# 第55話 満月の、夜の、祈祷
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祈祷まで、あと、三日。
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帝城の皇妃の執務室。
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セレスティアと、ジークリンデが、穏やかに、向き合っていた。
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ジークリンデの瞳には——千年——いや、彼女の生涯——皇妃殿下の流転型魔力を、深い敬意と、忠義をもって、観察し続けてきた、その忠義の、結晶の光が、宿っている。
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「——皇妃殿下——」
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「——『二つの魔力を、同時に、使う』、知恵は——皇妃殿下、ご自身の、魂の奥に、既に、宿って、おります」
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「——わたくしは——その魂の奥の知恵を、お、表に、引き出す、お手伝いを、致します」
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セレスティアの青の瞳に、穏やかな、深い、覚悟の光。
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「——ええ、ジークリンデ——お願い致します、わ」
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ジークリンデの指導の下——
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セレスティアは、流転型魔力で、お腹の中の命を、穏やかに、包む訓練を、開始した。
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流転型魔力の温かさが、穏やかに、お腹の中の命を、包む。
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同時に、神話級魔力の根幹だけを、穏やかに、外側に、流す訓練。
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二つの魔力の、同時の制御。
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千年前の、大魔女エルメリンダの神話の中に、記された、知恵の、現代における、本格的な、再現。
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訓練は、穏やかに、二日間、続いた。
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二日前=ヴォルフラム+セレスティア+ヴェレナの、予備の祈祷。
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三人の魔力が、穏やかに、青の祈祷石を、媒介に、結集し始める。
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けれど、まだ、本格的な結集には、至らない。
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満月の刻+結婚式の聖堂の、千年の契約のお円環の完成の、聖なる場所——その二つが揃って、初めて、本格的な結集が、可能なのだ。
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前日の夜。
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帝城の皇帝の寝室。
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月の光が、穏やかに、二人の寝室に、射し込んでいる。
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セレスティアは、穏やかに、ヴォルフラムの腕の中に、いた。
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彼女の細い手が、穏やかに、自分のお腹に、置かれている。
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「——陛下——」
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「——明日の、満月の、夜——」
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「——わたくしどもは——千年前の、三人の契約の刻と、同じ祈祷を、捧げます」
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ヴォルフラム、穏やかに、彼女を、抱きしめる。
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「——セレスティア——お前を——絶対に、お腹の中の命と、共に、お護り致す」
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「——『失敗確率五十八パーセント』——その数字、を——わたくしは、絶対に、覆す」
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セレスティアの青の瞳から、穏やかな涙が、滴る。
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「——陛下——」
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「——わたくしは——『等価』、で、ござります」
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「——お互いに、お護りし合う、刻、で、ござります」
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二人は、穏やかに、抱きしめ合った。
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二人の魂の奥には——『失敗確率五十八パーセント』+『失敗の刻の、強制回収』の、警告が、宿っている。
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けれど、二人は——絶対的な、覚悟で、明日の刻を、迎える。
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満月の夜。
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帝城の中央の、結婚式の聖堂。
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千年の契約のお円環の完成の、聖なる場所——第50話の結婚式の刻と、同じ場所。
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けれど、本日は——慶びの祝祭ではなく、千年前の三人の契約の、再現の刻、だった。
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聖堂の中央に=大聖女ヴェネシアの青の祈祷石が、置かれた。
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聖堂の天井から=満月の光が、穏やかに、祈祷石に、降り注ぐ。
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青の祈祷石は、穏やかに、深い、青の輝きを、放ち始めた。
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三人の血の末裔が、穏やかに、入場。
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ヴォルフラム=黒の、皇帝の、礼装+銀色の長髪+夜空の瞳。
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セレスティア=純白の、祈祷の、衣装+穏やかな金色の刺繍。
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エルザベートが、この刻の為に、特別に、用意した衣装。
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純白のシルクに、大魔女エルメリンダの千年の金色+母エレオノーラの金色+ヴァルガルド皇家の千年の紋章が、丁寧に、刻まれている。
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彼女のお腹は——僅かに、膨らみが、目立つ。
