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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第八部 親友を守る、廃ビル三階の戦い

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94話 遅刻魔の正体

【前エピソードのあらすじ】

俺の作戦を2人が完璧な連携で実行し、なんとか勝利を収める。

そのあと、小林をどのように反抗しないようするかを考える中、俺が小林に隷属のチョーカーを付ける案を提案する。


「え?」


 クロエが固まる。

 と、同時にフィナも呟く。


「え、ハルが付けるの? え?」


「え? ん? え?」


 再び、クロエが混乱したように言う。


 男が男につけた場合は、好きになると言う効果じゃない可能性があるか?

 まあ、つけてみてから考えれば良いか。


「でも、ハルのことが大好きになっただけで、この問題児な協力者が止まるかなあ」


 フィナはそう言いながら、なんとか立ち上がってこちらに歩いてくる。


 だが、それに対してクロエが一言。


「男同士でも効果が発動するなら、止まるわよ。きっと。それくらい、この宝具は強い恋慕と忠誠心を与える宝具だから……。でも、不確実だから今すぐやるのは怖いかもしれない。間違って付けると取り返しがつかなくなるわ」


 そう言ったクロエの視線は小刻みに震えていた。

 やはり、彼女はこの宝具を知っていて、怯えているらしい。


「クロエ、フィナの方を手伝ってやってくれ。俺は歩けるから、とりあえず、あいつの持ち物だけ奪っていく。持ち物さえ奪ってしまえば、だいぶ無力化できるだろ」


 俺がそう言ってから左手を地面について立ち上がると、クロエは俺の右手を見つめていた。

 しかし、俺は彼女の視線を意に介さず、右手に響かないよう小林の周囲に駆け寄って、落ちているタロットカードを左手で拾う。 


 象の牙だけが中心に描かれたタロットカード。

 そして、薬の空き瓶と、薬が残っている方の瓶も拾う。おそらく、残っている薬は痛み止めの薬と言っていたものだろう。


 羊皮紙は、拾って書かれている内容を見た。


・行使の契約書

・汝、八百万ノ神ヘ通ズル術ノ加護ヲ受ベシ。


 たった2行しか書かれていないし、書いてある内容の意味もわからない。とりあえず持って行こう。

 俺は左手一本でサコッシュの中に薬の瓶と、折り曲げた羊皮紙、タロットカードを押し込んでから、チョーカーも拾う。


 と、そこで気づく。


 小林は服の中に、黒い服をもう一枚着ている。しかし、この生地はどこかで見たような……、って、まさか!?

 俺は窓の方に歩いているフィナとそれに肩を貸すクロエがこちらを見ていないことを確認してから小林のズボンをずらして確認する。


 やはり、その黒い服は下半身まで続いていた。

 そして、下半身部分はくしゃくしゃに捲り上げられているが、スカート状だった。

 

 これはおそらく……、魔法使いが着ている黒色のワンピースだろう。

 そのワンピースをどこから入手したかは容易に想像がつく。おそらく、クロエの荷物から盗ったはず。


 しかし、不思議なのはそのワンピースが彼の身体のサイズにちょうどフィットしていたこと。


 あ、そうか。

 俺がクロエの外套を奪った時も、サイズがちょうどになったな。


 しかし、小林はなんでこのワンピースを着ている? 

 ただ、変態だから着ているのか?

 というか、小林を倒した時の宝具の散らばり方も、どこか既視感が……。


「魔法使い様! ここです、ここで――」


 扉の向こうから声が響く。

 俺が即座にクロエをみると、彼女は反射的に片足をタンッと踏む。


 そして、俺たち3人は動きを止める。

 クロエが姿を消す魔法を使ったと信じての行動。


 ガチャリ、と扉が開く。


 と、そこには、小林に宝具を売っていた営業風の魔女狩りの黒スーツの男と、黒色基調のボーイッシュなファッションの、俺と同じくらいの身長の女性が立っていた。


 俺よりも、やや年上に見えるその風貌は、暗い目線、闇のように暗い黒髪が耳が見えるほどのショートカット、耳に幾つもついている銀色のピアス。


 彼女はグレーのゆったりとした厚手のシャツ、黒色の同じようにゆったりとした軽めのボトムスを履いて黒い厚底のスニーカーを履いていた。


 そして、彼女はタバコを吸っていた。


「って、あれ!? 小林さん!? 大丈夫ですか!?」


 慌てて小林に駆け寄ろうとしたその男に対し、その女性は面倒くさそうに言う。


「ほっとけ。こいつは用済みだよ」


 その女はそう言うと、どこからともなく取り出したタバコをふかしてから続ける。


「ったく、魔女狩りとして使えるかと思ったのに。協力者である立場も与えて、こんだけ宝具もやって……失敗とは」


 あの魔女狩り……さっきこの女を魔法使いだっていったよな。

 魔法使いが魔女狩り……?


