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『獣の皇帝陛下に溺愛されています ~無能と捨てられた元王女ですが、隣国で最強でした~』  作者: てん
第4章「溺愛の日々、と、忍び寄る、陰謀」

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# 第29話 ファルネーゼの毒

# 第29話 ファルネーゼの毒


 朝——帝城の門前。


 ヴォルフラムは——公務の出立の準備を、整えて、い、た。


 月の半ばの帝国西部、国境の視察。

 往復で半日以上、帝都を空ける。


***


 セレスティアは——門前まで、彼を、見送りに、出ていた。


 秋の朝の金色の光が、二人の肩を、染めて、いる。


***


 ヴォルフラムは——彼女の手を、握って、低く、告げた。


「——セレスティア——夕方には、戻る」


「公務の間も——青の宝玉、を、お、身に着けて、い、て、くれ」


「わ、たくしの宝玉と——同調、して、いる、か、ら——何か、あれば——す、ぐ、に——わ、たくしに、伝わる、の、だ」


***


 セレスティアは——穏やかに、頷いた。


 首から下げた青の宝玉——手首の青の腕輪——二つ、の宝石が、穏やかに、脈動、して、いる。


「——お、気を、つけて、お、過ごし、くださりませ、陛下」


***


 ヴォルフラムの馬車が——門を出ていく。


 秋風が、落ち葉を、わずかに、揺らす。


 セレスティアの胸に——微かな不安が、宿った。


 (——あ、の、方が、お、帝都をお離れに、なるの、は——久しぶり、でござります、わ……)


***


 け、れ、ど——彼女は穏やかに、手を、振って——彼を、見送った。


***


 昼前——帝城の公的応接室。


 セレスティアの本日の公務は——帝国貴族の代表たちとの公的接見+慈善活動の計画書の意見聴取、だった。


***


 帝国の公爵、侯爵、伯爵——十二名が、揃って、入室、する。


 貴族たちの目に——もはや、『戸惑い』はな、か、っ、た。

 『畏敬』、と、『信頼』、の混じった静かな敬意、だ、っ、た。


 ヴェルデンベルク侯爵の公的接見で——ヴォルフラムが公然とセレスティアの手を握った事実は——帝国貴族全体に『皇妃の公的承認』を完全に確立、して、い、た、の、だ、っ、た。


***


 接見は——穏やかに、進んだ。


 セレスティアは——慈善活動の計画について——貴族たちの意見を——静かに、聞き、頷き、応じた。


 彼女の穏やかな品格に——貴族たちは、完全に、敬服、していた。


***


 接見の最後に——茶の時間、が、設けられた。


***


 そ、の、時、だ、っ、た。


***


 侍女が——セレスティアの前に、温かい紅茶を、注いだ。


 その侍女の手、が——微かに、震えて、いた。


 セレスティアの敏感な目だけ、が——そ、の、微かな震えに、気づいた。


***


 (——あの侍女の、お、手——何か、お、あ、り、か?)


***


 同じ刻——セレスティアの首の青の宝玉、が——わずかに、警告の脈動を、発した。


***


 『心臓の鼓動と同期する』穏やかな脈動とは、違って、いた。


 冷たい——刺すような——警告の脈動、だ、っ、た。


***


 セレスティアの背筋が——静かに、凍った。


 (——宝玉が、警告、の、脈動を——?)


 (——『毒』、でござります、わ……)


