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第31話 ハルシュタイン家との決別

それから数週間後


王都に来ていたアイリスは1人、ハルシュタイン家に向かう

王都中心部にある宿にて、今まさに馬車に乗り込もうとしていた


「どうかお気をつけ下さい。無理はなされないよう」


見送りに来たザフラーが心配そうにアイリスの手を握る


「大丈夫よ。必ず無事で帰ってくるから」


そう言って微笑むとアイリスは馬車に乗り込む


不安に思いつつザフラーはアイリスの乗った馬車を見送るのだった



ーーーーーーーーーーー


小一時間程経った頃


アイリスは数カ月ぶりにハルシュタイン家に戻ってきていた

久しぶりに見る実家をまじまじと見上げる


(今日、私はこの家とーーーハルシュタイン家との呪縛を断ち切る。ハイサム様と一緒に暮らしていく為に)


そう誓い、アイリスは家の戸を叩く扉を開いた


するとそこには両親とローザが出迎えてくれていた


アイリスは扉を閉めると、父に一礼する


「お邪魔いたします。お父様」

「おお、よく来たなアイリス。ずっとお前を待っていたのだ」


そう言ってデニスは笑顔で対応する

しかしその笑顔は何処か不自然で違和感がある


(今までこんな友好的に接してくれた事なんて、一度も無い)


そう思いながら、アイリスはふと義母バーバラとローザに目線を移す


バーバラとローザも、一見敵意は感じさせないが、隠しきれない恨みが滲んでいる


「立ち話も何だ。広間で話でもしようじゃないか」


そう言ってデニスはアイリスを広間へと誘った



ーーーーーーーーーーーーーーー


広間に入ると、アイリスはデニスに促されソファに座った


ハルシュタイン家の面々が座り終えたのを確認すると、アイリスは静かに口を開いた


「この度はローザのご婚約、おめでとうございますお父様、お義母様………ローザも、おめでとう。幸せになるのよ」


そう言って形だけの祝いの言葉を述べる


するとデニスはわざとらしく声を上げた


「ああ、その事なのだがな。実はうっかり書き損じたものを、そちらに渡してしまったのだ」

「え……?」


思わず聞き返すと、父は顔を歪ませこう告げた


「今回の婚約話……ローザではなくお前の事なのだアイリス」

「………どういう事ですか?私にはもうハイサム様がおりますが」


眉をひそめ尋ねると、ローザが口を挟んだ


「察しが悪いわお姉様。つまりあんたの婚約者を魔王辺境伯からそっちに乗り返らせるって言ってんのよ」


そう言ってローザはアイリスを睨みつけ言葉を続けた


「あんたにあの辺境伯は勿体ない。あんたはこれからシュティークロート候爵の下に嫁ぐの。知ってる?シュティークロート候爵はね、美人好きの度を越した女狂いなのよ?女を思い通りに出来る所有物にしか思ってなくて、自分色に染め欲の処理の為に犯し、飽きたらボロ切れの様に捨てるお方よ。あんたにはそっちの方が身分相応で似合ってるじゃない!」


吐き捨てるように言うと、ローザは姉を嘲笑う

すると続いてバーバラも口を開く


「今まで私達は貴女に情けをかけてこの家に置いてやっていたのよ?そのくらいの言う事くらい、聞けるわよね?」


その言葉に拒否権など一切無い事が分かる

そしてデニスもアイリスに強要する


「お前の美しさには価値がある。その価値を最大限利用し、裕福な候爵の下へと嫁ぐのだ。私達の為に、要求を飲んでくれるよな?アイリス?私達は『家族』じゃないか」


家族の本音を聞いたアイリスは、一呼吸置くと口を開いた


「………分かりました」


その言葉に両親とローザは笑みを浮かべる

しかし、次に発せられた言葉に彼らは凍りつく


「私は、シュティークロート候爵の下には嫁ぎません。私の婚約者はハイサム様です」


「「「なっ………!」」」


従順だったアイリスの初めての反抗に、3人は固まる


「こちらも、お父様達に言い忘れていた事がございます。私は今日、婚約の祝いの言葉を言いに来たのではないのです」


そして前を見据えハッキリとこう述べた


「―――――私は、ハルシュタイン家との別れを告げに、今日ここに来ました」

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