第18話 いざ社交パーティへ
それから数日間―――
社交パーティへ向けた準備が、屋敷では慌ただしく進められた
王都へ向かう旅路の支度、アイリスの為のドレス選び、メイク道具やヘアセット一式の用意等、屋敷の使用人を総動員し手配を進める
ザフラーは「アイリス様を社交界一の美しい奥様に仕上げますよ!」と息巻きながら、ドレスやメイク道具を吟味していた
アイリスは慣れない作法やダンスの足取り動作を、限られた時間の中懸命に覚えるのだった
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そして迎えた本番当日―――
ブライトクロイツ公爵夫人が用意してくれた高級宿にて、ザフラーがアイリスの身支度をしていた
「今日はっ!絶対にっ!アイリス様をっ!このパーティーの主役にっ!してみせますからねっ!」
ザフラーはアイリスに付けられたコルセットの紐を縛り上げながら燃えに燃えていた
「ど、どうしたのザフラー?なんだか今日はいつにもまして、気迫が………」
「先程、廊下で他の貴族付きの侍女と、鉢合わせしましてね。何処から来たのか尋ねられたから、サーヴァルから来たって言ったら、なんて言ったと思います!?鼻で笑って『ああ、あの砂しかない辺境ね』ですって!あームカつく!!」
怒りに任せながらコルセットを縛り上げたザフラーは、そのままの勢いでドレスを手に取る
彼女が手に取ったその淡いピンク色のドレスは、サーヴァル色を取り入れたドレスで、ザフラーが絶対にこれにします!と言って決めてくれたドレスだ
「サーヴァルには砂以外にもいろいろありますぅー!!!あっちだってどうせ山と麦畑しか無いような所に住んでるくせにぃー!!!キー!!!!」
溢れ出る怒りを撒き散らしながら、アイリスにドレスを着用させる
アイリスは眉を下げながらザフラーを優しく諭す
「ザフラー落ち着いて。サーヴァルはまだ王都周辺では馴染みが無いから、きっと仕方ないわ」
「それでも故郷を、侮辱されるのは許せません!だから絶対、アイリス様を美しく仕上げてギャフンと言わせてやります!サーヴァルには美しい宝石がいるんですからねっ!」
そう言うとザフラーはメイクに取りかかった
「えーっと今回はユフィで目元だけ出すのですよね?」
「ええ」
「でもどうしてです?せめてお顔だけでも見えるようにしてもいいのに。こんなにお綺麗なんですから」
石肌が取れて以降、サーヴァルではユフィから顔を出したスタイルでいたアイリスが、グランディスでは何故か隠そうとすることに、ザフラーは疑問に思っていた
するとアイリスは目を伏せる
「………どうしても人の目が怖いの。今は石の肌が取れて、あの頃とは違うけど、それでも何か言われそうで………」
そして手をギュッと握りしめる
グランディスでは隠され、虐げられてきた記憶がある故に、顔を晒す事にまだ躊躇いがあったのだ
「アイリス様………」
過去の傷を感じたザフラーは、メイク道具を握りしめる
「大丈夫ですアイリス様!私がそんな事言わさせないくらい綺麗に化けさせます!」
アイリスを勇気づけるように、明るく胸をはり宣言した
それを見た彼女はは少し心が軽くなる
「ザフラー……ありがとう」
そしてアイリスを美しく彩る為の仕上げを、ザフラーは願いを込めてするのだった
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数時間後―――
アイリス達がいる部屋を叩く音が外から響いた
準備を終えたハイサムとデビッドがやってきたのだ
「準備は整いましたか?」
「はい!どうぞハイサム様。お入りください」
ザフラーが返事を返すと、ドアが開く
ハイサムの目に飛び込んだのは、淡いピンクのサーヴァルスタイルのドレスに身を包んだ、ユフィを付ける前のアイリスだった
「ほぉーこりゃあ綺麗だ!ユフィを付けるのが勿体ないくらいだな」
とデビッドが言う
いつもと違う雰囲気に、ハイサムはジッとアイリスを見つめる
「あ……ハイサム様、あの……」
アイリスもまた、いつもと雰囲気が違うハイサムにどぎまぎしていた
いつもよりきっちり後ろにまとめ上げられた髪に、黒を基調とした異国風の礼装
そして肩からは流れるように深紫の布がかけられている
金糸の刺繍は翼のように広がっており、その姿はまるで夜を纏う王のようだった
するとハイサムが口を開いた
「……その場で一回、回ってみてもらえますか?」
ハイサムにそう言われ、アイリスは言われるがままゆっくりとくるりと回った
回転と同時に華が咲くように裾が美しく広がる
その可憐さにザフラーは思わず拍手を送り、デビッドは感心の声を上げた
ハイサムはにこやかに笑みを浮かべると
「とてもよくお似合いですよ。………ユフィを付けるのは正解かもしれませんね」
「え?」
その言葉にアイリスが首を傾げていると、ハイサムが彼女の頬にそっと触れそっと呟く様にこう述べた
「アイリスの美しさに皆が気づいてしまう」
目を見つめながら言われたアイリスは顔を赤くする
するとデビッドは笑って
「ぶははっ!嫉妬深い辺境伯様だ!気をつけろよアイリス殿」
と茶化した
そしてハイサムはアイリスに腕を向け、掴まるよう合図する
「では、参りましょうか」
「はい」
そう言ってゆっくりと宿を後にする
期待と不安が渦巻く中、4人は会場へと向かうのだった




