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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第八部 親友を守る、廃ビル三階の戦い

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95話 魔法使いの連続乱入

【前エピソードのあらすじ】

魔女狩りに魔法使いが加担していると思われる情報を聞いた俺は手帖でその魔法使いを調べようとしたが、その瞬間、弾丸魔法が俺の目の前に迫る。

そして、その弾丸から俺を守ったのは、最近、バイト先に新人として入ってきた遅刻魔、笹川灯だった。


「なんで、笹川……?」


 結果……、俺の脳は彼女の容姿を把握することで渋滞し、ぽかんと口を開けてしまっていた。


「なんであなたが……」


 そんな彼女の様子を見たクロエの声も聞こえる。クロエもこいつのことを知っているのか……?


 一方、さっきからフィナの声が聞こえない。

 彼女は唖然とその光景を見ていたのだろうか。


「やっぱり。なんで――がいるの?」


 一部聞き取れなかったが、おそらく、笹川は俺の名前を呼んだのだろう。


「いや、それはこっちのセリフだ」 


「……まさか、魔法使いを何人か強姦したヤバイ協力者ってーー」


「いやいや待て待てそれは俺じゃない、あっちで気絶してるやつだ!」


 俺は柄にもなく叫んでしまう。

 と、クロエも慌てたように叫ぶ。


「ハル! その女は忠犬の魔法使い! 法則の魔女の弟子!」


 クロエの声に反応したのは、先ほど魔法が飛んできた扉の方から声が聞こえる。


「忠犬の魔法使い!? 体調が狙ってるターゲットか! 弾丸魔法、クイックドロー!」


 再び、扉の近くにいる何者かが魔法を宣言する。


 と、笹川は面倒くさそうに振り返って――、刀を鋭く抜刀し一閃。


 迫る弾丸を見事、真っ二つに斬った。

 

 すると、弾丸は……そこで霧のように消えた。


「やっぱあいつ……本物!?」


 扉の方から声が聞こえるが、俺は笹川から目が離せない。

 スムーズな身のこなしに黒色のミニスカートがふわっと浮いた。

 そして、そこから伸びていた、銀色に一部黒が混ざった虎毛、立派な逆巻の尻尾。


「なんだ……? 今の――」


 彼女は切った後、もう一度俺の方を振り返った。

 あのバイト先の姿からは考えられない、凛々しく颯爽として、そして何よりいろんな要素が渋滞してカオスな立ち姿。


 クロエの声が響く。


「投石魔法、アーケインバリスタ!」


 まさか、笹川に撃ったのかと思い俺はクロエの方を見る。

 すると、彼女は扉の方に針を撃っていた。


 さらに、クロエの横でフィナも膝の痛みを堪えながら扉に向けて如意棒を伸ばす。


「ちっ」


 襲ってきた魔法使いの舌打ちが響き、扉が閉まる音、直後、カツンカツンと扉に針が当たるような音が響く。


 おそらく、その扉にクロエの針が当たった音だろう。


 と、そこでフィナがにっこりと笑って声を出す。


「助けてくれてありがとう! 私は水の魔法使いフィナ。よろしく!」


 フィナが名乗ると、笹川は俺をチラリと見た後、フィナの方をじっと見て言う。


「な……、なに?」


 凝視されたフィナはそんなことを呟く。また、隣にいるクロエは警戒して明かりを睨んでいる。


 そんな2人に対し笹川は呟く。


「私、見ての通り全獣魔法だけど」


 すると、フィナは即答した。


「それがどうかしたの?」


 クロエが割り込むように言う。


「フィナ、全獣魔法は――」


 そう言いかけたクロエに対して、フィナは語気を強くした。


「クロエちゃん。魔法の種類や身分で人を判断したらダメだよ。その人が何をしたかが全て」


 すると、クロエは驚いたような表情になった後、プイッとフィナから目を逸らす。


 こいつの魔法には、何か事情でもあるのだろうか。

 と、脳裏によぎった直後、フィナはチラリと魔法使いたちが撤退した扉の方を見た後、笹川ににっこりと笑って言う。


「よろしくね。あの、名前は――」


 すると、ポカンをと口を開けていた笹川は、フィナをじっと見つめて言う。


 ん?


 その時、俺は思わず彼女の尻尾に目が行く。

 彼女の尻尾が、横にぴょこぴょこと揺れていたのだ。


「私は忠犬の魔法使いアカリ。こいつが言っている笹川ってのは、私の協力者の苗字で、この世界に溶け込むために使ってる」


 尻尾は揺れているが、彼女はクールな様子でそんなことを言った。


 その言葉で笹川灯の正体が魔法使いだったと確定する。


 しかし、今度は笹川が俺の顔を見て頭を傾げた。


「って、あなたもバイト先で偽名を使っていたの?」


 が、今はそれどころじゃない。


「えーっとアカリって呼んだらいいか?」


 笹川、もとい忠犬の魔法使いアカリは、俺の方を気怠げに見る。


「戦闘中だし、話は色々後だ。さっき言っていたやばい協力者ってやつを倒したはいいものの、みんな怪我をしていてピンチって状況。だから、俺たちを逃がしてほしい。頼む」


 すると、アカリはいつも通りのテンションで言う。


「うわあ、いきなり名前で呼ばれ始めた」


「魔法使いに苗字はないだろ」


 俺が即答すると、アカリは刀に手をかけ、倒れている小林を睨む。


 って、こいつまさか……。


 アカリは刀を握ったまま、倒れている小林に向け地面を蹴り――。


「待って!」


 フィナの声が響く。


「どうしたの?」


 アカリは小首を傾げてフィナに尋ねる。フィナは非常に強い眼差しを彼女に向けて答える。


「殺すつもり?」


「まさか。死んだふりをしていないか確認をするだけ」


 アカリの答えを聞くと、フィナはほっとした顔で言う。


「良かった」


 アカリはまだ小首を傾げたまま言う。


「……水の魔法使いちゃんは随分と懐が深いんだね」


 嫌味を言ったのか、純粋な疑問を言ったのか、彼女の本心は読みづらい。

 と、その時だった。

 

 ガチャン!


