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『獣の皇帝陛下に溺愛されています ~無能と捨てられた元王女ですが、隣国で最強でした~』  作者: てん
第3章「諸国の眼差し、と、本物の聖女」

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# 第23話 偽聖女の、崩落

# 第23話 偽聖女の、崩落


 『——諸国会議——本日、開会、致す』——


 玉座から、発せられた、脱け殻の国王の、声、が——大広間の、高い天井に、乾いた、残響を、残した。


 諸国の王侯たちが——静かに、頷く。


 けれど——議長の声には、本来、宿る、べき、王権の重みが——どこにも、な、か、っ、た。


 空気の、主導権、は——すでに、帝国側に——完全に、移って、い、た。


***


 セレスティアと、ヴォルフラムは——並んで、皇帝席に、着いて、いる。


 月光の白銀のドレス、首から下げた、青の宝玉——宝玉の中心の、銀の光が、彼女の心臓の鼓動と、同期して、静かに、脈動、していた。


 漆黒の正装のヴォルフラムは——皇帝としての、完全な、威厳を、纏って、い、た。


 二人は——時々——互いに、目線を、交わす、だけ、で——余計な言葉は、発しなかった。


***


 聖女席の、アンジェリカは——偽聖女衣装で、微笑みを、貼り付けたまま、だった。


 頬の、蒼白。

 目の下の、くまの濃さ。


 耳の奥で——母の声が、大音量で、響き続けて、い、る。


***


 最初の議題は——『大陸の、魔獣群侵攻への、共同対処』。


 諸国の使節たちが、順に——各国の被害状況を、報告して、い、く。


 報告は、長く、細やかだった。


***


 その、途中——


 エルディオ王国、第二王太子、レオンハルト・エルディオが——静かに、席から、立ち上がった。


「議長——発言の、許可を、頂きたく、存じます」


 脱け殻の国王が、わずかに、頷く。


***


 レオンハルトの灰青色の瞳が——大広間全体を、静かに、見渡す。


 彼の声には——エルディオ王国、第二王太子としての、公的な、重みが、宿って、いた。


「魔獣群侵攻への対処の前に——私、レオンハルト・エルディオは——諸国会議の場で——一つの、証言を——公的に、為したく、存じます」


***


「我が国、エルディオ王国は——帝国の、皇妃候補殿下、セレスティア・ファルネーゼ姫様、に——多大なる、恩義が、ござります」


「先月——我が国の使節として、帝国を、訪問した、私の、護衛、ヴェルナーが——帝城の歓迎晩餐の場で——持病の、心臓発作で、倒れ、ました」


「皇妃候補殿下の、お、手によって——ヴェルナーは——完全に、回復、致しました」


「私、レオンハルト・エルディオは——自分の目で——本物の、聖女の力を——目撃、致しました」


「ここに——公的に、証言、致します」


***


 大広間が——静まり返った。


 諸国の使節たちが、頷く。


 エルディオ王国——王位継承順、第二位、の、王太子、に、よる、公的な、証言。

 諸国にとって——これは——もはや、個人の感想、では、な、か、っ、た。


***


 続いて——ヴェネシア聖印国、大司祭、ヴェレナ・ディ・ヴェネシアが——静かに、席から、立ち上がった。


 白い修道服、首の銀の十字架、六十代の、皺の刻まれた、顔。


「ヴェネシア聖印国——大司祭、ヴェレナ・ディ・ヴェネシア、の、名に、かけて——証言、致します」


***


「皇妃候補殿下、セレスティア・ファルネーゼ姫様——を——『大聖女、ヴェネシアを、超える、聖女』、として——公的に、認定、致します」


「祈祷石の、『万共鳴』——大聖女ヴェネシア以外には、誰も、なし得なかった、歴史上の現象——皇妃候補殿下、に、よって——帝城の礼拝堂で、目撃、致しました」


「副司祭、ヨハネス——並びに、わたくし、二人——証言、致します」


「ヴェネシア聖印国——皇妃候補殿下を——歴史的、聖女、として——公的に、認定、致します」


***


 大広間の、空気が——完全に、セレスティアの方へ、傾いた。


 諸国の使節たち——頷く、者。

 低く、手を、胸に当てる、者。

 公的な、崇敬の姿勢、を、示す、者。


 『二大権威』——世俗の、知性+信仰の、権威——大陸の、二大基盤、が——セレスティアの公的承認を、諸国会議の場で——高らかに、宣言した、の、だ、っ、た。


***


 ファルネーゼの貴族たち——顔を、青ざめさせて、いた。


 国王は——脱け殻のまま——わずかに、玉座の肘掛けの、爪を、食い込ませた、だ、け、だった。


 致命的な、後悔の、震えが——今日も、彼の身体の中で、微かに、続いて、いた。


***


 その時——


