第28話 恋しく思う気持ち
それから数日後
アイリスは1人、自室で刺繍をしていた
彼女が最近始めた趣味の一つだ
慣れてきたらハイサムのハンカチに刺繍を施してあげたいーーーー今は屋敷を留守にしている彼を思いながら、アイリスは一針一針丁寧に針を進める
その彼は今領外の会議に出席しており、屋敷を出ているのだ
彼が屋敷を経ってもう3日だ
ふとアイリスはハイサムの両親に会った日での帰り際の出来事を思い出す
挨拶をし踵を返そうとした時、ハイサムの母マルヤムがアイリスを引き止めこう言ったのだ
『何かあったらいつでもここに来て頂戴ね。私達はもう貴女の家族なんだから』
アイリスはその言葉に感動した
ハルシュタイン家にとって『家族』という言葉は、アイリスを従わせる為の『呪い』のような言葉でしかなかったからだ
ーーーーーーーー『家族』という言葉は、こんなにも温かさを感じるものなのか
アイリスはマルヤムの言葉を思い出してはその温かさを噛み締めていた
するとザフラーがトレイにお菓子を乗せ彼女のもとへとやってきた
「そろそろ間食の時間にされますか?」
「ええ、そうしようかしら」
ザフラーはテーブルにお菓子の入ったお皿をそっと置くと、クッキーの甘い香りがフワリと香ってくる
すると、ザフラーはアイリスに元気が無いことに気付いた
「どうされましたアイリス様?浮かない表情をされていますが………」
「あ、ううん。大したことではないのだけれど………その」
少し言いづらそうに口をつぐんだ後、言葉を続ける
「………ハイサム様がずっといらっしゃらないから、さみしくて…………」
恥ずかしそうに打ち明けるアイリス
ザフラーはそんな彼女が可愛らしくて悶絶する
「ああ、今日も私の未来の奥様が可愛すぎる………!」
「ザフラーったらまたそんな事言って」
「何度だって言いますとも!まだまだ式は先ですのに、お二人はもう夫婦のようですね」
ザフラーがそう言うと、アイリスは目を丸くする
「式………?もしかして、結婚式を挙げる予定があるの?」
「当たり前ですよ!私はそう聞いてますよ?まだ情勢がゴタゴタしてますから、もう少し先だと思いますけどね」
アイリス様の花嫁姿が楽しみです!と、楽しそうに話すザフラー
アイリスは、式を挙げるという実感が湧かないものの、密かに楽しみにするのだった
いよいよ正式な夫婦になるーーーそう思った時、あの日唇が触れ合う寸前だった映像が脳裏をかすめた
思い出し顔が赤くなり、アイリスは慌てて振り払う
しかし
(あの時の『やり直し』は、式までお預けなのかしらーー?)
と少しさみしく思うのだった
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夜
アイリスは眠りにつく準備をしていた
(確か予定では明後日、ハイサム様がお帰りになられるはず)
そう思いながら灯りを消し、ベッドに入ろうとしたその時、外から窓ガラスを叩く音が聞こえた
不思議に思い様子を見に行くと、そこにはなんと領外にいる筈のハイサムが怪鳥姿で居たのだった
「ハイサム様!?」
アイリスは驚いて窓の鍵を開けベランダへ出る
「まだ領外にいる筈では………それに、どうしたのです?そんな姿で」
アイリスが尋ねると、ハイサムは身を低くし始めた
「………乗ってほしいということですか?」
そう尋ねると、ハイサムはコクリと頷く
戸惑いながらもハイサムの背に乗ると、ハイサムは屋敷を飛び立つ
こうして急遽、ハイサムとの夜間飛行をする事になった