***


 彼女は——わずかに、目を、侍女に、戻した。


***


 侍女の顔色——蒼ざめて、いる。

 目の奥に——『後悔』、と、『恐怖』、と、『お、許し、くださりませ』、の涙が、滲んで、いる。


***


 セレスティアは——静かに、察知、した。


 『あ、の、侍女、は——やむを得ない理由で——毒を、混入させた、被害者、でいらっしゃる』


***


 セレスティアは、穏やかに、貴族たちに、告げた。


「——皆様。本日の接見、誠に、有難く、存じました」


「わ、たくし、わずかに、お、疲れが、出て、参りました——少し、お、休息を、頂きとう、存じます」


***


 帝国貴族たちは——穏やかに、頭を、垂れて——退出、し、た。


***


 残ったのは——セレスティア、レナーテ、そして侍女。


***


 セレスティアは、静かに、侍女に、歩み寄った。


***


「——お、嬢様、お、名前は?」


 侍女、涙で崩れ落ちる:「——エミリア——エミリア、でござります、皇妃殿下……」


***


 セレスティア、穏やかに:「エミリア様——お、お、お、話を、お、聞かせて、くださりませ」


***


 エミリアは——床に、崩れ落ちて——涙ながらに、告白、した。


「——わ、たくし、の、家族——父と、母と、妹——が、ヴェルデンベルク侯爵家、の領内、で——人質に、取られて、お、り、ます」


「侯爵の執事から——『皇妃殿下の茶器に、こ、の、毒を、混入せよ。さもなくば、お、前の家族の命は、な、い』、と——脅迫を、受けた、の、です」


「お、許し、くださりませ、皇妃殿下! わ、たくしは——皇妃殿下を、お、傷つけしたく、な、か、っ、た、の、です」


***


 セレスティアは——穏やかに、エミリアの肩を、抱いた。


「——エミリア様。お、顔を、お、上げ、くださりませ」


「お、家族をお護りに、なる、た、め、の、お、苦しい、お、決断、でいらっしゃった、の、です、ね」


「わ、たくしは——あ、な、た様を、憎むこと、など——致しません、わ」


「あ、な、た様も——侯爵家の被害者、でいらっしゃる、の、です、もの」


***


 け、れ、ど——セレスティアは気づいた。


 (——あ、の、侍女のお手に毒が付着、して、いる——彼女自身も、微量の致死毒に、侵されて、いらっしゃる——)


