# 第31話 命の、対価の、覚悟
# 第31話 命の、対価の、覚悟
翌朝——帝城の皇帝の執務室。
秋の光が、大理石の床に、穏やかに、射し込んで、いた。
***
クロウが——新しい報告書を、手に、入ってきた。
「陛下——残党の最後の抵抗が——始まり、まし、た」
***
ヴォルフラムは——静かに、顔を、上げた。
彼の夜空の瞳には——もはや、『過保護の怪物』、の狂気は、宿って、い、な、か、っ、た。
『お、並びの愛』の本格化の静かな落ち着き、だ、っ、た。
***
「——報告、致せ、クロウ」
***
「——帝都の裏路地で——『偽聖女』の匿名チラシの大量配布が始まりました」
「——帝国軍内の中堅将校三名——シュテファン、ライナルト、マルクス——『侯爵の遺志を継ぐ』宣言の文書を、軍内で配布、致しました」
「——侯爵家の残党、五つの貴族家——シュタイン家、ヴェルナー家、コルク家、マイア家、ハイデン家——秘密の会合を、頻繁化、致して、お、り、ま、す」
***
け、れ、ど——クロウの報告の『色』は、前話までと、完全に、違って、いた。
それは——『脅威の報告』、では、な、か、っ、た。
『風化、していく現象の報告』、だ、っ、た。
***
「——け、れ、ど、陛下」
「(1)のチラシ——帝都民は、信じて、お、り、ま、せ、ん」
「『皇妃殿下は——公的な裁判で、『出自は定義致しません』のお、宣言を為されたお方、でいらっしゃるわ。侯爵様の『純血』の戯言、に、騙される、わ、け、に、参らぬ』、と——帝都民は、チラシを笑って、お、捨てに、なって、お、り、ま、す」
***
「(2)の中堅将校——軍上層部の将官が、内部告発を、受けて、静かに配置換え、致しました」
「シュテファン将校は、帝国南端の国境警備。ライナルト将校は、帝国北端の国境警備。マルクス将校は、文官への転属」
「軍内には——『侯爵の遺志』、の声、は——完全に、消えて、お、り、ま、す」
***
「(3)の残党貴族家——公的な証拠が揃った時点で——帝国軍の包囲、並びに、順次逮捕の手筈、整って、お、り、ま、す」
***
ヴォルフラムは——穏やかに、頷いた。
「——わかった、クロウ」
「介入は、不要、だ。『風化』を、見守る」
「『公的な法』、の、機能を——そのまま、信じよう、な」
***
そ、の『風化』、は——冷徹、な、までに——静か、だ、っ、た。
***
か、つ、て——あれほど、セレスティアを脅かした『純血の毒』、が——
今や——システム(=法と民意)に、よって——自動的に、排除されて、い、る、の、だ、っ、た。
***
『あ、の、侯爵様の『純血』、の戯言、を、信じる帝都民は、い、な、い』。
『あ、の、侯爵様の『遺志を継ぐ』軍人は、軍内で内部告発される』。
『あ、の、侯爵家の残党は、公的な証拠で順次逮捕される』。
***
セレスティアの治める世界が——圧倒的に『正しく』機能、し、始めた、の、だ、っ、た。
***
朝食卓——二人ぶんのカップ。
ヴォルフラムは——『お、並びの愛』の本格化=す、べ、てをセレスティアに分かち合った。
***
残党の『風化』の報告——帝都民のセレスティアへの公的支持の盤石さ——軍上層部の内部告発——公的な証拠の集積。
***
セレスティアは——穏やかに、聞き、頷いた。
「——有難く、存じます、陛下」
「『出自は定義致しません』、のお宣言を——帝都民の皆様がお信じて、くださって、い、る、の、です、わ」
***
彼女は——窓辺から、帝都を、見下ろした。
帝都の大通りに——秋の光が、穏やかに、射し込んで、い、る。
『——これが——わ、たくしの『国』、の姿、な、のです、ね……』の温かい感慨。
***
ヴォルフラム、低く:「——セレスティア。『社会的戦場』、は——完全に、決着、した」
