# 第58話 最後の、欠片
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第57話の刻から——約二週間後。
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ご懐妊から——約八ヶ月半の刻。
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出産まで、あと、約一ヶ月、ござる、はず——
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けれど、闇の揺らぎは、穏やかに、しかし、確実に、続いていた。
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帝城の皇妃の執務室。
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セレスティア+ジークリンデ+ヴェレナ大司祭(=ヴェネシア聖印国から、帝城に滞在中)が、絶望的な探索を、続けていた。
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三大神話の、すべての記述を、何度も、何度も、再確認。
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大魔女エルメリンダの千年の神話。
大聖女ヴェネシアの千年の神話。
初代ヴァルガルド皇帝の千年の歴史。
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けれど、『最後の、欠片』の記述は——どこにも、無かった。
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セレスティアのお腹は——もはや、本格的に、大きく、膨らんでいる。
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お腹の中の命の魂の奥の闇は——穏やかに、しかし、確実に、揺らぎ続けている。
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第57話の対話の通り、闇は、お腹の中の命を、侵食、致さない。
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けれど、封印が、出産前に、崩壊、致せば——『分離』は、不可能。
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ヴォルフラムも、穏やかに、対策会議に、参加。
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彼の『夜空の瞳』に、絶対零度の、深い、焦燥。
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「——『最後の、欠片』は——どこに、隠されているのだ——」
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その刻——
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ハルトムートが、穏やかに、皇妃の執務室に、入って、来た。
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彼の手には——帝城の古い文書庫の、千年の、古文書。
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彼の瞳には、穏やかな、けれど、深い、希望の光。
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「——皇帝陛下——皇妃殿下——」
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「——わたくしどもの、千年の古文書を、再調査致しました結果——」
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「——『最後の、欠片』、では、ござりませぬが——」
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「——千年前——三人の契約の刻に——『四人目』の人物が、立ち会った、と、いう、記述を、発見致しました」
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セレスティア+ヴォルフラム+ジークリンデ+ヴェレナの瞳が、瞬時に、見開かれる。
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「——『四人目』、と——?」
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ハルトムート、穏やかに、頷く。
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「——左様で、ござります」
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「——千年前——三人の契約の刻に——お三人の、最も信頼の置ける、お一人の証人——『契約の、口伝の、護り人』が、立ち会われた、と——」
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「——その人物が——『契約の根幹の、最後の、欠片』を——神話には、書き残さず——口伝で、ある一族に、継承、致した、と——」
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ヴェレナの瞳が、穏やかに、見開かれる。
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「——『口伝の、護り人』——大聖女ヴェネシアの千年の神話には——『護り人』の存在は、記述、ござりません」
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「——けれど——それは——お三人が、敢えて、書き残さなかったから——?」
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セレスティア:「——その『護り人』の血筋は——今、どこに——?」
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ハルトムート、穏やかに:「——千年の古文書には——『北方の、最も、古き、血筋』、とだけ——」
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ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、瞬時に、見開かれる。
***
「——『北方の、最も、古き、血筋』——」
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「——アルテンブルク——?」
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ハルトムート、穏やかに、頷く。
***
「——左様で、ござります」
***
「——アルテンブルク公爵家は——千年——『獣化の、現場の、護り人』、として、知られて、参りました」
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「——けれど——古文書の記述によれば——アルテンブルク公爵家は——『獣化の、護り人』だけでなく——」
***
「——『千年の、契約の、口伝の、護り人』——でも、いらっしゃった、可能性が、ござります」
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セレスティアの青の瞳が、穏やかに、見開かれる。
***
「——ゲオルク様+アネリーゼ様——?」
***
ヴォルフラム、穏やかに、立ち上がる。
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「——アルテンブルク公爵領に——緊急の使者を、送る」
***
「——ゲオルクとアネリーゼに——『千年の、口伝の、護り』を、お聞き致す」
***
緊急の使者が、北方へ、送られた。
***
二日後——アルテンブルク公爵領=ゲオルクとアネリーゼが、帝城に向かって、馬車で、急ぐ。
***
千年——アルテンブルク公爵家が、隠してきた、千年の沈黙の奥の真実が、明かされる刻が、近づいた。
***
三日後=帝城。
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ゲオルクとアネリーゼが、穏やかに、帝城に、到着。
***
二人とも、穏やかに、深く、頭を、垂れる。
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ゲオルクの灰色の瞳の奥に——千年の、深い、覚悟の光が、宿っていた。
***
ゲオルク、穏やかに:「——皇帝陛下——皇妃殿下——」
***
「——わが家の、千年の、口伝のお話で、ござりますな」
***
彼の頬の、古い刀傷が、穏やかに、震える。
***
「——アルテンブルク公爵家は——千年——『獣化の、護り人』、として、知られて、参りました」
***
「——けれど——その『護り』の本質は——もう一つ、ござります」
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アネリーゼも、穏やかに、続けた。
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彼女の冷たい翠玉の瞳に——千年の、凛とした、覚悟の光。
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「——千年前——三人の契約の刻に——わが家の、初代のご祖先が——『契約の根幹の、最後の、欠片』を、お三人から、口伝で、託されました」
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彼女の声に、震えは、無い。
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千年の血の重みを、背負った、凛とした響き。
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「——『神話に、書き残しては、ならぬ』、と——」
***
「——『千年——その欠片を、口伝で、継承、致せ』、と——」
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ヴェレナが、穏やかに、瞳を、見開く。
