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『獣の皇帝陛下に溺愛されています ~無能と捨てられた元王女ですが、隣国で最強でした~』  作者: てん
第7章「新たな、皇統の、誕生、と、真実の、愛の、永遠の、定着」

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# 第53話 色の、無い、光の、来訪


***


 夜明け前。


***


 帝都の上空に——『色の、無い、光』の、一筋が、穏やかに、到達した。


***


 帝都の上空で——その『色の、無い、光』は、穏やかに、停止した。


***


 帝都の街全体に——『何かの異物』が、穏やかに、しかし、確実に、滞空する、刻。


***


 帝都の市民の、大半は、まだ、眠っている。


***


 けれど——目覚めていた、夜警の兵士たちは——その『何か』を、見上げた。


***


 兵士の一人:「——あれは——何だ——?」


***


 別の兵士:「——空に——『何か』が——浮かんで、いる——」


***


 三人目の兵士:「——魔力感知が——狂う——!」


***


 兵士たちは——穏やかに、恐怖に、震え始めた。


***


 彼らの網膜は、確かに、何かを、捉えている。


***


 けれど——脳が、それを『何で、ある、か』を、認識する、ことを、拒絶している。


***


 現実の根幹が、僅かに、剥がれ落ち始める、感覚。


***


 帝城の警備隊長から、ハルトムートへ——緊急の伝令。


***


 ハルトムートから、皇帝の執務室へ——緊急の報告。


***


 帝城の皇帝の執務室。


***


 ヴォルフラムは——まだ、夜明け前の刻に、既に、起きていた。


***


 昨夜のセレスティアとの『覚悟の等価交換』の後——彼は、敢えて、眠らなかった。


***


 ハルトムートが、緊急の報告。


***


「——陛下——!」


***


「——『色の、無い、光』が——帝都の上空に、到達致しました!」


***


「——上空で、穏やかに、停止——」


***


「——魔導士団は——今、彼らが、再び、感知を試みれば——再度、魔力喪失の、危険が、ござります!」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が——絶対零度に、凍りつく。


***


「——『感知』は、致さぬ」


***


「——『魔力』では、対抗、致さぬ、と、決めた」


***


「——『目視』だけで、対応、致す」


***


「——わたくしも、城門に、出る」


***


 ハルトムートが、深く、頭を、垂れる。


***


「——けれど——」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』に、僅かな、迷い。


***


「——皇妃には——まだ、知らせぬ」


***


「——彼女には、穏やかな朝を、贈り続ける」


***


 ハルトムートが、穏やかに、頭を、垂れる。


***


「——畏まりました、陛下」


***


 けれど、彼の胸の中には——僅かな、疑念。


***


 (——皇妃殿下は——既に、感じ取って、いらっしゃるのでは、無いか——)


***


 帝城の皇妃の寝室。


***


 夜明け前=月の光が、僅かに、薄まり、東の空が、白み始める刻。


***


 セレスティアは——穏やかに、目覚めた。


***


 彼女のお腹の中に——突如、奇妙な、感覚が、宿った。


***


 お腹の中の、新たな命が——穏やかに、しかし、確実に——『何かを、警戒している』。


***


 いや——『何かに、警戒される』、感覚。


***


 セレスティアの細い手が、穏やかに、お腹に、置かれる。


***


 (——わたくしの、お腹の中の、新たな命が——何かを、感じ取っている——)


***


 彼女は、穏やかに、寝台から、起き上がる。


***


 ヴォルフラムは、既に、寝室に、いない。


***


 彼女の青の瞳が、穏やかに、窓の外を、見る。


***


 帝城の窓の外=帝都の上空に——『色の、無い、光』が、滞空している。


***


 いや——彼女の網膜が、それを、捉えた瞬間——彼女の脳が、それを『何で、ある、か』を、認識することを、拒絶した。


***


 けれど——彼女の青の瞳の奥には——『大魔女エルメリンダの千年の血の末裔』としての、本能的な、認識が、宿った。


***


 (——あれは——『千年の契約の円環』の、外側、から、来た、もの——)


***


 (——わたくしどもの世界の、論理の、外側、から、来た、もの——)


***


 彼女の細い手が、お腹の上で、穏やかに、震える。


***


 (——わたくしの、お腹の中の、新たな命を——『あれ』が、感知しようと、している——)