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ヴェレナ=大聖女ヴェネシアの千年の、白の、神聖な、衣装+大司祭の冠。
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帝国軍+影部隊が、聖堂の周辺を、徹底的に、警備。
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ハルトムート+イザベラ+ジークリンデ+エミリア+エルザベート+レナーテが、聖堂の壁際で、穏やかに、見守る。
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帝都の市民は——皆、家の中で、穏やかに、祈っている。
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大陸全土が——三人の祈祷の刻を、穏やかに、見守っていた。
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三人の血の末裔が、青の祈祷石の前に、立つ。
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ヴェレナが、穏やかに、千年前の祈祷の言葉を、唱え始めた。
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大聖女ヴェネシアの千年の神話の、祈祷の言葉。
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セレスティアは、穏やかに、自分のお腹に、手を、置く。
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流転型魔力が、穏やかに、お腹の中の命を、包み始める。
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お腹の中の命が、穏やかに、母の流転型魔力の、温かさに、包まれて、穏やかに、眠り始めた。
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けれど——新たな命の魂の奥に——僅かな、影が、宿っていた。
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『無の魔』の最後の断片が——千年の眠りから、目覚め、新たな命に、寄生しようと、している。
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セレスティアは、流転型魔力で、その影を、穏やかに、封じ込めた。
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次に、彼女は、神話級魔力の根幹を、穏やかに、青の祈祷石に、捧げ始める。
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神話級魔力が、穏やかに、青の祈祷石に、流れ込む。
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同時に、ヴォルフラムが、ヴァルガルド皇家の千年の魔力を、捧げ始めた。
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黒の、深い、皇家の魔力が、穏やかに、青の祈祷石に、流れ込む。
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同時に、ヴェレナが、大聖女ヴェネシアの血筋の魔力を、捧げ始める。
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白の、深い、神聖な魔力が、穏やかに、青の祈祷石に、流れ込む。
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三つの魔力が、穏やかに、青の祈祷石を、媒介に、結集し始めた。
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青の祈祷石が——深い、青の輝きから——穏やかに、金色の輝きに、変化していく。
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大魔女エルメリンダ+大聖女ヴェネシア+初代ヴァルガルド皇帝の、千年の、契約の、お円環の、本格的な、再現の、刻。
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三つの魔力の結集が、満月の光と、共に、最高潮に、達した、その瞬間——
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結婚式の聖堂の天井に——
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漆黒の、深い、深い、闇が、穏やかに、現れ始めた。
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いや——『闇』、では、無い。
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『闇』ですら——その存在を、定義できない——『絶対的な、無』。
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千年前——三人の契約で、外側に、追放された——『無の魔』の、最後の断片。
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千年の眠りから、目覚め、本格的に、姿を、現わした。
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『無の魔』の最後の断片は——穏やかに、セレスティアのお腹の方角に、向かって、伸び始めた。
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セレスティアの流転型魔力が——お腹の中の命を、穏やかに、お護りしながら、『無の魔』の侵入を、阻止する。
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けれど、『無の魔』は、穏やかに、しかし、確実に、押し進める。
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ヴォルフラムの『夜空の瞳』が——絶対零度に、凍りつく。
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「——『無の魔』——!」
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「——絶対に——お腹の中の命に——触れさせぬ——!」
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彼の千年の皇家の魔力が、穏やかに、爆発的に、青の祈祷石に、流れ込む。
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ヴェレナも、穏やかに、大聖女ヴェネシアの血筋の魔力を、最大限に、捧げる。
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三つの魔力が、穏やかに、金色の輝きで、『無の魔』の最後の断片を、包み始めた。
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けれど——その瞬間——
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セレスティアのお腹の中で——予期せぬ、反応が、起こった。
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お腹の中の、新たな命が——穏やかに、穏やかに——目を、覚ました。
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いや——『目を、覚ました』、では、無い。
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お腹の中の命の、魂が——穏やかに、母の流転型魔力の中で——『何かを、感知』、致した。
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セレスティアの青の瞳が、穏やかに、見開かれる。
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お腹の中の命が——穏やかに、しかし、確実に——『流転型魔力』の中で、穏やかに、震え始めた。
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いや——『震え』、では、無い。
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お腹の中の命が——穏やかに——母の魔力に、応答、し始めた。
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千年前の、大魔女エルメリンダの、千年の血の、本能的な、応答。
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セレスティアの青の瞳から、涙が、止まらなく、なる。
