# 第33話 血の月、満ちる
# 第33話 血の月、満ちる
## 第5章「完全解呪、と、命の対価」
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朝——帝城の皇帝の寝室、の、窓辺。
秋の金色の光が、穏やかに、射し込んで、いた。
***
セレスティアと、ヴォルフラム——手を、繋いだまま、目を、覚ました。
『繋いだままの手』、の意味は——今、完全に、『血の月の夜への互いの誓約』、の、象徴、に、なって、いた。
***
窓の外——月の表面の赤い気配が——す、で、に、完全に、半分以上を、染めて、いた。
『血の月の完成』、まで——あ、と、半日。
***
ヴォルフラム、低く、穏やかに:「——セレスティア——今宵、だ、な」
***
セレスティアの青の瞳が、穏やかに、彼を、見つめる。
「——は、い、陛下」
「——今宵、完全解呪儀式を——お執り、致します、わ」
***
彼女の声には——揺るがない、『生への渇望』、と、『未来への執着』、が、宿って、いた。
***
朝食卓——レナーテと、エミリアが——穏やかに、準備、を、執行。
二人ぶんの温かい食事、二人ぶんのカップ。
***
帝城全体の空気は——『最終決戦の当日の凄まじい静謐』、に、完全に、染まって、いた。
侍女たちも、警備たちも——声を、落として、静かに、動いて、いる。
『誰も、声を発しない無音』、の空気の中で——蝋燭の火の揺れる音、だ、け、が、微かに、響いて、いる。
***
昼——帝城の秋の庭園。
***
セレスティアと、ヴォルフラムは——手を、繋いだまま、穏やかに、並んで、散策、した。
落ち葉が、大理石の歩道の上に、静かに、積もって、いる。
秋の柔らかな光が——二人の頬を、穏やかに、染めて、いる。
***
ヴォルフラム、穏やかに:「——セレスティア」
「お、前と過ごした半年は——わ、たくしの千年の中で——最も尊い時間、だ、っ、た」
***
セレスティアの目から——静かに、涙が、滲んだ。
「——陛下」
「わ、たくしも——あ、な、たと過ごした半年は——わ、たくしの生涯の中で——最も温かい時間、でござります、わ」
***
『——最も尊い時間』、と、『——最も温かい時間』——
二人の魂の完全な呼応、だ、っ、た。
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二人は——庭園の樫の木の下で、静かに、抱擁、を、交わす。
***
秋の風が、落ち葉を、わずかに、揺らした。
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夕方——諸国の公的な立会人たち=エルディオ第二王太子レオンハルト、ヴェネシア聖印国の大司祭ヴェレナ、並びに、パルメリオ、カステリオ、フィン、ガリレオ、セレネの諸国の代表が——帝城に、参集。
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帝国魔導士団の長老たちも、集合。
ジークリンデは——赤毛を秋の光に、揺らしながら、セレスティアに、穏やかに、頭を、垂れた。
「セレスティア様——準備は、完璧、よ」
「あなたの『流転型魔力』、の『循環』は——完全に身体に、刻まれて、いる、わ」
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セレスティア、穏やかに:「——有難く、存じます、ジーク様」
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そ、して——窓の外の月が——徐々に、徐々に——赤く、染まり始めた。
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ヴォルフラムの右手の指の疼きが——徐々に、徐々に——強くなる。
彼の身体の内側で——『獣化』の発動の徴候が、微かに、現れ始めて、いた。
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『血の月の夜』、の本格的な到来、だ、っ、た。
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セレスティアと、ヴォルフラムは——手を、繋いだまま、帝城の地下深くへ、向かう。
***
長い、長い、螺旋階段。
空気が、徐々に、徐々に——冷たく、湿って、いく。
『呪詛の間』に近づくたびに——帝城の地下の岩盤の奥から、静かな、脈動が、感じられる。
三重の魔法陣の穏やかな呼吸の音、だ、っ、た。
***
『呪詛の間』の前で——諸国の公的な立会人+魔導士団の長老たち+イザベラ、エミリア——全員が、静かに、待って、いた。
***
ヴェレナ大司祭、穏やかに、頭を、垂れる。
「——皇妃殿下」
「完全解呪儀式の執行を——大聖女ヴェネシアの聖印が、お護り致します」
***
レオンハルト王太子、凛と:「——大陸の公的な立会人、と、して——お証言致します」
***
イザベラと、エミリアは——涙ながらに、セレスティアを、見つめた。
「——セレスティア様」
「——お身を、お大切に……ッ!」
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セレスティアは——穏やかに、微笑む。
「——有難く、存じます、皆様」
「明朝——必ず、『生きて』、お戻り、致します、わ」
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『生きて、お戻り致す』、の宣言、に宿った『生への渇望』、は——揺るがな、か、っ、た。
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二人は——手を、繋いだまま、『呪詛の間』の重い扉を、静かに、押し開けた。
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『呪詛の間』の中——三重の魔法陣が——穏やかに、穏やかに、脈動、して、いた。
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金色の外円——大聖女ヴェネシアの聖印——温かい金色の光、を放って、いる。
銀色の内円——帝国の皇統の印——静かな銀の光、を放って、いる。
