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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第九部 疑惑の忠犬魔法使い

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112話 突然の入隊拒否

【前エピソードのあらすじ】

フィナがアカリを隊員にした結果、クロエは激怒する。本当に隊員にすべきかどうか、俺はアカリがこの世界に来た目的を尋ねる。

 

「ん? なんでそんなこと聞くの?」


 アカリは俺を見て聞き返す。


「隊員になってくれるなら、フィナと利害が一致していることが望ましいと思って」


「法則の魔女の里は確か徴兵制だから、利害とかない……」


 横から、ぐったりとしたクロエが割り込むように言った。

 彼女はそう言うや否や、フィナの脳天に力を抜いた優しいチョップを入れている。


「いてっ」


 フィナの声が響く。


 しかし、徴兵制?


「全員強制で修行に出るってこと。修行に出るか出られないかを選べるなんて、ほんと羨ましいなあ」


「逆に、出たくても出られない人もいるんだけどね」


 心底羨ましそうに言うアカリに対し、フィナは実感のこもった、神妙な顔で言う。


 修行に出ることと徴兵制の言葉の関連性がつかめない……?


 もしかすると、魔法使いたちがこの世界に来る理由はーー。

 いや、それよりも目の前の会話だ。


「じゃ、アカリは強制的に修行に来ているだけで、特に何かやってみたいこととかないのか?」


「なーい。でも、この世界のファッションとかメイクには元々興味があったから、ハマってるよん」

 

 と、その時。

 クロエは息を吐いてから姿勢を正し、アカリをびしっと指差して言う。


「とにかく! 私はアカリの入隊を認めない!」


「えー! ハルも認めてるのに」


 なんか、俺も認めたサイドになってる。


「じゃあさー、クロエはどうしたら私の入隊を認めてくれるの?」


 アカリは別に怒るでもなく、クロエを見てニヤリと笑みを浮かべながら、淡々と尋ねる調子で言う。

 すると、フィナはそれに食いついた。


「そうだよクロエちゃん。どうしたら入隊を認めてくれるの!?」


 クロエは何故か俺をチラリと見た後、顎に手を当てて考える。

 なんだ? 助け舟でも欲しいのか?


