# 第57話 揺らぐ、封印
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第56話の刻から——約三〜四ヶ月。
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ご懐妊から——約七〜八ヶ月の刻。
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出産まで、あと、約一〜二ヶ月。
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帝城の皇妃の寝室に——穏やかな、冬の朝の光が、満ちていた。
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セレスティアは、穏やかに、目覚めた。
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彼女のお腹は——穏やかに、明らかに、大きく、膨らんでいる。
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お腹の中の命は——穏やかに、力強く、動いていた。
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第56話の樫の木の下の胎動から、数ヶ月を経て——お腹の中の命は、本格的な、生命の合図を、放っている。
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ヴォルフラムが、穏やかに、彼女のお腹に、手を、置く。
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お腹の中の命が、力強く、彼の手のひらに、応える。
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トン——トン——
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彼の『夜空の瞳』が、穏やかに、緩む。
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千年の獣の皇帝の魂は——既に、別人だった。
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『狂おしいほどの、父の、執念』が——その瞳の奥に、宿り続けている。
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二人は、穏やかに、微笑む。
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けれど、その微笑みの奥に——『出産までの残りの刻』への、絶対的な、緊張感が、宿っていた。
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同じ日の、午後=皇妃の執務室。
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セレスティアが、ジークリンデと、新たな知恵の探索を、続けていた。
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大魔女エルメリンダの千年の神話の、断片。
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大聖女ヴェネシアの千年の神話の、再調査。
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ジークリンデの千年の魔術の知恵。
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三つの知恵を、総動員して——けれど、ま、だ、『内側からの崩壊』への対策は、見つかっていない。
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突如——
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セレスティアが、穏やかに、胸を、押さえた。
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彼女の青の瞳が、僅かに、揺らぐ。
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「——ジークリンデ——」
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彼女の声に、初めて——僅かな、震え。
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「——お腹の中で——『何か』が——揺らいで、おります」
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ジークリンデが、瞬時に、瞳を、見開く。
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「——皇妃殿下——!」
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彼女は、穏やかに、流転型魔力で、セレスティアのお腹を、見守る。
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セレスティアのお腹の中の命の、魂の奥に——
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『無の魔』の闇が——穏やかに、僅かに、動き始めて、いた。
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四人目の純粋な金色の光の、封印が——穏やかに、僅かに、揺らぎ始めて、いる。
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出産まで、まだ、約一〜二ヶ月、ござる、はず。
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けれど——闇は、既に、動き始めて、いた。
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未知の文明の『出産の刻の、内側からの崩壊、確率百パーセント』の警告——
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その『出産の刻』より、早く——
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現実は、進み始めていた。
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ジークリンデ、穏やかに:「——皇妃殿下——お腹の中の闇が——出産の刻より、早く、動き始めて、おります」
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「——封印が——本格的に、揺らぎ始めて、おります」
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セレスティアの青の瞳に、穏やかな、深い、緊張。
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ヴォルフラムへの、緊急の伝令が、走った。
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同じ日の夕方=帝城の対策会議室。
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ヴォルフラム+セレスティア+ジークリンデ+ハルトムート+イザベラ+エミリア+エルザベート+レナーテ。
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ヴェレナ大司祭への、緊急の伝令も、送られた。
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ジークリンデが、穏やかに、状況を、報告。
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「——お腹の中の命の魂の奥の闇が——出産の刻より、早く、動き始めて、おります」
***
「——封印が——本格的に、揺らぎ始めて、おります」
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「——このまま、出産の刻に、至れば——『内側からの崩壊』は、確実、で、ござります」
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「——けれど、もし、封印が、出産の刻、より、早く、崩壊、致せば——」
***
「——お腹の中の命の魂が、闇に、呑み込まれる、可能性が、ござります」
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ヴォルフラムの『夜空の瞳』が——絶対零度に、凍りつく。
***
「——出産の刻、より、早く、闇が、崩壊、致す、可能性、と——?」
***
ジークリンデ、穏やかに、頷く。
***
「——左様で、ござります」
***
「——『新たな知恵』を、急がねば、なりませぬ」
***
数日後——ヴェレナ大司祭からの、緊急の書簡。
***
『皇帝陛下——皇妃殿下——』
