4-5(アースデイア大陸から来た娘5)
扉を閉じて出て行ったクトゥスを見送り、ユンは椅子にぺたりと腰を落とした。
『ユンを混乱させて面白がっているわね。クトゥス』
フランが嗤う。
クトゥスのたくらみ通りユンは混乱している。
しかし、不思議と納得もしていた。千の妖魔の女王。それがわたしの長姉--。クトゥスの言葉はユンの心にすとんと落ちた。
王妃様は信頼できる方だ。
王は、マルク・マーカス王はよく判らない--リウムの街では悪い噂しか聞かない--が、王妃様が愛された御方なら信じてもいいかも知れない。
ユンは長い息を吐いた。
立ち上がる。
まだ混乱している。
しかし、やらなければならないことがある。
もうすぐ子供たちが起きてくる。
院長先生や他の職員と協力して、彼らに男の子の死を伝え、衝撃を受けるであろう心に寄り添うという、ユンにとっても辛い、何よりも大事な仕事があった。
ストーが一人で孤児院を訪ねて来たのは、男の子の遺体を神殿に移し、子供たちと一緒に遺体の周りを花で飾っている時だった。
「謝って許されることでないことは承知している。しかし、わたしの浅慮がこのような事態を引き起こしてしまったことを、心よりお詫び申し上げる。巫女殿」
ストーは巫女に深く頭を下げ、
「怖い思いをさせた。すまなかった」
と、ユンにも謝罪の言葉を口にした。
花に囲まれた男の子の傍らで、ストーは頭を落したまましばらく動かなかった。
王がやって来たのは昼前である。
馬車の扉が開き、マルク・マーカス王は、馬車の外に待機していた20代半ばの二人の背の高い女に手を取られて馬車から降りた。
自分の重い身体を持て余している。
『マーカスも歳を取ったわね。昔は頼りないぐらいの細身で、豊かな金髪だったのに。でも、優し気な目元と笑顔は変わらないわね』
ストーが膝をついて出迎えている。
王妃様はいったいどんな魔法を使ったのだろう。
ユンは驚いてその光景を見つめている。
マーカス王がアルスタス家を追放し、王位を奪ってから5年。ストーは未だアルスタス家に忠誠を誓っている、筈だった。
ニヤケ野郎の心から読み取ったところでは、今回の事件は、マーカス王がストーを王都に呼び出そうとしたことから始まっている。王の呼び出しに応じるということは、王に臣従することを意味する。ストーはそれを拒否し、それならと王はわざわざイーセスト州まで出向いてきた。ストーの兄の屋敷まで来て、ここまで来た、だから来てくれないかと頼んできた。しかしそれも拒否され、それならば屋敷に赴こうという申し出もストーは拒否した。
そこでマーカス王が考えたのが、ストーが設立から助力してきた孤児院を、ストーに断りなく訪ねることだった。
つまり、ストーの顔を潰そうとしたのだ。
王がキレたのである。
そこまで関係がこじれていた王を、ストーが膝をついて出迎えている。
ストーの性格をよく知るユンにしてみれば、まったく信じられない光景だった。
マーカス王が手を差し出してストーを立たせ、固く抱擁する。
「昨夜、この孤児院が神聖ザラ王国の者に襲撃された」
少しこもった低い声でマーカス王が言う。
マーカス王が語りかけたのは、彼が訪れたことを知って集まってきたリウムの街の住民たちだ。
「不幸にも幼い子供の命が奪われた。だが!ストー公爵によって、神聖ザラ王国の者どもは一人残らず討ち取られた!
危険は、完全に取り除かれた!
わたしはここに誓う!