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その瞬間——彼女の魂の境界線で——母としての、深い、深い、震えが、宿った。
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歓喜と、畏怖と、深い、慟哭の、混ざり合った、震え。
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「——わたくしの、お、お子様——」
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たった一度の『お、』。
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本作の、すべての刻を通じて——この、一打のみ。
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母なる、慟哭と歓喜の、境界線。
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「——お母様と、共に、戦ってくださるの、で、ござりますね——」
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彼女の青の瞳から、穏やかに、感動の涙が、流れ続けた。
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その『応答』が——予期せぬ、結果を、もたらした。
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お腹の中の命の魂の奥に——大魔女エルメリンダの千年の血筋の、本能的な、力が——穏やかに、穏やかに、目覚め始める。
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そして——その目覚めた力が——『無の魔』の最後の断片の、寄生を、本能的に、拒絶し始めた。
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『無の魔』の最後の断片は——穏やかに、お腹の中の命の、本能的な拒絶に、揺らぎ始める。
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ジークリンデが、穏やかに、瞳を、見開く。
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「——皇妃殿下——!」
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「——お腹の中の、お子様の魂が——大魔女エルメリンダの血筋の力を——本能的に、目覚めさせて、いらっしゃいます——!」
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「——『無の魔』の最後の断片を——お腹の中の、お子様、ご自身が——拒絶、なされて、おります——!」
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ヴェレナの瞳に、穏やかな、深い、感動の涙。
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「——大魔女エルメリンダの、千年の神話の中に——『血筋の本能的な拒絶』の、可能性が——記されて、おりました——!」
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「——けれど——『お腹の中の、お子様』が、それを、実現、なされる、とは——!」
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三人の血の末裔の祈祷+お腹の中の命の本能的な応答。
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四つの力の、結集の、本格的な刻、だった。
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四つの力の結集が、満月の光と、青の祈祷石の輝きの中で、最高潮に、達する。
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青の祈祷石が——穏やかに、深い、金色の輝きを、放ち始めた。
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第50話の結婚式の刻——
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大魔女エルメリンダ+大聖女ヴェネシア+初代ヴァルガルド皇帝の、三位一体の金色の光が、二人の上に、降り注いだ刻——
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あの刻の、三位一体の金色の光が、聖堂の天井に、再び、現れた。
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三筋の、千年の、深い、深い、金色の光。
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大魔女エルメリンダの『穏やかな金色の光』。
大聖女ヴェネシアの『穏やかな金色の光』。
初代ヴァルガルド皇帝の『穏やかな金色の光』。
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三筋の光が、穏やかに、聖堂の中央の、青の祈祷石に、降り注ぐ。
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千年前の三人の契約の、本格的な、お円環の、再現。
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けれど——その三筋の光に——四筋目が、加わった。
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それは——
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セレスティアのお腹の中から——穏やかに、しかし、確実に——立ち昇った、光、だった。
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四人目の——まだ、名前もない——小さな、小さな命の、光。
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千年の、誰よりも、純粋な——透き通った、金色の、光。
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その光は——三筋の千年の光より、遥かに、小さい。
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けれど——三筋の千年の光より、遥かに、純粋。
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その小さな、純粋な、金色の光が——穏やかに、穏やかに——三筋の千年の光の、お円環を、押し広げ始めた。
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千年前の三人の契約のお円環が——穏やかに、穏やかに——『四つの光の、新たなお円環』に、変わっていく。
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いや——『変わる』、では、無い。
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千年前を、超える——『新たな、神話の、誕生』、だった。
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大魔女エルメリンダの千年の神話に、記されていた『再現』では、無く——
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現代を、生きる夫婦と、未来の命の、意志によって、書き換えられた——『新神話』。
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四筋の光が、穏やかに、青の祈祷石の中で、混ざり合った。
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金色の輝きが、聖堂全体を、深く、深く、満たす。
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『無の魔』の最後の断片が——四つの力の、新たなお円環に、押し出されて——穏やかに、外側に、追放され始めた。
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けれど——『無の魔』は、簡単には、引き下がらない。
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最後の最後で——『無の魔』の断片が、本格的に、抵抗を、見せた。
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聖堂の天井から、漆黒の、深い、闇が、爆発的に、広がる。