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「——なぜ——神話に、書き残しては、ならなかったのですか——?」
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ゲオルクが、穏やかに、彼女を、見据える。
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彼の灰色の瞳の奥に——千年の、深い、孤独の重みが、宿っていた。
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「——もし——紙に、書き残せば——」
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「——千年の間に——『無の魔』の残滓や——外側からの脅威に——その知恵を、検知される、危険が、ござりました」
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「——『結界の、張替え手法』が——外側に、知られれば——」
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「——『無の魔』は——千年の間に——その手法への、対策を、致す、可能性が、ござりました」
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ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、穏やかに、見開かれる。
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千年——アルテンブルク公爵家が、なぜ、千年の沈黙を、守り続けたか。
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その理由が——今、明かされた。
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書き残せば、検知される。
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検知されれば、対策される。
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千年——『一子相伝の口伝でしか、守れなかった』、知恵。
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その重みを——千年——アルテンブルク公爵家が、一族の、孤独の中で、背負い続けた。
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獣化の現場で、血を流しながら——同時に、口伝の重責を、千年、お護りし続けた。
***
千年の、二重の、孤独。
***
ゲオルク、穏やかに、続ける。
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「——わが家の初代のご祖先以来——千年——わが家は——口伝で——『最後の、欠片』を、継承、致して、参りました」
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「——わたくしが、父から、口伝を、頂いたのは——わたくしが、二十歳の刻——」
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「——アネリーゼが、わが家に、嫁いだ刻——わたくしは、彼女にも——口伝を、継承、致しました」
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アネリーゼの冷たい翠玉の瞳から、穏やかな涙が、滴る。
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「——千年——わが家が、お護りして参った、口伝——」
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「——今——皇妃殿下に、お、継承、致す刻が——参りました」
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千年の沈黙の奥の——本格的な、開示の刻、だった。
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ゲオルク、穏やかに、深く、息を、吸う。
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彼の灰色の瞳の奥に、千年の、深い、覚悟。
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「——『最後の、欠片』、とは——」
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「——『母の魂が、闇に、慈悲を捧げる、その瞬間に——母の魂の中の、最も尊い誓いを——闇と、命の魂の、間の、結界として、注ぎ込む』、知恵で、ござります」
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セレスティアの青の瞳が、穏やかに、見開かれる。
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アネリーゼ、穏やかに、続ける。
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「——『母の魂の中の、最も尊い誓い』——」
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「——それは——母が——『この命の為に——わたくしの生涯のすべての誓いを、捧げる』——その誓いで、ござります」
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「——その誓いの力が——闇と、命の魂の、間の、絶対的な、結界に、なります」
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「——闇は、その結界を、超えて、命の魂に、近づくことが、出来ません」
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「——出産の刻に——闇が、内側から、崩壊、致しても——命の魂は——結界の中で、お護りされる、刻」
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セレスティアの青の瞳から、穏やかな涙が、滴った。
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彼女は、穏やかに、深く、頷く。
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「——アネリーゼ様——ゲオルク様——」
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「——千年の口伝の継承を——お、有難く存じます」
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彼女の細い手が、穏やかに、自分のお腹に、置かれる。
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その瞬間——彼女の声に、たった一度——震えが、走った。
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恐怖の震え、では、無い。
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千年の母の、魂の根幹の、誓いの、震え。
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「——わたくしの、生涯の、最も尊い誓い」
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「——それは——」
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「——このお腹の中のお子様の、ご無事と——お、お幸せ」
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たった一度の『お、』。
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本話の、すべての刻を通じて——この、一打のみ。
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千年の母の、最も尊い、誓いの、震え。
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「——ただ、それだけでございます」
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吃音は、一切、無い。
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千年の沈黙の奥の知恵が——今、セレスティアの、絶対的な、母の誓いの中に——本格的に、宿った刻、だった。
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けれど——その瞬間——
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セレスティアが、穏やかに、お腹を、押さえた。
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「——あ——」
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鈍い、けれど、確かな、痛みの兆し。
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陣痛の、本格的な開始の、最初の合図。
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出産まで、まだ、約一ヶ月、ござる、はず。
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けれど——闇の揺らぎが、出産の刻を、前倒し致した。
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陣痛が、本格的に、開始、致した、刻、だった。
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ヴォルフラムが、瞬時に、彼女の傍らに、寄る。
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「——セレスティア——!」