青色の中心円——セレスティアの流転型魔力の印——セレスティアの心臓の鼓動と完全に、同期、して、脈動、して、いる。
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地下の岩盤の暗黒の中で——金・銀・青の三色の光が——穏やかに、穏やかに、呼吸、を、して、いた。
***
セレスティアは——『青色の中心円』、の中央=かつての椅子の位置——静かに、歩み出た。
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岩盤に刻まれた爪痕——乾いた古い血の痕跡——岩盤に深く埋め込まれた頑丈な鎖、四本。
『恐怖の記憶』の、名残。
***
け、れ、ど——今、そ、こ、に立つセレスティアは——『護られる者』、では、な、か、っ、た。
『解呪の主体』、だ、っ、た。
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ヴォルフラムは——彼女の前で、彼女と向き合った。
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そ、の、瞬間——『呪詛の間』の空気が——血の月の気配で、徐々に、徐々に——赤く、染まって、いく。
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ヴォルフラムの身体が——徐々に、徐々に——『獣化』の過程に入る、の、を——セレスティアは目撃、した。
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彼の手の爪が、徐々に、尖って、いく。
彼の夜空の瞳の色が、徐々に、赤く、染まって、いく。
彼の肉体が、徐々に、内側から——軋み始める。
***
『——お、前の横で——『人間』、の姿のまま——儀式を始めたい、の、だ』——
彼の意志の声が、微かに、響いて、いた。
***
け、れ、ど——『獣化』の発動の圧力は——凄まじかった。
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彼の身体の全身の血管が——徐々に、徐々に、浮き上がる。
彼の額には——大粒の汗が、滲み始める。
彼の歯は——食いしばられて、歯軋りの音が、微かに、響いて、いる。
彼の肉体の内側で——『獣』、に、な、り、た、い衝動、と、『人間』、の意志、の綱引きが、激しく、起きて、いる。
***
け、れ、ど——セレスティアを、見つめる彼の瞳、だ、け、は——
***
優しく、気高い、『人間』、のまま、だ、っ、た。
***
『お、並びの愛』、の究極の具現化——『壮絶なまでの愛の執念』、だ、っ、た。
***
ヴォルフラムは——歯を食いしばりながら、低く、応じた。
「——セレスティア」
「お、前の横で——『人間』、の姿のまま——儀式を始めるのだ」
***
セレスティアの目から——涙が、溢れた。
「——陛下」
「お無理を——なされて、おり、ま、す、わ……」
***
ヴォルフラム、低く、微かな笑みで:「——無理、では、な、い、セレスティア」
「お、前を護りたい、の、だ」
「お、前の前で——『獣』、に、な、る姿、を——お、見せ致したくは、な、い、の、だ」
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彼の『愛の執念』の前で——セレスティアの魂が温かさで、完全に、満たされた。
***
そ、して——彼女は静かに、彼の手を、強く、握った。
「——陛下」
「儀式を——開始、致します、わ」
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セレスティアの細い指から——淡い乳白色の光、が、穏やかに、流れ始めた。
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流転型魔力の発動。
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『青色の中心円』が——穏やかに、穏やかに、脈動、を始める。
セレスティアの心臓の鼓動と——完全に同期、して、い、る。
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『——お始め、致します、陛下』
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セレスティアの首の青の宝玉——手首の青の腕輪——二つの青の宝石が——完全に、同期、して、脈動、を始めた。
ヴォルフラムの懐の皇帝の宝玉も——完全に、同期、して、脈動。
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『一対の魔導具』の完全な発動、だ、っ、た。
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青の宝玉+青の腕輪+皇帝の宝玉——三つの青の光、が——穏やかに、穏やかに、呼吸、を交わし、始める。
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『金色の外円』+『銀色の内円』+『青色の中心円』——地下の岩盤の暗黒を——完全に、塗り替えて、いく。
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地下の『呪詛の間』が——金と銀と青の三色の光で——完全に、聖域に、な、っ、た瞬間、だ、っ、た。
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ヴォルフラムは——『獣化』の発動の圧力に耐えながら——セレスティアの手を、強く、握り返した。
「——セレスティア——お、前の魂を——わ、たくしの魂で、抱きしめる」
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セレスティア、穏やかに、涙ながらに:「——わ、たくしのお魔力を——あ、な、たに捧げ致します、わ」
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二人の手から——淡い乳白色の光+青の宝玉の脈動の光、が——穏やかに、穏やかに、繋がり始める。