***


 セレスティアは、静かに、エミリアの両手を、握った。


「エミリア様。お、手を——お、貸し、くださりませ」


***


 彼女の指から——淡い乳白色の光、が——静かに、滲み始めた。


***


 流転型魔力の初の本格的な応用、だ、っ、た。


 これまで——稽古で『標的に魔力を流す』、の段階、だ、っ、た。

 本日——『他者の身体に侵入した毒を、無毒化する』、応用の発露、だ、っ、た。


***


 淡い乳白色の光が——エミリアの手に染み込んで、徐々に、彼女の身体の内側に——流れて、いく。


 『循環』、の魔力。


 侍女の身体の内側で——毒の分子、を『循環』させて——魔力の流れで、徐々に、分解、無毒化、して、いく。


***


 セレスティアの十二年の地獄の痛みが——今——他者を救うための『癒やしと循環の力』、に、反転、して、いた、の、だ、っ、た。


***


 エミリアの頬から——微かな脂汗が、引いて、いく。

 手の震えが——止まる。


「——皇妃殿下……?」


***


 セレスティア、穏やかに:「——エミリア様、お、気分が、お、楽に、な、られ、ま、し、た、か?」


 エミリア、涙で:「——お、身体が、お、軽く——身体の奥のお、お、お、苦しさが——お、消えました……」


***


 セレスティア:「——よ、か、っ、た」


「お、お、身体に、染み込んでいた、微量の、お、毒、を——わ、たくしの、お、魔力で、お、消し、致しました」


***


 エミリアは——セレスティアの細い手を、握って、嗚咽、した。


「——皇妃殿下! 皇妃殿下! わ、たくしのお、お、お、命まで——お、お、お、お、救い、くださりました——生涯の忠誠を、お誓い、致します……ッ」


***


 同じ刻——


 帝国西部、国境視察、の、現場。


 ヴォルフラムは——地方領主との公的会談、の途中、だ、っ、た。


***


 そ、の、時——彼の懐の——皇妃の宝玉と、揃いの皇帝の宝玉、が——冷たい警告の脈動を、発した。


***


 セレスティアの危機が——彼の魂、に、直接、伝わって、きた。


***


 ヴォルフラムは——席を、蹴立てて、立ち上がった。


「——セレスティアに——危機、が、及んで、い、る」


***


 地方領主、戸惑い:「——陛下?」


 ヴォルフラム、低く、凍るような声で:「——公務は、これ、に、て、中断、致す」


「——わ、たくしは——帝都に、戻る」


***


 彼の夜空の瞳は——凍り、ついて、い、た。


***


 千年の呪いで——かろうじて、人間の理性を、保って、いた超越者、が——今——そ、の、檻、を、壊そう、としていた。


***


 『——お、前を傷つけた者、を——圧殺する』、の声が——彼の頭の中で——繰り返し、繰り返し、繰り返し——響いて、いた。


***


 彼は——護衛も、追いつけぬ速度で——馬で、帝都へ、疾駆、した。


 蹄の音、だけが——秋の国境道に、響き、渡る。


***


 護衛たちは——彼の背中を、遠目に、見つめて——愕然、と、していた。


***


 『——あ、れ、は——皇帝陛下、では、な、い』


 『——本物の——怪物、だ……』


***


 千年の呪いと孤独で、抑え込んで、いた——『狂気』、の——完全な発露、の始まり、だ、っ、た。


***


 夕方——帝城に、到着した、ヴォルフラムは——馬から、降りる、間も、惜しんで——帝城の私室へ、疾駆、した。


***


 彼の気配が、帝城に入った、瞬間——帝城全体の空気が——物理的に、凍り、つい、た。


 侍女たち、警備たち、文官たち——全員、が——身動き、を止めた、まま——彼の疾駆を、見送った。


***


 『——皇帝陛下、の、お、体、か、ら——今、凄まじいプレッシャーが、発せられて、いる』


 『——帝城の空気、が、凍る』


 『——あ、れ、は——何か——大きな不幸が、起きた、の、か——』


***


 ヴォルフラムは——皇帝の私室の扉を——蹴破る勢いで、開けた。


「——セレスティア!! ——無事、か!」


***


 私室の中——セレスティアは、穏やかに——エミリアと、レナーテと、静かに、お茶を、嗜んで、い、た。


***


 彼女は——穏やかに、顔を、上げて、応じた。


「——お、お、無事、でござります、陛下」


「お、早く、お帰りに、なられて、お、り、ま、し、た、わ」


***


 け、れ、ど——セレスティアは——気づいた。


 彼の夜空の瞳、の、奥に宿った『深淵』、に。


 『狂気』、の——完全な、発露、の目、に。


***


 彼女の背筋が——静かに、凍った。


 (——あ、の、方は——今、『本物の怪物』、に、な、り、か、け、て、い、ら、っ、し、ゃ、る——)


