたその時だった


「へぇー。アイリス殿を呼び寄せただけ、ねぇ……」


飄々とした声が室内に響き渡る

ハルシュタイン家の面々が一斉にその方向を見ると、そこにはデビッドがいた


「じゃあ、この契約書や手紙の数々はどう言い訳するんですか?ハルシュタイン子爵?」


そう言って懐から契約書と手紙を数枚出し見せると、デニスの顔色が変わる


「なっ!…何故お前がそれを持っている!」

「何故って……我々が探したからですよ?アイリス殿がここを訪れる数日前から、我々は事前に王都入りしてたんすよ。そして貴方方がアイリス殿を陥れる証拠を探した……それだけの事です」


そう言ってのけるデビッドをデニスは睨みつける


「あ、貴方、あの手紙はなんなんですの……?」


バーバラがデニスに問い詰める

しかしデニスが答える前にデビッドが答えた


「ハルシュタイン子爵がシュティークロート候爵とやり取りした、手紙の数々と今回の婚姻についての契約書ですよ。俺達がわざわざ候爵の屋敷に出向いたんです」


そう告げると、バーバラの目が見開かれる

一方デニスは青い顔で俯いたままだ


「手紙には次女ローザの変わりにアイリス殿を候爵に捧げる主旨の内容が、契約書にはアイリス殿を嫁がせる変わりに金銭援助を要求する文が思いっきり書いてありましたねぇ。アイリス殿が既にアズラエル辺境伯の婚約者である事、そしてそれでも尚アイリス殿を奪おうとするならそれ相応の報いを受けてもらう事を説明したら、あっさりアイリス殿を手放してくれました。これにてこの縁談も事実上破談って事になりますねぇ」


いやぁ一件落着!とデビッドは愉快そうに笑う

対してデニスは怒りに震えている


「貴様ら……こんな事をしてただで済むと思うなよ………」


怒りを滲ませ恨み節を吐き捨てる

しかしそれにハイサムが反論した


「それはこちらの台詞だハルシュタイン子爵。アイリスを拉致しようとし、危害を加えようとした事は、立派な敵対行為だ。王都へも報告させてもらう」


その言葉に、デニスとバーバラは青ざめる


「なっ………」

「そんな………」

「そうなれば、貴方がたも然るべき処分を受けることでしょう。爵位の返上も、免れぬだろうな」


そう言い放つと、2人はガクリと項垂れる


「わ……私の爵位が……」

「どうして……?どうしてこうなるのよ………!」


絶望し頭を垂れ項垂れながら、二人はうわ言のように、言葉を繰り返していた


その両親の姿を、少し離れた所でローザが見つめていた


「なんで……なんでよ………!どうしてうまくいかないのよ………!」


ボソリと呟き、悔しさを滲ませながら拳を握りしめる


ハイサムはその姿を横目に見つつ、配下達に「連れて行け」と命じ3人を連行させた


これでハルシュタイン家との騒動が終わるーーーと、皆が思ったその時だった


「待て!」


配下の一人が声を荒げた


配下の隙を突いたローザが、拘束を振り解き逃げ出したのだ


静止も聞かず、ローザは割れずに転がっていた劇薬を手に取った


そして入った瓶の蓋を開けると、アイリスに走って近付く


「あんただけに、いい思いをさせてたまるもんですか!」


そう言ってアイリスに劇薬を振り撒こうとする


ーーーーーーーしかし


その前にハイサムが前に立ちはだかり、ローザを片手で薙ぎ払った


手で払われよろけたローザは、手を滑らせ瓶を離してしまう


「ーーーーあ」


アイリスが声を上げ、思わず手を伸ばそうとしたその時


バシャッ


瓶の中身が出てローザの顔に劇薬がかかる


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


広間に断末魔の叫び声が響き渡るのと同時に、ローザがその場に倒れ込んだ


「痛い!熱いぃ!!顔が!私の顔がぁぁぁ!!」


激痛と熱さでのたうち回るローザに、バーバラが悲鳴を上げる


「いやぁぁぁぁ!ローザァァァァァ!!」


騒然とする室内


「おい!医者に連れてけ!早く!」


デビッドが直ぐ様指示を出すと、配下達が急いでローザを抱え込んだ


この事態を、アイリスはハイサムの腕の中で息を呑み見つめていた


こうしてハルシュタイン家との戦いは幕を閉じたのだった


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