 いや、小林も言っていた。


 今回の件、黒幕は魔女狩りだと思っていたが、違う。


「で、でも、この男はうちの組織の資金源ですよ……?」


「ふん、こいつはもうじき宝具に喰われる。それに、資金源なんて、探せばいくらでもいる。現世の凡夫は欲が深い」


 その女はそう言うと、タバコを地面に捨て、右足で踏みつける。


「おら、行くぞ」


「え!? ここに援軍を呼んだんですが……」


「お前は使える凡夫だから忠告しておいてやる。死にたかったら残ってろ、死にたくなければ着いてこい」


 魔法使いはそこまで言うと……、チラリと俺の方を見る。

 見えていないはずなのに、じっと、俺の方を見る。

 俺はその女の顔を見る。


 雰囲気はボーイッシュだが、顔はやや童顔気味で可愛らしいファッションの方が似合いそうだ。

 しかし、ピアスを開け、悪態をついてタバコを吐き捨てたその姿から、どこか古典的なヤンキーっぽさを感じる。


 そんな彼女はじーっと、俺の顔を見ている。


 本能的に俺の額から冷や汗が流れていた。

 何故か、嫌な予感。


 魔女狩りという言葉から、こちらと敵対しているであろうこと確実だ。

 さらに、彼女の目を見ると、自然と背筋が凍る感覚。


「ちっ、タバコで鼻が効かん」


 運が良いのか、その女はそう言うと、扉を開けて出ていく。


 そして、その後ろから30代後半から40代くらいに見える、営業っぽい男が走って着いて行った。

 それから5分ほど息を殺して待ってから、俺はクロエに目をやる。

 と、青ざめた表情のフィナが小さな声で言う。


「今の魔法使い、全然気配がわからなかった。それに、魔女狩りって……」


「魔法使いが魔女狩りに加担。ありえない話ではないけれど……。でも、あの魔法使いはなんとなく、とても危険な雰囲気を感じた。特に、ハルを見ていた時の目」


「うん、私も、声が出なかった……」


 フィナが呟くと、クロエは考えるよう顎に手を当てた。

 

「おそらく、今回の一件、単にクロエと協力者の一悶着じゃなくて――」


 俺はそう言いかけて、先に手帳を開く。

 顔を覚えているうちに見ようと思ったから。


 慣れない左手で手帖をポケットから取り出そうとする。

 と、その時。


「弾丸魔法、クイックドロー!」


 部屋の入り口の扉からまた、声が響く。


 また、さっきの魔法使いとは異なる声音。


 俺が反射的にその声の方を見た。

 その方向から、俺の額に向け一直線に黒色の弾丸が迫る。


 と、そこからの光景はとてもゆっくり動いた。

 魔法?


 俺は理解が追い付かない。


「ハルっ!?」


 クロエの悲痛な声が聞こえる。


 防ぎようの無いその弾丸魔法は、そのまま俺に突き刺さろうとした、その時だった。


 パリンッ!


 窓が割れる音。

 その音は窓の方から響き、俺の目の前を何者かの残像が通過する。

 そして、影のようなそれが通過した途端、俺の目の前に迫っていた黒色の弾丸らしき物体は消えた。


「な……、あ、え?」


 言葉が先に漏れた。

 俺は弾丸を放った魔法使いの確認よりも先に、その残像の正体を確認しようと目で追った。


「間に合った?」


 女性にしては低い声、男性にしては高い声が聞こえる。

 ん? この声とこのセリフ、どこかで聞いたことが……。


 俺はその声の方を見ると、目の前に立ったその残像の正体はこちらを見つめていた。


 声を発したのは、俺やフィナ、クロエと同い年くらいの女子だが、俺はその姿を見て混乱する。


 彼女は、グレーのマスク、くすんだ銀色のツインテール、暗めのピンク色のフリフリが付いたゴシックな衣服に黒色のミニスカート、黒色のハイソックスを身に纏っていた。


 靴は黒色の異常なほど厚底なスニーカー。

 さらに、腰には黒色の鞘に入った刀を刺している。


 しかし、そんな異質なファッションよりも俺を混乱させたのは……、彼女の髪型と耳だ。


 その女子はふわふわに見えるグレーの髪を、クロエよりも高い位置の二つ結び、いわゆる王道のツインテールにしているのだが、その髪の毛の中から、黒色とグレー毛が混じった狼の耳のようなものが生えていた。カチューシャか何かを着けているのか……?


 だが、それらすべてはどうでも良くなるほど、俺を混乱させた理由は……その姿の彼女が、バイト先の遅刻魔である笹川だったからだ。


次回の投稿予定日は3/7(土)です。

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