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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第八部 親友を守る、廃ビル三階の戦い

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93話 曲芸連携、水中の決着

【前エピソードのあらすじ】

薬を過剰摂取し、圧倒的な力を持つ小林。

そんな彼を前に、フィナとクロエは俺が伝えた作戦を実行する。


 小林は笑う。


「やっと顔を出したなっ! 捕まえてやる!」


 小林は勝ちを確信したのか、明らかな油断を見せた。


「――アームストロング!」


 クロエはそう宣言すると、フィナを押し出すように触った。

 その魔法は触れたモノを直線、高速で飛ばす魔法。


 そのため、触られたフィナは俺が瞬きをすると小林の顔の真ん前にいた。


 しかし、小林はその速度に余裕で対応して、フィナの身体を掴もうとする。


「その程度、余裕で――」


 余裕で反応できる、と言いたかったのだろうか。


「――水流衝撃波っ!」


 高速で接敵したフィナは、黒いワンピースに衣服を戻した状態で、この部屋の半分以上を水で満たした。


 当然、フィナはそれに飛び込むが、小林は水の中に入っていない。

 発生する前に、高速で前方に動いて躱したようだ。


「危ない危ない」


 と、そこでクロエは万華鏡の杖をかざして宣言を始める。


「四角錐、投石魔法――」


「やっぱり見えるようになったあの男から殺してや――ッ!?」


 ガツンと音が響く。

 フィナはあえてワンピースを着ることで、クロエの投石魔法の速度を水で緩めてから、水神のセーラー服に再換装し、小林の後頭部に、水の中から如意棒を伸ばして突き刺す。


 さっき、小林にされたことを仕返した格好。


 そして、隙ができた。


「アーケインバリスタッ!」


 そう言いながら、クロエは目の前に無数の銀色の針をばらまいた。


 魔法の力で、それは小林に向かって飛ぶが、万華鏡の杖の力で数が増え、銀色の針が隙間なく弾幕のように展開した。


 四角錐の円形弾幕は、3週間前のマリア戦でフィナが張ったものと同じ、後ろ以外のすべての方向から針が降り注ぐ。


 小林の身体は大きいから、避けようがないだろう。


 そして、針が飛ぶ速度も速く、詠唱が必要な魔法も使えないはず。

 

 選択肢は2つに1つ。針を受ける覚悟で突っ込むか、後ろの水に飛び込むか。

 

「あがきやがって……」


 そう言いながら、小林は息を止め、水槽の水のようにたまった後ろの水の中に移動する。


 と、セーラー服を着たフィナが叫んだ。


「入ったっ!」


 フィナは水の中でそう叫ぶと、如意棒を片手に小林へ走って襲い掛かる。

 いくら、身体能力が向上しているとはいえ、水の中では抵抗が発生するため、水の外のようには動けない。


 さらに、水の中では言葉を発せないから魔法も詠唱できないだろう。


 逆に、フィナはセーラー服を着て水の中にいるため身体能力が向上しており、素早く小林の後ろに回った。


 小林はフィナの軽快な動きを確認し、ようやく自分が不利になっていると気づいたらしい。


 目を見開いて外に出ようと動こうとするが、それよりも早くフィナが再び如意棒を伸ばす。


 しかし、小林は激流の流れる水の中だと言うのに、呼吸を止めながら驚くべき速度でそれに反応し、如意棒を掴んだ。


 すると、それを読んでいたフィナはそのお互いが掴んでいる如意棒を縮め、小林の身体に急接近して――。


 躊躇なく小林の股間を蹴った。


「がっああああああああああああ」


 水の中からも聞こえるのほどの叫び声が響いた。

 フィナにその指示を出したのは俺だ。


 肉体が強化されている以上、人体の中で露出した内臓を狙わなければ勝てない。


 だが、今のフィナの股間蹴りをかわせないということは、水の中では反応速度は維持できても動きに制約がある証左。


 そして、フィナの魔法は強い水流を伴う水の塊、水の中であんなに口を開けば、水が勝手に口の中に流れ込んでいく。


 さらに、隙を見せた小林に、フィナは連撃を入れていく。


 如意棒を放して股間を両手で抑えた小林のみぞおちに如意棒を突き刺しながら、右耳を掴んで逃げられないようにする。

 