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ジークリンデが、穏やかに、彼女のお腹を、見守る。
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彼女の瞳に、穏やかな、深い、緊張。
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「——皇妃殿下——本格的な陣痛で、ござります」
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「——出産まで——おそらく、四十八時間以内——」
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同じ刻——
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帝都の上空に、再び、『色の、無い、光』が、現れた。
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『色の、無い、光』が、穏やかに、ヒトに、似た、輪郭を、なす。
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その声には——感情の、痕跡が、一切、無い。
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淡々と、響く——絶対零度の、色の無い、声。
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「——お見事でござりました」
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「——貴方たちは、『最後の、欠片』を、発見、致しました」
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「——わたくしどもの、予測演算を、再々、致しました」
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「——成功確率——五十一パーセント」
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「——失敗確率——四十九パーセント」
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ヴォルフラム+セレスティアの瞳に、穏やかな、僅かな、希望の光。
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けれど——『色の、無い、光』の声は、続いた。
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「——貴方たちのお腹の中のお子様の、陣痛が、本格的に、開始、致しました」
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「——出産の刻の、内側からの崩壊までの、残り時間=約四十八時間」
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「——わたくしどもは、『分離』の刻に、立ち会う許可を、求めます」
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「——失敗の刻に、貴方たちのお子様を、強制的に、回収、致す為で、ござります」
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ヴォルフラム、絶対零度に:「——立ち会うことは——許さぬ——!」
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「——わたくしどもの出産の刻に——『未知の文明』の介入は——絶対に、許さぬ——!」
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『色の、無い、光』、平坦に:「——お考えくださりませ」
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「——五十一パーセント——わたくしどもの観測の精度では——『無視できる、僅差』、で、ござります」
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「——『分離』が、失敗、致した、刻——『無の魔』が、お腹の中の命の魂を、占拠、致します」
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「——その刻には——貴方たちのお子様は——『無の魔』の、新たな、入れ物に、なられます」
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「——わたくしどもは、その『刻』の回避の為に、参ります」
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漆黒の船団=三十隻が、北方の海から——本格的に、帝都の方角に、進み始めた。
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観測者から——介入者へ。
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千年の沈黙の、観測の刻が——終わった。
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三重の絶望が、同時に、襲い始めた。
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一つ——セレスティアの肉体。
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予定日を、一ヶ月、前倒し致した、本格的な陣痛。
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残り、四十八時間という、絶対的な、制限時間。
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二つ——内側の闇。
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陣痛の痛みの、奥で——封印が、物理的に、限界を迎え、軋み始めている。
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精神世界からの——崩壊の予兆。
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四人目の純粋な金色の光が——穏やかに、しかし、確実に——闇に、押されつつ、ある。
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三つ——外側の脅威。
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漆黒の船団=三十隻が——北方の海から——帝都の方角に、本格的に、進んでいる。
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『失敗確率四十九パーセント』を掲げ——赤子の強制回収の為に——
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絶対零度の、観測者が——
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今——本格的な、介入者として——直進してくる。
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ヴォルフラムが、穏やかに、しかし、絶対的な、覚悟で、立ち上がった。
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彼の『夜空の瞳』に——千年の、絶対零度の、最大限の、決意の炎。
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「——セレスティア——」
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「——結婚式の聖堂に、移る」
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「——千年の契約のお円環の完成の、聖なる場所で——出産の刻を、迎える」
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「——『四人の契約』の、本格的な、最後の刻、なのだ」
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彼は、穏やかに、セレスティアを、抱き抱える。
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彼女は、穏やかに、彼の腕の中に、収まる。
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陣痛の痛みに、震えながら——けれど、彼女の青の瞳には、絶対的な、母の、決意の光。
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「——ええ、陛下——」
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「——わたくしは——『最後の、欠片』を——お腹の中のお子様に、捧げ致します」
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ヴォルフラムは、穏やかに、セレスティアを、抱いたまま、結婚式の聖堂に向かう。
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ゲオルク+アネリーゼ+ヴェレナ+ジークリンデ+ハルトムート+腹心たちが、穏やかに、続く。
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帝城の中央の、結婚式の聖堂——
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千年の契約のお円環の完成の、聖なる場所。
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第50話の結婚式の刻——
第55話の祈祷の刻——
第57話の母の魂の呼びかけの刻——
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そして、今——
