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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第九部 疑惑の忠犬魔法使い

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110話 アカリ入隊事件

【前エピソードのあらすじ】

アカリはふざけて、俺に殺気を放つ。彼女の殺気は、クロエや小林と敵対した時と比べ物にならない本物の殺気だった。それを体感し、俺はアカリがなぜ無防備な振る舞いをしているかの理由に気づく。

 アカリは無防備なんじゃなくて、自分を守る必要がないのだろう。


 襲われても、一瞬で相手を殺せるからか。


「そうか、それは悪かった。軽い話か……、そうだな。フィナはトレーニングが大好きで、クロエはーー」


 俺がティッシュでお茶を拭きながら話し始める。

 と、アカリは寝転んだまま食い気味で尋ねてくる。


「食べるのが好きなんでしょ?」


「ん? 言ったっけ?」


「そのくらい余裕。バ先でクロエの食費のためにシフト増やしてるって言ってたじゃん」


「クロエには言うなよ」


「いや、言った方が良くない?」


 ……たしかに。

 なんで言わない方がいいと思っていたんだろう。


 ガチャガチャっと扉の音が響き、ピンポーンとチャイムが鳴る。


「ハルー!」


 フィナの声が聞こえる。


 と、アカリは軽い身のこなしでピョンっと立ち上がり、「鍵を開けてくる!」と言って走っていく。


 本当に身のこなしが軽い。


「お邪魔してまーす。フィナ、会いに来たよー!」


「あ、アカリちゃん! やっと来たの!?」


 汗をかいているフィナが家の中に駆け込んでくる。


 と、後ろから汗をべっしょりと掻いて、膝に手を付いているクロエがよたよたと入って来る。


 あいつ、フィナの爆速ランニングの犠牲になったか……。


「疲れた……、って! アカリ!? 何勝手にウチに上がってるのよ!」


「ハルにもてなしてもらってた」


「ハル! 私がいないときにアカリに近づくなって言ったでしょ」


「ん? クロエってハルのこと好きなの?」


 煽るように言うアカリ。


「好きじゃない!」


「え、クロエちゃん、ハルのことまだ嫌いだった!?」


 純粋に驚いているフィナ。


「いや、嫌いじゃないけど。普通っていうか……」


 クロエはすごく冷めた目で俺を見て言う。


「ん? 照れ隠し?」


 アカリは再び煽るようにこたつ机の前で言う。


「こんの……、やっぱりこいつを追い返してーー」


「まあまあ、クロエちゃん。ーーって、やば!? これ、びしょ濡れじゃん!」


 フィナが机の上の惨状を見つけたようだ。


「それーー」


 俺が、自分のせいだと言おうとした瞬間。


「ごめん、さっき私が零しちゃってね」


 アカリのわざとらしい声が先に響いた。


 俺は思わずアカリを見る。


 あまりにも不可解な行動だが……、彼女は俺に目をくれることもなく、淡々と言う。


「これ、クロエの教本なんでしょ? ごめんごめん」


 アカリは軽く笑いながら言っているが、煽られた直後のクロエはカンカンに怒っている。


「ハル! ほんとに! なんでこいつを家に入れたの!? 問題しか起こさないじゃない!」


 すると、横からフィナがクロエの両肩を持つ。


「まあまあ。アカリちゃんも悪気があってやったわけじゃないんでしょ? ハル、教科書はベランダに干しておくね」


 そう言って、フィナは手際よく適当なビニール袋を取り、ベランダにそれを敷いて教科書を干す。

 一方、室内の雰囲気は最悪だ。


「最悪。私、シャワー浴びるから。フィナとハル! アカリのことは常に警戒して! 何かあったら叫んで! 分かった!?」


 クロエはそう言うと、一度、自分の部屋に入って着替えが入っているであろう布製のトートバッグを持ってきて、シャワールームへ向かう。


 が、その行動はいつもの丁寧さを思わせないほどすべて荒々しく、扉をバタンと思い切り強く閉めた。


「あー、ありゃ、カンカンだね」


 アカリは他人事のように言う。


 俺は水分を吸ったティッシュをごみ箱に捨てるため、立ち上がりながら言う。


「アカリ、どうして俺のことを庇った」


 俺がそう言うと、アカリは俺の背後で一言。


「ハル、クロエに怒られるの嫌がったじゃん」


 いや、確かに嫌だが……。


「アカリちゃんごめんね、クロエちゃんがへそ曲げちゃって」


 直後、フィナがベランダから室内に入りながら言った。

 今の会話は聞こえていないらしい。


「こっちこそごめんね」


 アカリが答えたところで、俺はごみを捨て、後ろを振り返る。


「ううん! クロエちゃんは怒ってるけど、気になるなら私のと取り替えるようにするから。本当に気にしないで! ……それより!」


 フィナは目を輝かせてアカリに言う。


「来てくれてありがとう! 1週間前に来てくれてから日が開いたじゃん?」


 アカリは照れくさそうにそっぽを向くと、フィナは続けて言う。


「この間、クロエちゃんがきついこと言ったし、アカリちゃんは他の魔女様の門下生だから、私たちとあんまりつるみたくないかなーって、不安だったんだ!」


 アカリが家に来ると、毎回、クロエが警戒モードになる。

 さらに、アカリがクロエを煽ったり馬鹿にしたりイジったりするから、毎回喧嘩になる。