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セレスティアのお腹に向かって——最後の、決定的な、攻撃。
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ヴォルフラムが、穏やかに、絶対零度の、最大限の魔力を、捧げる。
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「——絶対に——お腹の中の命に——触れさせぬ——!」
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彼の魂の根幹の、千年の魔力が——青の祈祷石に、爆発的に、流れ込む。
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ヴェレナも、穏やかに、命を、賭けるほどの、大聖女ヴェネシアの血筋の魔力を、捧げる。
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セレスティアも、穏やかに、自分の流転型魔力+神話級魔力の、両方の、根幹を、捧げた。
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そして——お腹の中の命も、穏やかに、本能的な、最大限の応答。
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四つの力の——絶対的な、結集。
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青の祈祷石が——穏やかに、深い、金色の輝きを、最大限に、放った。
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四筋の光が、聖堂の天井を、爆発的に、満たす。
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『無の魔』の最後の断片が——穏やかに、しかし、確実に、外側に、追放されていく。
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漆黒の闇が、穏やかに、消えていく。
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千年前を、超える——新神話の、勝利の、刻、だった。
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『無の魔』の最後の断片が——四つの力の結集に、押し出されて——穏やかに、外側に、追放された。
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聖堂の天井の漆黒の闇が、穏やかに、消えていく。
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青の祈祷石が、穏やかに、深い、金色の輝きから、静かな青の輝きに、戻る。
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満月の光が、穏やかに、聖堂を、包む。
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三人の血の末裔が、穏やかに、深く、息を、吐いた。
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ヴォルフラムが、穏やかに、セレスティアを、抱きしめる。
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「——セレスティア——お前は——!」
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セレスティアの青の瞳から、穏やかな、感動の涙。
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「——陛下——お腹の中の、お子様が——お護りくださいました——」
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彼女は、穏やかに、自分のお腹に、手を、置く。
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お腹の中の命は——穏やかに、穏やかに——眠りに、戻っていた。
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けれど、その魂の奥には——千年前の、大魔女エルメリンダの千年の血の、本能的な力が——穏やかに、宿った、ま、ま。
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ヴェレナも、穏やかに、深く、深く、頭を、垂れる。
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「——皇妃殿下——お腹の中の、お子様——」
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「——お二人は——千年前の、三人の契約の知恵を——『四人の契約』に、進化、なされました——!」
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一見、完全な、勝利の刻。
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四人の契約の、本格的な誕生。
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千年の、神話の、書き換えの、刻、だった。
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けれど——その瞬間——
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帝都の上空に、再び、『色の、無い、光』が、現れた。
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『色の、無い、光』が、穏やかに、ヒトに、似た、輪郭を、なす。
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『——お見事で、ござりました』
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その声には——感情の、痕跡は、無い。
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怒りも、嘲笑も、称賛も——一切、無い。
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ただ——『42%の確率を突破したサンプルに対する、客観的な評価』だけ、が、淡々と、響いた。
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『——成功確率四十二パーセントを——達成、なされました』
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『——『無の魔』の最後の断片は——わたくしどもの世界の、外側に、追放、致されました』
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『——失敗確率は——ゼロに、なりました』
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ヴォルフラム+セレスティアの瞳が、僅かに、穏やかに、緩む。
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成功——絶対的な——成功の、刻——
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けれど——『色の、無い、光』の声は、続いた。
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『——しかし——』
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その『しかし』に——絶対的な、合理性の、冷気が、宿る。
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『——対象の個体——お腹の中の、お子様——が——』
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『——『無の魔』の最後の断片を——外側に、追放、致した、際に——』
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『——『無の魔』の最後の断片の、お、力——『闇』の、お、本質——を——』
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『——魂の、奥に——内部、完全、封入、致しました』
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ヴォルフラム+セレスティアの瞳が——瞬時に、凍りつく。
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(——お腹の中の、命が——『無の魔』の力を——魂の奥に、封入——?)