 聖女席の、アンジェリカ、が——限界を、超えた。


 彼女は——偽聖女衣装の裾を、引きずって——聖女席から、よろよろと、立ち上がった。


***


「——お、お待ち——くださりませ、諸国の、皆様!」


 彼女の声は、わずかに、裏返って、いた。


「皆様——お、聞きに、なって、い、る、の、です、か?」


「——お、姉様は——長年の、不遇の、ショックで——現実と、妄想の、区別が、つかなく、なって、いらっしゃる、の、です」


「皆様、皆様——帝国の、魔術的な、洗脳——あるいは——莫大な、金銭による、買収——お、騙され、でいらっしゃる、の、です!」


***


 彼女が、声を、張り上げる、たびに——大広間の、空気は——静かに、凍りつ、い、て、い、っ、た。


 諸国の使節たちは——彼女の声を、聞きながら——低く、頭を、横に、振った、だ、け、だった。


***


 彼女が、セレスティアに、押し付けようと、していた——『精神に、お病を、抱えた者』、『現実と、妄想の、区別が、つかない、哀れな者』、の、属性、が——


 今、彼女自身の、言動によって——完全に、反転、して——彼女自身に、突き刺さって、い、た、の、だ、っ、た。


***


 レオンハルト王太子が——静かに、彼女に、応じた。


 声は、低く、け、れ、ど——大広間の隅々まで、凍るような、明晰さで——届く、声、だった。


「アンジェリカ姫」


「皇妃候補殿下を、『現実と、妄想の、区別が、つかない、哀れな姉』、と、表現された、の、は——お、間違いでは、ござりませんか?」


「先ほど——私は、自分の目で——本物の、聖女の、お力を、目撃した、と——公的に、証言、致しました」


「あなた様の言葉と——私の言葉——諸国の、どちらを、信用、致しますか?」


***


 アンジェリカは——追い詰められて——声を、更に、荒げた。


「——王太子は——帝国に、籠絡されて、いらっしゃる、の、です!」


 ヴェレナ大司祭が、わずかに、顎を、引いた。


「ヴェネシア聖印国も——籠絡、されて、い、る、と、お、っ、しゃる、の、か?」


***


 アンジェリカ:「——そう、です! 皆様、皆様——騙されて、いらっしゃる! 信じて、くださりませ! わたくしの、お、声を、信じて、くださりませ!」


***


 諸国の使節たちの、目が——静かに、交わった。


 『この方は——精神的に、不安定だ』。


 彼女が、セレスティアに、押し付けようとした、烙印が——今、彼女自身、の、頭の上に、降り注いで、い、る。


***


 アンジェリカは——セレスティアに、負けた、の、では、なかった。


 自分が、他者を、貶めるために、使って、いた——呪いの、言葉に——自分自身が、食い殺されて、いる、の、だった。


 自縄、自縛、の、自壊。


 因果、応報、の、形。


***


 耳の奥で——母の声が——今、最大の音量で、響き続けて、いる。


 『——なぜ——なぜ、あの娘は——あの娘は——』


 『——お、前は——わ、たく、し、の、娘、失格、だ、わ——』


 アンジェリカが——自分の頭を、押さえた。


 聖女衣装の、金糸の、刺繍に——爪を、食い込ませて、い、る。


***


 その時——


 王宮の、大広間の、入口の、柱の陰、から——よろよろと、歩み出てきた、者、が、い、た。


***


 白髪の、品の良い、老人——マルテン。


 彼の頬は、涙で、濡れて、いた。


 誇り高い、王宮の使者として、生涯、生きてきた、男、の——プライドが——内側から、完全に、崩れ落ちた、姿、だった。


***


 諸国の使節たちが——彼に、気づく。


 レオンハルト王太子:「——あの者は——」


「——ファルネーゼ王宮の、使者——マルテン殿、だ」


「——事前訪問の場で——私に、耳打ちを、していた——その人物、だ」


***


 大広間の、諸国の使節たちの、目が——マルテンに、集まる。


 マルテンは——大広間の、中央まで、歩み出て——諸国の前に、深く、頭を、垂れた。


 皺の刻まれた、手が、震えて、いる。


***


「諸国の、皆様——お、許し、くださりませ」


「わたくしは——ファルネーゼ王宮の、使者として——諸国の、皆様、お一人、お一人に、向かって——偽りの、耳打ちを、してきた、者、に、ござります」


***


 大広間が、完全に、静まり返った。


 アンジェリカが、青ざめる。


「——マルテン?」


「——何を、言って、いる、の?」


***


 マルテンは——歯を、食いしばって——頭を、垂れたまま、続けた。


「アンジェリカ姫様の——お、計画——」


「『姉君を——哀れな姉として、貶めて——偽聖女として、諸国に、お、お、披露目する』——そ、の、計画、の——諸国全土への、耳打ちは——わたくしが、担当して、参りました」