「ん……!? ん、んん!」


「幻影魔法、イリュージョンリリック」

 

 小林は呼吸ができていないため、もがき続けているが、股間を蹴られたせいで動きが完全に停止して、ずっと股間を押さえて呻いている。


 さらに、クロエは水の中にいる小林に幻影魔法をかけたらしい。何をかけたかまではわからないが、何かしらの幻影で視界を奪ってくれているだろう。


 小林は、股間や鳩尾、すねに激痛が走っている時、呼吸もできず視界も奪われた。


 そして、ついに、ぴくりとも動かなくなり、水中で目を閉じた。



「勝った……?」



 クロエがそう呟いた瞬間、フィナは水魔法を解く。


 すると、小林はその場で白目を剥いて倒れた。


 呼吸を荒くするフィナは、小さな声で言う。


「良かった、上手くいった……」


「もし、もう一人相手がいたら、完全に負けていたわね……」


 クロエはそう呟くように言いながら、どさっと尻もちをつく。


 倒れた小林の周囲には、タロットカードが2枚と、羊皮紙のような材質に見える紙、薬の空き瓶が1つと、薬が残っている瓶が1つ落ちていた。


 俺は右手の痛みに顔を歪めながら、立ち上がる。


 フィナの声が聞こえる。


「はぁぁ、良かったぁぁ。ハルの作戦ってやっぱりすごい――、痛っっ」


「フィナ、大丈夫!?」


 クロエがフィナの方に駆け寄って行く。


「大丈夫。それより、クロエちゃん。ハルってすごいでしょ」


 にっこりと自慢げに言うフィナ。


「……ええ。こんな作戦を、この状況下で考えるなんて」

 

 クロエはチラリと俺の右手を見てから、俺の顔を力の抜けたような表情で見た。


 ちなみに、作戦は単純だ。

 水流衝撃波の中に敵を引き込んで、如意棒を相手に掴ませ近づき股間を狙う。


 これを伝えた時、フィナが挟み撃ちにする状況を作れないと言ったから、クロエの投石魔法で飛ぶアイデアと、万華鏡の杖をクロエに持たせるアイデアを伝えた。


 が、言うのは簡単だが、本当にやり遂げてしまうのは恐ろしい。


「俺なんかより、二人の方がよっぽどすごい」


 俺はそう言いながらクロエから目を切って、フィナの方を見る。


 彼女の鼻血は早くも止まっており、水流衝撃波の中で鼻の下に流れていた鼻血の跡も流されていた。

 しかし、プリーツスカートの下から覗いている右ひざが赤く腫れている。


 それを見ていると、俺も自分の右手から痛みを感じる。

 親指の内側が異常なほど赤く、パンパンに腫れている。


 魔法使いは怪我の治りが速いから、フィナは問題なさそうだが、俺の怪我は早く病院で処置をしなければ、後を引きそうな怪我だ。


「早く逃げよう。用が済んだら、ここに残るのは危険だ」


「そうだけど……」


 フィナが小林をチラリと見ながら言うと、クロエも横から言う。


「この男を放置するのは危険じゃないかしら」


 クロエがそう言うので、俺は立ち上がりながらクロエに言う。


「俺に妙案がある。小林をクロエが飼い慣らす方法」


「な、何?」


 クロエが疑わしいような目で俺を見るので、ストレートに言う。


「隷属のチョーカーを小林に付ければ良い」


「絶対に嫌」


 即答。


 まあ、仕方ない。

 嫌いな相手に一方的に好かれるのも、ストレスだろう。


「じゃあ、俺が小林につけるか」


次回の投稿予定日は3/4(水)です。

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