# 第32話 前夜の、静かな祈り
# 第32話 前夜の、静かな祈り
四日間——
月の表面の赤い気配が、徐々に、徐々に、濃く、なって、い、く、刻、だ、っ、た。
***
残党の五つの貴族家——シュタイン家、ヴェルナー家、コルク家、マイア家、ハイデン家——す、べ、ての公的な裁判が、順次、執り行われた。
侯爵と同じ判決=爵位剥奪、領地没収、終身幽閉。
侯爵家+五つの貴族家=計六つの貴族家が——帝国の公的な歴史の罪人として——永遠に断罪、され、た、の、だ、っ、た。
***
帝国軍内の中堅将校の配置換えも完了——『侯爵の遺志』の声、は——軍内から、完全に、消えた。
帝都の匿名チラシの配布も——帝都民が誰一人として信じない、現実の前で——徐々に、止まった。
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『社会的戦場』、の『風化』、の完成。
***
そ、の四日間で——
セレスティアの『陣営』が——静謐な形で——完成、して、い、っ、た。
***
イザベラ・ヴェルデンベルクは——『公的な腹心』、として——本格的に機能、し始めた。
諸国の王侯への公的な書簡を、セレスティアの代理で、完璧な文体で、作成。
帝国貴族の公的な手配を、的確な判断で、執行。
『純血の姫君』の十数年の完璧な教養=歴史、外交、諸国の地理、帝国貴族の系譜——す、べ、てが——今、セレスティアの皇妃としての公的な機能のた、め、に——完璧に、稼働、して、い、た。
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エミリアは——『生涯の個人侍女』、として——本格的に機能、し始めた。
セレスティアの身辺の世話を、完璧に、執行。
青の宝玉+青の腕輪=『一対の魔導具』の管理を、誰よりも細やかに、徹底。
『血の月の夜』の準備の細部、を——彼女の『手足』の忠誠で、完璧に、整えて、い、た。
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そ、の二人の姿、は——単なる『役割分担』、では、な、か、っ、た。
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セレスティアが——『ファルネーゼの捨てられた姫』か、ら——
『己の陣営と、忠誠を誓う部下を従えた、ヴァルガルドの真の支配者(=皇妃)』、へと——完全に、羽ばたいた、証明、だ、っ、た。
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『玉座の重み』、の完成、だ、っ、た。
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セレスティアの公務も——静謐に、積み重ねられた。
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帝都の孤児院、の、訪問——子供たちが、無数に、彼女に、花を、手渡す。
帝都の病院、の、訪問——流転型魔力で、何人か、の患者を、穏やかに、救済。
帝都の大通り——帝都民が、セレスティアを、『本物の聖女』として、完全に信頼する姿。
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『——皇妃殿下が——帝国の皇妃で、い、ら、っ、し、ゃ、る事、を——我ら、帝国民は——大陸に誇りに、致して、お、り、ま、す——』
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そ、の静謐な四日間の果てに——
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血の月、の、前日、の朝が——や、っ、て、きた、の、だ、っ、た。
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朝——帝城の皇帝の寝室。
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セレスティアと、ヴォルフラム——穏やかに、目を、覚ます。
二人は——手を、繋いだまま、眠って、いた。
『繋いだままの手』、の意味、が——完全に、定着、して、いた。
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窓の外——月は——す、で、に『血の月』の前夜の姿、だ、っ、た。
月の表面の半分以上が——赤い気配で、染まって、いる。
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ヴォルフラム、穏やかに:「——セレスティア、目覚めたか?」
セレスティア、穏やかに:「——は、い、陛下」
「——今宵が——血の月、の、前夜、でござります、わ」
***
朝食卓に——レナーテが、公的な発表の報告を、持ってくる。
「皇帝陛下、並びに、皇妃殿下——本日、帝国全土に——『明日の血の月の夜、皇帝陛下の呪いの完全解呪儀式が執り行われる』、の公的な発表が、済みました」
***
ヴォルフラム、穏やかに、頷く。
「——帝国全土の祈りの声、に、包まれて——わ、たくしたちは、儀式に臨む、の、だ、な」
セレスティア、穏やかに:「——有難く、存じます、わ」
***
午前——セレスティアと、ヴォルフラム、並びに、護衛=クロウ、エミリア、イザベラの同行で——帝都の公的な散策。
