表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/23

第21話 敗北

ハイサムがアイリスを連れ会場を去った後――――

残されたローザはその場に立ち尽くしていた


(ありえない………ありえないわこんなの………)


あの醜い姉の変貌に、ローザは悔しさを滲ませアイリスが身に着けていたユフィをギュッと握りしめる


すると周りからはこんな声が聞こえてきた


「しかし、本当にお綺麗な方だったな」

「でも魔王辺境伯がすぐ布でお隠しになって、残念でしたわ。もっと見ていたかったのに」

「それに、何処かへ連れて行かれてしまいましたわね。もうお戻りにならないのかしら?」

「もしやずっと顔を隠していたのは、魔王辺境伯があの美しさを、独り占めしたかったからなのでは?」

「さしづめ、魔王が愛する宝石と言うわけですな」

「まあ、何て素敵な響き。おとぎ話の様ですわね」



アイリスの話題で持ちきりの会場に、ローザば唇を噛み締める


(何よ………!何よ、みんなしてお姉様の話ばかり…………!)


主役をあの見下していた姉に奪われたローザは、内心腸が煮えくり返っていた


(ちょっと小綺麗になったくらいでなによ!そもそも、魔王辺境伯との縁談は、私に来たのよ!?それをあいつが――――――)


するとローザはハッと顔を上げる

そして、にやりと口を歪ませた


「………そうよ。辺境伯は元々私を望んでいたのだから、返してもらえば良いじゃない」


そう呟くと、ローザは2人が出ていった扉へと歩みを進めた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃―――

アイリスを控室に送り届けたハイサムは、1人会場に戻る事にした


先程よりも顔色は良くなっているが、ハルシュタイン家との接触を避けるために彼が配慮したのだ


「ザフラー。アイリスを頼みます」

「はい」


ザフラーにアイリスの事を頼んだ後、アイリスに目線を向けるとしゃがみ、椅子に座る彼女と同じ目線になる


「……すみません。私が弱いばかりに」

「アイリスは悪くありません。悪いのはあの家族達です。」

「でも……」


自身卑下するアイリスの頬をハイサムの大きな手が優しく触れる


「今日、あの虐げられていた家族に、貴女が初めて立ち向かい、臆することなく反論出来たのは、アイリスの負けぬという強い意思があったからです。よく、頑張りましたね」


その言葉にアイリスの胸はいっぱいになる


「ではもう戻らなくては」

「………はい。いってらっしゃいませ」



そうして名残惜しそうに頬から手を離すと、ハイサムは控室を後にした


ーーーーーーーーーーーーー


ハイサムは誰もいない静かな廊下を1人歩いていた

彼の足音だけが響き渡る空間に、突如道を阻むように佇む1人の女性がいた


その人物に気付き歩みを止める


「…………貴女は」


そう呟くと、女は美しい笑みを浮かべながらドレスの裾を広げ、挨拶をした


「先程は挨拶も無しに、失礼しましたアズラエル辺境伯様。アイリスの妹のローザ・ハルシュタインですわ」


その女ーーーローザは挨拶を済ますと、心苦しそうに再び口を開いた


「………実は、アズラエル辺境伯様にお伝えしなければならない事があるのです………。縁談でアズラエル辺境伯様が望まれたのは…………実は、私なのです………!」


すると、ローザは目を潤ませながら、ハイサムの胸元に飛び込んだ


「ハルシュタイン家に縁談の手紙が送られたあの日―――その話を聞きつけた姉が、自分が行くと名乗り出たのです。手紙の内容から察するに、私をお望みだったのは明らかでしたのに……それを姉は『ハルシュタイン家の妹とは書いていない』と言って押しのけたのです!」


ローザの頬に涙が零れ落ちる


「姉は裏表が激しく……外ではあの様に慎ましく気弱な性格を演じていますが………家では私達家族を奴隷の様にこき使い虐げてきた、悪女なのです」


終始しおらしく演じるローザは内心ほくそ笑んでいた


ーーーこうすれば私になびかない男はいなかった。この辺境伯だってこれで落ちるに決まっている


そう確信し、ローザはもう一押しする事にした


「辺境伯様はあの女に騙されているのです!ですから私と―――――」


その時だった

ハイサムが無言でローザを押しのけたのだ

そしてそのまま会場へと向かい始める


ローザは予想外の動きをみせた辺境伯に思わず面食らう


「アズラエル辺境伯様………?」

「………お前達ハルシュタイン一家に感謝している事が1つだけある―――――――あの縁談の申し込みに、こちらの希望に従わず、お前ではなくアイリスを送り込んで来たことだ」

「…………………は?」


ハイサムは立ち止まり振り返る

その顔には怒りが滲み出ていた


「アイリスがお前達を虐げていた悪女だと?ふざけるな。虐げていたのはお前達だろう。あの日初めて私の屋敷に訪れた彼女が、どんな状態だったか分かるか?何をどうしたら恵まれた貴族の娘が、戦地で生まれた子供のように、恐怖で怯えきった目になるのだ!」


その静かで恐ろしい気迫に、ローザは少し怯む


「私はお前達の嘘を承知でアイリスを妻として迎えるのだ…………それが分かったら二度と私とアイリスに近付くな。次は無い」


そう言って背を向け、ハイサムは去っていく

残されたローザは悔しさを滲ませ、頭に咲き誇る薔薇を引きちぎり投げるのだった


ーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃

パーティ会場の上階に、護衛として来ていたデビッドは面白そうに人々を見下ろしていた


(話題は魔王辺境伯とその宝石の花嫁で持ちきりだなぁ。面白くなってきやがった)


そんな事を思っていると、挙動不審なパーティの使用人がいた


不審に思ったデビッドは下階へ降り、その使用人をとっ捕まえる


「おい、あんた。何してんだこんな所で」


「――――――っ!」


使用人は走り出す


「あ!おい、待て!」


デビッドは、すぐさま反応し後を追う


しかし使用人が立ち止まり、何か謎の言葉を呟いた瞬間――――

会場が黒い瘴気に覆われたのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