 扉の開く音が響く。

 反射的にそちらを見ると、そこには二人分の人影があった。

 人数が増えている。


 一瞬だったので顔まで詳細に見れないが、二人とも黒色のワンピースを着ていた。


「切断魔法――」

「弾丸魔法――」


 2つの宣言が、違う声音で聞こえてきた。

 と、瞬間的にアカリは俺の左腕を掴んで言う。


「エアロステップ」


 そう言った直後、アカリは俺を掴んだ状態で一歩を踏み切った。


 すると、たった一歩なのに、かなり長い距離を飛んで、一緒に歩いているフィナとクロエのところまで飛んだ。


「ウインドカッター!」

「クイックドロー!」


 俺はアカリに連れられていたため、魔法の軌道まで正確に見ることができなかったが、俺が尻餅をついていた場所の方から、パンッ、パンッと2回音が響く。


 おそらく、俺がいた場所に魔法が着弾したのだろう。

 

「巨乳ちゃん、援護してよ」


 アカリはそう言いながら、フィナとクロエの立っている位置に俺を置いてから、再び地面を蹴る。


 まるで、マリアのような足取りの軽さで、敵2名に対して魔法を突っ込んでいくアカリ。


「……は!? あいつ今なんつった!?」


 クロエは援護をせずにそんなことを言い始める。

 ので、俺はフィナに指示を出す。


「フィナ、1番、小さめで援護!」


 しかし、それよりも早く相手の2人が再度叫ぶ。


「弾丸魔法、クイックドロー!」

「切断魔法、ウイングカッター!」


 薄暗い部屋の中、魔法が再度飛んでくる。


 弾丸魔法を叫んだ魔法使いは低身長で黒髪をぱっつんに切った、俺たちと同じ年くらいの女性。


 一方、切断魔法を叫ぶ魔法使いは、俺と同じくらいの身長で手入れされていないだろうぼさぼさの茶髪に黒色のメガネをかけていて、こちらも俺たちと年齢は変わらないくらいに見える。


 そして、先ほど視界の隅で確認した時と同様、2人とも黒色のワンピースを着ていた。

 

 そんな2人が放った魔法に向けて、アカリは正面から突っ込んでいく。


 普通に考えれば自殺行為だが……、やはりアカリは刀を抜いて2つの魔法を華麗に斬り捨てる。

 弾丸は小さいし、空気の斬撃もかなりの速度なのに、軽々と反応している。


 正面から跳んでいるアカリの速度も速いのだから、より凄い。


「水魔法、水流衝撃波!」


 フィナも右足の痛みを堪えるような表情で、クロエに肩を借りながら魔法を宣言し、アカリの後ろから水の塊を飛ばす。


 と、アカリはその時には弾丸魔法を使う小さい女性の方に接敵した。


 おそらく、その女性とアカリは同じくらいの身長だろうが、今はアカリが厚底スニーカーを履いているため、アカリの身長の方が高い。


「なっ……」


 硬直した彼女に、アカリは刀の柄で鳩尾を殴ってノックアウトする。


「こ、このっ! カッティングブロー!」


 アカリの隣から、切断魔法を使った高身長の女性がフィナの水魔法をかわし、片手を振り上げながらそう唱える。


 アカリはそれをやすやすとかわすと、部屋の地面に亀裂が入る。

 と、その時だった。


「はーい。魔法使いに酷いことをした協力者はこっちであってる?」


 また、別の魔法使いの声。


 俺はその声の方を見る。


 おそらく、フィナも、クロエも同時にそれを見ただろう。


 倒れている小林の上に立つ、高身長で金髪の髪の毛をツインテール、縦ロールにした女性。

 切れ長で気の強そうな目。その雰囲気は見るからに高貴高潔で、他人を見下しているような雰囲気すら感じる。


 彼女は黒色で身体のラインが強調されるようなセーター生地のトップスに、ふんわりとした白色で優しそうな生地のオーバーサイズのアウターを羽織っている。


 黒のロング丈のフレアスカートに、黒色基調で金色の装飾が施されたブーツ。


「いつの間に」


 アカリの低い声音が聞こえるとともに、彼女の尻尾が警戒したようにピンと張る。


「ま、どっちでもいっか。疑わしきは――」


 その女はそう言うと、右手を腰に添えた。

 彼女の靴から、鋭利な針が伸びる。


「な、何を――」


 フィナの声が聞こえた、その直後。


「――罰する」


 その女は思い切り、その鋭利な針の靴で小林の肩を踏んだ。


 ガチャ。

 肉が弾け、骨が砕けたような音が響いた。


次回の投稿予定日は3/11(水)です。

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