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帝都全体に——『明日の血の月の夜の完全解呪儀式』、の公的な発表+『祈り』の空気が——静かに、静かに、充満、して、いた。
***
帝都の大教会——
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大広間に——帝国民が、無数に、蝋燭を、灯して、祈って、いた。
***
金色の蝋燭の炎、が——大教会の高い天井に、まで——温かい光を、放って、いる。
無数の金色の光点、が——大広間の大理石の床に、穏やかに、揺らめいて、いる。
***
『皇帝陛下の呪いの完全解呪、の成功を——お祈り致します……』
『皇妃殿下のお身のお無事を——お祈り致します……』
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帝国民の祈りの声、の残響、が——大教会の高い柱に、穏やかに、響き、渡る。
***
セレスティアと、ヴォルフラムは——大教会の中央で——静かに、蝋燭を一本、灯した。
金色の光、が——二人の頬を、穏やかに、染める。
***
帝国民、無数に、頭を、垂れる。
***
続いて——帝国の寺院。
『帝国の皇統の印』、の前で——帝国民、無数に、祈り、を、捧げて、いた。
『——千年の帝国の皇統が——お護りくださりますように……』
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大教会の『金色の炎』+寺院の『銀色の皇統の印』——二つの光、が——帝都全体に、穏やかに、広がって、いた。
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帝都の裏路地——か、つ、て、匿名チラシが配布された路地でも——今、『祈り』の空気が、充満、して、いた。
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『皇妃殿下に、お無事で、あって頂きたい……』
『皇帝陛下のお呪いが、お、解けますように……』
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セレスティアの胸が——温かい、もので、完全に、満たされる。
(——これが——わ、たくしの『国』、の姿、な、のです、ね……)
(——帝国全体が——わ、たくしと、あ、の、方のた、め、に——祈って、くださって、いる、の、です、わ……)
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午後——帝城の大広間。
諸国の王侯=エルディオ第二王太子レオンハルト、ヴェネシア聖印国の大司祭ヴェレナ、並びに、パルメリオ、カステリオ、フィン、ガリレオ、セレネの公的な代表が、帝城に参集、していた。
***
『大陸の公的な立会人』、としての参列の宣言の時、だ、っ、た。
***
レオンハルト王太子:「——皇妃殿下」
「エルディオ王国を代表、致して——公的な立会人、として、参列致します」
「エルディオ王国の名に、か、け、て——完全解呪儀式の証人、を、お務め致します」
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ヴェレナ大司祭:「——皇妃殿下」
「ヴェネシア聖印国を代表、致して——大聖女ヴェネシアの聖印を、抱いて——公的な立会人、として参列致します」
「ヴェネシア聖印国全土が——今、完全解呪儀式の成功を——お祈り致して、お、り、ま、す」
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続いて——パルメリオ王、カステリオ王、フィン王、ガリレオ王、セレネ公——順に、参列、宣言。
「——我が国も、公的な立会人、をお務め致します」
「——我が国も——公的な立会人、をお務め致します」
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『大陸全体の公的な大魔導儀式』、の国際的盤面、の完成、だ、っ、た。
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セレスティアは——諸国の王侯に、静かに、頭を、垂れた。
「——大陸の皆様」
「わ、たくし、並びに、皇帝陛下にお、寄せ、頂きました公的な信頼に——誠に、有難く、存じます」
「——明日の血の月の夜——完璧な儀式を、お執り、致す所存、でござります、わ」
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諸国の王侯、頭を、垂れる。
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『大陸の公的な盟友』、の完成、の瞬間、だ、っ、た。
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夕方——帝城の地下深くの『呪詛の間』。
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セレスティア、ヴォルフラム、ジーク、ヴェレナ大司祭、レオンハルト王太子、帝国魔導士団の長老たち+イザベラ嬢、エミリア——全員が、集合、していた。
***
三重の魔法陣の最終確認。
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金色の外円——大聖女ヴェネシアの聖印——穏やかに、脈動、して、いる。