セレスティア:「——あ、な、たが——並んで、お歩み、くださって、い、る、か、ら、です、わ」
***
午後——帝城の地下深くの『呪詛の間』。
セレスティア、ヴォルフラム、ジーク、ヴェレナ大司祭、レオンハルト王太子、帝国魔導士団の長老たち——全員が、集合、して、い、る。
***
空気は——湿って、冷たい。
け、れ、ど——岩盤の爪痕の周りに——今、『場』が、完成、しよう、としていた。
***
ヴェレナ大司祭が——大聖女ヴェネシアの聖印を、金色の光、で、床に、刻み始めた。
***
彼女の低い祈りの声、と、共に——金色の円が、徐々に、徐々に——岩盤の爪痕を、包む形で、完成、して、いく。
***
『——大聖女ヴェネシア——わ、たくしの手を介して——帝国の皇帝陛下の呪いを、お引き剥がし、くださりませ』
***
金色の円が——完成、した、瞬間——
『呪詛の間』の岩盤に——穏やかな、金の脈動が、宿った。
***
続いて——帝国魔導士団の長老たちが——金色の円の内側に——銀色の光で『帝国の皇統の印』を、刻み始める。
***
千年の帝国の皇統の歴史を象徴する印。
長老たちの長い呪文の声、と、共に——銀色の内円が、徐々に、徐々に、形になる。
***
完成、した瞬間——銀の脈動が、宿った。
***
金色の外円、の中に——銀色の内円が——穏やかに、脈動、して、いる。
地下の暗がりの中で——金と銀の二重の円が——静かに、静かに、呼吸、して、いる、よ、うに、見えた。
***
そ、して——セレスティアが、『呪詛の間』の中央に、歩み出た。
***
第21話で——彼女が『鎖の傍らの椅子』に、座って、血の月の夜を過ごしたあの位置——今、彼女は『解呪の主体』として、立つ、の、だ、っ、た。
***
「——わ、たくしの印を、刻みます、わ」
***
彼女の細い指から——淡い乳白色の光、が——徐々に、青く、染まり始めた。
流転型魔力の『青』の顕現、だ、っ、た。
***
青の光が、床に流れ——銀色の内円の内側に——『青色の中心円』を、刻み始める。
***
セレスティアの心臓の鼓動と——青の円が——同期、して、脈動、する。
彼女の首の青の宝玉——手首の青の腕輪——二つの宝石も——完全に同調、して、脈動、して、いる。
***
完成、した瞬間——
***
地下の暗がりの中に——三つの円が——静かに、静かに、脈動、して、いた。
***
金色の外円——大聖女ヴェネシアの聖印——大陸の信仰の権威。
銀色の内円——帝国の皇統の印——千年の帝国の歴史。
青色の中心円——セレスティアの流転型魔力——『今』の意志。
***
三色の光、が——地下の暗がりに——穏やかに、穏やかに、呼吸、して、いた。
***
『三重の聖印の魔法陣』、の完成、の瞬間、だ、っ、た。
***
ジークが——低く、応じる。
「セレスティア様——『場』、は——完成、致しました」
「あと、は——血の月の夜——あ、な、た様のお魔力で——皇帝陛下の呪いを、引き剥がす、だ、け、でござります」
***
セレスティア、穏やかに:「——有難く、存じます、ジーク様」
***
彼女の心臓の鼓動が——わずかに、早まる。
残り——七日。
***
夕方——帝城の『鏡の令嬢の間』。
セレスティアと、イザベラのお茶。
***
イザベラの目には——まだ涙の跡が、わずかに、残って、いた。
け、れ、ど——『更地』、に、新しい芽が、静かに、生え始めて、いた。
***
イザベラ、穏やかに:「——セレスティア様」
「お、お、お願いが、ござります」
***
セレスティア:「——何でしょう、イザベラ?」
***
「わ、たくしの『純血の姫君』の十数年の教養——完璧で、ござります」
「歴史——外交——諸国の地理——帝国貴族の系譜——す、べ、て、身につけて、お、り、ま、す」