***


 国母の、本能的な、反応が、彼女の魂に、宿った。


***


 セレスティアは、穏やかに、皇妃の執務室に、向かった。


***


 腹心たち=イザベラ+エミリア+ジークリンデが、既に、揃っている。


***


 三人とも、帝都の上空の『色の、無い、光』を、目撃している。


***


 彼女たちの瞳には——穏やかな、けれど、深い、緊張の色。


***


 イザベラが、震える声で——


***


「——セレスティア様——!」


***


「——お、お聞き、致したい刻が、ござります——!」


***


「——お、空の、上に——『色の、無い、何か』が——!」


***


 セレスティアは——穏やかに、彼女の言葉を、遮った。


***


「——イザベラ——わたくしも、見ております、わ」


***


 その声には——一切の、震えが、無かった。


***


 昨日までの、震えた『お飾り皇妃』の、声、では、無い。


***


 千年の契約の円環の終着点に戴冠した『国母』の——穏やかな、深い、静寂の、声。


***


 三人とも——瞬時に、見開いた。


***


 彼女たちの怯えの、震えた声に対して——


***


 セレスティアの声には——絶対的な、母親の本能と、国母の覚悟が、宿っていた。


***


「——皆様——」


***


「——『あれ』は——『千年の契約の円環』の、外側、から、来た、もので、ござります」


***


「——わたくしの、お腹の中の、新たな命を——『感知』しよう、と、しているようで、ござります」


***


 ジークリンデの瞳が、瞬時に、見開かれる。


***


「——皇妃殿下——!」


***


「——『感知』、され、ては、いけません——!」


***


「——魔導士団でさえ、『感知』を、試みただけで、魔力を、失います——!」


***


「——お腹の中の、お子様、を、守る為に——皇妃殿下も、ご自身の魔力を、抑えてくださりませ——!」


***


 セレスティアは、穏やかに、頷いた。


***


「——ええ、ジークリンデ——分かって、おります」


***


 彼女は、穏やかに、自分のお腹に、手を、置いた。


***


「——わたくしは——『感知』致さず、けれど——『あれ』が、わたくしのお腹の中の、新たな命に、触れる、ことだけは——絶対に、阻止、致します」


***


「——わたくしの『流転型魔力』を——『あれ』の感知の流れに、対抗、致しは、致しません」


***


「——けれど——わたくしの『国母としての、心』が——」


***


 その瞬間——彼女の声に、神聖な、防衛の、祈りの、震えが、宿った。


***


「——わたくしの、お、お護りで——『あれ』を——お腹の中の、新たな命から、遠ざけます」


***


 たった一度の『お、』。


***


 恐怖の震え、では、無く——強大な異物に対する、神聖な防衛の祈り、としての、一度。


***


 国母の覚悟の、本格的な、発揮の刻。


***


 イザベラ、エミリア、ジークリンデが、穏やかに、深く、頭を、垂れた。


***


 セレスティアは、ハルトムートを、通じて、ヴォルフラムに、伝言を、託した。


***


「——陛下に、お伝えくださりませ」


***


「——『わたくしは、感じ取って、おります』」


***


「——『けれど、陛下のお戦いを、信頼、致します』」


***


「——『わたくしは、お腹の中の命を、お護り致す戦いに、専念致します』」


***


「——『等価、で、ござります』」


***


 帝城の城門。


***


 ヴォルフラムは、帝都の上空の『色の、無い、光』を、穏やかに、見上げていた。


***


 帝国軍+影部隊+魔導士団=穏やかに、警戒の体勢。


***


 けれど、誰も——『色の、無い、光』を、攻撃することは、出来ない。


***


 『感知』することすら、危険、なのだ。


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』に——穏やかな、けれど、深い、苦悩。


***


 (——わたくしは——『あれ』に、どう、対抗、すれば、良いのか——)


***


 (——千年——獣の呪い+ガルバートの千年の計算+大魔女の契約——すべて、乗り越えて、参った)


***


 (——けれど——『あれ』は——『千年の魔術の、根幹』、すら——通用、致さぬ——)


***


 その刻——ハルトムートが、穏やかに、彼の傍らに、来た。


***


「——陛下——皇妃殿下から、伝言で、ござります」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、瞬時に、彼を、見つめた。