***
『大聖女ヴェネシアの千年の神話の中に——「母の魂が、闇に直接、呼びかける」、可能性の記述を——発見、致しました』
***
『けれど、具体的な、お手法は、まだ、不明、で、ござります』
***
『大魔女エルメリンダの千年の神話との、照合が、必要、で、ござります』
***
セレスティアは、ヴェレナの返信を受けて——本格的に、大魔女エルメリンダの千年の神話を、再調査。
***
母エレオノーラから継承した、千年の神話の、断片。
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神話の中に——『大魔女エルメリンダが、千年前、お腹の中の命に、魂の根幹で、対話、致した』記述。
***
流転型魔力の根幹を、自分のお腹の中の命の、魂の奥に、直接、注ぎ込み——母の愛で、闇に、呼びかける、知恵。
***
セレスティアの青の瞳に、穏やかな、深い、希望の光。
***
「——『母の魂が、闇に直接、呼びかける』——」
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「——大魔女エルメリンダ様も、千年前、同じ知恵を、用いられた——!」
***
ジークリンデも、穏やかに、頷く。
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「——皇妃殿下——その知恵で——封印の揺らぎを——穏やかに、抑える、可能性が、ござります」
***
「——けれど——『闇に直接、呼びかける』、行為は——」
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「——母の魂が、闇に、影響を、受ける、危険性が、ござります」
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ヴォルフラム、絶対零度に:「——セレスティアの魂が——危険に、晒される、と——?」
***
ジークリンデ:「——左様で、ござります」
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けれど、セレスティアは、穏やかに、立ち上がった。
***
彼女の青の瞳に——絶対的な、母の、決意の光。
***
その刻——彼女の声に、たった一度——震えが、走った。
***
「——わたくしの魂が、危険に、晒されようとも——」
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「——お腹のお子様の魂を、お、お護りするために——」
***
たった一度の『お、』。
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本話の、すべての刻を通じて——この、一打のみ。
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千年の母の、魂の根幹の、震え。
***
「——わたくしは——『母の魂の呼びかけ』を、執り行います」
***
吃音は、一切、無い。
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ヴォルフラムは、穏やかに、深く、深く、頷いた。
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「——セレスティア——わたくしも、お前を、お護り致す」
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その夜=結婚式の聖堂。
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千年の契約のお円環の完成の、聖なる場所。
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第50話の結婚式の刻+第55話の祈祷の刻と、同じ聖堂。
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セレスティアは、聖堂の中央に、穏やかに、座した。
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彼女のお腹は、明らかに、大きく、膨らんでいる。
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ヴォルフラム+ジークリンデ+ヴェレナ(=緊急の帝城への来訪)が、穏やかに、見守る。
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セレスティアは、流転型魔力で、自分のお腹を、穏やかに、包む。
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次に、彼女は、自分の魂の根幹を、お腹の中の命の魂の奥に、直接、注ぎ込み始めた。
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彼女の意識が——穏やかに、お腹の中の命の魂の世界に、降りていく。
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そこで——彼女は、見た。
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四人目の純粋な金色の光に、穏やかに、抱かれている——『お腹の中の命の、魂』。
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いや——『命の、魂』、では、無い。
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まだ、形を、なさない——けれど、確かに、自分の血を引く、命の、息吹。
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そして——その奥に——
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千年前の『無の魔』の最後の断片の、闇。
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闇は、穏やかに、しかし、確実に、命の魂に、近づこうと、している。
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四人目の純粋な金色の光は、穏やかに、闇を、押し戻している。
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けれど——光は、徐々に、弱まりつつ、あった。
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セレスティアの魂が、穏やかに、闇に、呼びかける。
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(——放しなさい——)
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(——あなたは——千年前の、闇——わたくしのお腹の中の命では、ござりません——)
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彼女の声には、震えは、無かった。
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国母としての、絶対的な、慈悲と、尊厳の、響き。
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闇は、穏やかに、揺らいだ。
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そして——闇から——穏やかな、低い、声が、応えた。
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(——千年前——わたくしは——三人の契約で、外側に、追放された——)
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(——けれど——わたくしは——千年——わたくしどもの世界に、戻りたかった——)
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(——貴方の、お腹の中の命の、刻が——わたくしの——千年の、唯一の、機会で、ござった——)
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その声に——千年の、深い、深い、孤独が、宿っていた。
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千年——世界の、外側に、追放され——ただ一人——戻る刻を、待ち続けた、声。
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セレスティアは、穏やかに、闇に、語りかける。
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(——闇よ——あなたも、千年——孤独で、いらっしゃったのですか——)
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闇は、穏やかに、揺らいだ。
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(——左様、で、ござった——)
