第27話 貴方は私の光
その後
アイリスはハイサムに各部屋を案内してもらう事になり、客間を後にした
再び静寂が戻った客間で、マルヤムが口を開く
「………ねぇあなた。ハイサムに良い婚約者が出来て良かったわね」
「ああ」
短く同意したニダールに笑顔を向けると、昔を思い出すように天井を見上げた
「あの子にはフザイファと同じくらい愛情を注いだつもりだけど―――あの子の種の特性上、どうしても辛い時にいつも寄り添うというのは出来ない事もあった………それがとても心苦しかったけど――」
するとマルヤムはお茶の入ったカップを取り、お茶の水面を見つめる
「でも、どんな時も隣にいてくれるような存在を、手に入れたのね。あの子を見て分かった。あんなに穏やかな顔をして過ごしているの、久しぶりに見たわ。ハイサムも、人並みの幸せを歩めると良いわね」
「………ああ」
そう言い終えると、マルヤムはお茶を一口、口に含む
静かに、両親は息子の幸せを願うのだった
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その頃
アイリスはハイサムに各部屋を案内されていた
様々な部屋紹介され、アイリスは興味深げに見渡す
そしてある廊下に出ると、そこにはアズラエル一家の肖像画が飾られていた
やがて彼女はある肖像画に目を止めた
「まあ………これはお義父様の若かりし頃の肖像画ですか?」
「ええ、父は元軍人でしてね。今は引退しのんびり過ごしつつ、庭で飼っている山羊の世話をしていますが、当時は将官に付いてましてね。私やフザイファを軍人にする為、厳しく接していたんですよ」
ハイサムの昔話に、アイリスは感心したように頷く
「そうだったのですね…………あら?」
その時、ふとある肖像画に目が付いた
それは黒紫の髪色で赤い瞳の女性の肖像画だった
思わず、ハイサムに目を向ける
「これは……もしかして」
「私の実母ですよ」
そう答えると、彼はなぞるように母の肖像画に触れた
「………どんなお母様だったのですか?」
「実をいうと、あまりよく覚えていないのです。私が3つの時に、母は病死してしまったので」
そう寂しげに答えるハイサムに、アイリスはどのような言葉をかけて良いか分からず口を閉じる
ハイサムはそのまま、話を続けた
「………私が覚えている母は、いつも私に謝っていました。あの時はなぜいつも謝られるのか、分からなかったのですが―――――後に、この怪鳥の血を受け継いでしまった事に対しての謝罪だったのだと、気付きました」
「あの怪鳥は、お母様からのものだったのですね」
アイリスの問いにハイサムは頷く
「ええ、母の祖先は東の大陸の出身だったそうで、そこで存在していた怪鳥と血を分けて私達のような種族が誕生したそうです」
そしてハイサムは過去を思い出すように話始めた
「怪鳥の血は厄介でした。人の姿でも、私の血に触れてしまえばたちまち死に至る。ですから私が怪我をしてしまうと、皆私に避けざる得なかった。それが例え、命に関わる大怪我であっても」
「そんな………」
「それでも出来る範囲で、家族からの愛は感じていましたが、その気遣いが私には申し訳なく思えた。だから私は、父の希望通り軍人になり、常に戦場に赴いた。この不吉な力を逆に利用し、人々の役に立つ為に。それが私に与えられた使命なのだと。人が望む幸せを捨て、躊躇うことなく戦地へ飛び込む私は、いつしか人々から『魔王』と呼ばれるようになっていた」
そう言うとハイサムはアイリスを見つめる
「そんな私を、アイリスは救ってくれたのです。人としての幸せを諦め捨てていた私に、貴女は自ら歩み寄ってくれました」
「でも私は何も……むしろ私はハイサム様に救われました」
アイリスは否定するも、ハイサムはゆっくり首を横に降る
「いいえ。貴女から武装勢力の攻撃を庇い負傷した時に、貴女だけが私の側にいてくれました。アイリスは私の事を光だと言いましたが、むしろ貴女こそ、私の光なのです」
ハイサムはゆっくり距離を詰め―――
「………ありがとうございます。アイリス」
そう言ってハイサムはアイリスを抱きしめる
「ハイサム様……」
そしてゆっくり身体を離すと、アイリスの頬に触れ顔を近づける
「え、あ……」
アイリスは戸惑うが、ゆっくり瞼を閉じる
そして2人の唇が重なり合いそうになったその時
「ハイサムーー!!そろそろ戻った方がいいんじゃないのー?」
マリヤムの明るい声が遠くから響き、慌てて2人は離れる
「………これはまたの機会に」
そう微笑むと、アイリスは顔を真っ赤にさせる
「は……はい」
小さく返事を返すと、2人は客間へと戻るのだった