***
「——そ、の教養を——今度は——あ、な、た様のた、め、に——帝国の未来のた、め、に——お使い致したく、存じます」
「——わ、たくしを——あ、な、た様の『公的な腹心』、として——お使いに、なって、くださりませ」
***
彼女の声には——『純血の姫君』の十数年の傲慢な令嬢の声ではな、い、『鏡の令嬢』としての新しい声、が、宿って、いた。
***
「——『鏡』、として——あ、な、た様の横で——対等に並んで——皇妃殿下のお戦いを、お支え致したい、の、です」
***
セレスティアの胸が、温かく揺れた。
「——有難く、存じます、イザベラ」
「あ、な、たのお教養を——帝国の未来のた、め、に——お借り致します、わ」
***
イザベラ、涙ながらに:「——セレスティア様」
「——もう、一つ、お願いが、ござります」
***
「血の月の夜の完全解呪儀式の『証人』、として——わ、たくしも、参列、させて、頂きとう、存じます」
「『鏡の令嬢』、として——あ、な、た様の横で——あ、の、歴史的な瞬間を、見届けたい、の、です」
***
『恐怖の象徴』の儀式に——敢えて『証人』として参列を望む彼女の決意。
『純血の姫君』の傲慢な令嬢から——対等な『鏡』として新しい生き方を始めた彼女の凛とした姿、だ、っ、た。
***
セレスティア、穏やかに、頷く:「——お願い、致します、わ、イザベラ」
***
『魂とプライド』の新生、だ、っ、た。
***
そ、の夜——帝城の皇帝の私室。
クロウが——エミリアと、彼女の家族=父、母、妹——を連れて入ってくる。
***
侯爵家の領内から——帝都に引き取られた——エミリアの家族、だ、っ、た。
***
エミリアは——セレスティアの前で、跪く。
「皇妃殿下——お、家族を、お、救い、頂きまして——誠に、有難く、存じます」
***
彼女の父、母、妹も——頭を、垂れる。
「皇妃殿下に、お目通り、頂きまして、誠に有難く、存じます」
「わ、たくしども、家族——皇妃殿下のお、恩を——生涯、忘れ、ま、せ、ん」
***
セレスティア、穏やかに:「——皆様、どうか、お顔を、お上げくださりませ」
「お苦しいお時間を、お過ごし、頂きました——どうか、帝都で、穏やかに、お、過ごしくださりませ」
***
エミリア、涙ながらに:「——皇妃殿下」
「——わ、たくしを——生涯——あ、な、た様の個人侍女として——お使いくださりませ」
「お、恩を——わ、たくしの『手足』で——生涯、お返し、致します、わ」
***
エミリアの誓いは——『生活と恩義』の、個人的かつ絶対的な報恩、だ、っ、た。
『手足』としての忠誠、だ、っ、た。
***
イザベラの『魂とプライド』の『対等な鏡』の新生と——
エミリアの『生活と恩義』の『手足』の報恩と——
性質の完全に違う二人の腹心が——今、同時に——セレスティアの『陣営』を完成、させて、いた、の、だ、っ、た。
***
セレスティアは——穏やかに、頷いた。
「——有難く、存じます、エミリア様」
「皇妃の、信頼する個人侍女として——お傍に、お、り、ま、し、て、頂きとう、存じます、わ」
***
深夜——皇帝の私室、の、窓辺。
セレスティアと、ヴォルフラム——二人だけの静かな時間。
月は——更に大きく、なって、い、る。
血の月まで——あ、と、七日。
***
ヴォルフラムは——セレスティアの手を、握ったまま——低く、呟いた。
「——セレスティア」
「——完全解呪儀式の代償、に、ついて——お尋ね、致したい、の、だ」
***
セレスティアは——穏やかに、応じる。
「——ジーク様、か、ら、お聞きでしょうか?」
***
ヴォルフラム:「——うむ。『循環で生き残る可能性は高い』、け、れ、ど、『前例がない』、事実、は、変わらない、の、だ、な」
