第22話 闇に挑む宝石の花嫁
戻ってきたハイサムが会場の扉を再び開けた瞬間ーー
そこは先程の華やかで煌びやかな光景が一変していた
叫び逃げ惑う招待客達、散らばる装飾品、事態にを収めようとする警備隊、そして会場の奥から見える謎の黒い瘴気と影の魔獣――――――
異様な事態に、ハイサムはその瘴気に向かって走り出す
「デビッド!」
ハイサムはパニックになった会場を縫うように進みながら部下の名前を叫ぶ
「何処だデビッド!」
デビッドを探していたその時、影の魔獣がハイサムに襲いかかろうとしていた
すると少し離れた所から声が聞こえた
「ハイサム!ここだ!」
その声に振り返ると、デビッドはハイサムの剣を投げ渡した
ハイサムは受け取ると、魔獣を一刀両断する
「ギィィィィィィ!」
魔獣は断末魔をあげ、姿を消した
ハイサムは直ぐ様デビッドに駆け寄る
「何があった?状況は?」
「つい数分前、挙動の怪しい使用人を見かけて声をかけた所、急に走り出した思ったら呪文を唱えながら何かを投げつけ『諸悪の根源を粛清する』とかなんとか意味の分からない事を言い出しましてね。それで今に至りますよ」
「………もしや反政府派の異教徒か?そいつは今何処に?」
「俺が取っ捕まえて一発殴ったら伸びました。今は隅で寝ています。だが術者を倒したのに、術が消滅せんのですよ!」
そう言って原因があると思われる瘴気が濃く出ている方向を見る
そこは闇が広がり、何があるのか見えないほどだ
「…………何か呪具を使っているのか?」
「恐らく。だが、何度試してもあそこに行こうにも行けんのです!防御の加護を神から与えられた俺ですら、立っているのがやっとだ!」
沸き立つ魔物たちを切り伏せながら、デビッドは叫ぶ
状況を把握したハイサムは指示を出した
「デビッド。ここはお前に任せる。私はここの警備隊と連携を取り、招待客達を避難させる」
「あいよ!」
そう言ってハイサムは会場の人々を助け出す為に走り出した
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その頃――――
控室にいたアイリスはザフラーと共にパーティ会場へ向かっていた
「アイリス様、本当に大丈夫ですか?終了時間まで控室で休まれても良かったのですよ?」
ザフラーは心配そうにアイリスに尋ねるが、彼女は首を横に振った
「大丈夫よザフラー。私はハイサム様の横に並べる妻にならなくては。こんな事で挫けてられないわ」
笑みを浮かべて答えるアイリスを、ザフラーは不安そうに見つめる
すると、前から慌ただしく人々がなだれ込んできた
あまりの勢いにザフラーが咄嗟にアイリスを隅に避難させ、守るように前に出る
皆、息も絶え絶えにその場に座り込むと、会場内で起こった出来事について次々と口をついて出てきた
「危なかった…なんだあれは!」
「反政府の連中か?」
「警備隊は何をやっているんだ!」
そんな声があちこちから聞こえてくる
思わずアイリスは1人の貴族に問いかける
「あの、何があったのですか?」
「ああ、貴女は辺境伯の………。実はつい先程、反政府派の人間が術を使って我々を襲って来まして………命からがら逃げてきたのです」
「ええっ!」
ザフラーとアイリスは驚く
すると遠くからこんな声が聞こえてきた
「ローザ様!ローザ様の奇跡の術で、あの暴走を止めることはできないのですか!?」
「我々を救って下さい!」
「お願いします!」
次々と言い寄られ、ローザは困惑し首を横に振った
「む……無理よ!確かに少し癒しの力は使えるけど……畑違い過ぎる力は使えないわ!」
そう言って断る
すると両親がローザを守る様に前へ出た
「ちょっと!娘にそんな危険な役割を押し付けないでくださる?この娘の顔に傷でもついたらどう責任取ってくださるの!?」
「そうだぞ!ほら、あっちへ行け!無理なものは無理だ!」
そしてそこに集まる人々を『邪魔だ』と言わんばかりに手で払い追い返した
それをアイリスは黙ったまま見つめる
(誰も解決できる人がいないのなら………………)
そして、彼女は覚悟を決めた
「………ザフラー。貴女はここにいて。私は会場に戻るわ」
「アイリス様!何を!?」
ザフラーは驚き目を見開いた
「私がその術を止めに行くの」
「そんな無茶です!」
「大丈夫。私は浄化の加護を受けているもの。きっと消す事ができると思う。それに、ハイサム様達がここにいないということは、あの場で戦われているのだわ。私も未来の妻として、務めを果たさなくては」
そう言ってアイリスは会場方向へと走り出す
「アイリス様!」
ザフラーが呼び止めるも、アイリスは振り返る事なく去っていった