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世界の命運を、賭けた、最終防衛線、として——
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その聖なる場所が、本格的に、立ち上がった。
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セレスティアは、穏やかに、聖堂の中央の、寝台に、横たわる。
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寝台は、エルザベートが、出産の刻の為に、特別に、用意した、純白の寝台。
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穏やかな金色の刺繍が、施されている。
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ヴォルフラムが、穏やかに、彼女の手を、握る。
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「——セレスティア——」
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「——わたくしは——お前と、わが子を——絶対に、お護り致す」
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セレスティア、穏やかに、彼の手を、握り返す。
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「——ええ、陛下——」
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「——わたくしも——『最後の、欠片』を——必ず、お腹の中のお子様に、捧げ致します」
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同時——帝城の外で——大陸全土の、本格的な、臨戦態勢が、整い始めていた。
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帝国軍が、帝都の周辺の防衛線を、最大限に、強化。
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影部隊が、結婚式の聖堂の周辺を、徹底的に、警備。
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ヴェネシア聖印国の聖騎士団=ヴェレナの命令の下、結婚式の聖堂の聖なる結界の補強。
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エルディオ王国の軍が、レオンハルト王太子の指揮の下、帝都の南方の防衛線に、参陣。
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諸国の代表+帝国貴族の軍も、続々と、参集。
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第50話の結婚式に、参列した、大陸全土の同盟が——今、本格的な、戦時の同盟として、立ち上がった。
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そして——
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北方辺境警備の要塞——
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ヴィルヘルムが、穏やかに、銀色のペンダントを、胸に、抱きしめる。
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第48話以来、彼が、誠実な騎士として、お護りし続けた、母のペンダント。
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彼の翠玉の瞳に——絶対的な、騎士の、覚悟の光。
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「——お母様——お父様——」
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「——弟様、もしくは妹様——」
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「——わたくしが——北方の、盾、として——」
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「——『未知の文明』の、漆黒の船団を——絶対に——帝都に、近づけませぬ——!」
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ヴィルヘルムの指揮の下、北方辺境警備の精鋭部隊が、漆黒の船団の進路を、阻むべく、本格的な、迎撃の体制を、整える。
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大陸全土の——絶対的な、臨戦態勢。
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帝城の窓の外——
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穏やかな、冬の夜の月が、満ちている。
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その月の光が——北方の海上の漆黒の船団の周りで——穏やかに、しかし、確実に——侵食されつつ、あった。
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漆黒の船団=三十隻——
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絶対零度の、観測者から——
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絶対的な、介入者へ——
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穏やかに、しかし、確実に——帝都の方角に、進んでいる。
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残り、四十八時間。
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セレスティアの肉体の、陣痛——
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お腹の中の命の魂の奥の、闇の、本格的な崩壊の予兆——
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漆黒の船団=三十隻の、本格的な接近——
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三重の、絶対的な、絶望が——
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結婚式の聖堂に向かって——
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穏やかに、しかし、確実に、収束していく。
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ヴォルフラムが、穏やかに、セレスティアの額に、口づける。
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彼の『夜空の瞳』に——千年の獣の皇帝の、絶対零度の最大限の、覚悟の炎。
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「——わが、最愛の妻——」
***
「——わが、最愛の、子——」
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「——わたくしは——絶対に——お前たちを、お護り抜く」
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セレスティアの青の瞳から、穏やかな、深い、決意の涙が、滴る。
***
「——ええ、陛下——」
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「——わたくしも——絶対に——お腹の中のお子様を——お護り致します」
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お腹の中で——お腹の中の命が、穏やかに、応える。
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トン——
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その小さな、けれど、確かな、生命の合図。
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四人の契約の——本格的な、最後の刻が——
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穏やかに——けれど、絶対的な、決意の中で——本格的に、始まろうとしていた。
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『次の刻』=出産の本格的な刻+四人の契約の最後の発揮+『最後の、欠片』の本格的な発揮+『無の魔』との『分離』+漆黒の船団との本格的な対峙——の、刻が——
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大陸全土の、絶対的な、臨戦態勢の中で——
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結婚式の聖堂に、収束しつつ、あった。
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全編を通じて、最も重厚な——
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絶対零度の——
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最終決戦の——
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幕が——
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穏やかに、しかし、確実に——上がろうとしていた、のだった。




