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『獣の皇帝陛下に溺愛されています ~無能と捨てられた元王女ですが、隣国で最強でした~』  作者: てん
第7章「新たな、皇統の、誕生、と、真実の、愛の、永遠の、定着」

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# 第51話 新たな、刻の、お始まり



***


 ご懐妊の発覚の、翌日の、朝。


***


 帝城の皇帝の寝室に——穏やかな、深い、秋の朝の光が、満ちていた。


***


 セレスティアは、ヴォルフラムの腕の中で、穏やかに、目覚めた。


***


 彼女の細い手が——穏やかに、自分のお腹に、置かれる。


***


 (——わたくしのお腹の中に——新たな、命——)


***


 昨日まで、と——同じ身体、では、なかった。


***


 自分の身体が——穏やかな『二人分の、命の、容れ物』に、変わっていた。


***


 その認識だけで——彼女の青の瞳から、穏やかな涙が、滴った。


***


 ヴォルフラムが、穏やかに、目を、開く。


***


 彼の『夜空の瞳』が、彼女の青の瞳を、見つめる。


***


「——セレスティア——昨日は——夢の、ようで、ござった、な」


***


「——新たな、命の、お宿りの、刻——」


***


 彼の声には——千年の孤独の獣の皇帝の刻、には、絶対に、無かった——『穏やかな震え』が、宿っていた。


***


「——ええ、陛下——本当に、本当に、夢の、ようで、ござりますわ」


***


 ヴォルフラムが、穏やかに、彼女のお腹に、自分の手を、重ねる。


***


 彼の人間の男の手のひらが——穏やかに、彼女のお腹に、触れる。


***


「——新たな、命——」


***


 彼の『夜空の瞳』から、穏やかな涙が、滴る。


***


「——わたくしの——『父』、になる、刻——」


***


 千年の孤独を、生きた、獣の皇帝が——『一人の父』になる刻の——最も穏やかな、瞬間だった。


***


 二人で、穏やかに——お腹の中の、新たな命との、初めての、触れ合いの刻。


***


 朝食の刻=帝城の大広間。


***


 セレスティア+ヴォルフラム+アネリーゼ+ゲオルク=四人で、穏やかに、朝食。


***


 アネリーゼとゲオルクは、結婚式の参列の後、帝城に、滞在中。


***


 セレスティアが、穏やかに、二人に、お話。


***


「——アネリーゼ様——ゲオルク様——」


***


「——お、お知らせ、致したい刻が、ござりますわ」


***


 アネリーゼの冷たい翠玉の瞳が、穏やかに、緩む。


***


「——皇妃殿下——何で、ござりましょう?」


***


 セレスティアは、穏やかに、自分のお腹に、手を、置く。


***


「——わたくしのお腹に——」


***


「——新たな、命——が——」


***


「——お、お宿り、致しましたわ」


***


 アネリーゼの冷たい翠玉の瞳が——瞬時に、大きく、見開かれた。


***


 彼女の手が、穏やかに、口元に、添えられる。


***


「——皇妃殿下——!!」


***


「——お、お祝い、申し上げますわ——!!」


***


 彼女の冷たい翠玉の瞳から、穏やかな、深い、感動の涙が、滴る。


***


 ゲオルクの灰色の瞳からも、千年の頑なな誇りの涙が、穏やかに、滴る。


***


 彼の頬の、古い刀傷が——穏やかに、震えた。


***


「——皇帝陛下——皇妃殿下——」


***


「——『新たな皇統』の、お誕生——」


***


「——千年の、わが家のお護りの——『最も尊い、ご報われ』の刻で、ござりますわ——!!」


***


 千年——獣化の現場で、血を流し続けた老貴族の——『最も尊い刻』の、定着、だった。


***


 四人の家族の、穏やかな、感動の刻、だった。


***


 昼の刻=皇妃の執務室。


***


 腹心たち=ハルトムート+イザベラ+エミリア+ジークリンデ+エルザベート+レナーテが、穏やかに、揃った。


***


 セレスティアが、穏やかに、正式な報告。