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『——再演算、致しました』
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『——お、貴方たちの、お子様、の、出産の、刻に——』
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『——『無の魔』の、封入された、闇が——内側、から、崩壊、致す、確率——を、再定義、致しました』
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ヴォルフラム+セレスティアの瞳から——血の気が、引いた。
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『——出産の刻の、内側からの崩壊、確率——』
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『——百パーセント、で、ござります』
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その『言葉』には——怒りも、嘲笑も、無い。
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ただ——『冷酷な、観測事実の、アップデート』だけ、が、淡々と、響いた。
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ハッピーエンドだと、思った、その瞬間に——
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タイムリミットが——リセットされただけ、だった。
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『——わたくしどもは——お子様の、お誕生の、刻まで——見守り、致します』
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『——その刻、には——わたくしどもの、お提案は——『お子様を、強制的に、回収』、致す、提案、に、なります』
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『——お腹の中の、お子様、を——『無の魔』の、新たな、入れ物に——お、なされる、こと、を、回避する為で、ござります』
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『——お考えくださりませ』
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『色の、無い、光』が、穏やかに、空中で、消える。
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帝都の上空に、再び、穏やかな、夜空が、戻った。
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けれど——
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ヴォルフラムとセレスティアの魂の奥に——絶対零度の、新たな、緊張感が、刻まれた。
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『無の魔』の最後の断片は——確かに、追放、された。
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けれど——その『闇』の本質は——お腹の中の命の、魂の奥に、封入されている。
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出産の刻には——その封入された闇が——『百パーセント』の確率で——内側から、崩壊する。
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お腹の中の命の、誕生の刻が——『無の魔』の、新たな入れ物の、誕生の刻に、なる可能性。
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四人の契約の、本格的な勝利の、刻——
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その直後に——出産の刻の、絶対的な、危機が——突きつけられた。
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ヴォルフラム、穏やかに、セレスティアを、強く、抱きしめる。
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「——セレスティア——」
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彼の声に、絶対零度の、新たな、覚悟。
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「——出産の刻まで——わたくしどもは——お、お腹の中の命を——お護り抜く」
***
「——『無の魔』の、内側からの崩壊を——絶対に、阻止、致す」
***
セレスティアの青の瞳から、穏やかな、深い、決意の涙。
***
「——ええ、陛下——」
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「——お腹の中の、お子様が——本能的に、お護りなされた、命を——」
***
「——わたくしどもも——絶対に、お護り、致します」
***
「——『等価』、で、ござります」
***
二人は、穏やかに、抱きしめ合った。
***
お腹の中の命は——穏やかに、穏やかに——眠り続けている。
***
けれど、その魂の奥には——千年前の『無の魔』の最後の断片の闇が——四人目の純粋な金色の光に、穏やかに、封じ込められている。
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出産の刻まで——約八ヶ月。
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その刻には——封じ込められた闇が——内側から、崩壊する。
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四人の契約の、新たな神話の、本格的な、最後の戦いの刻が——
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穏やかに、穏やかに——二人を、待っていた、のだった。
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『次の刻』=出産までの残りの刻+お腹の中の命の本格的な成長+二人の本格的な絆の深化+『無の魔』の封じ込めの、お、緊張感の継続——の、刻が——
***
絶対零度の、新たな、覚悟の中で——三人を、待っていた、のだった。




