# 第35話 母の、声
# 第35話 母の、声
## 第5章「完全解呪、と、命の対価」
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『——母の形見の指輪が……?』
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セレスティアの目が——大きく、見開かれた、まま——彼女の薬指の、薄青い石の指輪を、見つめる。
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十二歳の時——母エレオノーラが——『——セレスティア、肌身、離さずに、お、身に着けてね』のお言葉と、共に——彼女の薬指に、嵌めて、くださった、形見の指輪。
十二年——地獄の中で——彼女が、肌身離さず、身に着けて、き、た、『母の愛の形』。
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今、そ、の薄青い石が——穏やかに、穏やかに、脈動を、始めて、いた。
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『血の月』の気配に呼応するよ、うに——『契約の鍵=セレスティア』の魂の発動の刻に呼応するよ、うに。
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『——セレスティア……』
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懐かしい、懐かしい、懐かしい——母の声、だ、っ、た。
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十二年前——『北はこわくないのよ』の最後のお言葉を残して——静かに、穏やかに、逝かれた母の声、そ、のもの、だ、っ、た。
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セレスティアの涙が——大粒、溢れた。
「——母様!?」
「——母様、でいらっしゃい、ま、す、か!?」
「——お、声を、お、聞かせて、くださりませ……ッ!」
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『——セレスティア——わ、たくしの可愛い姫……温かい魂のあ、な、た……』
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『——十二年ぶり、に、お、声を、お、届け致しました、わ……』
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薄青い石の指輪が——穏やかに、穏やかに、『青』の脈動を、続けて、いた。
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『——セレスティア——わ、たくしが十二年前——あ、な、たにお渡し致した『北はこわくないのよ』、の意味——今、完全に、お伝え致します、わ……』
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セレスティアの涙が、止まらない。
「——は、い、母様」
「——お、聞き、致します、わ」
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『——『北の血筋』、の意味は——『大魔女エルメリンダの直系の血筋』——でいらっしゃる、の、だ、わ……』
『——そ、の血筋は——『呪いの魔力』を得意と致す血筋、な、の、よ……』
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『——け、れ、ど——わ、たくしも——『大魔女の呪いの魔力』を『癒やしの魔力』に転換、致した魂、だ、っ、た、の、よ……』
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『——け、れ、ど——わ、たくしの転換は『不完全』、で——『大魔女の血筋の呪い』、に侵食されて——若くして命を落とした、の、よ……』
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セレスティアの呼吸が——止まった。
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母エレオノーラの『若くして命を落とした宿命』、の本当の理由——
『大魔女の血筋の呪い』、に侵食された、の、だ、っ、た。
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『——あ、な、たは——わ、たくしの『不完全な転換』、を超えた——『完全な転換』の魂、だ、っ、た、の、だ、わ……』
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『——『あ、な、たの流転型魔力』は——わ、たくしの『未完成の愛』、の『完成形』、な、の、だ、わ……』
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セレスティアの涙が——止まらない。
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(——母様の『未完成の愛』の『完成形』……)
(——わ、たくしの魔力は——母様の愛の完成形、だ、っ、た、の、です、わ……)
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そ、して——セレスティアは気づいた。
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彼女の『流転型魔力』の根源——母エレオノーラが『不完全』だ、っ、た、『転換の愛』を——彼女が十二年の地獄の中で——『完成』させた、の、だ、っ、た。
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『十二年の地獄』=『大魔女の呪いの完成への鍛錬の刻』だ、っ、た、の、だ、っ、た。
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エレオノーラの声、涙ながらに、続く。
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『——セレスティア——わ、たくしが若くして命を落とした、た、め、に——あ、な、たは『継母』と『異母妹』に十二年の地獄を背負わされた、の、だ、わ……』
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『——母として——あ、な、たをお護り致せな、か、っ、た事を——わ、たくしは——魂の奥で——悔いて、い、る、の、よ……』
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『——セレスティア——わ、たくしをお赦し、くださりませ……』
