第17話 社交界への誘い
ある朝の事
それは朝食を取っていた時にハイサムから告げられた
「社交パーティ………ですか?」
アイリスはナイフを動かす手を止める
目を瞬かせながら尋ねると、ハイサムが頷く
「王都のブライトクロイツ公爵夫人主催のパーティに、招待されたのです。一緒に同行してくれますか?」
「はい。それは良いのですが………」
「どうしました?」
少し口籠ると、アイリスは申し訳無さそうに答えた
「私、こういった社交界に、一度も出たことが無いのです。ハイサム様に、恥をかかせてしまうかもしれません……」
下を向く彼女に、ハイサムが背中を押すように言葉をかける
「大丈夫ですよアイリス。恥ずべき事ではありません。知らないのなら、これから覚えていけば良いのです」
そう言ってハイサムは優しく微笑んでみせた
「私が付いています。自信を持って、堂々としていれば良いのです」
「………はい」
その言葉に、アイリスもはにかんだ笑顔で答えたのだった
ーーーーーーーーーーーーーー
その後、アイリスの自室にて
社交パーティの知らせを聞いたザフラーは、今から心躍らせてパーティの日を待ちわびていた
「社交パーティなんて初めてです!しかも王都に行くなんて!華やか何でしょうねぇきっと」
「ふふっ。まるでザフラーが出席するみたいだわ」
煌びやかな王都のパーティを想像し、うっとりと目を細めるザフラーに、アイリスは顔をほころばせる
「だってそれでもアイリス様と同行出来るのですもの!雰囲気だけでも楽しまなくては!」
ザフラーは浮かれながらドレスの手入れをし始めると、パーティで輝く主人を想像し始めた
「きっとアイリス様が着飾った姿は誰よりも美しいでしょうね。この美貌に全殿方が虜ですよ!……あ、でもそれは、ハイサム様がお許しになりませんね」
そう言うと、2人は顔を見合わせて笑い合う
当日はめかし込みますよー!!とザフラーは1人気合いを入れる
そんな彼女を他所に、アイリスは1つ気がかりな事があった
場所が王都、そして高位貴族主催という事は、ハルシュタイン家の面々も招待されている可能性もあったのだ
ーーーーーあの両親と妹に鉢合わせするかもしれない
微かな不安がアイリスの胸に影を落とすのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーー
同じ頃
執務室ではハイサムとデビッドが話し込んでいた
いつもの定位置のソファに身を預けながら、デビッドは社交パーティの招待状を眺める
「王都の社交界、しかもその中心人物のブライトクロイツ公爵夫人主催かぁ。きっとお前を警戒しての事だろうな。要は辺境伯の器たる技量の人物なのか、品定めをしたいって訳だ」
デビッドの言葉に、重要書類を記入しながらハイサムが静かに答えた
「サーヴァル辺境領を制圧した時の話が、どうも歪曲して伝わっているらしいからな。必要とあらば、私を排除したいのかもしれない」
そう言って顔色を変えることなく、その書類に判を押す
するとデビッドが疑問に思っていた事を尋ねる
「だがいくら高位貴族主催のパーティとはいえ、よくお前が出席しようと思ったな。お前こういうの嫌いだろ?」
「ああ、嫌いさ」
「じゃあなんで?」
「アイリスの為さ」
「お嬢さんの?」
デビッドが身を起こし聞き返すと、ハイサムは小さく頷いた
「私はどう思われても構わないが、アイリスにあらぬ噂を立てられるのは耐え難くてね。それを黙らせる為さ」
「成る程ね。未来の奥様は我らの辺境伯様に愛されてますなぁ」
デビッドはニヤリと笑みを浮かべながら、茶化すように言ってみせる
それぞれの思いが交差する中、来たる社交パーティに向けて準備を始めるのだった