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(——わたくしは——千年前、追放、される、その刻まで——わたくしどもの世界の、一部、で、ござった——)
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(——千年——わたくしは——外側で——一人——孤独に——戻る刻を、待って、おりました——)
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その告白に——
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千年——『無の魔』、と、呼ばれ——
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千年——『絶対的な、闇』、と、忌まわれ——
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千年——世界を、滅ぼす、恐怖の象徴、と、見做され続けた——
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その存在の、最も、深い、孤独の核が——
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史上、初めて——
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外側に——
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漏れた。
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セレスティアの青の瞳から——穏やかな、穏やかな涙が、滴った。
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精神世界の中で——彼女の魂が、震えた。
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千年——闇、と、呼ばれた、存在——
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けれど、彼は——千年——ただ、孤独に——故郷に、戻る刻を、待ち続けた、一つの、魂、だったのだ。
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彼女の流転型魔力が——穏やかに、穏やかに——闇に、流れ込み始める。
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冷たい悪意を——温かい敬意に——転換する、千年の本質。
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第29話の致死毒の刻。
第42話のお茶会の言葉の刃の刻。
第47話のガルバートの致死の魔法の刻。
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すべての、流転型魔力の、本格的な発揮を、超える——
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千年の闇の、千年の孤独に対する——最も深い、慈悲の、流転。
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(——闇よ——)
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(——わたくしは——あなたを——『闇』、と、呼んでしまいました——)
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(——千年——世界は——あなたを——『絶対的な、悪』、と——呼び続けてきました——)
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(——けれど——)
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(——あなたは——千年、孤独に、戻る刻を、待った——一つの、魂、でいらっしゃったのですね——)
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その『言葉』が——
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闇の、千年の孤独の核に——穏やかに、触れた。
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千年——
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外側で——
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ただ一人——
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誰にも——一つの、魂、として、認められず——
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ただ、『絶対的な、悪』、として、忌まわれ続けた、存在が——
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史上、初めて——
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『一つの、魂』、として——
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認められた、刻。
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闇は——穏やかに——
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穏やかに——
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揺らぎを、止めた。
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いや——
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揺らぎを、止めただけ、では、無い。
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冷たい——『闇』の、輪郭が——
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穏やかな——『温かい、光の、対話者』の、輪郭に——
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変貌、し始めた。
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流転型魔力の——本質的な、発揮の、極致。
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(——貴方は——わたくしを——『闇』、と、呼ばずに——一つの、魂、として、扱ってくださる——)
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(——千年——初めて——わたくしの孤独を、認めてくださった——)
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その声には——もはや、千年の、孤独の、震えは、無かった。
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穏やかな——救済の、響き、だった。
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(——わたくしは——貴方のお腹の中の命の、魂を——『侵食』、致さぬ——)
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その瞬間——
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セレスティアの魂の奥に——絶対的な、救済の、感動が、満ちた。
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お腹の中の命を——侵食、致さない。
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千年の闇の——絶対的な、誓い。
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けれど——闇は、続けた。
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(——わたくしは——『出産の刻』に——貴方のお腹の中の命の、魂と、共に——『分離』、致す必要が、ござる——)
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セレスティアの青の瞳が——穏やかに、見開かれる。
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(——闇よ——あなたは——お腹の中の命の魂、を——侵食、致さず——分離、致してくださる、と——?)