このような悲劇は決して繰り返さないと!ストー公爵と手を携え、必ずや神聖ザラ王国からここ、リウムの街を、イーセスト州を、我がマーカス王国の民を守り抜くと!」
王都からマーカスが引き連れて来た兵士たちが歓声を上げる。
兵士たちに釣られたか、住民たちもマーカスとストーの名を歓呼する。
マーカスは巫女をいたわり、子供たちと親しく触れ合い、慰め、職員にも温かな笑顔を向けてから、神殿で、死んだ子の傍らに膝をついてはらはらと涙を落した。
すべてが政治的なパフォーマンスだ。
茶番だ。
しかしそうした茶番が、意外なほど必要なことをユンも知っている。
「マーカス王を歓待するための祝宴を開く。屋敷に戻ってくれ」
ストーにそう頼まれ、ユンも屋敷に戻った。
孤児院の子供たちの中にテリーという名の13歳の女の子がいる。孤児院は、14歳になったら出る決まりだ。年齢的にも不安定で、社会に出ることの不安を抱え、弟とも言える子の死にテリーは誰よりも衝撃を受けていた。
ユンは屋敷に戻る前に、テリーをそっと抱き締めた。
「辛かったら院長先生を頼ればいいのよ、テリー。辛い思いをしているのは院長先生も同じよ。
あなたは決して独りじゃないわ」
テリーはみるみる涙を瞳に溢れさせ、「うん」と頷いた。
この子の悲しみを消せる。いまのわたしなら。ユンはそう感じた。しかしそうはしなかった。しない方が良いと思った。
祝宴の後、ユンは、「お話したいことがあります。少しお時間を頂いても宜しいでしょうか」と硬い口調でストーに尋ねた。
「わたしは構わないが、先約があるようだよ、君に」
「ユン様」
背後から声をかけられてユンが振り返ると王の側近が直立していた。
「お疲れのところ申し訳ありません。マーカス王がお呼びです」
公爵であるストーの屋敷には王族を迎える為の特別な貴賓室がある。
室内には独立した寝室が複数あり、専用の浴室もあり、広いリビングにはアルコールを楽しむ為のカウンターまで設けられている。
ユンが招き入れられた小さな応接室もその一部だ。
「おお、疲れているところ申し訳ない」
扉が開くと、マーカス王自身が立ち上がり、ユンが膝を折る間もなく無遠慮に大股で歩み寄ってきた。
ふくよかな顔に、満面の笑みを浮かべている。
「まずは礼を言おう。もし、嬢ちゃんがいなければ、オレはあそこで背信者どもに殺されていたかも知れないからな。
助かったよ」
マーカスがユンの瞳を覗き込む。
「ああ、クトゥスの言う通りだ。本当に、リディスによく似ている」
「本当ね」
魔術師のローブを纏った老女が同意する。マーカス王の背中に手を添え、細い目で、ユンの瞳の奥まで覗き込んでいる。老女の顔にはびっしりと刺青が彫り込まれている。手の甲にもだ。
ただの刺青ではない。
呪だ。
細い唇に、薄く、それていて温かな笑みを老女が浮かべる。
「不躾でごめんなさいね。わたしはカイ。
よろしくね、ユン。
今更だけど、マー坊、ユンに座って貰って、みんなを紹介したら?」
「そうだな。まずは座ってくれ、譲ちゃん」
「遠慮することはないわよ、ユン。それともこう言った方があなたにはいいかしらね。
王の命令よ。座って頂戴」
そう言ったのはソファーに座って微笑んだクトゥスだ。
クトゥスの右隣、ユンの正面にマーカス王が座り、クトゥスとは反対側にカイが腰を下ろす。
マーカス王を真ん中に、王妃であるクトゥスとカイがまるで同格であるかのように三人で並ぶ。