「五カ国、十一カ国、の、王侯——わたくしが、事前に、お回りして——偽りを、お、伝えして、参りました」


***


「わたくしは、それを——『可哀想な、お姉様を、救う、健気な、妹君の、計画』、と——信じて、お、り、ま、し、た」


「ベアトリス王妃様の、生前の、お、言葉——『セレスティア王女は、精神に、お病を、抱えて、いる』——そ、の、お、言葉、を——何の、疑いも、なく、信じて、お、り、ま、し、た」


***


 大広間の、空気が——更に、凍りついた。


 『ベアトリス王妃』、の、名前が——公的に、出された、瞬間、だった。


 これは、もはや——アンジェリカ一人の、策略、では、な、か、っ、た。


 ファルネーゼ王宮、の——組織的な、本物の聖女に対する、排斥工作、だった、の、だ、っ、た。


 公的な、大罪、だ、っ、た。


***


 マルテンは——頭を、垂れたまま——涙を、流し続けた。


「け、れ、ど——今、目の前の、皇妃候補殿下、を、拝見、致しました」


「——『本物』、でいらっしゃいます」


「——わ、たく、しは——偽りを、諸国に、お、伝えして、きた、の、です」


***


 アンジェリカ、金切り声で:「——マルテン! 黙りなさい! あなた、何を、言って、いる、の! 黙りなさい!」


 け、れ、ど——マルテンは、頭を、上げなかった。


***


 マルテンは——涙を、流しながら——穏やかに、セレスティアの方を、向いた。


「——皇妃候補殿下」


「わたくしは——あなた様の、お、姉君としての、お、幼少期、を——知って、お、り、ま、す」


「五歳の、時——王宮の庭で——怪我を、した、侍女に、お、声を、おかけになっていた、お、姿——わたくしは、今でも——覚えて、お、ります」


「穏やかで——賢い——お、心の、お、温かい、お子様、でいらっしゃいました」


「『精神に、お病』——など——あの頃の、あなた様には——微塵も——ござりませんでした」


***


 セレスティアの、胸が——か、す、か、に、揺れた。


 誰、一、人として——十二年の、地獄、の、中で——あの頃の、彼女を——認めて、くれた、者は——い、な、か、っ、た。


 けれど——マルテンは、覚えて、いた、の、だった。


***


 マルテンは——床に、深く、平伏した。


 彼の、残り少ない、生涯の——最後の、誠意の、姿、だった。


「皇妃候補殿下——並びに、諸国の、皆様——」


「わ、たく、しの、残り少ない、人生を——偽りを、諸国に、お、伝えし続けた、罪人、として——終えるわけには——参りません」


「——お、許し、くださりませ。お、許し、くださりませ」


***


 大広間が——静まり返った。


 十二年の地獄、の、王女、に対する——故国側、から、の、唯一の、そして、決定的な——『謝罪と、名誉の、回復』、だった。


 老骨の、告白、だった。


 彼の、涙が——大広間の、大理石の床に——静かに、滴り、落ちた。


***


 諸国の使節たちが——低く、頷き、始める。


「——事実関係は、これで、明らかに、なった」


「アンジェリカ姫の、『新聖女』、の、主張は——公的には——完全な、根拠を、失った」


「諸国会議は——アンジェリカ姫の、『お、披露目』、の、議題を——却下、致す」


***


 一斉に——諸国の使節たちが——頷いた。


 公的な、議決、だった。


***


 聖女席で——アンジェリカは、自分の頭を、抱えた。


 偽聖女衣装の、金糸の刺繍に——爪が、食い込んで、いる。


 耳の奥の、母の声が——最大の音量で、響き続けて、いる。


***


「——お、お、母様——お、母様——」


「わ、たく、しは——お、母様の、お、声を——止めたい、だけ、だった、の、に——」