銀色の内円——帝国の皇統の印——穏やかに、脈動、して、いる。
青色の中心円——セレスティアの流転型魔力——セレスティアの心臓の鼓動と、同期、して、脈動、して、いる。
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地下の暗がりの中で——三色の光、が——穏やかに、穏やかに、呼吸、して、いた。
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ジーク、低く:「——『場』、の準備は——完璧、でござります、わ」
「明日の夜——血の月が完全に赤くな、る、時——皇帝陛下の呪いが発動、致します」
「セレスティア様が——『呪詛の間』の中央で、呪いを引き剥がす儀式を、執り行います」
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セレスティアと、ヴォルフラムは——『呪詛の間』の中央=かつての椅子の位置——並んで立った。
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岩盤に刻まれた爪痕——乾いた古い血の痕跡——岩盤に深く埋め込まれた頑丈な鎖、四本——そ、して——三重の魔法陣の穏やかな脈動。
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セレスティアは——穏やかに、ヴォルフラムの手を、握った。
「——陛下、明日の夜——わ、たくしのお手で——あ、な、たの呪いを、お引き剥がし致します、わ」
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ヴォルフラム、低く:「——セレスティア。わ、たくしも、お、前の魂を——わ、たくしの魂で、抱きしめる、の、だ、な」
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二人は——手を、繋いだまま、『呪詛の間』を、出ていった。
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『場』の完成+二人の準備の完成。
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夜——帝城の皇帝の私室、の、窓辺。
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二人だけの静かな夕餉。
二人ぶんの温かい食事、二人ぶんのカップ。
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『最終決戦の前夜の甘く、切なく、穏やかな時間』、の顕現、だ、っ、た。
***
ヴォルフラム、穏やかに:「——セレスティア」
「わ、たくしは——お、前と出会えて——本当に、よ、か、っ、た」
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「千年——わ、たくしは、お、一人で生きてきた——け、れ、ど——お、前と出会って、か、ら——わ、たくしは、『人間』、に戻った、の、だ」
「——お、前と——並んで、生きていく未来を——信じて、いる」
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セレスティアの目から——涙が、滲んだ。
***
け、れ、ど——そ、の涙は——単なる『甘い逢瀬』の涙、では、な、か、っ、た。
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明日の夜——『前例のない命の対価』が、二人を待って、いる、の、だ、っ、た。
セレスティアの生存の保証は——な、い、の、だ、っ、た。
***
だ、か、ら、こ、そ——彼女の涙の輪郭に滲んで、いた、の、は——
***
『生への渇望』、だ、っ、た。
***
「——陛下」
「わ、たくしも——あ、な、たと出会えて——本当に、よ、か、っ、た、の、です、わ」
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「十二年——地獄に、押し付けられたわ、たくしの魂が——あ、な、たに抱きしめられて、今——完全に、温かい、の、です、わ」
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「——こ、の、世界が、こんなにも、愛おしくて——隣のあ、な、たが、こ、ん、な、に、も、尊くて——」
「——だ、か、ら、こ、そ——わ、たくしは——絶対に、生きて、戻ります、わ」
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彼女の声、に宿った『未来への執着』、の凄まじさ。
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『絶対に、生きて、戻る』、の宣言、に宿った——猛烈な、静かな、『生への渇望』、だ、っ、た。
***
ヴォルフラムの夜空の瞳が——大きく、揺れた。
「——セレスティア」
「——お、前と——永遠に——並んで、生きていく、未来を——信じて、いる」
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セレスティア、涙ながらに:「——は、い、陛下」
「あ、な、たの呪いを、お引き剥がし——あ、な、たと、永遠に、並んで、生きて、参ります、わ」