***


「——皆様——お、お知らせ、致したい刻が、ござりますわ」


***


 腹心たちが、穏やかに、聞き入る。


***


「——わたくしのお腹に——」


***


「——新たな、命——が——お宿り、致しましたわ」


***


 腹心たちが、穏やかに、息を、呑む。


***


 ジークリンデは、既に知っていて——穏やかに、微笑む。


***


 イザベラが、穏やかに、深く、頭を、垂れる。


***


「——セレスティア様——!」


***


「——お、お祝い、申し上げますわ——!」


***


「——『新たな皇統』の、お誕生に、向けて——わたくしどものお務めを——お、執り致します」


***


 エミリア:「——セレスティア様——わたくしの生涯のお務めが——新たな刻に、繋がる刻に、ござりますわ——!」


***


 エルザベート:「——皇妃殿下——ご出産のお衣装も——お、お準備、致しますわ——!」


***


 レナーテ:「——新たな命の、お部屋の、お準備を、お、執り致します」


***


 ハルトムートが、穏やかに、深く、頭を、垂れる。


***


「——皇帝陛下——皇妃殿下——」


***


「——『新たな皇統』のお護りを——影部隊は、お、執り致します」


***


 けれど——その刻——


***


 ハルトムートの『穏やかな頭の垂れ』の奥で——


***


 彼の瞳が、僅かに、曇っていた。


***


 穏やかな祝賀の空気の中で——その僅かな曇りに、気づいたのは——皇帝ヴォルフラム、お一人、だった。


***


 夕方の刻=皇妃の執務室。


***


 イザベラの主導で、諸国への公的な書簡の準備。


***


 ヴェネシア聖印国大司祭ヴェレナ宛+エルディオ王国王太子レオンハルト宛+諸国の代表+帝国貴族宛+アルテンブルク公爵家のヴィルヘルム宛も含めて。


***


 数日後——諸国からの、穏やかな、お祝いの返信が、届き始めた。


***


 ヴェレナ大司祭:『——皇妃殿下——「大魔女エルメリンダ+大聖女ヴェネシア+初代ヴァルガルド皇帝」の、千年の契約の、円環の、新たなお始まりの刻に——新たな皇統のお誕生に、向けて——わたくしも、心からのお祝いを、捧げ致しますわ』


***


 レオンハルト王太子:『——皇帝陛下——皇妃殿下——エルディオ王国は、新たな皇統のお誕生を、心から、お祝い、申し上げますわ』


***


 大陸全土の、穏やかな、祝賀の波紋。


***


 そして——その夜——


***


 北方辺境警備の、要塞からの、書簡が、届いた。


***


 ヴィルヘルムの、丁寧な、けれど、力強い、筆跡。


***


 セレスティアが、穏やかに、書簡を、開く。


***


 『皇妃殿下——お、お母様——』


***


 『新たな皇統の、お誕生のお知らせを——お、頂きましたわ』


***


 『心の奥から——お祝い——申し上げますわ』


***


 けれど——次の文字を、読んだ瞬間——


***


 セレスティアの青の瞳から——涙が、滴り始めた。


***


 『お母様——』


***


 『わたくしは——』


***


 『お、貴方のお腹の中に、お宿りに、なられた——新たなお子様——』


***


 『わたくしの——』


***


 『弟様——もしくは——妹様——』


***


 『の、為に——』


***


 『この、北の地を——わたくしの命に、代えても——お護り致しますわ』


***


 『お母様のお腹の中の、新たな命に——絶対に——千年前の、わたくしのような、過ちを——繰り返させませぬ』


***


 『弟様——妹様——』


***


 『わたくしは——不器用な、兄で、ござりますわ』


***


 『けれど——お護りのお務めだけは——絶対に——お、執り致しますわ』


***


 『北の星空の下、で——わたくしの命を、賭けて——お護り致しますわ』


***


 セレスティアの青の瞳から——涙が、止まらなくなる。


***


 彼女は、穏やかに、書簡を、胸に、抱きしめた。


***


 (——ヴィルヘルム様——)


***


 (——あの、廃れた、教会跡で——『矮小な英雄願望』に、囚われていらっしゃった、ヴィルヘルム様、が——)