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闇:(——左様、で、ござる——)
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(——貴方の、母としての、慈悲——千年——わたくしは、それを、求めて、おりました——)
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けれど——闇は、続ける。
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(——『分離』には——『最後の、知恵の、欠片』が、必要で、ござる——)
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(——その欠片は——千年前、三人の契約の刻に——『大魔女』+『大聖女』+『初代皇帝』の、お三人が——『隠した』——欠片で、ござる——)
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(——三人は——その『欠片』を——千年の神話の中に——書き残さなかった——)
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(——それは——三人だけが、知っていた、口伝の知恵——)
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(——わたくしも——その欠片の所在は——存じませぬ——)
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セレスティアは、穏やかに、闇に、頭を、垂れる。
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(——闇よ——お話、お有難く、ござります)
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(——『最後の、欠片』を——わたくしどもが、必ず、見つけ致します)
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(——分離の刻まで——わたくしの、お腹の中の命を——お護りくださりませ)
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闇:(——左様、致す——)
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(——貴方の、慈悲に——千年の、お返しで、ござる——)
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セレスティアは、穏やかに、お腹の中の命の魂の世界から、戻ってくる。
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結婚式の聖堂——
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ヴォルフラム+ジークリンデ+ヴェレナが、穏やかに、見守っていた。
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セレスティアの青の瞳には——穏やかな、深い、慈悲の光と——
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千年の闇との対話の余韻による、深い、疲労の影。
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彼女は、穏やかに、ヴォルフラムに、報告。
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「——陛下——」
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「——闇は——『侵食、致さず、分離、致す』——と、応えなされました」
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「——けれど——『分離』には——『最後の、知恵の、欠片』が、必要、で、ござります」
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ヴェレナの瞳が、穏やかに、見開かれる。
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「——千年前、三人の契約の刻に——お三人が、隠した『欠片』——」
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彼女の声に、緊張。
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「——大聖女ヴェネシアの千年の神話の中に——『隠された、欠片』の記述が——」
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「——ござりません」
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ジークリンデも、穏やかに、頷く。
***
「——わたくしも、千年の魔術の知恵の中に——『隠された、欠片』の知見は、ござりません」
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セレスティア、穏やかに:「——母エレオノーラの神話の断片にも——記述は、ござりません」
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対策会議室の中央——
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重苦しい、絶対的な、沈黙が、降りた。
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三大神話=大魔女エルメリンダ+大聖女ヴェネシア+初代ヴァルガルド皇帝(=実質的に皇家の千年の歴史)。
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その、いずれにも——『最後の、知恵の、欠片』の、記述は——一切、無い。
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三人は——千年前——その欠片を、神話に、書き残さなかった。
***
なぜ?
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誰が——それを、知っているのか?
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誰も——知らない。
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知恵の、絶対的な、欠落。
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知的、絶望の、刻。
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ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、絶対零度に、凍りつく。
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「——千年前——三人の契約の刻——」
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「——なぜ——『最後の、欠片』を——神話に、書き残さなかった——?」
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誰も、応えられない。
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千年の沈黙の、奥に、隠された、欠片。
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その欠片を——出産の刻まで、約一〜二ヶ月の刻で——見つけ出さねば、ならない。
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帝城の窓の外——
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穏やかな、冬の夜の月が、満ちていた。
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冬の月の、深い、青白い、光。
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遠く、北方の海上——
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漆黒の船団=三十隻が、穏やかに、停泊している。
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冬の月の青白い光が——漆黒の船団の上にも、降り注いでいた。
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けれど——
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その月の光は——船団の周囲で——僅かに、しかし、確実に——侵食、され始めていた。
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漆黒の船団の周囲の——夜の闇が——
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穏やかに——穏やかに——
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物理的に——深く、濃く、なっていく。
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月の青白い光が、船団の周囲では——通常の夜の闇よりも——遥かに、深い、漆黒に、塗り潰されていた。
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それは——
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『色の、無い、光』が、現れる前の——
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絶対的な、前兆。
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観測の、終わりの、刻——
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いや——
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観測者の、『次の、お、お参り』、の、秒読み段階。
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未知の文明の——再来訪が——
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穏やかに——穏やかに——
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近づいている。
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肌に粟が、生じるほどの——絶対零度の、緊張感。
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ヴォルフラムは、穏やかに、北方の方角を、見つめる。
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彼の『夜空の瞳』には——絶対零度の、新たな、覚悟。
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「——『最後の、知恵の、欠片』を——絶対に、見つけ出す」
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「——出産の刻まで——あと、約一〜二ヶ月」
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「——わたくしどもは——絶対に——『分離』を、成功、致す」
***
セレスティア、穏やかに、彼の手を、握る。
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「——陛下——わたくしも——『最後の、欠片』を——必ず、見つけ致します」
***
けれど——その『最後の、欠片』は——
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千年——
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三大神話の——いずれにも——
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書き残されていない。
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千年の沈黙の、奥に、隠された——
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唯一の、鍵。
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時間は——穏やかに、しかし、確実に——出産の刻に向かって、進んでいく。
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北方の海上の——漆黒の船団の周囲の闇は——物理的に、確実に、深まりつつ、あった。
***
『次の刻』=出産直前+最大の危機+未知の文明の再来訪+『最後の、知恵の、欠片』の発見の、刻が——
***
絶対零度の、緊張感の中で——三人を、待っていた、のだった。