「——わ、たく、しは——なぜ、聖女に、なれ、な、か、っ、た、の……?」


「——お、母様に——認められたかった、だ、け、だった、の、に……」


***


 偽聖女の仮面が——完全に、崩れ落ちた、瞬間、だった。


 彼女の頭の中の、『母に、認められたい』、渇望が——今、公的な場で、諸国の、衆目の前に——完全に、晒された、の、だった。


***


 諸国の使節たちが——目を、逸らした、者、も、いた。


 単純な、嘲笑、では、な、か、っ、た。


 『この方は——歪んだ、呪いに、食い殺された、哀れな者、だ』、と、い、う——静かな、認識、だった。


***


 諸国の議論が——続く。


「——偽聖女の、主張は、却下、されました」


「——更なる処分は——ファルネーゼ国王の、判断に、よる、べき、でござります」


 議事が、国王に、戻る。


 け、れ、ど——国王は、脱け殻のまま——何の判断も、下せなかった。


***


 その時——


 セレスティアが、静かに、席から、立ち上がった。


 月光の白銀のドレスの裾が——大理石の床の上に——静かに、広がる。


 諸国の使節たちの、目が——一斉に、彼女に、向いた。


***


 セレスティアは——聖女席で、崩れ落ちて、いる、アンジェリカを——静かに、見つめた。


 憎しみ、では、なかった。


 勝利の喜び、でも、なかった。


 『憐れみ』、でも、完全には、なかった。


 『憐れみ』、は——相手を、下に、見る、感情、であった。


***


 彼女が、アンジェリカに、向けた、の、は——


 た、だ、の、『哀しみ』、だった。


 同じ、ファルネーゼの、血を、引きながら——虚栄と、呪詛に、まみれて、自滅して、いく、妹、と、い、う、存在に対する——『人間としての、根源的な、哀悼』、に、近い、感情、だった。


***


「諸国の、皆様——」


 セレスティアの声は——静謐せいひつだった。


「発言の、許可を、頂きたく、存じます」


 諸国の使節たちが——一斉に、頷く。


***


「わ、たく、しは——アンジェリカ姫に対して——何の、処分も、お、求め、致しません」


 大広間の空気が——わずかに、揺れた。


「——彼女は——もはや——わ、たく、し、の、世界の、住人、では、ござりません」


***


 そ、の、台詞、が——大広間に、響いた、瞬間——


 諸国の使節たちの、背筋に——わずかな、畏怖、が、走った。


 セレスティアは——アンジェリカを、『無視』、して、い、る、の、では、なかった。


 『下に、見て、憐れんで』、い、る、の、でも、なかった。


 『そもそも、自分の世界に、住んで、いない』、と、い、う——絶対的な、境界線、を——諸国の前で、公的に、提示、して、い、た、の、だ、っ、た。


***


 『触れて、は、な、ら、な、い、本物の、超越者』——


 諸国の使節たちが、本能で——そう、認識した、瞬間、だった。


***


 セレスティアは——穏やかに、続けた。


「わ、たく、しは——帝国の、皇妃候補、として——大陸の未来を、歩み、始めて、お、り、ま、す」


「アンジェリカ姫の、今後の、処遇は——ファルネーゼ王国の、国内問題、に、ござります」


「ただ——一つ、お、願いが、ござります」


***


「彼女を——二度と、諸国の場、に、お、出しに、ならないで、くださりませ」


***


 諸国の使節たちが——低く、頷く。


 セレスティアの言葉、は——単なる、ファルネーゼへの、配慮、では、な、か、っ、た。


 『私の、歩む、未来の、戦場——完全解呪——に——そ、の、矮小な、陰謀を、持ち込まないでほしい』、と、い、う——聖女としての、不可侵の、境界線の、提示、だ、っ、た。