***


「——セレスティア、から——?」


***


 ハルトムートが、穏やかに、伝言を、伝える。


***


「——『わたくしは、感じ取って、おります』」


***


「——『けれど、陛下のお戦いを、信頼、致します』」


***


「——『わたくしは、お腹の中の命を、お護り致す戦いに、専念致します』」


***


「——『等価、で、ござります』」


***


 その伝言を、聞いた、瞬間——


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』から——一筋、涙が、滴った。


***


 その涙は——単なる感謝の涙、では、無かった。


***


 千年——ヴァルガルド皇家は——『獣化の呪い』の、入れ物として——孤独に、孤独に——その重みを、お、お、背負って参った。


***


 初代ヴァルガルド皇帝。


 二代目の皇帝。


 三代目の皇帝。


***


 千年の、孤独な皇帝の、系譜。


***


 誰も——その『獣化の呪い』の重みを——『等価』、で、分かち合える、伴侶を、持つことは、出来なかった。


***


 千年——皇家は、孤独だった。


***


 千年——皇家は、義務に、お、お、囚われ続けた。


***


 けれど——今——


***


 セレスティアという——『真の伴侶』が——千年の孤独の、系譜の、終着点で——


***


 彼の戦いを——『等価』、で、引き受けてくれた。


***


 千年の、孤独の系譜が——名実ともに、終わった、刻。


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』から、一筋——たった一筋——『聖なる涙』が、滴った。


***


「——セレスティア——」


***


 彼の声は、震えていない。


***


 むしろ——千年の孤独の、終焉の、解放の、声、だった。


***


「——お前は——千年の、わが家の、孤独を——『等価』、で、終わらせて、おる、のだ、な」


***


 その瞬間——


***


 彼の『夜空の瞳』の奥に、宿った——絶対零度の決意が——変貌した。


***


 ガルバートを粉砕した、絶対零度の冷徹さは——今や、世界のすべてを、焼き尽くす、ほどの、強固さに、変貌した。


***


 千年の孤独を、終わらせた皇帝が——『真の伴侶』を、護る為に——『何が、敵で、あろうと』——絶対に、引かない、覚悟。


***


「——わたくしは——お前の信頼に、応える」


***


「——『あれ』を——絶対に——お腹の中の、新たな命に——触れさせぬ」


***


 帝都の上空の『色の、無い、光』が、穏やかに、変化を、始めた。


***


 昼の刻。


***


 『色の、無い、光』が——穏やかに、形を、なし始める。


***


 いや——『形』、では、無い。


***


 『何か』の、輪郭が——穏やかに、姿を、現わし始める。


***


 帝都の市民は、騒然。


***


 けれど、何が、起こっているのか、を、認識することが、出来ない。


***


 ヴォルフラムが、帝城の城門で、それを、見上げる。


***


 セレスティアも、皇妃の執務室の窓から、それを、見上げる。


***


 『何か』の輪郭が——穏やかに、ヒトに、似た、形を、なした。


***


 いや——『ヒト』、では、無い。


***


 『ヒト』、という、概念に、限りなく、近い、けれど——決定的に、違う——『何か』。


***


 頭部+両腕+両足の、輪郭は、ヒトに、似ている。


***


 けれど——その表面には、皮膚も、衣服も、髪も、無い。


***


 ただ——『色を、持たない、輪郭』、だけが、空中に、浮かんでいる。


***


 そして——


***


 『何か』が——穏やかに、空中で、目を、開いた。


***


 いや——『目』、では、無い。


***


 『目』、という、概念に、限りなく、近い、けれど——『色を、持たない、視線』。


***


 その視線が——穏やかに、帝城の方角に、向けられる。


***


 『何か』が——穏やかに、声を、発した。


***


 いや——『声』、では、無い。


***


 けれど、帝都の市民+ヴォルフラム+セレスティア+腹心たちの、魂の奥に——『言葉』として、響いた。


***


 その『言葉』に——感情は、無い。


***


 穏やかさも、敵意も、慈愛も、悲しみも——一切、無い。


***


 ただ——『冷徹な、合理性』、だけ、が、響いた。


***


 『——千年の、契約の、終着点を、感知致しました』


***


 『——新たな、命の、宿りを、感知致しました』


***


 『——わたくしどもは、『あれ』の、最後の、断片の、残響を、追って、参りました』


***


 『——千年前、貴方たちの『契約』、で——『あれ』は、わたくしどもの世界の、外側に、追放、致された』


***


 『——けれど、『あれ』の最後の断片が——『新たな、命の、宿りの、刻』、に、貴方たちの世界に、戻ろうと、しております』


***


 『——わたくしどもは、『あれ』を、回収、致しに、参りました』


***


 『——貴方たちの世界の、混乱を、回避する為に』


***


 ヴォルフラムとセレスティアの、青の瞳と夜空の瞳が——穏やかに、しかし、見開かれる。


***


 (——『あれ』、とは——『無の魔』、のこと、か——)


***


 (——千年前、三人の契約で、追放した、『無の魔』の、最後の、断片——)


***


 (——それが、わたくしの、お腹の中の、新たな命の、刻に、戻ろうと、している——)