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『二人の魂の繋がりの本番の開始』の瞬間、だ、っ、た。
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『魂の婚約儀式』の本番の発動、だ、っ、た。
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『呪詛の間』の空気が——金色+銀色+青色の三色の光+二人の魂の繋がりの光、に包まれて、いく。
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そ、の、時——
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『呪詛の間』の空気が——微かに、揺れた。
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セレスティアの流転型魔力の流れが、わずかに、揺らぐ。
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背筋に——微かな気配が、宿る。
け、れ、ど——それは——『恐怖』の気配では、な、か、っ、た。
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『千年の凍土が——セレスティアの流転型魔力によ、っ、て、静かに、融解、して、いく』よ、うな——圧倒的な神秘と、宿命の到来の気配、だ、っ、た。
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『呪詛の間』の岩盤の奥から——静かな声が——耳元で囁かれるよ、うに——セレスティアの魂に、響いた。
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『——あなたが、セレスティアね……』
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そ、の声は——『敵』、の声、では、な、か、っ、た。
どこか懐かしく——そして——絶対的な重み、を持って、い、た。
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セレスティアの流転型魔力は——わずかに、乱れたけ、れ、ど——止まらなかった。
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「——誰、でしょうか?」
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『——千年前から——あなたを、お待ちして、い、た、わ……』
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セレスティアの意識が——わずかに、揺らぐ。
「——千年前、から——わ、たくしを、お待ちに、なって、い、ら、っ、し、ゃ、っ、た、お方……?」
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『——そう、だわ……あ、な、たの母——エレオノーラ——懐かしいわね……』
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セレスティアの目が——大きく、大きく、見開かれた。
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「——母の、お名前!?」
「——母を、お知りに、な、っ、て、い、ら、っ、し、ゃ、る、の?」
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ヴォルフラムは——セレスティアの手を、強く、握ったまま——彼女の変化に、気づいた。
「——セレスティア!? どうした、セレスティア!?」
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け、れ、ど——セレスティアの意識は——『呪詛の間』の岩盤の奥の声、に、引き込まれて、い、っ、た。
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『——千年前——わ、たくしが——エルメリンダ——大魔女、だわ……』
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『呪詛の間』の岩盤の奥から——淡い、青白い、光の気配が——徐々に、徐々に、滲み出して、き、た。
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『大魔女エルメリンダ』の魔力の残響、だ、っ、た。
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け、れ、ど——そ、の気配には——『敵意』、は、な、か、っ、た。
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『——落ち着いてね、セレスティア。あ、な、たを、傷つけにきた、の、では、な、い、わ……』
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『——わ、たくしは——あ、な、たに、『真実』、を、お伝え致したい、だ、け、な、の……』
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セレスティアの意識が——わずかに、安定、を、取り戻す。
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「——真実、を……?」
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ヴォルフラム、低く、凍るような声で:「——エルメリンダ……?! 千年前の、大魔女、か……?」
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『——そう、だわ、ヴォルフラム——懐かしいわね……』
***
『——あ、な、たに、『呪い』、をおか、け、た、わ、たくしの声、だわ……』