 そのため、フィナは不安だったのだろう。


 フィナの言葉に対し、アカリは玄関前で俺に見せた笑顔と同じ、不器用で顔が引きつっているように見える笑顔をフィナに向ける。


「そんなこと、ないよ。法則の魔女と未来の魔女は仲が良いし」


「だよね! いぇーい! アカリちゃん、今日はいっぱいお話ししようね! 今日はアカリちゃんはバイト休みなんでしょ!?」


「うん。今日は夜までお邪魔するつもりで来たから」


 アカリはそう言うと、再びごろーんと床に寝転がった。


 何度か来ているとはいえ、他人の家とは思えないくつろぎようだ。

 俺はフィナとクロエの分のお茶の用意を始める。


「っていうか! 私もバイト始めたいなー。この世界のお洋服を買いたいんだけど……。ハル1人のバイト代で、贅沢はできないし」


「フィナはバイト禁止だ。魔女になるまでは」


 俺が横から言うと、アカリは寝ころんだまま、いつものテンションで言う。


「クロエに働かせた方が良いね。あの子の食費、バカにならないんでしょ」


 と、フィナが反応する。


「そう! クロエちゃん、候補生だったころから、誰よりも食べてたもん! それなのに、全然太らないでしょ!? あの体質、すごいよね」


「栄養が全部、乳に吸い込まれてるんだね。はぁー」


 アカリは天井を見上げながら、遠い目で言う。


 フィナの様子をチラリと見ると、フィナも俺をチラリと見ていたから目が合った。気まずい。


「いいなあ。私、食べたらすぐお腹周りに肉が付くんだよ」


 アカリは自分の腹回りをつまみながら言う。


 フィナは俺からさりげなく目を逸らして、アカリの方を見た。

 こいつ、目があったことを無かったことにしたな。


「私は小食でクロエちゃんほど食べられなくて……。本当は食トレもしたいんだけどね」


 いや、フィナの食べる量は決して小食じゃないと思う。

 クロエが大食い過ぎて、感覚がおかしいだけだ。


「ほら、フィナ、勉強道具あっちに置いてきて。みんなの分のお茶を出すから」


 俺はアカリに合わせ、コップにぬるいお茶を入れ、こたつ机の方へ持っていく。


「あ! アカリちゃん、ファッション誌! っていうか、今日の白色の服かわいいね! いつもとイメージが違うもん」


「そう。これは量産系っていうの」


「量産系?」


「うん。銀髪でも似合うよ」


 そう言うと、アカリは黒色の髪の毛をスポッと外す。

 すると、黒色のネットに覆われている、くすんだ銀色の髪が姿を現した。


 アカリの地毛はグレーに近い銀色。

 その髪の毛を肩ほどまで伸ばしており、普段はそれをツインテールにしているらしい。

 バイト先では擬態をするため、さらに、お気に入りの地雷系ファッションに似合いやすいからという理由で、わざわざコスプレ用の黒髪ウィッグを買ってつけている。


 そのウィッグを外して、アカリは髪の毛を解く。

 と、フィナはパチパチと手を叩く。


「すごい可愛い! でも、いつもの地雷系でも似合うんじゃない!?」


「私の理想の雰囲気が作れなくてねぇ……」


 神妙そうな顔でそう言ったアカリは背負ってきたリュックサックに手を伸ばし、その中から何冊も雑誌を取り出した。


 ・


 フィナとアカリは10分ほどファッションの話で盛り上がっていた。


「今度、他のファッション誌も持ってきてあげる」


「本当!? ありがとう! へえー、でも、アカリちゃんの協力者が家族なんて」


 アカリの協力者は笹川という苗字の家族らしい。

 協力者の名前は笹川瑛二といい、父、母、娘の3人家族の父親らしい。


 と、その時。


 バン。


 扉を大袈裟に開ける音が響く。


 俺たち3人が扉の方を見ると、髪の毛が湿っていて、グレーのパーカーにネイビーのスウェットを履いた、明らかに不機嫌な様子のクロエが立っていた。


 彼女は扉を閉める。


「なんか飲むか?」


「いらない」


 俺の言葉を一蹴して隣の部屋に向かう。

 すると、やや悪くなった空気を切り裂くようにフィナが言う。


「じゃ! 九九番隊揃ったと言うことで、アカリちゃんにお話があります」


 扉を開けようとするクロエ、飄々としているが目線を逸らしているアカリ。


 そして、怒られたから余計なことを言わないでおこうと黙っている俺。

 その全員の注目を集めるよう、フィナは立ち上がって、アカリに頭を下げて言う。


「アカリちゃん、私とクロエちゃんとハルの未来九九番隊に入ってください!」


 ……え?


 理解が追いつかない俺。


「いーよー」


 そして、アカリは気だるげに了承。


「フィナ……、今、なん、てーー」


 戸惑うようにそう言ったクロエは、ポカンとフィナとアカリを交互に見て、目をパチパチと瞬きしている。


 が、フィナは固まるクロエの横を通過して、バタバタと隣の部屋に駆け込んで、そして、戻ってくる。


 彼女の左手には、連携の魔女帽。

 たしか、連携の魔女帽の効果は……。


・部隊結成時に、隊員の数だけ同じタグがついた魔女帽が配られる。

・帽子をかぶっている間、一度でも帽子を身に着けた相手の位置が分かる。

・予備が何個か配られ、その予備を隊長が他の魔法使いにかぶせれば、その相手が隊長の部隊の隊員となる。


「ちょ、フィナ!?」


 クロエが叫ぶ。


 その隣で、フィナは無邪気に、「えいっ」と言って、アカリに魔女帽をかぶせた。


次回の投稿予定日は4/1(水)です。

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