***


 ヴォルフラムは——彼女の手を、強く、握った。


 彼の手が——微かに、震えて、いた。


 『——生きて、いた——生きて、いた、な——セレスティア——』の涙が、宿る寸前、だ、っ、た。


***


 け、れ、ど——彼の瞳は——エミリアに、移った、瞬間——凍り、ついた。


***


「——そ、の、侍女、は——誰、だ?」


***


 彼の声、は——低く、凍るような——もの、だ、っ、た。


 帝城の空気が——更に、物理的に、凍る。


 エミリアの身体が——本能で、震え、始める。


***


 セレスティア、穏やかに:「——エミリア様、でいらっしゃいます」


「本日、わ、たくしのお命を——お、お、救い、くださったお、方、でござります」


「侯爵家の脅迫を受けて、やむを得ず、毒を、混入されたお、方、でも、あらせられます、わ」


「け、れ、ど——わ、たくしは——毒を、呑む、前に、気づき——エミリア様の、お、身体に侵入した微量の毒、も——わ、たくしの、魔力で——無毒化、致し、まし、た」


***


 ヴォルフラムは——エミリアを、睨んだ、まま——長く、沈黙、した。


***


 彼の瞳に宿った『狂気』、の前で——エミリアは完全に凍り、つい、て、いた。


***


 け、れ、ど——ヴォルフラムは、何も、言わずに——背を、向けた。


***


「クロウ!!」


***


 帝城の廊下、を、疾駆して、きて、い、た、クロウが——私室の前で、頭を、垂れた。


「——陛下」


***


 ヴォルフラム、凍るような声で:「——帝国軍を、動員、致せ」


「ヴェルデンベルク侯爵家の私邸を——今夜、包囲、致す」


「フロリアン侯爵を——わ、たくし、自身が——圧殺、致す」


***


 『法的な裁き』、では、な、か、っ、た。


 『個人的な復讐』、の宣言、だ、っ、た。


 千年の呪いで、抑え込んで、いた——皇帝の『狂気』、の——完全な発露、の宣言、だ、っ、た。


***


 帝城全体が——凍り、つい、た。


***


 彼の『圧殺、致す』、の三文字、に宿ったプレッシャーは——物理的に、帝城の大理石の柱を、わずかに、震わせるほど、だ、っ、た。


***


 『——あ、の男は——セレスティアのた、め、な、ら——本当に、帝国を——世界を——滅ぼし、か、ね、な、い』


 そ、の事実が——帝城の全員の魂に、染み込んで、いた。


***


 そ、の、時——


***


 セレスティアが——静かに、歩み出て——ヴォルフラムの手を、強く、握った。


***


「——陛下」


「——お、止め、くださりませ」


***


 ヴォルフラムが、振り返る。


 彼の夜空の瞳の奥の『深淵』、が——セレスティアを、見つめる。


「——セレスティア——な、ぜ、だ?」


「——あ、の、侯爵が——お、前を、殺そうと、したのだ、ぞ」


***


 セレスティアの手の中で——ヴォルフラムの手が、微かに、震えて、いた。


***


 セレスティアは——彼の手を——より、強く、握り返した。


***


 『圧倒的な聖母であり——対等な戦友、としての、手触り』、だ、っ、た。


***


「——存じて、お、り、ます、陛下」


「け、れ、ど——陛下——あ、の、毒、の出自を——お、お、知り、でいらっしゃい、ますか?」


***


 ヴォルフラム:「?」


***


 セレスティアは、低く、告げた。


「あ、の、毒、は——百年前、ファルネーゼ王国、から、帝国に、献上された——致死毒、でござります」


***


 ヴォルフラムの夜空の瞳が——大きく、揺れた。


「——百年前、ファルネーゼから献上された毒——?」


***


「——侯爵は——『皇妃殿下の生家、から、流れてきた毒、で、皇妃殿下を、殺める』=『帝国を脅かす外国の血を、そ、の故郷の毒、で、洗い流す』、の——歪んだ美学、で、お、動きに、なられました」


***


 ヴォルフラムは——凍る。


 彼の『狂気』、が——わずかに、揺らぐ。


***


 セレスティア、穏やかに、続ける:「——陛下」


「——侯爵を、お、圧殺、なされば——彼は——『純血の皇妃』、の、殉教者、に、な、り、ま、す、わ」


「——貴族たちの間で——『帝国の歴史を守った、英雄』、として、語られる、可能性が、ござります」


***


「——わ、たくしを、お、護り、くださる、の、な、ら——」


「——侯爵を、『公的な、法、の、前に』、引きずり出して——『暗殺未遂罪』+『致死毒の、不正所持・使用罪』+『百年前、ファルネーゼと、帝国の、歪な歴史』の——公的な裁き、になさるべき、でござります」


***


「——『個人的な復讐』、では、な、く——『公的な法』、で——侯爵を、永遠に、歴史の罪人、と、致しましょう」


***


 セレスティアの声には——『皇妃』、としての、凛とした風格、が、宿って、い、た。


 『優しさ』、と、『聡明さ』、の、完璧な同居、だ、っ、た。


***


 ヴォルフラムの夜空の瞳の『深淵』、が——徐々に、引き始める。


***


 け、れ、ど——セレスティアは——更に、続けた。


***


「——そ、して——陛下」


「わ、たくしの出自、を——お、気に、なされ、な、い、で、くださりませ」


***


「ファルネーゼ王国から、百年前、献上された毒、で——わ、たくしが、殺されかけた事実、は——」


「『ファルネーゼ』、の、名を、お、護りに、なる、必要が、な、い、こと、の証、でござります」


***


「わ、たくしは——『ファルネーゼの姫』、では、ござりません、わ」


「『ヴァルガルドの皇妃』、でござります」


***


 帝城全体が——静まり返った。


***


「——わ、たくしの出自は——わ、たくしを定義致しません」


「——わ、たくしの今、の、意志、が——わ、たくしを定義、致します」


***


 セレスティアの声、が——帝城の大広間に、残響を、残した。


***


 本作前半戦の——最高の名台詞、の誕生、だ、っ、た。


***


 百年前のファルネーゼの毒、=縛られる、べき過去——生家の呪い——偽聖女の烙印——そ、のす、べ、て、に、対して——セレスティアは——『そんなものは知ったことではござりません』、と——完全に、決別、した、の、だ、っ、た。