***
二人は——手を、握り合った、まま——月光の金色+月の表面の赤い気配——二つの光に、穏やかに、染まる。
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『生への渇望』と『未来への執着』が——二人の魂を、完全に、結びつける瞬間、だ、っ、た。
***
深夜——帝城の皇帝の寝室。
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セレスティアと、ヴォルフラム——静かに、寝台に横臥。
月光が、窓から、穏やかに、射し込んで、いる。
***
月の表面は——す、で、に半分以上が、赤い気配で、染まって、い、る。
秋の夜空に——不気味で、そして、美しい『血の月の前夜』、の月、が——静かに、静かに、浮かんで、いた。
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ヴォルフラムは——セレスティアを、強く、抱きしめた。
***
彼の腕の強さ、に——『恐怖』、が、宿って、いた。
***
「——セレスティア」
***
「明日の夜——血の月が完全に赤く染まる、時——わ、たくしの『獣化』、が発動、致す」
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「——血の月が完全に赤くな、り、き、る前に——お、前のお魔力で——呪いを引き剥がさねば、な、ら、ぬ」
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「もし——間に合わ、な、け、れ、ば——」
***
彼の声、が、微かに、震えた。
***
「——わ、たくしは——『獣』、の、まま——お、前を——」
***
『噛み殺してしまうかも、しれない、のだ』——
***
そ、の言葉は——彼の喉の奥で——静かに、留まった。
***
け、れ、ど——セレスティアの耳には——完璧に、届いて、いた。
***
『最悪のタイムリミット』、の具体的な形、だ、っ、た。
***
社会的ノイズが、完全に消え去った、無音の夜、だ、っ、た。
だ、か、ら、こ、そ——そ、の、『狂気の秒針』、の音は——二人の耳に、静かに、確実に、響いて、いた。
***
『明日、もし、解呪が間に合わな、け、れ、ば——彼は怪物のまま、わ、たくしを噛み殺してしまうか、もしれない』
***
け、れ、ど——セレスティアは——穏やかに、彼の胸に、頬を、寄せた。
***
「——陛下」
「わ、たくしのお魔力を——あ、な、たに捧げ致します、わ」
***
「——『一対の魔導具』、の宝玉と腕輪を、介し、て——あ、な、たと、繋がり続けます、わ」
「『お、並びの愛』、の完璧な形を——明日の夜——完成、致しましょう、わ」
***
『噛み殺してしまうかも、しれない』、の恐怖の前で——彼女が示した、信頼の揺るがなさ。
***
ヴォルフラムは——彼女を、更に、強く、抱きしめた。
***
彼の腕の強さ、に宿った『恐怖』+『愛』+『信頼』の三つ、が——静かに、静かに——二人を、結びつけて、いた。
***
窓の外——月の表面の赤い気配が——更に、更に、濃く、染まって、い、る。
『血の月』の完成、まで——あ、と、一日。
***
帝都の大教会では——今夜も、帝国民が、無数の蝋燭を、灯して、祈って、い、る。
ヴェネシア聖印国全土で——大聖女ヴェネシアの聖印の祈祷。
エルディオ王国+諸国全体で——公的な祈り。
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『大陸全体の公的な祈り』の形、が——完成、して、いた。
***
『金色の炎(=大教会の蝋燭)』+『銀色の皇統の印』+『青色の中心円(=呪詛の間の三重魔法陣)』——
大陸全体が『光と祈り』に包まれて、い、る、の、だ、っ、た。
***
だ、か、ら、こ、そ——月の表面の赤い気配の『禍々しさ』が——極限まで、引き立った、の、だ、っ、た。
***
光が強ければ強いほど——影(=呪い)の濃さ、が、際立つ、の、だ、っ、た。
***
『社会的戦場』、は——完全に、風化、した。
『解呪儀式の準備』、は——完璧に、完了、した。
『二人の魂の擦り合わせ』、は——本格的に、完成、した。
『大陸全体の公的な祈り』、は——完成、した。
『玉座の重み』、は——完成、した。
***
あ、とは——血の月の夜、を、待つ、だ、け、だ、っ、た。
***
『最大の戦場』、は——完全解呪の儀式=『明日の夜』、に、迫って、い、る。
***
『恐怖の記憶』を『愛の聖域』に変えた『呪詛の間』で——
『護られる椅子』の位置に——『解呪の主体』として、立つセレスティアが——
『お、前の魂を抱きしめる』と誓ったヴォルフラムと——共に、呪いを引き剥がす、の、だ、っ、た。
***
『偶然の救い』か、ら『必然の愛』への完璧な円環の完成の前夜が、静かに、静かに、更けて、い、た。
***
第4章「溺愛の日々、と、忍び寄る、陰謀」——静かに、静かに——完結、しつつ、あった。
***
次なる章——『完全解呪、と、命の対価』——静かに、静かに——幕を、開けようと、していた。
***
月の表面の赤い気配——更に、更に、濃く、染まって、い、る。
***
血の月、まで——あ、と、一日。
***
二人は——手を、繋いだまま、穏やかに、眠りに、落ちて、い、っ、た。
***
『生への渇望』+『未来への執着』+『噛み殺す恐怖』+『大陸全体の祈り』——す、べ、てを——静かに、静かに、抱えて。
***
『前夜の、静かな祈り』、の刻、が——更けて、い、っ、た、の、だ、っ、た。




