番外編3 ハルシュタイン家の身辺調査(後編)
所変わってグランディスの中心部にて
デビッドは夜会が行われている館を訪問していた
一階では音楽隊の優雅な音楽と共に、貴族達の楽しそうな話し声が聞こえてくる
2階の吹き抜けから誰かを探すようにキョロキョロと見渡していると、支配人が声をかけてきた
「誰かお探しですかな?」
「ああ、『グランディスの赤薔薇』って呼ばれてる令嬢を探してるんだ。俺の主人がその娘に興味があってね」
すると支配人は成る程と言う様に頷き
「ああ、ローザ様の事ですね。それならあちらですよ。あの深紅のドレスをお召しになっている方が『グランディスの赤薔薇』こと、ローザ・ハルシュタイン様です」
そう言って会場の奥の方を指さした
その方向に視線を移すと、そこには男達に取り囲まれた1人の令嬢がいた
(ほう………あれが噂の)
デビッドは当初のハイサムの婚約者候補を感心したように見つめる
綺麗な金髪の髪に白い肌、そしてそれを引き立てるかの様に身体に咲き誇る赤い薔薇ーーーーーまるでローザにスポットライトが当たっているかの様に、一際輝くオーラと華やかさのある令嬢だった
(確かに、とんでもねぇ美人だわ。ハイサムの好みかは分からんが)
そう思いながら男達に微笑むローザの姿を見つめる
すると支配人が再びデビッドに話しかけた
「お綺麗な方でしょう?グランディス一の美貌と謳われているんですよ」
「へぇ、確かに美しい方だ。主人もひと目で気に入りそうだよ」
「ははは、そうでしょうね。ですが、美しい故に狙う貴族達は多いのですよ。そんじょそこらの爵位持ちでは、太刀打ち出来ないでしょうな」
「そんなに凄いんです?」
「ええ、ほらあそこにローザ様のご両親がいらっしゃるのが見えますか?」
支配人はローザの斜め後ろにいる男女を指差す
そこにはローザによく似た美しい御婦人と、それとは対照的な小太りで冴えない感じの男がいた
(アレがあの両親か………母親の方はまあ置いといて、父親の方は如何にも爵位に鼻かけてそうな嫌な感じがするわ)
デビッドが複雑そうに見つめていると、支配人が再び口を開いた
「ああしていつも、ローザ様と釣り合いそうな殿方を、ご両親が吟味されているのですよ。少しでも、地位と財産のある殿方へ輿入れさせたいのでしょうな」
「へぇ、熱心な事で。それ程までに、娘の幸せを願ってるんすねぇ」
デビッドが何気なく口にした言葉に、支配人は意味深な言葉で返した
「……娘の幸せというよりは、ハルシュタイン家のためでしょうな」
「と言うと?」
デビッドが尋ねると、支配人は声をひそませ答えた
「ここだけの話、実はハルシュタイン家の経済状況は切迫してるとの噂がまことしやかに囁かれているのです。どうやらローザ様や妻のハルシュタイン子爵夫人が、湯水の様にお金を使うのが原因とか………どうにか経済状況を持ち直す為に、こうして地位と財産のある殿方を探されているのだ、と一部では言われているのですよ」
「へぇ………」
デビッドはぽつりと呟くと、再びローザに視線を向ける
ローザは相変わらず、男達と楽しそうに会話をしている
まるでハルシュタイン家の経済状況など、知る由もないようにーーーー
「でも流石に、なんだかんだ娘の幸せは願ってるんじゃないですか?」
そう尋ねると、支配人は何とも言えない表情をした
「いやぁ、どうでしょうねぇ…………」
「え、そんな可愛がられてないの?あんな綺麗なお嬢さんなのに?」
「可愛がられているは、いるのかもしれませんが……なにせハルシュタイン子爵はご自分にとって利益になるかどうかで人との付き合いを考える方ですから。利益になるうちは良いかもしれませんが、そうでなくなった時どうなるか……………」
そう歯切れ悪く言い終えると「この話はどうかご内密に」と支配人に釘を差された
デビッドは頷くと、支配人に礼を述べる
「どうもありがとう、いい話が聞けてよかった」
そうしてデビッドは館を後にした
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館を出たデビッドは、1人夜道を歩く
(ハルシュタイン家のひた隠しにされていた娘、それとは対照的なグランディスの赤薔薇、そして、まことしやかに囁かれる黒い噂ーーーーー)
王都で聞き出した情報を反芻すると、デビッドは頭を掻いた
「……あー!なんか胸糞悪ぃ!!」
貴族の闇の部分を見たデビッドは複雑な心境だった
(華やかそうに見えても、何抱えてっか分からんもんだねぇ)
そう思いながら、夜空を見上げる
サーヴァルよりも少ない星々を見つめ、デビッドは少し故郷が恋しくなる
「………さっさと帰るか」
デビッドは足早に、サーヴァルに帰る事にした
自分には王都のような都会は相容れないと確信しながら