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『呪詛の間』の空気が——静かに、静かに、温かい金色の気配、に、染まり始める。
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母の懺悔の声の空気——
け、れ、ど——そ、れ、は——セレスティアの魂の奥で——『悲しみの空気』では、な、か、っ、た。
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セレスティアは——涙ながらに——穏やかに、穏やかに、応じた。
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「——母様」
「『憎しみ』、では、な、く——『感謝』、を、お捧げ致します、わ」
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け、れ、ど——今度の『感謝』は——エルメリンダへの『感謝』、とは『質』が違って、い、た。
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『過酷な運命を乗り越えた者だけが持つ、絶対的な強さと説得力』、を宿した『感謝』、だ、っ、た。
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「あ、の、十二年の地獄が、な、け、れ、ば——わ、たくしは——『流転型魔力』を、『完成』、致す事が出来、な、か、っ、た、の、です、わ」
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彼女は——涙を流しながら——け、れ、ど、その瞳に——凛とした『聖女の誇り』を宿した。
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「継母様のお悪意+異母妹のお嫉妬+父王様のお無関心——十二年——毎日、毎日、わ、たくしに降り注いだ『冷たい悪意』を——わ、たくしは——毎日、毎日、『癒やしの魔力』に転換、致して、参りました、わ」
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「皮肉な事に——あ、の、『冷たい悪意の嵐』が——わ、たくしの『転換の魔力』を——誰よりも強固に、誰よりも完璧に、鍛え上げて、くださ、い、ま、し、た、の、です、わ」
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「あ、の、地獄が——わ、たくしを、『大魔女の呪い』を『愛の魔力』に完全に転換、致せる魂に——育てて、くださ、い、ま、し、た、の、です、わ」
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『お人好しの綺麗事』では、な、か、っ、た。
『過酷な運命を乗り越えた者だけが持つ』の絶対的な強さの説得力、だ、っ、た。
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「——母様の『不完全な愛』は——わ、たくしが、十二年の地獄の中で、磨き上げ——『完成』させて、お戻し致しました、わ」
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「——あ、の、薄青い石の指輪を——十二年——肌身離さず——お身に着けて、参りました、わ」
「お、母様のお、愛、は——十二年の地獄の中、で、わ、たくしを、お護り、くださって、いら、っ、し、ゃ、っ、た、の、です、わ」
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『娘から母への究極の親孝行』=『母の愛の完成形を磨き上げてお戻し致した事』=『運命への勝利』、の宣言、だ、っ、た。
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『呪詛の間』の空気が——更に、更に、温かい金色の気配、で、染まる。
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エレオノーラの声、涙ながらに、穏やかに、続く。
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『——セレスティア——わ、たくしの『不完全な転換』が、あ、な、たの『完成』を生んだ事——わ、たくしの『若くして命を落とした事』が、あ、な、たを『大魔女の呪い』を『愛』、に転換、致せる魂に育てた事——『す、べ、て』、が——『必然』、だ、っ、た、の、だ、わ……』
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『——『偶然』、では、な、く——『母から娘への愛の完成の為の必然の道』、だ、っ、た、の、よ……』
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『偶然から必然へ』のシフトの『個人的な魂の根源』の完成。
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そ、の瞬間——母エレオノーラの魂の残響の『最後の愛』が——セレスティアの『流転型魔力』に、溶け込み始めた。
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母の『不完全な転換の魔力』=『愛』——セレスティアの『完成した転換の魔力』=『愛』——二つが、穏やかに、穏やかに、融合、していく。
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『母娘の魂の完全な融合』の瞬間、だ、っ、た。
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セレスティアの流転型魔力が——更に、更に、穏やかに、強く、な、っ、て、い、く。
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「——母様のお愛が——わ、たくしの魂に、溶け込んで、お、り、ます……」
「——母様の『不完全な愛』が、わ、たくしの『完成した愛』と融合、致して、お、り、ます……」
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エレオノーラの声、最後の『お別れ』の前に、穏やかに、続く。
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『——セレスティア——わ、たくしの『母としての愛の残響』を——あ、な、たの『流転型魔力』にお託し、致します、わ……』
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『——エルメリンダ様の『大魔女の魂』も——あ、な、たの『流転型魔力』に溶け込んで、いる、の、よ……』