ユンは不思議に思わない。
クトゥスとカイの関係については噂で聞いて知っている。人によっては悪い噂であり、人によっては良い噂であり、特に女たちの間で楽しくネタにされる噂だ。
二人は王宮で目も合わさない、とか。
群臣の前でつかみ合いのケンカをした、とか。
カイがクトゥスに毒を盛ったという噂まである。
一方で、二人はとても仲が良く、二人で力を合わせてマーカス王を支えている、とも聞いたことがある。
祝宴の席では、マーカス王とクトゥスが並んで座り、カイは少し離れたところに座っていた。しかし、クトゥスとカイは時折視線を交わし、二人にしか判らない何かを常に確認し合っていた。
二人でマーカス王を支えている。
人々にとっては一番つまらない噂がどうやら真実らしい、とユンは理解している。
「では改めて自己紹介させてもらうと、オレはマルク・マーカス。知ってるだろ?この国の王を、んー、望まずながら、やらせて貰っている」
『望まずながらだなんて、よく言うわね』
フランが嗤う。
『やっぱり変わっていないわね。マーカス』
とも思う。
「クトゥスとはもう面識あるよな、彼女はオレの妻、つまり王妃で、こっちのカイは魔術顧問をやってもらってるが、前の妻だ。
リザ、ジャネ、お前たちもこっちに来てくれ」
マーカスが呼んだのは、応接室の扉を開いてくれた二人の女だ。孤児院でマーカスが馬車から降りる時に手を貸していたのと同じ二人だ。
二人についてもユンは知っている。
こちらは男たちがやっかみ半分、噂することが多い。あんな美女二人となんて、王ってヤツはなんて羨ましいシゴトだ!と。
「こっちがリザ」
肩で短く髪を切りそろえた女をマーカスが示し、
「そっちがジャネだ」
長い髪を高くまとめた女が、ユンを見つめたまま軽く眉を上げる。
「リザとジャネは、オレの護衛兼、恋人さ」
マーカス王ひとりが楽しそうに笑う。
自信に溢れながら、それでいて、どこか自分自身を笑っているような、不思議と親しみが持てる明るい笑顔だった。
「よろしくね、ユン。まぁ君を助けてくれたこと、わたしからも礼を言うわ」とリザが言い、
「わたしにも礼を言わせて。あなたがいなかったら、本当に、わたしの王様が殺されていたかも知れないわ。
ありがとう、ユン」
優しく温かい口調でジャネが言う。
ユンは立ち上がり、改めて膝を折った。
「ストー公爵家の家宰見習を勤めるユンと申します。お会いできて光栄に存じます、皆さま」
マーカスが声を上げて笑う。
「なるほど、リディスとは違うな。アイツはズイブンとがさつだったが、さすがは公爵家の家宰見習だ。
改めて座って貰えるかい?
ちょっと譲ちゃんに相談したいことがあるんだ」
ユンが座るのを待ってから、
「予め断っておくと、これは命令じゃない。そこのところは、まず、はっきりさせておこう。
譲ちゃん、オレに仕える気はないか?」
とマーカスは身体を乗り出した。
ユンには予想外の言葉だった。しかし、自分が何をしたいか、心はすでに決まっている。ユンは立ち上がると、椅子を避けて一歩後ろに下がり、膝をついて深く頭を下げた。
「陛下。身に余る光栄ではありますが、辞退させて頂きます」
「ええ?!」
マーカスが妙に芝居がかった大声を上げ、「だから言ったでしょう?マルク」とクトゥスが笑った。
「もう少し、こう、悩んでもいいんじゃないか?譲ちゃん。そんなはっきり、少しも迷いもしないで断るなんて、ちょっと酷くないか?