 そして——自らを——『ヴァルガルドの皇妃』、と——公的に、定義した、の、だ、っ、た。


***


 ヴォルフラムは——長く、長く——セレスティアを、見つめた。


***


 彼の『狂気』の目から——徐々に、『深淵』が、引いて、いく。


 代わりに——宿ったのは——『畏敬』と、『深い愛』、だ、っ、た。


***


 『怪物』、か、ら——『人間』、に——戻、り、始める瞬間、だ、っ、た。


***


 そ、して——セレスティアの愛が——彼の狂気を、救ったの、だ、っ、た。


***


 ヴォルフラムは——長く、沈黙——そして——彼女の手を、更に強く、握り返した。


***


「——わかった、セレスティア」


「——『個人的な復讐』、では、な、く——『公的な法』、で——侯爵を、裁く、の、だ、な」


「——お、前と——『並んで』、裁く、の、だ、な」


***


 セレスティア、穏やかに:「——はい、陛下」


***


 ヴォルフラムは——クロウに、向き直る。


***


「クロウ——命令の変更、だ」


「帝国軍を、動員、致せ。ただし——『公的な包囲』+『フロリアン侯爵の、公的な逮捕』、だ」


「『暗殺未遂罪』+『致死毒の不正所持・使用罪』、で——裁判に、か、け、る」


***


「ヴェルデンベルク侯爵家の令嬢、イザベラ・ヴェルデンベルク様、は——事件への関与、無し、と判明、済み」


「直ちに——皇妃殿下の保護下に、お預け、致す」


***


 セレスティアの『鏡の令嬢』との連帯の決意が——今、即座に、執行された、の、だ、っ、た。


***


 クロウ:「——わかり、ました、陛下」


 そして——頭を、垂れて——疾駆、して、い、っ、た。


***


 その夜——


 ヴェルデンベルク侯爵家の私邸は——帝国軍に包囲、された。


 フロリアン侯爵は——抵抗の間も無く——逮捕、され、た。


 イザベラ嬢は——帝国軍の護送で——帝城に連れて来られた。


***


 彼女は——父=侯爵の逮捕の衝撃で——蒼ざめた顔で——帝城の門前に立って、いた。


***


 セレスティアは、帝城の門前で——彼女を、出迎えた。


***


「——イザベラ」


***


 セレスティアは——彼女を、そっと、抱きしめた。


***


「——お、父様の、お、逮捕、の、衝撃を——お、察し、致し、ます、わ」


「け、れ、ど——あ、な、た、は——事件への関与、な、し、と、判明、致し、まし、た」


「わ、たくしの、保護下に——お入り、くださりませ」


「『鏡の令嬢』、として——わ、たくしのお友、として——常に、お、傍に——お、り、ます、わ」


***


 イザベラは——セレスティアの腕の中で——声を殺して、嗚咽、した。


「——セレスティア様——セレスティア様……ッ!」


「お、父様の愚かな決意を——本当に、おわびに、参り、ます……ッ!」


***


 セレスティア、穏やかに:「——あ、な、た、の、お、罪では、ござりません、わ」


***


 『鏡の令嬢』との連帯が——侯爵家の崩壊の渦中で——本格的に、機能、し始めたの、だ、っ、た。


***


 夜——皇帝の私室、の、窓辺。


***


 セレスティアと、ヴォルフラムは——二人だけ、の、静かな時間を過ごしていた。


***


 月は——更に大きく、なって、いる。

 血の月まで——あ、と、九日。


***


 ヴォルフラム、低く:「——セレスティア」


「——わ、たくしは——今日——『過保護の怪物』、の、完全な、発露を——お、前に、お、見せ、致した」


「——お、怖かったで、ござりましょう」


***


 セレスティア、穏やかに:「——陛下」


「——お、怖く、は、ござりませんでした、わ」


「あ、な、たのお、お、気持ちの根源は——『わ、たくしを失う恐怖』、でいらっしゃいました——わ、たくしは、存じて、お、り、ます」


「——け、れ、ど——『お、怪物の愛』、か、ら——『お、並びの愛』、に——お、戻り、くださりました——有難く、存じます、わ」


***


 ヴォルフラムは——彼女を、強く、抱きしめた。


***


「——セレスティア——お、前は——わ、たくしを『怪物』、か、ら、『人間』、に——戻して、くださる、お、方、だ」


***


 二人の『愛の形の擦り合わせ』が——本格的に、完成に、向かう瞬間、だ、っ、た。


***


 血の月まで——あ、と、九日。


 解呪儀式の準備は——本格化の最終段階に入る。


 侯爵家の処分は——公的な法、で、執行、される。


***


 『暗殺未遂事件』の嵐は——過ぎ去った。


 け、れ、ど——『最大の戦場』、は——完全解呪の儀式=残り九日に迫って、いた、の、だ、っ、た。


***


 月光が——皇帝の私室の窓に、射し込む。


 二人は——窓辺で——穏やかに、月を、見上げて、いた。


***


 『怪物』を、『人間』に戻した皇妃と、『出自』を超越した聖女、の——静かな夜、だ、っ、た。

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