***


 (——今——『わたくしのお腹の中の、新たな命』の、為に——『命を、賭けて、お護り致します』、と——お、誓ってくださった——)


***


 (——『不器用な兄』、として——『誠実な騎士』、として——生まれ変わっていらっしゃる——)


***


 彼女は、穏やかに、ヴォルフラムに、書簡を、お見せした。


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』にも、穏やかな、深い、感動の光。


***


「——ヴィルヘルムは——『真の兄』、として——生まれ変わって、いる、のだ、な」


***


「——新たな皇統のお護りのお務めを——『北の星空の下』、で——お、執り致しておる、のだ」


***


 アネリーゼとゲオルクも、息子の、新たな誇りの刻に、穏やかな、感動の涙。


***


 ゲオルクの、頬の古い刀傷が——穏やかに、震えた。


***


「——わが息子は——千年——わが家が、お護りに、なられて、参った現場で——」


***


「——新たな皇統のお護りのお務めを——お、執り致して、いる」


***


「——わが家の千年のお護りが——新たな皇統のお護りに——脈々と、繋がっている」


***


 穏やかな、家族の、絆の、定着の刻、だった。


***


 けれど——同じ、その夜——


***


 帝城のヴォルフラムの執務室。


***


 深夜——セレスティアは、皇妃の寝室で、穏やかな夢の中。


***


 ヴォルフラムは、皇帝の執務室で——一人——窓の外の、夜空を、見つめていた。


***


 彼の『夜空の瞳』の奥には——昼間、ハルトムートの瞳の奥に、見えた、僅かな曇りの余韻。


***


 扉が、穏やかに、開く。


***


 ハルトムートが、穏やかに、入って、来る。


***


 彼の表情は——穏やかな、けれど——


***


 千年の影部隊の長として——『初めて見せる種類の緊張』が、宿っていた。


***


「——陛下——」


***


「——お、お知らせ、致したい刻が、ござります」


***


「——『皇妃殿下』には——まだ、お、お知らせ致したくは、無く——」


***


「——皇帝陛下、お一人に、お、お聞き頂きたい刻で、ござります」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、穏やかに、彼を、見据える。


***


「——よかろう、ハルトムート」


***


「——どう、致したのだ」


***


 ハルトムートは——穏やかに、深く、息を、吸う。


***


 彼の声は、低く、穏やかながら——『初めて、口に致す種類の報告』だった。


***


「——大陸の——北の、果ての——海の——向こう——から——」


***


「——『見たことの、無い、船団』が——現れた、と——」


***


「——影部隊の、北方の警備網からの、お報告で、ござります」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、穏やかに、曇る。


***


「——『見たことの、無い、船団』、か」


***


 ハルトムートは——穏やかに、けれど、震える声で、続けた。


***


「——けれど——陛下——」


***


「——影部隊の報告は——『単なる、外国の船団』、では——ござりませぬ」


***


「——『漆黒の、巨大な、船団』——」


***


「——『形が——一切——見たことの、無い姿』——」


***


「——『巨大な影』として——北の海に——浮かんで、おりますわ」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が——僅かに、見開かれる。