***
セレスティア、穏やかに:「——は、い、陛下」
「『前例がない』事実は——変わりません、わ」
「——け、れ、ど——わ、たくしは——どんな結果でも、受け入れる覚悟、を、お、持ち、致して、お、り、ま、す、わ」
***
ヴォルフラムの夜空の瞳が、揺れた。
『純粋な愛』の苦しみが、宿る。
「——セレスティア」
「お、前を、失う、の、は——わ、たくしには——耐えがたい、の、だ」
「お、前を失うくらい、な、ら——わ、たくしは呪いのままでも、よ、い、の、だ」
***
そ、の言葉は——もはや『過保護の怪物の独占欲』では、な、か、っ、た。
『並び立つ伴侶を、等しく一人の人間として、愛してしまったがゆえの——あまりにも、深い恐怖』、の本音、だ、っ、た。
***
セレスティアの胸が——温かい、もので、揺れた。
け、れ、ど——彼女は静かに、首を、横に、振った。
***
「——陛下」
「——あ、な、たが、呪いのままでよ、い、とお、お、思いになる、お気持ちは——わ、たくしには——耐えがたい、の、です」
「あ、な、たの呪いを——わ、たくしのお、手で、お引き剥がし致したい、の、です」
***
「——あ、な、たの横に、並び続けるた、め、に——わ、たくしの意志で——呪いを、引き剥がします、わ」
「そ、の気持ちは——わ、たくしの意志、でござります、わ」
***
ヴォルフラムは——長く、沈黙、した。
***
彼の中で——『お、前を失う恐怖』と——『お、前の意志を尊重する決意』、の二つが——静かに、綱引きを、して、いた。
け、れ、ど——今度は、『過保護の怪物』の綱引きでは、な、か、っ、た。
『お、並びの愛』の綱引き、だ、っ、た。
***
そして——彼は、低く、応じた。
「——わかった、セレスティア」
「お、前の意志を——尊重、致す」
***
「——け、れ、ど、一つ、お願いが、ある」
***
セレスティア:「——何でしょう、陛下?」
***
ヴォルフラム、低く——静かに、彼女の青の宝玉と青の腕輪に、指を、添える。
「血の月の夜——お、前の魂が——わ、たくしの魂と、完全に繋がるよ、うに——お、前を、抱きしめながら——儀式に臨ませて、頂きたい、の、だ」
***
「この宝玉と腕輪——わ、たくしの魂の宝玉と、完全に同調する『一対の魔導具』、だ」
「お、前が呪いを引き剥がす時——宝玉が、わ、たくしの魂と同調、して——お、前の魂を、繋ぎ止める、の、だ」
***
「もし、お、前が消えそうになるな、ら——わ、たくしの魂が、お、前を、繋ぎ止める、よ、うに」
「お、前の魂を——わ、たくしの魂で、抱きしめる、よ、うに」
***
それは——単なる魔術設定では、な、か、っ、た。
『命の契約』、だ、っ、た。
***
第17話で——『千年誰の首にもかけられなかった皇妃の宝玉』として彼女の首にかけられた、青の宝玉。
第25話で——『誰の者か』、の印として彼女の手首に嵌められた、青の腕輪。
今——そ、の二つの青の宝石が——『血の月の夜に彼の魂と同調する命綱』として——完璧な形で、意味、を完成、させた、の、だ、っ、た。
***
『魂の婚約儀式』、だ、っ、た。
***
セレスティアの胸が——温かい、もので、完全に、満たされた。
涙が、滲んだ。
「——陛下」
「——お願い、致します、わ」
「わ、たくしの魂を——あ、な、たの魂で、抱きしめて、くださりませ」
「『お、並びの愛』の——完璧な形、でござります、わ」
***
ヴォルフラムは——彼女を、静かに、抱きしめた。
***
『二人の魂』の擦り合わせの本格的な完成の瞬間、だ、っ、た。
***
『等しく一人の人間として愛してしまった二つの魂』、が——今、血の月の夜に向かって、繋がる約束を、交わした、の、だ、っ、た。