これでもオレは王なんだぜ?」
「リディスに、--あなたの姉妹に会いたいのよね。ユン」
ユンが顔を上げる。
「はい。王妃様」
「あー」
マーカスが身体をソファーに預ける。
「それなら仕方ねぇかあ」
天井を見つめたまま「嬢ちゃんの力があれば、神聖ザラ王国のクソどもなんか、屁でもないんだがなぁ……」ぶつぶつと文句を言う。
カイがマーカスを睨む。
「マー坊。言葉遣いには気をつけて。ここには、あなた以外は淑女しかいないのよ」
「ああ、すまねぇ」
ユンに視線を戻し、マーカスが朗らかに笑う。断られたことを気にかけている様子はまったくない。
「ま、仕方ねぇな。
譲ちゃんたちの絆の強さはよぉーく知ってるからな。
ヤツと旅をしていた時に、リディスが怪我させられたときなんか--、んー、あれはどこでのことだったかな。
ま、いいか。
シャッカタカーは、ちょいと、いや、かなり、底意地の悪い魔術師だが、妹想いなのは間違いないヤツだからな。
会うのを楽しみにしてればいいさ、嬢ちゃん。
で、ヤツに会うにはどこに行けばいいんだったかな?カイ」
「デアの魔術師協会を訪ねればいいわ、ユン」
ユンがカイに顔を向ける。
「ショナの首都デアの魔術師協会でしょうか?カイ様」
カイが頷く。
「いっしょに旅をしている間にも、あの子たちがどこに住んでいるか確かなことは教えてくれなかったわ。
でも、ショナから来たとは言っていたし、新大陸に帰った何年か後に、魔術師になれたってリディスから連絡があったわ。
チャオにある魔術師協会の支部を通じてね。
傲慢で、自分勝手で、だけど、信じられないほど魔術の腕があって、どーしても好きにはなれないけど何故かわたしの数少ない友人のひとりであるあなたの長姉がそこにいるかどうかは判らないけれど、デアの魔術師協会を訪ねれば、リディスの消息は掴めるんじゃないかしら」
「あら。わたしは好きよ、あの子のそういったところ。わたしたちが本当に三人で楽しめるように教えてくれたのも--、んん、それはここでは言わない方がいいわね。
どう?ユン。
デアは遠いけれど、行ってみる?」
「はい、王妃様」
「ユンは一人旅をしたことはあるの?」
「いいえ--」
さらに言葉を続けようとしたユンに、「だったら案内役をつけた方がいいな」と、マーカスが声を被せる。
「ハンガがいいんじゃないか、クトゥス」
「そうね。ハンガさんなら間違いないと思うわ」
「どなたなのでしょうか?」
「オレの食客の一人だ。流れ者--としか言いようがないな、ヤツは。スマートだし--外見じゃなくてな--腕もたつ。仁義ってモンについてもよく理解ってる。ヤツなら間違いない。だから心配は要らないぜ、譲ちゃん。
おっと。遠慮なんかするなよ。もし、嬢ちゃんを一人で行かせて何かあったりしたら、後が怖いからな」
「わたしたち、旅をしている間にあなたの長姉に何度も命を救われたわ。だから、遠慮しないで、ユン」
カイがクトゥスに目配せし、クトゥスが頷く。
「今日はこれぐらいにしておきましょう、マルク。いろんなことがあり過ぎて、ユンも疲れているでしょうから」
「ああ、そうだな」
マーカスが立ち上がる。ユンを見る。深青色の瞳に憂いがある。
「譲ちゃん、改めて礼を言っておくよ」
「わたしは何もできませんでした」
マーカスが首を振る。
「もし、たまたま譲ちゃんがあそこにいなかったら、オレが殺されただけでは終わらなかっただろうよ。きっとコトが成った後に、ヤツラ、巫女様だけじゃなく、孤児院の子供たちを全員殺していただろうよ。
嬢ちゃんはそれを防いだんだ。
オレが礼を言いたいのは、そのことだよ。
ありがとうよ」
マーカスの言葉がユンの胸に染み込んでいく。この方は--悪い人だ。主君を追放し、王位を奪った。それは間違いない。しかし、それだけではないのかも知れない。
『マーカス王の周りには人がいるわ』
いつのことだったか、巫女がマーカス王を評して言った言葉を思い出す。
マーカスがクトゥスと一緒に応接室を出て行く。
「ユン、もしあなたが、あなたのヘンクツな長姉に会えたらちょっと伝えて貰いたいことがあるの。いいかしら」
カイに問われてユンは「喜んでお伺いします、カイ様」と応じた。