***


「——『見たことの、無い姿』、と——?」


***


「——左様で、ござります」


***


 ハルトムートの声が——震えた。


***


「——更に——」


***


「——わが、影部隊の魔導士の、『魔力感知』が——」


***


「——『あの船団』の近くで——『完全に、狂わされた』、と——お、お報告が、ござります」


***


 その瞬間——


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が、穏やかに、凍りついた。


***


「——『魔力感知』が——『狂わされた』、と——?」


***


 帝国の魔導士の『魔力感知』は——大魔女エルメリンダの、千年の、契約の魔法の、流れに、繋がる、根幹の技術。


***


 その『感知』が——『狂わされる』、ということは——


***


 あの船団は——


***


 ヴァルガルド帝国が——千年——築いて参った——『魔術のルール』、そのものが——


***


 『通用、致さない』、世界、から——『現れた』、ことを——意味、致す。


***


 ハルトムートが——穏やかに、続けた。


***


「——更に——」


***


「——『あの船団』の影の形——」


***


「——『わたくしどもの世界の論理』の——『外側』、から——」


***


「——割り込んで、参った——『絶対的な異物』のようで、ござります」


***


「——大魔女エルメリンダの——」


***


「——大聖女ヴェネシアの——」


***


「——初代ヴァルガルド皇帝の——」


***


「——『千年の契約の円環』、すら——通用、致さない——」


***


「——『全く異なる文明』+『全く異なる法則』を、お持ちの者たちの、ようで、ござります」


***


 ヴォルフラムの『夜空の瞳』が——穏やかに、絶対零度の静寂に、凍りついた。


***


 千年——獣の呪い+ガルバートの千年の計算+大魔女の契約——


***


 すべてを——乗り越えて参った、ヴォルフラムが——


***


 今——初めて——『知らない種類の恐怖』に、立ち会った刻、だった。


***


 彼の声は——穏やかに、低く——


***


「——『千年の円環』の——『外側』、から——」


***


「——『絶対的な異物』、が——近づきつつ、ある——か」


***


 ハルトムートは、穏やかに、深く、頭を、垂れる。


***


「——左様で、ござりますわ」


***


「——影部隊の、北方の警備網の——お、引き続きの、お調査を——お、執り致しますわ」


***


 ヴォルフラムは、穏やかに、頷く。


***


「——よかろう」


***


「——けれど——」


***


 彼の『夜空の瞳』が——穏やかに、決意の光を、宿す。


***


「——皇妃には——まだ、お知らせ致さぬ」


***


「——『新たな命の刻』を——穏やかに、お、過ごし頂きたい」


***


「——『不穏な刻』は——わたくし、一人で——引き受ける」


***


「——畏まりました、陛下」


***


 ハルトムートが、穏やかに、退出。


***


 ヴォルフラムは、再び、窓の外の、夜空を、見上げる。


***


 穏やかな月の光が、彼の銀の長髪に、宿っている。


***


 けれど——


***


 彼の『夜空の瞳』の奥で——


***


 千年——獣の呪いに、苦しんで参った皇帝が——


***


 今——『千年のルールの外側』、からの——『絶対的な異物』に、立ち向かう——


***


 『新たな覚悟』が——穏やかに、宿り始めていた。


***


 深夜——皇妃の寝室。


***


 月の光が、穏やかに、二人の寝室に、射し込んでいる。


***


 ヴォルフラムは、穏やかに、セレスティアの隣に、戻る。


***


 セレスティアは、穏やかに、夢の中で、お腹に、手を、置いている。


***


 ヴォルフラムは、穏やかに、彼女のお腹に、自分の手を、重ねた。


***


 (——わたくしの、最愛の妻——)


***


 (——わたくしの、新たな命——)


***


 (——二人を——『何が、何でも——お、お護り致す』)


***


 (——『千年のルールの外側』の——『絶対的な異物』が、近づこうと、何が——)


***


 (——『二人だけ』の——『穏やかな刻』、を——わたくしは——『絶対に』——守り抜く)


***


 月の光が、穏やかに、二人を、包んでいる。


***


 お腹の中の、新たな命が——穏やかに——宿り続けている。


***


 けれど——


***


 大陸の、北の、果ての、海の、向こうから——


***


 『千年の契約の円環』、すら——通用致さない——


***


 『絶対的な異物』の、漆黒の船団が——


***


 穏やかに、しかし、確実に——『新たな刻』、を、迎え始めた、ヴァルガルド帝国に——


***


 近づきつつあった、のだった。


***


 第7章=『新たな皇統の誕生、と、真実の愛の永遠の定着』の——


***


 穏やかな、お始まりの刻と——


***


 『千年の円環の外側』、からの——『絶対的な異物』の、近づきの刻が——


***


 同じ夜の月の下で——穏やかに——並走し始めていた、のだった。


***


 『次の刻』=穏やかな日常の継続+大陸の外、からの、新たな敵の、本格的な接近の刻が——


***


 穏やかに、二人を、待っていた、のだった。

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