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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第九部 疑惑の忠犬魔法使い

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118話 宝具による記憶流入

【前エピソードのあらすじ】

ソラ来訪の後、クロエからアカリの危険性を聞いたその翌日、再びアカリが訪問してくる。

「笹川でーす」


 昨日と全く同じ光景だが、昨日と着ている服は違う。


 暗いピンク色のフリフリとした服に、その色と同じトーンの入ったリボンがいくつも付いたミニスカート。


 黒色のベルトを巻いて、今日は靴底がとても厚いブーツだった。


 そのブーツは革製で黒色のリボンが可愛らしく何箇所かに結んである。


 また、メイクも少し変えているのか、昨日よりも疲れているような印象を感じる。


 アカリは今日も暗いピンク色のマスクをつけているから、表情が読めない。


 しかし、今日は昨日と違って、腰に刀をつけているし、何やら左手に赤と黒で塗られた高級そうな盃を持っている。


 3週間前、小林と戦った後、助けに来たアカリが持っていた刀と同じ刀。


 俺は扉を開けながら言う。


「今日も来てくれたのか?」


 俺がそう言うと、アカリは淡々と言う。


「昨日早く帰っちゃったから、ごめんって言いに来たんだけど、一人?」


「生憎、今は俺しかいないな」


 そう言うと、アカリは目が垂れ下がった。

 露骨に残念そうな雰囲気を感じる。


「じゃー、また今度出直してくるかなあ」


「別に、お茶くらい出すから上がったら?」


 俺はそう言いながら、無意識に、チラリと刀を見てしまう。

 すると、アカリは右手を口元に当て、ふふっと笑った。


「何?」


 俺が問いかけると、アカリは気怠げながらも、俺を揶揄うように言う。


「いや、わかりやすいなーって。私のこと、怖いでしょ」


「ああ。アカリは人をぶった斬れる魔法使いらしいからな」


 殺人という行為は誰にでもできることではない。


 平和な国で生まれ、道徳を教えられて育った場合、殺人という行為そのものに未知の恐怖を覚え、例えば拳銃のトリガーを引くだけのことにも迷いが出るように設計されてしまう。


「正直だねえ。私の機嫌は伺った方がいいよー? なんつって」


 アカリは俺に対し上目遣いで言う。


「いや、別に死ぬことは怖くないから、アカリの機嫌を伺うつもりはない。気に食わなかったら斬ってくれ」


 俺から言わせれば、死ぬことの方が簡単で、生きることの方が大変だと思うが……、俺の言葉を聞いたアカリはマスクの上から顎に手を当てて、考えるようにいう。


「ふーん。死ぬのが怖くないんだ。でも、そう言う人ほど、殺される直前に喚く」


「体験談か?」


 俺がパッと言った瞬間、アカリは目を細くして、刀に手をかけ、俺の心臓の辺りを見て言う。


「うん。試してみる?」


 アカリはまるで刀を抜いて俺の心臓へ振り下ろそうとしているかのような雰囲気。


 しかし、明らかに殺気が弱い。

 昨日ほどの殺気ではないから、全く怖くもない。


 俺はため息をついて答える。


「こんなところで話すくらいなら、部屋に上がってくれ」


 俺がそういうと、アカリはいつも通り気怠げな雰囲気に戻りつつ、刀からも手を離す。


「いーや。部屋には上がらないよん。昨日も言ったけど、私、やっぱりフィナとクロエとは適度な距離を置いたほうがいいかなぁって」


 そういうと、アカリは左手に持っていた盃を差し出してくる。


 高貴な宴席で酒を交わす際に使われる、盃。

 浅い椀の内側は赤色で塗られ、外側は全て黒色で塗られている。


 それは艶やかで、曇り空から差し込む太陽の光を反射させていた。


 ふと、俺は昨日のメモを思い出す。


「これ、そこら辺で戦った魔法使いが落とした宝具、フィナに渡しといて」

 

 赤色の盃を、アカリは自然な動作で俺に差し出してくる。


 本当にフィナの宝具を代わりに集めてくれるのか?


 アカリは読めないやつだがーーフィナが魔女になることについては、本当に応援してくれているらしい。


「相手の魔法使い、殺したのか?」


 俺がそう言うと、アカリが珍しくイラッとしたように言う。


「私をなんだと思ってる。私だって、好きで人を殺していたわけじゃない」


 本心かどうかはさておき、その言葉が聞けて少し安心している自分がいた。


「分かった、フィナには伝えておくが……どうしてここまでしてくれるんだ?」


 まだ盃に手を伸ばさずにそう問いかけると、アカリは言う。


「もしかして。また何か、私に探りを入れようとしてる?」


 アカリはダウナーで気怠げで、勘が鋭い女だ。


「図星かい」


 と、少し間が空いただけで、アカリはのんびりとツッコミを入れてくる。


「正直に言うと、俺もフィナもクロエもアカリが好きだから。どうすればアカリを心の底から信じられるかを考えていて」


「あなたが私を好きってのは嘘くさい」


 いらんこと言うな。


「えーっと、別に私のことを無理して信じなくていいよ。実際に何人も殺してたわけだし。昨日、疾風の頑固ババアにも言われたでしょ」


 俺は一瞬反応できなかった。

 疾風の頑固ババアってーー。


「まさか、今のは疾風の魔法使いソラのことか?」


「うん。私のことをつけ回して、隙あらば説教してくる頑固ババア」


 いや、すごくイケメンだったし、ババアって雰囲気では……。


「それに、フィナとクロエとは今くらいの距離感がちょうど良いから。じゃ、これ」


 アカリは俺に盃を受け取れと言わんばかりに押し付けてくる。


 昨日のメモは、なんとなくソラが俺に渡したものだろう。

 俺が目を逸らした隙に、風を操って入れた可能性が濃厚だ。


 昨日、クロエと話した内容を踏まえると、容易に信じるわけにはいかないと言うのも重々承知している。


 が、俺はソラのメモを信じ、扉を掴んでいなかった方の手でそれを受け取った。


 と。その、瞬間。


 俺の脳へ大量の情報が流れ込んでくる。


 頭に重みと痛み。


 激しい動悸に、俺は思わず膝をつく。


 って、これはーー。


「ちょっと!? 大丈夫?」


 誰かの、記憶……?


 遠くから聞こえてくる、慌てたようなアカリの声。

 が、俺はそんな声に反応する間もなく、目の前の映像を直視し続ける。


「ハル!? な、なんで! アカリちゃん!?」


 フィナの声も聞こえる。


 だが、俺はその声にも反応できない。


 と、その直後。


 突然、俺の目の前が真っ暗になった。    


次回の投稿予定日は4/29(水)です。

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