***
翌日——血の月まであ、と、六日。
セレスティアの流転型魔力の稽古=『完全な循環』の状態、に到達。
ヴォルフラムの右手の指の疼きが徐々に強くなる——け、れ、ど、セレスティアと繋いだ手の温かさで、和らぐ。
***
次の日——血の月まであ、と、五日。
残党の貴族家=シュタイン家、ヴェルナー家、コルク家、マイア家、ハイデン家——公的な証拠が揃った時点で、帝国軍が、順次包囲、逮捕。
侯爵と同じ公的な裁判の手筈=歴史の罪人として、永遠に断罪。
***
残党の抵抗は——『大きな波』を起こす間も無く、完全に、風化、した、の、だ、っ、た。
***
同じ日、魔導士団の稽古=『最終段階』。
ジーク:「——セレスティア様。あなたの魔力の循環は完璧、よ。完全解呪儀式の準備は完了、したわ」
セレスティア、穏やかに:「——有難く、存じます、ジーク様」
「——あ、とは——血の月の夜、を待つ、だ、け、でござります、わ」
***
夕方——皇帝の私室の窓辺。
月は——更に、更に大きく、なって、い、る。
***
そ、して——セレスティアは気づいた。
***
月の表面に——わずかに、赤い気配が、滲み始めて、いる、の、に。
***
『血の月』の赤さが——徐々に、月の肌に、染み込んで、いる、の、だ、っ、た。
***
秋の夜空に——静かに、静かに——赤い気配の滲んだ月、が、浮かんで、いる、姿、は——不気味で、そ、して、美しかった。
***
社会的戦場のノイズが——完全に、消え去った、今——
純粋な『天災(=呪い)』、としてのカウントダウンの秒針が——月の表面の赤い気配の形で——読者の心臓を、直接、叩く、よ、うに、刻まれて、い、る、の、だ、っ、た。
***
血の月まで——あ、と、五日。
***
ヴォルフラムは——セレスティアの手を、握ったまま——月を見上げる。
「——セレスティア、準備は完了、か?」
***
セレスティア、穏やかに:「——は、い、陛下」
「『場』の準備も——わ、たくしの魔力の循環も——二人の魂の擦り合わせも——す、べ、て、完璧、でござります、わ」
***
「——あ、と、は——血の月の夜、を、待つ、だ、け、でござります、わ」
***
ヴォルフラムは——彼女の額に、そっと、自分の額を、寄せた。
「——お、前の意志を、尊重、致す」
「——お、前の魂を——わ、たくしの魂で、抱きしめる」
「——何が、あろうとも——わ、たくしは——お、前の横で、並んで、いる」
***
セレスティア、穏やかに:「——お願い、致します、陛下」
「わ、たくしも——あ、な、たの呪いを——わ、たくしのお、手で、お引き剥がし——あ、な、たを『お、並びの愛』の完全な状態に——お戻し、致します、わ」
***
月光の金色と——月の表面の赤い気配——二つの光が——二人の肩を、穏やかに、染めて、い、た。
***
『社会的戦場』は——完全に、風化、した。
『解呪儀式の準備』は——完璧に、完了、した。
『二人の魂の擦り合わせ』は——本格的に、完成、した。
***
あ、とは——血の月の夜、を、待つ、だ、け、だ、っ、た。
***
『最大の戦場』、は——完全解呪の儀式=あ、と五日に、迫って、い、る。
***
『恐怖の記憶』を『愛の聖域』に変えた『呪詛の間』で——
『護られる椅子』の位置に——『解呪の主体』として、立つセレスティアが——
『お、前の魂を抱きしめる』と誓ったヴォルフラムと——共に、呪いを引き剥がす、の、だ、っ、た。
***
『偶然の救い』か、ら『必然の愛』への完璧な円環の完成の前夜が、静かに、静かに、近づいて、いた。
***
赤い気配の月、が——秋の夜空に——不気味で、美しい姿で、静かに、浮かんで、いた。
***
『最終決戦』、の前夜の静謐が——帝城全体に、染み込んで、いた、の、だ、っ、た。