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『——『二代の大魔女の魂』を宿したあ、な、たの『流転型魔力』で——皇帝陛下の『獣の呪い』を完全に引き剥がし——『無の魔』を完全に封じ——大陸を救って、くださりませ……』
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『——わ、たくしの可愛い姫——温かい魂のあ、な、た——誇り、でござります、わ……』
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セレスティアの涙が、溢れ続ける。
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そ、して——母エレオノーラの魂の残響が——穏やかに、穏やかに、セレスティアの流転型魔力に完全に溶け込んで、消え入って、いく。
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『——セレスティア——永遠に、愛して、お、り、ま、す、わ……』
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『母の声』、が——薄青い石の指輪の脈動と共に、静かに、静かに、静かに——溶け込んで、消え入る。
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そ、の、瞬間——
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セレスティアの薬指の薄青い石の指輪が——『青』の脈動を、わずかに、揺らした。
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『青』は——大魔女エルメリンダの『呪いの魔力』の色。
『青』は——母エレオノーラの『不完全な転換』=『呪いを抑えきれずに早世した無念』の色。
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十二年——セレスティアの薬指で脈動を続けてきた『青』の意味、だ、っ、た。
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け、れ、ど——今——セレスティアの『感謝』の赦しで——母の魂の残響が完全に救われた瞬間——
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薄青い石が——穏やかに、穏やかに、静かに——融解するよ、うに、形を失い始めた。
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融解した石は——まばゆい、まばゆい——金色の光、に、変じ始めた。
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『青』か、ら——『金』へ。
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『呪いの魔力の色』か、ら——『完成した愛の光の色』へ。
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『不完全な転換の無念』か、ら——『完成した愛の救済』へ。
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『因果の格付けの反転』、の瞬間、だ、っ、た。
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まばゆい金色の光は——セレスティアの薬指から——穏やかに、穏やかに、彼女の手の血管に沿って——腕に——肩に——そして——心臓に、流れ込んで、いく。
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彼女の流転型魔力の『中核』=『心臓』に、溶け込む金色の光。
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母の『完成した愛』が、セレスティアの魂の『中核』に、完全に、定着、した瞬間、だ、っ、た。
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セレスティアの涙が、止まらない。
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(——母様——有難う、ござります、わ……)
(——母様のお愛——永遠に、わ、たくしの魂の中、に、お、り、ま、す、わ……)
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本作の美学の頂点、の『金色の時間』、だ、っ、た。
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けれど——
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『金色の時間』の静かな完成の——そ、の、『同じ瞬間』に——
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現実の『呪詛の間』の空気が——凄まじい、『赤』の気配で、染まり始める。
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窓の遥か上の月が——完全な『血の月』の『満ち』の刻に、近づいて、い、た。
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ヴォルフラムの身体の『獣化』の圧力が——限界に、完全に、到達しよう、としていた。
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彼の爪が——完全に、凶悪に、尖り切る。
彼の瞳が——完全に、赤く、赤く、赤く、染まり切る。
彼の肉体が——内側から、軋み、始める。
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そして——彼の肉体の奥から——『骨が、組み替わる』、凄まじい不穏な音、が、響き、始めた。
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『ぎし……ぎし、ぎしぎし……』の肉体的な軋み。
『ごり、ごり……ごりごり……』の骨の組み替わる音。
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ヴォルフラムの歯が——完全に、食いしばられて、歯軋りの音が、凄まじく、響く。
『ぎりぎり、ぎりぎり、ぎりぎり……』
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彼の額から——大粒の、大粒の、汗が、滝のよ、うに、流れ落ちる。
彼の全身の血管が——凄まじく、浮き上がる。
彼の呼吸が——荒く、荒く、荒く、な、る。
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セレスティアの『金色の時間』の静謐と——ヴォルフラムの『赤の世界』の凶暴の——凄まじい、温度差。