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ヴォルフラムの夜空の瞳が——赤く染まり始めていた瞳が——揺れる。
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『——け、れ、ど——セレスティア——お聞きくださりませ……』
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『——あ、な、たの母——エレオノーラ——わ、たくしの直系の子孫、だ、っ、た、の、よ……』
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セレスティアの呼吸が——止まった。
***
『大魔女エルメリンダ』の直系の子孫——
母エレオノーラ——
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『——あ、な、たの母は——わ、たくしに、お伝え致したで、しょ、う?』
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『——『北はこわくないのよ』、と——』
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セレスティアの目から——涙が、溢れた。
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(——母が——わ、たくしに、お伝えになって、い、た、お言葉……!)
(——『北はこわくないのよ』、のお言葉——今、あ、な、たのお声で、よ、み、が、え、る……)
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第7話の『北はこわくないのよ』の伏線の本格的な回収、の瞬間、だ、っ、た。
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『——『北の血筋』、の意味、は——『大魔女エルメリンダ』の直系の血筋——でいらっしゃる、の、だ、わ……』
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『——わ、たくしの魔力は——『北』=『冬』=『冷たい魔力』=『呪い』、を、得意と、する血筋、な、の……』
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セレスティアの涙が——頬を、流れ落ちる。
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(——わ、たくしの出自の真実……)
(——『大魔女エルメリンダ』の血筋……)
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『——け、れ、ど——あ、な、たの母——エレオノーラ——稀有なお方、でいらっしゃった、わ……』
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『——『冷たい魔力』、を——『癒やしの魔力』、に——転換、致したお方、な、の……』
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『——愛を、込めて——呪いの血筋を——編み直し、なされた、の……』
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『——あ、な、たの『流転型魔力』、は——エレオノーラの『転換の魔力』、の完成形、な、の、だ、わ……』
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セレスティアの魂が——大きく、揺さぶられた。
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彼女は——十二年の地獄の中で——己の流転型魔力を——『異端の力』、『気味の悪い力』として——虐げられて、きた。
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『無能』、と呼ばれ——『化け物』、と呼ばれ——『偽聖女』、と呼ばれ——『穢れた、者』、と呼ばれ、続けた。
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け、れ、ど——今、エルメリンダの声が——彼女に、お伝えに、なって、い、る——
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『——あ、な、たの『流転型魔力』、は——『異端』、では、な、い、の、だ、わ……』
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『——大魔女の血を引きながら——あ、な、たの母エレオノーラが、愛を込めて、編み直し——あ、な、たが、完成、なされた——『世界を救うた、め、の必然の光』、な、の、だ、わ……』
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セレスティアの涙が——止まらなかった。
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け、れ、ど——そ、の涙は——
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単なる『衝撃の涙』、では、な、か、っ、た。
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『——わ、たくしのこ、の力は——生まれてきて——よ、か、っ、た、の、だ……!』の——
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『自己肯定の完成の救済の涙』、だ、っ、た。
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十二年の地獄で、『異端』、『化け物』、『偽聖女』、と呼ばれ続けた魂の傷、が——