「えーっと、そのー……」


 クロエが考えていると、フィナは追及する。


「条件が無い、なんてことはないよね?」


 ただ否定するのではなく、対案を示せと言うことだろう。

 対案無き反対は反対ではなく、ただの文句にすぎない。


 だが……、今の俺はどちらかと言うとクロエと同じ考えだ。

 少しフォローをするか。


「えーっと。クロエは何でアカリが部隊に加入することを反対してるんだ?」


 俺が口を挟むと、クロエは俺のほうを勢いよく見て言う。


「そりゃ危険だからよ! 万が一裏切られたらーー」


 クロエはアカリの目の前で、アカリが裏切った場合のリスクについて堂々と解説を始める。

 それに、クロエはラミアの話も出した。


 フィナとクロエの同門同期のラミアも、部隊内の身内に裏切られて今の状況になったと聞いた。


 すると、力説しているクロエに対し、アカリは突然、ふふっと笑った。


 何がおかしかったのか分からず、俺とクロエは同時にアカリを見る。



「私が二人の部隊に入るなんて冗談だよ」



 アカリが軽く言った言葉。

 数秒の沈黙後、フィナとクロエは「えー!?」と同時に言う。


 すると、アカリは愉快そうに、二人を見て、俺を見てから笑う。


「私、超嫌われ者だからね。別に二人を裏切ることはないけど、敵が多いから、フィナの邪魔になっちゃうかな」


「え!? アカリちゃん!? 嘘でしょ!?」


 驚いたようにフィナが言う。


「あの、アカリ? 冗談って?」


 その隣で、再びポカンと呟くように言うクロエ。


「私がフィナの部隊に入ったこと取り消しておいてね、クロエ」


「え!? なんで!? 私は本気だよ!」


 フィナが再び叫ぶも、アカリは立ち上がり、フィナとクロエを交互に見て言う。


「それは分かってる。けど、二人は私と同類って思われて欲しくないっていうか」


「もしかして、全獣魔法のことを気にしてるの!? 別にそんなこと、私は気にしないから!」


 フィナがきっぱりと言うと、アカリは淡々と言う。


「フィナの下に付く気はないよ。フィナと私は役目が違う」


「役目?」


「うん。私はフィナの反対だから」


「え?」


 きょとんとするフィナに対し、クロエはアカリの顔をじっと見ている。

 と、その直後、アカリは思いついたように言う。


「あ、そうだ。それならこんなのどう? 隊員にはならないけど、集めた宝具をフィナにあげるよ」


「ちょっと、それってどういう……」


 問い返すフィナに、アカリは淡々と言う。


「私、別に魔女になりたいわけでもないから兵役の5年が経ったら帰るつもりだし……、でも、フィナの応援はしたいからさ」


 俺はそんなことを言うアカリの表情を観察していたが、マスクのせいであまり感情が読めない。


 と、その時、ほんの少し、ピクリと鼻を動かしたように、マスクが動いた気がする。

 何か、勘付いたのだろうか。

 アカリはチラリと窓の方を見てから、俺を含め3人を順番に見ながら言う。


「いやいや、応援してくれるなら隊員になってよ! 私、アカリちゃんと一緒に……」


「あ、ごめん、予定より早いけど帰るね? また、近々遊びに来るから!」


 アカリはフィナの言葉を遮るように言う。


「えー!? 今日は夜までいるって言ってたじゃん!?」


 フィナが困惑したように叫ぶも、アカリは慌てたように片付けを始める。


「次来る時は、もっとファッション誌持ってくるから、ね? クロエも、また遊ぼ?」


 アカリは不満気なフィナの背中をさすりながら言う。


「……えーっと」


 クロエは思考から引き戻されるように、気の抜けたような声を出す。

 と、アカリは逃げるような足取りでさっさと玄関へ向かって一言。


「バタバタでごめん、お邪魔しましたー」


 ガチャン、と扉の閉まる音。

 なんか、出ていく時も異様に慌てていたように見えるし、何かあったのか……?


 困惑しているフィナと、考えているような様子のクロエ。


 嵐のように去って行ったアカリ。


 しかし、さっきの口ぶり。


 危険人物なのかはさておき、アカリはフィナとクロエのことが気に入っていることは確か。


 案外、信じて仲間にしてみても良いのかもしれない、が。


 俺はそんなことを考えながら、アカリのコップを片付けようとするとーー、フィナはとたんに寂しげな顔で言う。


「やっぱり、私が弱すぎて、断りづらくて冗談を言ったのかな……」


 彼女はしょんぼりと肩を落としていた。

 先ほどまでの勢いはどこへやら、彼女はぐったりと悲しげだ。


 一方のクロエは何か深く考え込んでいる様子。


「ラミアちゃんのことも聞けなかったし……、あー! もう! 走ってこよっかな!」


 フィナがそんなことを言った瞬間、クロエは食いつくように言う。


「ん? ラミアのこと? 何、その話!?」


「えっと、アカリちゃんにラミアちゃんのことを話したら、調べてあげるって言われてーー、今日、今の状況を教えるねって言われてたの」


 まあ、フィナは何度もアカリも通話をしているし、話していたって不思議ではない。


「あのね……、フィナ? 法則の魔女様は未来の魔女様と仲が良いとはいえ、魔法使い同士の修行では敵同士なのよ? ましてや、アカリは危険な魔法使いなの。安易に内情を話すなんて……」


 クロエが若干苛立ったように言うと、フィナは反抗するように言う。


「クロエちゃんはずっと警戒してるけど。アカリちゃんは良い子だよ!? それに、そんなこと言ってる場合じゃなくない!? 3週間経っても、全然手掛かりすら見つかってないんだよ!? できることはなんでもしないと!」


 事実、クロエは毎日のように、フィナも俺が空いている日はクロエと俺と一緒に、いろんな場所の情報屋とやらを訪れている。


 情報屋は凡夫と合わないと決まっているらしいから、俺は直接情報屋と会ったことがない。


 いつも、近隣までついていって、近くで暇を潰している。

 

「私はアカリのことを信じられない」


 クロエは小さな声音でそう言った。


 俺がコップをシンクの中に置くと、クロエの声が再びぽつりと零れる。


「あの子の真意が、読めない。さらに、何がしたいのかも分からない。あの子、本当に全獣魔法なのよね」


「ちょっとクロエちゃん! まさかそんな理由で反対したの!? 魔法の種類で差別はーー」


 咎めようとしたフィナに、クロエははっきりと顔を上げて言う。


「そうじゃなくって! その、アカリは全獣魔法でしょ? 昔の境遇は私と似ている部分があると思うんだけど……」


 そうか。

 確かに、アカリが差別されていた魔法を使うのであれば、生い立ちや境遇も順風満帆とは言えない可能性が高いだろう。


 アカリは誰かに狙われていると言ったり、自らのことを嫌われ者と評しているしーー。


 クロエは奴隷身分だったと言うから、ある種、2人は共通点があるのかもしれない。


「なんというか、アカリと私は育ってきた環境は似ているはずだけど、似ていないというか。根本的なところで、決定的に違う気がしてーー、だからアカリのことが本当にわからないっていうか」


 おそらく、クロエは感覚的な、形而上的なことを言っているのだろうと思う。

 だが、何となくわかる気もする。


「クロエちゃんの言うこともわかるよ。その、アカリちゃんってなんだかミステリアスだよね」


 いまだテンションが下がったまま、同調したように言うフィナ。


 キッチンの方から振り返って彼女をみると、フィナもクロエも顎に手を置き、考えているような素振りを見せていた。


「私は……、アカリちゃんと出会った時、あの金髪の魔法使いに人殺しって言われてたところが気になるかな」


 フィナは目を瞑って、思い出すように言う。


 って、え?



次回の投稿予定日は4/8(水)です。

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