「リザ、ジャネ」
カイが二人を呼ぶ。
魔術師の黒いローブをリザに預け、ジャネに手伝わせて背中を大きくはだける。すっかりさらけ出された背中にも、びっしりと呪が刻まれている。
「ここに赤い呪が刻んであるでしょう?判るかしら」
カイが示したのは、腰のくびれ部分だ。
そこに、背中の端から端まで横に赤い呪がくっきりと刻んである。さらに、横に伸びた呪と直交するように、縦方向にも背骨に沿って上へ10センチ程、下に5センチ程の長さの赤い呪が鮮やかに刻まれている。
魔術の知識をユンは持たない。
しかし、違う、と思った。
赤い呪には、他の呪にはない美しさが--簡明さと力強さがあった。
「性悪なあなたの長姉に会った時に言われたの。『とても素晴らしい呪だけれど、歳を取ったら肌が衰えて、あなた、呪に飲み込まれちゃうわよ』って。
そんなこと判っていたけれど、それでも構わないって思っていたわ。
マー坊の為なら命なんか惜しくなかったし、まだ30代だったから、肌が衰えるなんて永遠に来ない未来のような気がしていたわ。
そう答えたら、『あたしと魔術の勝負をして、あたしが勝ったらあなたの身体に新しい呪を刻ませてもらっていいかしら』って言われたの。『歳を取っても呪に飲み込まれないようにしてあげるわ』ってね。
わたし、魔術に関しては誰にも負けないって自負があったし、千の妖魔の女王だなんて言われててもどうせ看板倒れで大したことないだろうって応じたら、魔術の知識も、呪を唱える技術も、ぜーんぜん彼女には及ばなかったわ。
井の中の蛙って言い方があるけど、ホント、広い海を相手に突っ張ってる気がして、悔しいというより呆れ果てて思わず笑っちゃったわ。
それでここに、この呪を刻んでもらったの」
カイがはだけていた服を着直し、ユンに向き直る。
「彼女に会ったら伝えてもらえるかしら。
あなたのおかげでこうして生きていられる。今でも、マー坊と一緒にいられる。
感謝しているわって」
「必ず伝えます。カイ様」
「お願いね」
涼やかに微笑んでカイも応接室から出て行く。
「ちょっといいかな」
応接室の扉の前で、リザがユンに話しかけてきた。マーカスやカイと同じようにユンの瞳を覗き込む。
「やっぱり、あまりわたしには似てないね」
「え?」
「突然そんなこと言われても戸惑うだけだろ。リザ」
呆れたようにジャネが言う。
「悪いね。わたしたちが、わたしの王様に仕えることになったきっかけが、あんたの姉さんだっていうリディスさんにリザの目が似ているってことだったから、ちょっと確認したかったんだ」
「似ているとは言っても目つきの悪さのことだけどね」
リザが笑う。
「わたしがクトゥスお姉さまと初めて会ったのは14歳の時。
お姉さまがリディスさんと出会ったのも、リディスさんが14歳の時だったって聞いたわ。同じ歳だったということもあって、ひどく荒んだわたしの目を見て、リディスさんを見てるみたいで放って置けなかったってクトゥスお姉さまは言われていたわ。
あなたは違うわね。
荒んでいると言うより、あなたは、ひどく悲しんでいるように見えるわ」
ユンの胸が鈍く疼く。
そんなことはない、と思う。院長室で、ユンを背後から捕らえた兵士を、ユンは思いっきり振り払い、ただの血肉へと変えた。あれは怒りだった。男の子を殺した兵士への。そして、自分だけを残して逝ってしまった母への理不尽な怒りだった。
だけど。
だけど--。
「わたしたちが、まぁ君と出会えたように、あなたも、あなたが生きるべき場所に辿り着けることを祈っているわ」
そう言ってリザとジャネは、ユンの為に応接室の扉を開いてくれた。
翌日、孤児院で男の子の葬儀を終え、2日後にユンは、ハンガとともにリウムの街を後にした。
王都チャオに着いたところで、噂が二人に追いついてきた。
巡行する王を殺害しようとする陰謀がリウムの街であり、イーセスト州を治めるストー公爵の兄が首謀者として捕らえられ、処刑されたという。
「面白いヤツではなかったが、悪いヤツでもなかったんだがな」
ハンガがそう評し、
『悪人になることを決断されたのですね--』
とユンは思った。