***


 『何か』は——穏やかに、続けた。


***


 『——わたくしどもは、貴方たちと、敵対、致す、つもりは、ござりません』


***


 『——『あれ』の、最後の、断片を、回収、致した、後——わたくしどもは、貴方たちの世界、を、去ります』


***


 『——けれど——『あれ』の最後の断片を、回収、致す、為に——』


***


 『——貴方たちの、お腹の中の、新たな命に——『触れさせて』、頂きたい』


***


 『——『あれ』の最後の断片は——『新たな、命の、宿りの、刻』、を、利用、致して——貴方たちの世界、に、戻ろうと、しております』


***


 『——わたくしどもが、それを、回収、致せば——貴方たちの世界、は、安全、で、ござります』


***


 その『言葉』には——一切の——『胎児への配慮』が、無かった。


***


 『触れる』、と、いう、行為が——お腹の中の、命に、どのような、影響を、与えるか——


***


 『何か』は、一顧だに、して、いなかった。


***


 悪意も、無い。


***


 けれど——『悪意が、無い』、こと、こそ、が——絶対的な、恐怖、だった。


***


 悪意なき、合理性。


***


 目的(=『無の魔』の回収)の為には——妊婦の身体への影響も、胎児への影響も——『計算外』。


***


 話し合えば、分かる相手、では、無い。


***


 妥協の余地は——一切、無い。


***


 ヴォルフラム+セレスティアの瞳が——絶対零度に、凍りつく。


***


 ヴォルフラムが、穏やかに、しかし、絶対零度の冷徹さで、応えた。


***


「——我が、最愛の妻+わたくしの、新たな命に——『触れる』、ことは——絶対に——許さぬ」


***


 彼の声には、世界のすべてを、焼き尽くす、ほどの、冷徹さが、宿っていた。


***


 けれど——『何か』は、穏やかに、変化を、見せ、無かった。


***


 『——貴方たちの『お護り』、で——『あれ』の、最後の、断片を、阻止、致す、ことが——出来る、と、お、思いで、ござりますか?』


***


 『——千年前、貴方たちの世界、で——『あれ』を、抑え込む為に——皇家は、獣化の呪いを、千年、背負って、参った』


***


 『——『あれ』の最後の断片は——千年の、皇家の、苦闘を、超える、可能性を、持って、おります』


***


 『——わたくしどもの、知恵を、用いて、こそ——貴方たちの世界は、安全、で、ござります』


***


 『——お、考えくださりませ』


***


 『——次の、刻、に——返事を、お、聞き致します』


***


 『何か』は、穏やかに、空中で、再び、『色の、無い、光』に、戻った。


***


 そして、穏やかに——北方の海上の、漆黒の船団の方角に、戻っていく。


***


 帝都の上空から——『色の、無い、光』が、穏やかに、消えた。


***


 帝城のヴォルフラムの執務室。


***


 ヴォルフラムが、穏やかに、戻る。


***


 セレスティアが、穏やかに、執務室に、入って、来る。


***


 二人の、視線が、穏やかに、繋がる。


***


 情報非対称性は——既に、無い。


***


 二人は——共に、『何か』の、声を、聞いた。


***


 共に、『何か』の、提案を、知った。


***


 セレスティアが、穏やかに、口を、開いた。


***


「——陛下——」


***


「——『あれ』の、提案を——どう、お考えで、ござりますか?」


***


 ヴォルフラムが、穏やかに、絶対零度の冷徹さで、応えた。


***


「——絶対に、拒絶、する」


***


「——お前の、お腹の中の、新たな命に——『触れさせる』、ことは——絶対に、致さぬ」


***


 セレスティアも、穏やかに、頷いた。


***


「——わたくしも、同感で、ござります」


***


「——けれど——『あれ』の最後の断片が——本当に、わたくしのお腹の中の、新たな命の、刻に、戻ろうと、している、と、すれば——」


***


「——わたくしどもは、別の、対処を、考え、致さなければ、なりませぬ」


***


 二人は、穏やかに、抱きしめ合う。


***


 千年の魔術のルールの、外側、からの、絶対的な異物。


***


 千年前の『無の魔』の、最後の断片。


***


 お腹の中の、新たな命の刻に、戻ろう、と、している、古き闇。


***


 そして——


***


 悪意なく、お腹の中の命に、『触れる』ことを、提案する、未知の文明。


***


 ヴォルフラムとセレスティアは——絶対に、拒絶、する。


***


 けれど——別の、対処を、考え、なければ、なら、ぬ。


***


 帝城の窓の外=帝都の空が、夕暮れに、染まり始める。


***


 北方の海上では——漆黒の船団が、穏やかに、停泊している。


***


 『次の刻』、の、返事を——待って、いる。


***


 ヴォルフラムとセレスティアの——本格的な、対策の、刻が——穏やかに、二人を、待っていた、のだった。

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