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『聖なる光』の完成の『同じ瞬間』に——『魔獣のタイムリミット』が、完全に、牙を剥いた、の、だ、っ、た。
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「——セレスティア——『獣化』の完全な発動が、始まる……ッ!」
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ヴォルフラムの声が——完全に、低く、苦しげに、歪んでいる。
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「——お、前のお魔力で——今すぐ——呪いを引き剥がして、くれ……ッ!」
「——わ、たくしの『人間』の意志が——崩れ始めて、い、る……ッ!」
「——お、前の前で——完全な『獣』、に、な、る姿、を、お見せ致したくは、な、い……ッ!」
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彼の凶悪に尖った爪が——無意識に、岩盤を、微かに、掻く。
『カリッ……カリカリッ……』
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セレスティアの魂が、跳ねた。
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け、れ、ど——彼女は今、『二代の大魔女の魂』+『母の完成した愛』、を宿して、いる、の、だ、っ、た。
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セレスティアの涙ながらの決意、の声が——穏やかに、穏やかに——『呪詛の間』に響いた。
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「——は、い、陛下」
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「『二代の大魔女の魂』+『母の完成した愛』を——今、あ、な、たに捧げ致します、わ」
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「——完全解呪儀式の『本格的な執行』を——お開始、致します、わ」
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セレスティアの細い指から——
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『青』の流転型魔力=『大魔女の呪いの転換』の光。
『金』の母の愛の魔力=『完成した愛の救済』の光。
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『二色の混合の光』、が——穏やかに、穏やかに、溢れ出した。
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青と金の混合の光が——『呪詛の間』の三重の魔法陣+『三つの魔導具(青の宝玉+青の腕輪+金色に変じた指輪)』と完全に呼応、して——穏やかに、穏やかに、ヴォルフラムの身体に、流れ込み始める。
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ヴォルフラムの身体の『獣化』の圧力が——わずかに、わずかに、和らぐ。
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彼の完全に赤く染まり切った瞳の奥に——『人間』の気高さの光が、わずかに、わずかに、戻る。
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「——セレスティア……」
「——有難う、セレスティア……」
「——お、前の『二色の光』で——わ、たくしの『人間』の意志が——わずかに、繋ぎ止められて、い、る……」
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け、れ、ど——『獣化』の圧力は——『二色の光』の流入だ、け、では——完全には抑え切れない。
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彼の肉体の奥から——更に、更に、『骨の組み替わる』凶悪な音、が、響き続ける。
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「——セレスティア——『お、前の魔力の全捧げ』の刻、が、近づいて、い、る……ッ!」
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セレスティア、涙ながらに、穏やかに:「——存じて、お、り、ます、陛下」
「——わ、たくしの魂のす、べ、て、を——あ、な、たに捧げ致します、わ」
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『呪詛の間』の空気が——金色+銀色+青色+新たな『金色の母の愛の光』=『四色の光』、に、完全に包まれて、いる。
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月の表面の赤さが——完全な血の月、の『満ち』の刻に近づく。
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『真実』は——完全に公開された。
『母の声』は——完全に降臨、した。
『二代の大魔女の魂』は——セレスティアの流転型魔力に完全に融合、した。
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け、れ、ど——『獣化』の限界は——完全に、到達、して、い、た。
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『金色の時間』の静謐+『赤の世界』の凶暴=二つが——今、完全に、交錯、して、い、た。
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セレスティアの『二色の混合の光』+ヴォルフラムの『獣化の限界の身体』、が——『運命の完成』の刻に向かって——穏やかに、穏やかに、け、れ、ど、刻一刻と——繋がり始めて、い、た、の、だ、っ、た。
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そ、して——セレスティアの魂の奥で——『——わ、たくしの魂のす、べ、て、を——あ、な、たに捧げ致します、わ』の決意の刻が、静かに、静かに——近づいて、い、た、の、だ、っ、た。
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『命の対価』の具体化の刻が——静かに、静かに——『呪詛の間』に、滲み出して、いた。