***


 諸国の使節たちが、頭を、垂れた。


「皇妃候補殿下の、お、意向に、従います」


「アンジェリカ姫、並びに、ファルネーゼ王国は——今後、諸国会議の場には——参席させぬ、手筈と、致します」


***


 アンジェリカは——聖女席で、崩れ落ちたまま——何も、言えなかった。


 偽聖女衣装の金糸が、彼女の震える指の中で、きらめいて、いる、だ、け、だった。


***


 レオンハルト王太子が——再び、席から、立ち上がった。


「議長——もう、一つ、議題を——提案、致します」


「皇妃候補殿下、セレスティア・ファルネーゼ姫様——を、ヴァルガルド帝国の、正式な、皇妃、として——諸国全体が、公的に——認定する、議案を、提出、致します」


***


 大広間に——低い、『賛成』、の、声、が、積み重なっていく。


 ヴェネシア聖印国——『賛成、致します』

 パルメリオ王国——『賛成』

 カステリオ王国——『賛成』

 北方のフィン王国——『賛成』

 中部のガリレオ王国——『賛成』

 南のセレネ公国——『賛成』

 エルディオ王国——『賛成』


 脱け殻の、国王——わずかに、頷く、の、み


***


 諸国会議の議長が——声を、張り上げる。


「ヴァルガルド帝国、皇妃候補殿下、セレスティア・ファルネーゼ姫様——諸国会議は——公的に——ヴァルガルド帝国の、正式な、皇妃、として——認定、致しました」


***


 大広間に——盛大な、拍手、が、響き渡った。


 諸国の王侯たちが、一斉に、立ち上がる。


 帝国貴族たちが、涙を、流す者すら、いる。


 『皇妃、セレスティア・ヴァルガルド』——の、歴史的な、誕生の、瞬間、だ、っ、た。


***


 その傍らで——


 アンジェリカは——侍女たち、に、担がれて——聖女席から、連れ、出されて、いった。


 偽聖女衣装の裾が——大広間の、大理石の床を、引きずられて、いく。


 誰、一、人として——彼女を、見送ら、な、か、っ、た。


***


 大広間に、響く、皇妃の認定の、盛大な拍手——


 惨めに、連れ出されて、いく、偽聖女と、誰の眼差しも、向けられない、背中。


 光と、影、の、完璧な、対比、だった。


 崇拝、と、忘却、の、決定的な、断絶、だった。


***


 そして——それが、まさに——第3章の、タイトル、の——『諸国の眼差し、と、本物の聖女』、の、完全な、回収、の、瞬間、だ、っ、た。


***


 セレスティアの隣で——ヴォルフラムが、彼女の手を、そっと、握った。


「——お、疲れさまで、ござります、セレスティア」


「——あなたは——今、大陸全体の、聖女、に——なられた、の、です」


***


 セレスティアは——穏やかに、微笑む。


「——あなたが、並んで、くださった、から、です」


「——私、一人では——ここに、辿り着けませんでした」


***


 諸国会議は——閉会、された。


 諸国の使節たちが——セレスティアの前に、並んで——頭を、垂れて、退出して、いく。


***


 帝城貴賓室の、窓辺。


 ファルネーゼ王都の、夕焼け、が——大広間を、金色に、染めて、いる。


 セレスティアと、ヴォルフラムは——二人だけで、窓辺に、並んで、立った。


***


 ヴォルフラムが、低く、呟いた。


「セレスティア——長い、長い、戦い、が——今日——決着、した、の、だ」


***


 けれど——セレスティアは、穏やかに、首を、横に、振った。


「——まだ、終わって、おりません、わ、陛下」


 ヴォルフラム:「?」


 セレスティアは——彼の手を、そっと、握った。


「あなたの——完全解呪、の、儀式が——まだ、残って、お、り、ま、す」


「——私の、本当の、お、役目は——これから、に、ござります」


***


 ヴォルフラムの夜空の瞳が——わずかに、揺れた。


 社会的な、戦場、に、勝った、二人、に——次に、待って、いる、の、は——『命そのものを、懸けた、呪いとの、直接対決』、だ、っ、た。


 諸国会議で、得た、社会的勝利の、安心感、と——次の、呪いとの戦いへの、緊張感、が——同時に、二人を、包んで、い、た。


***


 ヴォルフラムは、彼女の額に、そっと、自分の額を、寄せた。


「——わかった、セレスティア」


「——これからは、二人で——呪いとの、戦いに、赴く」


***


 夕焼けの、金色の光、が——二人の輪郭を、柔らかく、染めて、いる。


 窓の外——ファルネーゼ王都の、空に——夕暮れの、月が、薄く、滲み、始めて、いた。


***


 諸国会議——決着、す。


 十二年——地獄に、押し付けられた、王女、は——今——大陸全体の、公的な、皇妃、に、なった、の、だ、っ、た。


 諸国の眼差しの、質、の、変質、は——完全に、完成、した。


 憐憫、から、畏怖、へ——畏怖、から、崇拝、へ——崇拝、から、公的承認、へ。


 第3章「諸国の眼差し、と、本物の聖女」——タイトルの、完全な、回収、だ、っ、た。


***


 けれど——


 二人の物語、は——まだ、終わって、い、な、い。


 次の、血の月までに——完全解呪の、儀式、を——執り行わねば、な、ら、な、い。


 諸国会議は、終わった——け、れ、ど——二人の物語の、大きな、転換点、は——これから、に、あった、の、だ、っ、た。

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― 新着の感想 ―
色々と言葉使いが気になるところがあります。 <お>の付け方もすごく気になりますが・・・
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