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今、『世界を救うた、め、の必然の光』、と、公的に、肯定された、の、だ、っ、た。
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『あ、な、たの存在は——生まれてきて、よ、か、っ、た、の、だ、わ』の全肯定の救済。
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セレスティアの魂が——完全に、救われた瞬間、だ、っ、た。
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ヴォルフラムは——『獣化』の発動の圧力に耐えながら——セレスティアの涙を、見つめて、いた。
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彼の赤く染まった瞳に宿った『人間』の気高さ、の光、が——穏やかに、彼女を、包んで、いた。
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「——セレスティア——お、前の出自は——お、前を、定義致さない、の、だ、っ、た、な」
「——お、前の『今』の意志、が——お、前を定義、致す、の、だ、っ、た、な」
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第29話の名台詞=『出自は定義致しません』の完全な定着、の瞬間、だ、っ、た。
***
セレスティアの流転型魔力の流れが——大きく、安定、を、取り戻した。
『青色の中心円』の脈動が——完全に、完全に、穏やかに、強く、なって、い、く。
***
『一対の魔導具』の脈動も——完全に、完全に、同期、して、い、く。
***
『——有難く、存じます、エルメリンダ様』
***
セレスティアは——静かに、大魔女エルメリンダの気配に、頭を、垂れた。
「——わ、たくしの出自の真実を——お伝え、頂きまして——有難く、存じます、わ」
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『——セレスティア……』
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『大魔女エルメリンダ』の声が——穏やかに、静かに、続いた。
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『——け、れ、ど、セレスティア——『真実』、は——そ、れ、だ、け、では、な、い、わ……』
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セレスティアの背筋に——微かな気配が、宿った。
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『——もう一つの真実——』
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『——わ、たくしが、皇帝陛下に『呪い』、をおか、け、た——本当の理由——』
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『——お聞きになる?』
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『呪詛の間』の空気が——完全に、静まり返った。
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セレスティアと、ヴォルフラム——互いに、目を、交わした。
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ヴォルフラムの赤く染まった瞳に宿った『人間』の気高さ、の奥に——微かな、揺らぎが、宿った。
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『——呪いをおか、け、た、本当の理由……?』
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『偶然の呪い』では、な、か、っ、たの、だ、ろ、う、か?
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『必然の呪い』だ、っ、た、の、だ、ろ、う、か?
***
セレスティアは——穏やかに、け、れ、ど、揺るがない声で、応じた。
「——お聞き、致します、わ、エルメリンダ様」
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『——そう、だわ、セレスティア……』
***
『——わ、たくしが、ヴォルフラム——あ、な、たに『呪い』、をおか、け、た、の、は——』
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『——『偶然の悲劇』、では、な、か、っ、た、の、だ、わ……』
***
『——『千年の時を越えて——セレスティアとヴォルフラム——二人を、出会わせる』、た、め、の——『必然の運命』、だ、っ、た、の、だ、わ……』
***
『呪詛の間』の空気が——完全に、凍り、つい、た。
***
セレスティアと、ヴォルフラム——互いに、大きく、目を、見開いた。
***
『——千年の時を越えて——二人を、出会わせる、た、め、の、『必然の運命』』——
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物語が——『偶然の悲劇』、か、ら、『必然の運命』、へと——完全に、シフト、した瞬間、だ、っ、た。
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『——わ、たくしの『呪い』、の本当の理由を——今宵——あ、な、たたちに、お伝え、致します、わ……』
***
『血の月の夜』、の始まった刻——『完全解呪儀式』、の『開始』、の刻——『大魔女エルメリンダ』、の真実の声、が——
***
静かに、静かに、静かに——『呪詛の間』に、響き、始めて、いた、の、だ、っ、た。
***
窓の遥か上で——血の月が——徐々に、徐々に、完全な赤さに、染まり始めて、いた。




